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「2025年の崖」に向けて取り組むべきポイント

コラムで学ぶデータ活用

「2025年の崖」という言葉が随所で取り上げられており、なにやら切迫感があります。ある製造業企業のIT部門で基幹業務システムを担当し、昨今DXを検討するメンバにもアサインされている新見さんは、熱心に勉強しています。今回は職場の古田先輩にこの「2025年の崖」についていろいろ質問してみることにしました。古田先輩は、職場内のものしり博士。話し出すと止まらないのは少々難点なのですが、大学でも教鞭をとり豊富な知識と経験に裏打ちされたリアリティある説明には定評があり、生半可に書籍を読むよりずっと勉強になるのでした。

「2025年の崖」についての学びポイント!

  • 経済産業省は「2025の崖」において、従来の個別最適・複雑化・ブラックボックス化したシステムでは、全社横断でデータ活用できない環境下でDX化が実現できず、デジタル競争の敗者になると警笛を鳴らしている。
  • グローバルでみてみると、すでに「業務とITの標準化・統合化」に取り組み「みえる化」を実現、さらにDXを進め、成果を出してきている。
  • DXに向けて、「プロセスイノベーション」と「データ駆動型経営/ビジネス」に取り組む必要がある。

新見さんメモ

「2025年の崖」とは

古田先輩、最近、メールニュースやWebを見ていると、頻繁に「2025年の崖」という言葉が出てきますね。

新見さん

「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に発表したDXレポートの中で、日本企業に対し警笛を鳴らしているメッセージだね。
多くの企業がこれまで場当たり的に、また個別最適のシステムを構築してきた。そして昨今、システムが戦略的課題解決の手段として求められるようになり、事業環境の変化に合わせて改修を重ねてきたことからプログラムが級数的に複雑化してきてしまっている。さらに仕様書が十分整備されていない、内容を理解している開発者が定年退職などでいなくなってきている、古い言語で作られているプログラムの中身がわからずブラックボックス化しているといった既存システムをそう簡単に改修できない状況にある企業が多くあると思っているよ。

古田先輩
新見さん

これが大きな問題になるのですか。

そのような個別最適・複雑化・ブラックボックス化したシステムから、さっとデータを集めてきて全社横断的な視点でデータ活用していくのは難しいよね。DXは企業内外のあらゆるデジタル化されたデータを活用し、自社の経営やビジネスに変革をもたらすことが重要なポイント。そういう意味では、「データ活用」がDXの本質と私は考えている。「2025年の崖」では、このようなデータ活用できるシステムに刷新しこれまでにないビジネスモデルを展開する企業が出てきているのに対して、既存システムのおもりだけしていてはデジタル競争の敗者になってしまうぞ、と言っているわけだね。
日本の企業は、DXに向けて抜本的にシステムを見直す時期が来ているのではないだろうか。

古田先輩

どのような取り組みが必要?

新見さん

どのような視点でこの課題解決に取り組んでいけば良いのでしょうか。

経産省によって「DX推進指標」というものが示されており大変参考になるね。

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図1 経済産業省 DX推進指標

見てもらうとわかると思うが、ITシステムに求められる要素として、「データ活用」という指標がしっかり示されているね。
また、スピードやアジリティ、全体最適という指標も合わせて示されているだろう?
先ほど話をしたようにこれからは個別最適の、融通の利かないシステムではダメで、企業が直面するビジネス環境の激しい変化に迅速に対応できる柔軟性を持ち、かつ組織を超えて全体最適の形でデータ活用できるシステムが求められていると考えている。

古田先輩
新見さん

これを見ると、IT以外の指標もたくさんありますが。

そう。DXは、IT部門に任せっきりで解決できる課題じゃないと思っている。企業ビジョンや戦略、体制や、人材視点の指標も示されているね。トップから現場まで一丸となって企業全体で取り組むことが重要になるということかな。
昔になるが、当時の社長が「ITで負けるということは競争に負けるということだ!」と言っていたのを思い出したよ。まさにトップがITに対し、自らの意志を持ちリーダーシップを発揮していかなくてはならない時代が来たと思っている。

古田先輩

日本における課題

新見さん

それにしても、経済産業省は、なぜ、ここまで日本企業を焚きつけるのですかね。

「2025年の崖」では、このまま行くと、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると示唆している。
グローバルでみてみると10年以上も前からこのDXが進み、まさに「第4次産業革命」が起きており、日本はすっかり周回遅れの状況になっていると思っている。

古田先輩
新見さん

グローバルではそんなに進んでいるのですか。でも、技術力がある日本企業であれば、取り組み始めれば速いですよね?

