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トラスコ中山株式会社様
SAP HANAを用いた情報基盤で、
「欲しいデータを欲しい時に」活用できる業務スタイルが実現
- 業種:
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- 卸売・小売業・飲食店
- 業務:
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- 経営企画
- 営業・販売
- 経理・財務
- 製品:
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- PCサーバ
- その他
- ソリューション・サービス:
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- AI・ビッグデータ
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導入前の課題
卸の使命としてのお客様への利便性向上と
IT基盤のパフォーマンス低下とのせめぎあい
トラスコ中山様は、日本のモノづくりを支える工場用副資材(プロツール)を販売する卸売企業です。
同社の取り扱いアイテムは120万点を超え、このうち約25万アイテムを、毎年発行しているオリジナルカタログ「オレンジブック」に掲載しています。このカタログは有料で全国のユーザーに配布されるものですが、生産現場に不可欠な“プロツールの検索と発注の手段”として、広く普及しています。カタログ掲載商品の9割にあたる23万アイテムを在庫として確保し、全国50カ所に物流拠点を設け、ドライバー1本からでも無料で当日配送を行える体制を構築しています。「つまり、お客様が必要とされている商品を、必要な時に素早く、確実にお届けすることこそが、我々のような卸売業の要諦と言えます」と話すのは、常務取締役 経営管理本部長 藪野忠久氏です。
一方、近年は時代の要請で、インターネットを介した受注が急増しています。オレンジブックのWeb版ともいえるプロツールの総合サイト「オレンジブック.Com」においては、同社の強みである小ロットのロングテールビジネスに磨きをかけるべく、商品検索、在庫状況の確認、発注、見積依頼などの機能を強化してきました。こうした取り組みは、お客様の利便性が向上する反面、蓄積データの肥大化、トランザクション量増加の要因でもありました。そのため、近年は情報システムのパフォーマンス低下の改善に苦心していました。
同社は2006年よりSAP ERPを導入し、Web受注システムと在庫適正化システム、およびデータ分析システムと連携させて運用してきました。経営管理本部 情報システム部 部長 直吉秀樹氏は、2011年ごろの状況を次のように振り返ります。「Web受注システムは、ERP側に多大な負荷がかかり、在庫表示などのレスポンスが悪化していました。在庫適正化システムも、計算速度の低下が深刻化していました。データ分析システムにおいては当時、データ集計機能のみを実装しており、蓄積データを基にした付加価値をお客様に提供するという、当社が目指す営業スタイルに貢献するものではありませんでした」
導入の経緯
SAP HANAが登場するも、新製品ゆえの機能への不安
実機による機能・性能検証により懸念を払拭し初物へチャレンジ!
こうした課題の解決を図り、販売力強化や在庫管理の適正化を図るため、トラスコ中山様はデータ活用基盤の刷新を計画しました。情報収集の過程で同社は、大量データを超高速で処理できるSAP社の新しいインメモリー型コンピューティングプラットフォーム「SAP HANA」に着目しました。その理由として同社は、検索処理の速さはもちろん、HANAとSAP ERPとの間で、トランザクションデータをリアルタイムに連携できるアーキテクチャが実装されていたことを挙げています。
しかし、画期的な新製品採用には、リスクも伴います。そこで、NECは野村総合研究所(NRI)と共に、SAP ERPとのリアルタイム連携を中心に機能と性能の実機による検証・評価を実施しました。この検証・評価による安心感が決め手となり、同社はSAP HANAの導入を決定。「計算スピードが非常に速く、秘められた可能性には驚きと感動がありました。当社の情報システム、および経営上の課題にたいへんマッチしたソリューションだと評価しました」と、直吉氏は話します。
