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気候変動への対応

ガバナンス

気候変動対策推進体制

環境経営推進体制のもと、気候変動についても同様に対策を推進しています。

NECの気候変動に関する環境方針・目標は、各ビジネスユニットの環境推進責任者で構成される環境経営推進会議において審議・策定します。環境担当役員はその内容を確認し、上位組織にあたる事業戦略会議で報告し、会社としての承認を得ています。また、気候変動に関するリスクについても、環境経営推進会議において共有し、事業に与える影響が大きい場合には、環境担当役員が確認し、必要に応じてリスク管理プロセスに則ってリスク・コンプライアンス委員会へ報告します。特に事業に大きな影響を及ぼす気候リスクや機会については、必要に応じて取締役会へ報告します。取締役会では、報告を受けた場合、審議を通じて対策指示を行い、NECの気候変動対策が適切に推進されるよう監督します。

2022年度は、TCPへの参加が、事業戦略会議および取締役会で報告され、ネットゼロ目標を2050年から2040年に前倒しすることに伴う2030年目標の見直しについて経営トップから承認されました。新たな目標はNECエコ・アクションプラン2025の改訂によりグループ全体へ展開しています。また、気候変動対策のうち、自社のCO2排出量削減については「エコプロダクツ推進部会」「エコソリューション推進部会」「NECグループ省エネ検討ワーキンググループ」の3つのテーマ別専門部会を設けてグループ全体で対策を推進しています。

各部会から環境経営推進会議に対して報告・提案を行うことにより、グループ全体で省エネルギーに努めています。環境経営推進会議での決定事項は、各ビジネスユニットおよび各事業場の委員会などで指示・報告し、 全従業員へ周知・徹底しています。

気候変動に関するイニシアチブへの参画

NECは自社のサステナブルな経営基盤の構築と共創によるサステナブル社会の実現を推進するために、環境に関わるイニシアティブに参加しています。

業界団体との関わり

NECは日本経済団体連合会(以下、経団連)およびJEITAに加盟しています。
経団連ではNECの環境担当役員が環境安全委員会、エネルギー・資源委員会の委員として参加し、ITを活用した温暖化対策やエネルギー対策などの政策提言を行っています。JEITAでは、デジタル技術の利用・提供の双方が一堂に会し、行動変容や社会変革につながる新たなデジタルソリューションを創出するためのコンソーシアムを設立しています。NECは設立段階から運営委員として参加、ワーキンググループの主査も務め活動に貢献しています。

NECは、気候変動戦略において業界団体の立場と一貫性を持たせるため、気候変動に関する経済産業省、環境省、厚生労働省などの政府系主催のセミナーや、業界団体主催のセミナーなどに参加し情報収集するとともに、各種関連団体などに委員として参画し気候変動に関して討議し、それらの内容を社内に共有しています。さらに、その内容について、当社の立場・考えに沿っているか、またパリ協定に即した方針となっているかを確認しており、齟齬がある場合は、前述の環境マネジメントシステムの体制を基盤に、環境管理担当部門で協議したのち、環境経営推進会議を通じて調整を図ります。このプロセスを通じて、当社の気候変動戦略と業界団体の活動を一致させています。

重要会議体での環境関連報告

気候変動は重要なマテリアリティであることから、経営層が出席する会議体において気候変動を含めた環境の取り組みやリスクなどについて、審議・監督・報告を行っています。また、2021年度は、社外有識者と経営層との対話を拡充すべく、従来のステークホルダーダイアログに加えて、サステナビリティ・アドバイザリ・コミッティを新たに設置しました。

主な審議・監督・報告内容

会議体 年度 頻度 主な審議・監督・報告事項
取締役会 2020年度 4回 6月:サステナビリティ推進活動報告
12月:次期中期経営計画に含める環境視点
2月:サステナビリティ推進活動報告
3月:NECエコ・アクションプラン2025(含む投資費用計画)
2021年度 4回 5月:サステナビリティ推進活動報告
12月:BA1.5℃加盟、ESG説明会実施報告
1月:NECのカーボンニュートラルへの取り組みについて
2月:環境リスクについて(全社リスク対策検討の一部)
2022年度 4回 5月:「カーボンニュートラル」への取り組み
7月:サステナビリティ・リンク・ボンドの発行について
10月:「気候変動サミット」について
2月:NECの環境取り組みについて
~今後のカーボンニュートラル対策強化~
2023年度 2回 5月:ESG/サステナビリティ推進報告
12月:COP28への参加についての報告
社外有識者と経営層の対話 ステークホルダーダイアログ 2020年度 1回 “環境貢献事業の創出”に向けて、今NECが取り組むべきことは何か
2023年度 2回 9月:気候変動を含むサステナビリティにどう向き合うか
3月:ESG-Day
サステナビリティ・アドバイザリ・コミッティ 2021年度 1回 気候変動におけるグローバル潮流の理解とNECのリスクと機会
2022年度 2回 5月:NECのサステナビリティ推進の考え方と主な取り組み
2月:自然資本分野における事業リスクと機会について
2023年度 1回 2月:「気候変動対応とNEC事業戦略の融合を加速するために必要なこと ~サステナビリティ情報開示要請の高まりを受けて~」

