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データ活用におけるコードとマスタの標準化/統合化のポイント
コラムで学ぶデータ活用DXを推進するデータ活用において、7つの要素を考慮しながら、企業全体で全体設計をしていくことがポイントであることを勉強した新見さん。
その中でコードとマスタの標準化・統合化も重要な課題と聞き、今回はここを掘り下げて聞くことにしました。
「コードとマスタの標準化/統合化」についての学びポイント!
- コードは、使用する目的や、件数、このコードを使用する社内外のシステムに対する影響など総合的に判断し設計する。
- 重要なコードを選別し、標準化・統合化していく。
- マスタは、すべてのデータが標準化・統合化されたコードを適用するための重要な手段であり、構築に際してはシステムの全体設計がカギとなる。
コードとは?
7つの要素のところで、コードを標準化・統合化するということが、「データ活用」において重要な課題のひとつと伺いました。コードについてはまた別の機会に掘り下げてお話を聞かせていただくことになっていましたが・・・。
ああ。そうだったね。
人と人がコミュニーケーションする際に重要なのは、お互いに共通の言語を使用することが必要で、お互い理解しあえる共通の言語がない場合は、それぞれが理解できる言語に変換(翻訳)してあげる必要がある。ITの世界であれば「コード」がひとつそれに相当する、という話をしたかな。そして、データの「精度」と「鮮度」を保証する上でも、このコードの標準化・統合化というのはひとつのキモになるね。
コードとは何かから復習しようか。プログラムのソースコードもコードと言うけれど、ここでは扱わないことにしよう。
新見さんも会社の社員番号を持っているよね。会社には、同じ名前の人もいるから区別するために、社員一人ひとりに番号を割り当てて管理する工夫をしている。この社員番号を使用すれば、本人を確実に識別できるし、システムに登録するような際も名前を毎回入力するような、煩雑なことは必要なくなりミスも減らせる。コンピュータの世界では、このように文字や記号、数字を使って、その対象が一意に決定される文字列のことをコードと言っている。
まず、基本的なコード体系の種類について押さえておこうか。
①シーケンスコード
- 例)001、002
②ブロックコード
- 例)動物(11~20): 犬 11 猫 12
食料(21~30): 米 21 麦 22
③グループ・クラシフィケーション・コード
- 例)100 東京営業所
110 東京営業所 営業部
111 東京営業所 営業一課
④ニーモニックコード
- 例)TV A01 → テレビ A01型
TV A02 → テレビ A02型
例えば、コンピュータで自動採番するような場合はシーケンスコードを使用したりするね。順番に採番され重複することはないし、順序性も保証されて運用面でも非常に便利だ。コードを見ただけで人間がその対象を認識し作業をするようなケースであれば、ニーモニックコードを使用したりする。シーケンスコードの連番を見て、その対象を認識するのは難しいからね。
いずれにしても、コード体系は一度決めてしまうと変更は困難。それぞれ一長一短があり、データ活用にも大きく影響することから、使用する目的や、件数、このコードを使用する社内外のシステムに対する影響など、総合的に判断し設計することが重要。
コードの標準化/統合化のアプローチ
このように設計されたコードを、各企業が持つシステム、さらにグループ間でも同じように使用してデータ活用することが理想ということですよね。変換して標準化・統合化する運用は、データの「精度」と「鮮度」に影響し、最終的に使われないものになってしまうということでしたよね。
その通り。でも、すべてのコードを標準化・統合化することは非常に困難なことなんだ。そうなると、重要なコードを選別し、それらだけを標準化・統合化することになる。
では、どのようなコードを標準化・統合化を進めるべきだろうか。
重要なのはやはり「戦略」で、システム化することにより、企業が持つどのような課題を解決するか、そして、そのためにデータ活用視点でどのコードを標準化・統合化するべきか、ということを考えていくアプローチが大切だ。
参考だが、私がたずさわった製造業のプロジェクトでは大体、“CVMP-S”というフレームワークをベースにして標準化・統合化するコードを選別してきた。CはCustomer(顧客)、VはVendor(ベンダ)、MはMarket(市場)、PはProduct(品目:製品・サービスなど)、SはStructure(内部構造:組織・勘定コードなど)を指す。もちろん、これらは業種や業態、戦略で異なってくると思う。
業界の標準コードなどを使用すると、標準化・統合化を進めやすいと思うのですが、いかがでしょうか。
そう思いがちだけど、それは失敗するパターンの一つなんだ。コードはひとつの目的だけでなく、さまざまな目的で使用されるよね。そのために、コードは柔軟性というものも求められる。例えば、顧客のコードを一つ採番したとしよう。企業としては一つだが、製品の出荷先としては二か所あり、それぞれ住所が違っていたとしたらどうだろうか。オーダーを登録するような場合に、システムに毎回住所を入力するのは煩雑だよね。そのような場合は、二つの異なる顧客コードを設定し、顧客マスタにそれぞれの住所を登録しておけば、毎回住所を入力しなくていい。だから、標準化・統合化だからといって、一つに集約しなければいけないということではない。もちろん一つとして見たい場合がある。そのときは、これらをまとめるためのグルーピングのコードを設定したり、マスタの属性に統一コードを持たせるといった工夫をする。このようなことも含めて、コードの標準化・統合化の設計を進めていくんだよ。
マスタの標準化/統合化のアプローチ
先ほどよりマスタという用語がよく出てきますが。
マスタは、ITシステムにおける基本情報を格納するデータベースで、製品マスタ、顧客マスタ、価格マスタなどがその例だね。コードを維持・管理していくデータベースとして非常に重要な位置づけにあるもので、コードをさまざまなデータに対して適用するしくみとしてもマスタは欠かせないものだ。それぞれ個々のシステムにマスタを持っているが、それらに同一のものが適用されていることも大切だよね。これらが異なっていたら、結果的にデータの「精度」と「鮮度」に影響してしまう。よって、マスタの標準化・統合化というのもコードと合わせて重要になってくる。すべてのデータが同じものを持つシステムの全体設計が求められるが、マスタの一元管理は有効な手段となるね。
さらに必要なのは、常に正しい情報が登録され、継続的に維持されるしくみを作るということ。マスタの内容が間違っていれば、すべてのデータがその間違った内容で反映されてしまう。そうならないように、業務だけでなくマスタ管理についてもプロセス設計を行う必要があるね。
また、これらの設計は、個々の利害関係者がバラバラに検討してもなかなかなかできるものではない。品目や顧客といった個々のコード・マスタに関して責任を持つ組織や担当者を明確にし、利害関係者のコンフリクトを解消しながら全体最適で設計し、システムを構築していくことが重要となる。
なるほど。たががマスタと思っていましたが、データの「精度」と「鮮度」を維持するためにさまざまな工夫が必要となるのですね。
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コラム制作者:
日本電気株式会社 エンタープライズ・トランスフォーメーション事業統括部
中西英介・土屋直之
本コラムの設定は架空のものであり実在の人物や団体などとは関係ありません。