こうして、SAP HANAを含むデータ活用基盤全体の設計・構築をNECが担い、業務システムの設計・構築をNRIが担当し、プロジェクトがスタートしました。
SAP HANAのアプライアンスサーバ群を用いて、
可用性の高いデータ活用基盤を構築
NECでは、トラスコ中山様の新しいデータ活用基盤に求められる個別の要件を踏まえ、SAP HANAを実装したアプライアンスサーバ「NEC High-Performance Appliance for SAP HANA」を用いて、基盤全体の設計・構築を行っています。
Web受注システムを支えるSAP HANAには、トラスコ中山様のお客様である販売店様へ外部公開している役割を踏まえ、高性能・高可用性を兼ね備えたSAP HANAのスケールアウトモデルを採用。さらに、SAP ERPとの間で在庫情報のリアルタイム連携を支える要のサーバに、ハードウェアが完全に二重化された無停止型の「Express5800/ftサーバ」を採用し、機器故障が発生しても止まらないWeb受注システムとしての高い可用性と信頼性を確保しています。
在庫データ適正化システムとデータ分析システムには、分析対象データの増加、および今後のデータ活用領域の拡がりを考慮し、高性能・拡張性を兼ね備えたSAP HANAのスケールアップモデルを採用しています。
経営管理本部 情報システム部 システム管理課 主任 福西智氏は「NECには、製品そのものの堅牢性とともに、運用・保守フェーズも含めた信頼感があります。とりわけSAP HANAのスケールアウトモデルとftサーバの組み合わせは、決して止まることが許されないこのデータベース基盤を実現できた重要なポイントでした」と評価します。
導入後の成果
「リアルに見える」がもたらす、お客様の要望の先読み
処理の高速化と高精度な在庫適正化も実現
SAP HANAを用いたデータ活用基盤の刷新によって、各システムをリアルタイムに連携させた結果、欲しいデータが欲しい時に見える業務の遂行が可能になり、トラスコ中山様のビジネスには顕著な効果が現れています。
営業活動支援システムについては、経営管理本部 情報システム部 システム管理課 森晴香氏が次のように語ります。「お客様からの納期や価格の問い合わせに、短時間で応じることが可能になりました。また、ERPの更新データはタブレット端末でも瞬時に確認できるようになっています。たとえば営業担当者が販売店様を訪問する直前に、見積もり依頼や受注情報を確認しておくことで、商談の場で最適なアクションができるようになっています。このほか、内勤営業スタッフと連携して商談前に見積もりを提出するなど、お客様のご要望を先読みした活動が活発になっています」
在庫適正化システムにおいては、膨大な量のトランザクションを瞬時に処理し、分析できるようになったことで、物流センター単位/エリア単位での高精度な在庫管理と、86.8%という高い在庫ヒット率を実現しています。
直吉氏はWeb受注システムの効果を、次のように話します。「ERPとのリアルタイムなデータ連携が実現できたことで、『オレンジブック.Com』を活用されるお客様の利便性がさらに高まり、そのことが当社の競争力向上にもつながっています。BtoBのサイトで、お客様が商品を検索すると、在庫と価格の一覧情報がリアルタイムで得られるようなサイトは、国内ではほかに存在しないはずです。インターネットからのネット受注率は、現在では全受注行数の約8割に届くほどになっています」
SAP HANAの高速処理性能を需要予測に
活用し、真のリアルタイム経営を目指す
トラスコ中山様は、膨大な蓄積データとSAP HANAの高速処理性能を用いて、需要予測にも活用していく考えです。たとえばERPにあるデータを日次バッチで運用するのではなく、リアルタイム処理を採用することで、最も適切なタイミングで在庫の発注をかけられるようなしくみを構想しています。「目指しているのは、真のリアルタイム経営です」と、直吉氏は話します。
同社の経常利益率は、7.4%(2014年4月~12月)であり、これは卸売業の平均値を大きく上回る数値です。「直近の5年間は、社員数の変動がほとんどないにもかかわらず、売上が1.5倍になり、利益が2倍に増加しています。今回整備した新しいIT基盤が、お客様の利便性向上と当社の業績拡大に寄与し、また、企業体質の変換を支えているという面は、非常に大きいと思っています」と、藪野氏は締めくくりました。
取材日:2015年3月20日