戦略

気候変動対策方針

NECは「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」をESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」の1つとして位置づけ、自社の製品・サービスそのものの環境負荷を減らすと同時に、ICTを活用して、お客さまや社会の脱炭素トランジション(移行)を支えていきます。この考えをもとに、長期的な環境目標として「2050年を見据えた気候変動対策指針」を掲げました。現在は、The Climate Pledgeへの署名によりカーボンニュートラル目標を2040年に前倒ししたため、気候変動対策指針のカーボンニュートラル目標達成年度を2040年に前倒しして読み替え、活動を推進しています。

サプライチェーンからのCO2排出量ゼロに向けた削減については、2040年を達成年として、2024年4月にSBTNet-Zero認定を取得し活動を強化しています。世界が目指す低炭素社会の実現においては、カーボンニュートラルビジネス推進PMOを設置し、ICTインフラの省電力化、CO2排出量の見える化ソリューション、リソースアグリゲーション事業、環境コンサルティングなどにグループ横断で取り組んでいます。

事業を通じた貢献

カーボンニュートラルをはじめとするSXコンサルティングサービス

お客さまのカーボンニュートラルをはじめとするサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて、NEC自身の取り組みから得た知見も活かしながら、戦略ロードマップ策定、マネジメント、優先対策実施までを支援するSXコンサルティングサービスを提供します。また、その実行を下支えするソリューションをご用意し、さまざまなお客さま課題の解決をトータルサポートします。

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カーボンニュートラルをはじめとするSXコンサルティングサービス
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SX推進サービスのラインナップ

環境車導入に伴う業務変化を支援する「EVエネルギーマネジメント」(事業企画中)

脱炭素の手段のひとつとして電気自動車(EV)の導入が進んでいます。目標達成に向けた、EV導入効果の事前シミュレーションにより導入コスト、ランニングコスト、CO2削減効果などを事前に可視化し、事業者様のEV導入の意志決定を支援します。またEV導入後の課題である運用/管理については、走行レンジ予測やバッテリー管理といったソリューションで事業者様の日々の業務を支援します。さらに将来的には効率的な運用にとどまらず、EVを分散電源として活用することも検討中です。NECはEVエネルギーマネジメントを通じて、お客様のEV導入計画策定から効率的な運用/活用までをワンストップで提供します。

EVトラック普及拡大に向けた経路充電の実証実験

実証実験に使用したEV運用支援アプリ

「NEC」「ENEOS」「日本通運」の3社でEVトラックの普及拡大に向けた経路充電の実証実験を2023年秋に福岡県内にて行いました(※)。EVの中でも、輸送時の二酸化炭素排出量削減に大きく貢献できるとされるEVトラックは長距離走行に必要な経路充電可能な充電ステーションの場所が限られており普及においての課題となっています。本実証実験を踏まえ、NECは日本通運のEVトラックの実運行データを活用し開発したシミュレーションロジックを起点とするEV運用支援アプリケーションの価値向上を目指します。ENEOSは本実証を皮切りにEVトラックユーザーの充電ニーズに応じた経路充電ネットワークの拡充を図ります。日本通運はEVトラックの運行データを活用することで、EVトラックなどの環境配慮車両の導入を積極的に進め、お客様のサプライチェーン全体を通じて環境負荷の少ない物流を提案していきます。

疑似量子アニーリングによる配送計画自動化

NECグループでNEC製品(サーバやネットワーク機器など)の保守を担当するNECフィールディングでは、2022年10月より、保守部品の倉庫からお客様に配送する業務のなかで、配送計画を疑似量子アニーリングによって立案しています。
従来、保守部品の配送計画は、配送計画係が配送指示に基づいて人手で立案していました。
例えば東京都23区内の保守部品を保管する東京パーツセンターでは、毎日、のべ数百件の配送先をトラック約30台で配送するための計画を立案する必要があり、熟練の配送係が前日の定時間終了後に2時間かけて立案していました。
その計画立案に疑似量子アニーリングを活用したところ、同程度の効率の良い配送計画を約10分で立案することができました。このため、2023年4月からは、当日の緊急配送を含めてほぼリアルタイムに配送計画を立案できるようになり、トラックの台数を約20%程度削減することができています。
これにより、現状では熟練の配送計画係は不要となり、属人化から脱却しました。
さらに、日々の配車計画立案には、走行距離を優先する/しないを選択できるため、走行距離を優先する場合にはCO2削減にも大きく貢献します。