図は、7年ほど前に当時関わっていた、グローバルで活躍するコンサルタントの方々から聞いた内容を整理したものだ。当時はDXではなく「ITとOT(Operation Technology)の融合」と言っていたが、考え方は変わっていないどころか、さらに広がりをみせていると私は考えているよ。

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図2 グローバル企業におけるIT投資の方向性

グローバルでは、「業務とITの標準化/統合化」がコスト削減に有効であることを経験則として浸透しており、早い段階から強力なトップダウンで進められ、さらにその基盤上で「みえる化」の充実化を図ってきた。
そしてこの「業務とITの標準化/統合化」「みえる化」により、全社横断的にデータ活用ができる環境下で、これまでのコスト削減だけではなく、収益向上視点でさらにDXという領域に取り組んできている。改めてこれらができていないことが多くの日本企業のDXにおける課題であり、これまで話をしてきた「2025の崖」につながってきているものと捉えている。「業務とITの標準化/統合化」「みえる化」から始めるのは相当な時間、コスト、そして労力がかかり、技術力があればすぐできるというものではないからね。でも、DXの推進を考えればぜひとも取り組んでいかなくてはいけないと課題だと思っている。

古田先輩

DX推進に向け、取り組むべき2つのポイント

新見さん

なるほど。これが普段から古田先輩が言っている、これからの日本企業は「プロセスイノベーション」と「データ駆動型経営/ビジネス」が必要ということにつながるのですね。

その通り。「2025年の崖」に向けて、「業務とITの標準化/統合化」を行って、業務プロセスとシステム全体をシンプル化し、企業が直面するビジネス環境の激しい変化に迅速に対応できる柔軟性を持ったしくみにより、「プロセスイのベーション」を実現すること。そして、あらゆるデータを一元化し「みえる化」と、さらにそこから得られた情報を活用しDXを実現する「データ駆動型経営/ビジネス」を実践していくことが大切、というのが私のメッセージ。これまで話をしてきた総論だ。「データ駆動型経営/ビジネス」については、もう少し話したいことがあるので、次の機会に詳しく説明しよう。

古田先輩
新見さん

はい、お願いします。しかし、先輩、テーマとしては、この二つが重要だとして、DXを推進するにあたり、具体的にどのようなシステムを構築していけばよいのでしょうか?

おっ、鋭いところを突いてくるね。これを説明するには私がDXをどう捉えているか説明しなくてはいけないが、長くなるので、こちらも別の機会にしよう。システム視点でいえば、「Core」「Engagement」「Intelligence」、三位一体の全体システムを構築していくことが必要と考えている。(図3)。

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図3 DX推進における、システム視点での取り組みテーマ

「Core」というのは、金流、商流、物流を司る企業が活動する上でベースとなる従来からIT化の中心として取り組んできている領域。「Engagement」というのは人、モノ、ローカルプロセスとつながるための領域。例えば、人であれば最終消費者とつながるデジタルマーケティングのシステム、モノであればIoT、ローカルプロセスは現場工場の生産システム、調達先のシステムとつながるシステムを想像してもらえばいいかな。そして「Intelligence」というのは、これらから集められたデータをAIなどで高度な分析を行い、経営・業務の高度化や、「Core」「Engagement」領域のシステムにフィードバックし、新たなビジネスを実現するといった領域だ。これらを個別に作るのではなく、個々が密にデータ連携しバリューチェーン全体でイノベーションを起こすことがDXで目指すべきところだと考えている。これら三位一体の全体システムをスクラッチで作り上げていくことは非常に大変。これら個々のシステムが連携するしくみを持ち、極力作り込みの必要ないデファクト・スタンダードなパッケージを活用して全体システムを構築していくことがポイントであり、「2025年の崖」に対する有効なアプローチだと考えている。

古田先輩
新見さん

なんだか消化不良を起こしそうですが・・・。

いずれにしてもDXを進めるうえで「データ活用」というのが重要ということかな。これから今後のために、この「データ活用」を様々な視点から話をしていこう。

古田先輩

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「データ活用のポイント」コラム

コラム制作者:
日本電気株式会社 エンタープライズ・トランスフォーメーション事業統括部
中西英介・土屋直之
本コラムの設定は架空のものであり実在の人物や団体などとは関係ありません。

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