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「データ駆動型経営/ビジネス」によりDXを推進
コラムで学ぶデータ活用新見さんは、「2025年の崖」から、DXを進めるにあたり「データ活用」が重要であることを学びました。そして、「データ駆動型経営/ビジネス」というものが、ずっと気になっています。 “「データ活用」というけれど、それなら今までもずっと取り組んできたし、一体どこが違うのか”と。
「データ駆動型経営/ビジネス」についての学びポイント!
- 「データ駆動型経営/ビジネス」とは、あらゆるデジタル化されたデータを活用し企業の経営やビジネスに活かす手法。
- これまでのような経験や勘ではなく、科学的根拠に基づいた新たな発見から業務の高度化を図り、コスト削減だけでなくトップライン(収益)を上げていく。
- 仮説検証を繰り返し、データを充実させながら、DXを実現していくしくみを企業内に作りあげる。

「データ駆動型経営/ビジネス」とは
先輩、今、お時間よろしいですか。「データ駆動型経営/ビジネス」がずっと気になっています。これまでユーザーに“これからは「データ駆動型経営/ビジネス』が重要です!”と話をしてきましたが、先日の話で改めて先輩の考えを聞きたくなりました。

ああ、今度、説明すると言っていたね。
簡単に言うと、あらゆるデジタル化されたデータを活用し、企業の経営やビジネスに活かす手法といったところかな。
ユーザーに対しては、我々のメッセージとして、こう説明している。従来の基幹系を中心としたシステムだけでなく、社内外のあらゆるデジタル化されたデータを一元的に収集、企業で働く人達全員が、これらのデータからAIなど最先端のデジタル技術を活用し、これまでのような経験や勘ではなく科学的根拠に基づく新たな発見から業務の高度化を図り、企業競争力向上・新ビジネスの創造・社会価値向上を目的にトップライン(収益)を上げていく一連の取り組みだと。基幹系を中心としたシステム、社内外のあらゆるデータ、それらを一元的に集めてAIなどを活用するところは、それぞれ先日説明した「Core」「Engagement」「Intelligence」の領域と読み替えてもらって構わないよ。


なんか難しくて覚えられないです。
はは、別に暗記しなくていいからね。DXやAIもそうだが、ある意味バズワード的なところがあり、人によって解釈が異なるもの。最初に自分達が考える定義というものをしっかり持ち、相手に話をする際はその定義をまず説明し、聞いてもらうことが重要かな。また相手から話を聞く場合は、自分が持つ定義との差を理解した上で耳を傾けることだ。学校じゃないからね。これが正解というものはないと思っている。

ところで、これまでの「データ活用」と何が違うのでしょうか。

ではまず、これまでの企業における「データ活用」の変遷をみてほしい。(図1)。


数十年前は、社内のデータ、例えば、発注オーダーや在庫情報のような膨大なデータをコンピュータに記録し、その明細の一覧を紙の帳票に適時必要な情報だけ出力。これを見ながら現場が効率的に作業するために活用したり、明細データを集計し、予算管理などとしてマネジメントにも利用されてきた。
その後、コンピュータの性能が向上し、さらに安価に購入できるようになると、これらのデータをもっとマネジメントやビジネスに活かそうというBI(ビジネスインテリジェンス)のような考え方が出てきた。これまで定型的な視点からのみ見ていたデータを、例えば、顧客軸、製品軸、市場軸といったさまざまな角度から捉えたり、集計データからドリルダウンにより詳細な明細データを確認したり、といった分析ができるようになってきた。そして特に重要なのは、グラフ化して視覚的に情報を捉え、新たな発見や気づきを得て、マネジメントやビジネスに活かしていこうという発想がでてきた。ここまでがこれまでの「データ活用」だね。
時はさらに進み、高速・大容量のデータベースの出現、機械学習といったAIの発達、あらゆるものがデジタル化されデータとして活用できるようになった。そこでこれまでのような社内の一部のデータだけなく、社内、社外のあらゆる膨大なデータをビッグデータとして一元的に捉え、高度な統計解析も含むAIというデジタル技術を活用して、データに隠された裏を読みとることにより、「これまで過去何が起こったのか」「現在何が起きているのか」といったことを捉えるにとどまっていたものに対し、人間の経験や勘ではなく客観的な科学的根拠に基づき、将来の予測やパターンの発見、最適解を得るといったことができるようになってきた。これまで十分活かせなかった経営やビジネスの領域に活用できる時代が到来したということかな。

これまでのような人間の経験や勘でなく、科学的な根拠に基づき膨大なデータから情報を捉え、活用していくというところがポイントですね。

自分達が知らないあらゆるデータを扱うわけだから、経験や勘でデータを捉えるには限界がある。高度な統計解析を含むAIを活用すれば、そこには人が気づけない新たな発見も期待でき、知見が足りない人でもデータさえあれば同じ情報が得られ、業務の高度化を図れないかい?
もちろん、これまでのレポートやBIといったデータ活用の手段がいらなくなるわけじゃないから注意が必要。それはそれで必要なもので、プラスアルファで新たな取り組みが加わると考えてもらった方がよいかな。

仮説検証によりデータを充実させる

先輩、AIを使えば、これまで以上に経営やビジネスにデータを活かせることが期待できるわけですね。
AIを使うこと以上に、データの中身が大変重要になる。AIを使っても、今、手元にあるデータの分析だけでは十分な情報が得られないことが多いんだ。PoCをたった1回実施して、その結果で十分な効果が得られないと判断し、取り組みが終わってしまうケースはよくある。もったいないと思うね。次の図を見てほしい。(図2)。


例えば、基幹系の業務システムにあるデータを中心に顧客ごとの来年度売上金額を予測する分析を行うとしよう。顧客データごとにそれぞれ持つ分析の要素(因子)は、デモグラフィックや行動特性に関連するものぐらいかな。ところで、予測を行うのにこれだけの要素だけでよいだろうか。ジオグラフィックや、アンケートなどによりサイコグラフィックの要素を加えられることができたら、もっと予測精度が上がるのではないか。予測精度が上がれば、基幹系システムに組み込んで自動発注も可能になるかもしれない。そしてさらに、もしこの分析の過程で売上金額に強い影響のある特徴的な要因(因子)が見つかれば、その要因(因子)を持つ顧客に響く新製品やサービスを開発したり、そのような顧客のライフスタイルにあったデジタルマーケティングプロモーションを行うことで、もっと売上を向上させられないだろうか。
このような仮説検証を繰り返し、データを充実させながら、もっと高い予測精度のモデルが見つかれば、それはその企業にとって大きな財産であり、コアコンピタンスとなりうるわけだ。そして、このモデルは競合他社にとって強力な参入障壁となる。もちろん、門外不出だ。このようなアナリティクスのしくみを企業内に作っていくことが、まさにDXにつながることだと思っている。

あらためてDXとは

やはりDXにつながるのですね。
経済産業省からは、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(「DX推進指標」とそのガイダンス 経済産業省)という定義が示されているね。まさに我々が伝えたい「データ駆動型経営/ビジネス」のメッセージとつながらないかい。

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コラム制作者:
日本電気株式会社 エンタープライズ・トランスフォーメーション事業統括部
中西英介・土屋直之
本コラムの設定は架空のものであり実在の人物や団体などとは関係ありません。