膨大な組み合わせから最適な配送計画を策定

デジタルツインにより防災・減災を始めとした適応策の便益を可視化し、民間投資の促進を促す「適応ファイナンス事業」よる新たな資金メカニズム創出への挑戦

昨今、地球温暖化により水害や森林火災をはじめとする自然災害が激甚化・頻発化し、自然環境と社会経済の両面で日本のみならず世界中に大きな影響を与えています。
自然災害においては森林火災などの災害から直接排出されるCO2に加え、津波や洪水などの被災後のインフラ・建築物の再建などからも大量のCO2が排出されており、世界 でのCO2年間排出量の10%以上がこれらの自然災害による影響とされています。
また農業においては干ばつやハリケーン等、極端な気象のゆらぎによる不作が引き起こす食料問題、気温の上昇に伴う感染症の活発化などによる公衆衛生上の問題など、様々な課題が顕在化しており、速やかな対処が求めらています。過去50年における自然災害のダメージは、経済面のみに限定しても7倍に増加している一方で、適応策への投資は緩和策の僅か1/18に留まっています。

適応策の効果は測りづらく投資の償却期間も中長期に渡る事が多いため、投資への意思決定がしづらく民間投資が入りにくい状況にあります。NECでは、こうした社会状況を気候変動対策への事業貢献機会と捉えています。保険会社やメガバンク、開発銀行等と共に、気候変動に社会を適応させていく新たな資金メカニズムの共創を進めています。例えば、適応策による便益をリモートセンシング、AI、デジタルツインを始めとしたIT技術により予測/可視化したり、リスクプレミアムを算出したり、気候変動のゆらぎに適切に対応した金融商品を組成し提供する等です。

COP28での、森田CEOによる適応ファイナンス「Call for Action」

2023年11月30日~12月12日にアラブ首長国連邦・ドバイで開催されたCOP28に参加し、環境省が主催する「ジャパン・パビリオン」に「適応コンソーシアム準備室(NECなど)」として展示企業の一社として採択され出展しました。
また、COP28の主催団体であるUNFCCC傘下のGlobal Innovation hubパビリオンで森田CEOがキーノートセッションを行い、COP29に向けた適応ファイナンスのユースケース創りを世界へ呼びかけました。

適応ファイナンス・コンソーシアムを設立。with/withoutの基準創りを共創

高まる気候変動リスクに対する課題を共有するNECと三井住友海上は、強靭で持続可能な社会の実現に向けて、2024年3月15日に適応ファイナンス・コンソーシアムを設立しました。本コンソーシアムでは、リモートセンシングによる情報取集、AIによる解析、デジタルツインによる可視化など、デジタル技術を応用し「自然災害によるダメージ/適応策の便益」を定量化します。そして気候変動リスクを踏まえた適切なリスクプレミアを設定した金融商品の組成/普及により、事業や地域・社会における不確実性を抑制しつつ、長期的かつ安定的なリターン獲得の確度を高める資金メカニズムの社会実装を目指します。その導入事例となるユースケース創り、適応策のwith/withoutを測る基準の創出に向け、金融機関・事業会社・アカデミア・監督官庁と共働しながらグローバルに活動していきます

シナリオ分析

自社のサステナブルな経営基盤の構築と共創によるサステナブル社会の実現を推進するために、環境に影響を与えるリスク・機会の分析を実施し、リスクの低減や機会の拡大に向けた対策を進めています。

シナリオ分析から見えたリスクと機会

リスク シナリオ(1.5℃or4.0℃)*5 内容 時間軸*6 財務影響/年 対策
移行*7 1.5℃ カーボンプライシングによるコスト増 中期 44億円 CO2排出量実質ゼロ(2040年)達成に向けた効率化の徹底と再生可能エネルギーの活用拡大
1.5℃ レピュテーションリスクによる売上減 短期 35億円 SBT認定および再生可能エネルギーの活用拡大とグリーン電力の購入
物理*8 4.0℃ データセンターの気象災害の影響(洪水、土砂崩れ、水不足など)による事業停止に伴う売上減 短期 33億円 非常用電源設備などの発電設備の強化(例:5日間稼働分の燃料の備蓄などを含む)
機会 シナリオ(1.5℃or4.0℃)*5 内容 時間軸*6 財務影響/年 機会創出と拡大
適応 4.0℃ 農業生産適地の変化への備えが進むことによる売上増 中期 CropScopeの提供
適応/緩和 4.0℃ 災害に強い、GHG効率の高いデータセンターへのニーズ拡大による売上増 中期 57億円 データセンターのエネルギー効率の改善(データセンターのグリーン化)
緩和 1.5℃ 再生可能エネルギーの活用拡大に伴うエネルギーソリューションの売上増 短期 120億円 仮想発電所(VPP)、電力需給管理、RA事業化(需給調整市場への参画)、xEMS(エネルギーマネジメントシステム)、再生可能エネルギーを活用したデータセンターサービス提供など
  • *5
    +1.5℃:脱炭素社会が実現し、2100年に気温が1.5℃上昇するシナリオ
    +4.0℃:脱炭素社会が実現せず、2100年に気温が4℃上昇するシナリオ
  • *6
    短期=0~3年、中期=4~10年、長期=11~20年
  • *7
    脱炭素社会への移行に伴って、政策・法務・技術革新・市場嗜好の変化などにより発生するリスク
  • *8
    異常気象から引き起こされる事象による急性リスク(洪水や土砂災害など)と長期間での気候パターンの変化による慢性リスク(海面上昇や熱波、耕作適地の変化など)