「リアルタイム情報化プロジェクト」と名付けられた本案件を支援したNECとNRIは、SAP HANAの機能を最大限に活用してトラスコ中山様の課題を解決した点が高く評価され、2015年 3月「SAP AWARD OF EXCELLENCE 2015」~「プロジェクト・アワード」の最優秀賞である「プロジェクト・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。
NEC担当スタッフの声
システム提案から運用サポートまで、NECの総合力でお客様のSAP HANAへのチャレンジをトータルにサポート
トラスコ中山様における今回のデータ活用基盤の刷新は、各システムの役割に応じたアプライアンスサーバの使い分けを提案するなど、私たちがSAP ERP、SAP HANA関連のソリューションで培ってきたシステム設計力、および構築ノウハウが発揮できたプロジェクトでした。
また、「SAP Solution Manager(※1)」のプロセス管理機能「サービスデスク」を使って、システム全体を一元的に監視できる運用設計も、NECがサポートしています。
これらの取り組みが評価され、「基盤については安心できる」という信頼をお客様からいただけたことが、何よりもうれしかったですね。これからも、トラスコ中山様のさらなる成長に貢献できるソリューションを提案し、最適なプロダクツとサービスを組み合わせた提供を行っていく考えです。
(※1)SAP Solution Manager :SAPシステムを集中的に管理するための、システム管理プラットフォーム
ドイツ駐在社員との連携で得た最新技術・情報と、事前検証で、HANA基盤を手堅く構築
トラスコ中山様の新しいデータ活用基盤は、各システム間でデータ連携を司る際の「リアルタイム性」と、「止まることが許されない」システムであることが、構築の大きなポイントでした。この要件に対応するため、在庫情報のリアルタイム連携を担うSLT(※2)サーバに、ハードウェアを完全二重化した無停止型サーバを提供できたベンダは、弊社のみでした。
また、発表間もないSAP HANAの導入をご検討されている段階で、SLTサーバを用いたリアルタイム連携の検証など、実機による機能・性能評価を行っています。これらの検証結果によって、SAP HANAの性能を最大限に発揮できるという安心感を持っていただけたことも、製品選定の大きな要因だったのではないかと想像しています。
実機検証および構築フェーズでは、弊社がドイツに開設している「コンピテンスセンター」と国内メンバーが連携し、たとえばSAPのドイツ本社から最新の技術情報を適宜入手するなど、組織的な対応を行いました。こうして得た技術・情報を活かし、さらに検証を重ねてプロジェクトを推進しました。このような取り組みは、弊社の強みである周辺システム含めたトータルサポートにも活かされており、導入後の運用フェーズも考慮した基盤設計を行っています。
(※2)SLT:SAP Landscape Transformation。SAP ERPとSAP HANAとの間でデータベースのテーブル連携を行う際に、データロードを行う機能
お客様プロフィール
トラスコ中山株式会社
本社所在地 | [東京本社] 東京都港区新橋四丁目28番1号 トラスコ フィオリートビル [大阪本社] 大阪府大阪市西区新町一丁目34番15号 トラスコグレンチェックビル |
トラスコ中山様は2015年1月、データセンターを、東京本社「トラスコフィオリートビル」の内部に移転。新しいデータ活用基盤を支えるハードウェア群をショウルームのように展示し、最新の情報技術でリアルタイム経営を実践していることを、取引先をはじめとする来訪者にアピールしている。 |
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設立 | 1959年5月 | |
資本金 | 50億 2,237万円 | |
従業員数 | 1,972名 | |
事業内容 | プロツール(工場用副資材)の卸売業及び 自社ブランドTRUSCOの企画開発 | |
URL | https://www.trusco.co.jp/ |
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(2015年06月01日)
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