NECが描く2030年/2050年の世界 ~私たちの暮らし・自治体の未来~

NECは、気候変動を考慮したシナリオ分析なくして企業の存続や成長はないと考えます。最新のグローバルリスクでも気候変動に関連したリスクが多く挙げられ、企業の事業活動や収益のみならず、私たちの暮らしに非常に大きな影響を及ぼします。そのため、どのような未来になっても、NECが存続・成長し、安全・安心な社会を実現するために、複数のシナリオを用いて進むべき方向性を検討しています。2019年には、全社のシナリオ分析を実施し、2つの異なるシナリオにおいて、自社のリスクと機会がどのように変化するのか分析しました。

2022年の焦点は「気候変動x行政DX」

昨年度からは、NECのさまざまな事業分野ごとにとらえるべき気候変動のリスクと機会が異なることから、事業分野ごとにシナリオ分析を行っています。今年度は、中期経営計画の事業戦略の1つである「デジタルガバメント」の領域から国内行政DXと2030年の脱炭素社会への移行度合い(1.5℃と4℃)をシナリオを用いて分析し、そこでのNECの事業機会について検討しました。具体的には、「気候変動 × 行政DX」の2030年の姿を描き、自社のリスク・機会をふまえ、事業構想案を検討しました。さらに、ステークホルダーの声を反映することを目的に、外部ヒアリングを充実させました。

シナリオ分析の結果(2030年) NECが描く2030年/2050年の世界
~気候変動と行政DX~

地域・自治体(中核都市と小規模都市)の未来の姿を気候変動の影響をふまえて描くことを目的に、2030年・2050年のシナリオを作成しました。脱炭素社会への移行度合いである1.5℃と4℃を縦軸に、生活者と行政の関係や行政システムの在り方を強制と自発に分けて横軸に設定し、4つのシナリオを検討しました。なお、気候変動や脱炭素に関する事項は、以下の参照シナリオを2050年の前提条件とし、各シナリオではその一部を利用しています。

参照した公開シナリオ

1.5ºCシナリオ 4ºCシナリオ
  • IPCC AR6 WG1 SSP1-1.9
  • IPCC 1.5ºC特別報告書
  • IPCC AR5 RCP2.6
  • IEA World Energy Outlook2021
    Net Zero Emissions by 2050
    Scenario (NZE)
  • 国立環境研究所 日本版
    SSP+SSP1:持続可能、
    SSP5:化石燃料に依存した発展
  • IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5
  • IPCC AR5 RCP8.5
  • IEA World Energy Outlook2021
    Stated Policies Scenario(STEPS)
  • 国立環境研究所 日本版
    SSP+SSP3:地域分断、
    SSP4:格差
第2象限:1.5℃×強制「環境効率至上シナリオ」zoom拡大する
第2象限:1.5℃×強制「環境効率至上シナリオ」
第1象限:1.5℃×自発「地域価値多様性シナリオ」zoom拡大する
第1象限:1.5℃×自発「地域価値多様性シナリオ」
第3象限:4℃×強制「災害対応奔走シナリオ」zoom拡大する
第3象限:4℃×強制「災害対応奔走シナリオ」
第4象限:4℃×自発「適応格差拡大シナリオ」zoom拡大する
第4象限:4℃×自発「適応格差拡大シナリオ」

「私たちの暮らし・自治体の未来」の4シナリオ

  • 縦軸:脱炭素社会の実現「1.5ºC」(2100年1.5ºC上昇)と失敗「4ºC」(2100年4ºC上昇)
    横軸: 生活者と行政の関係や行政システムの在り方として「強制」と「自発」

シナリオ分析によるNECの事業リスク・機会を反映した2030年の事業例

  2030年シナリオの概要 キーワード 機会 リスク 2030年の事業例
1.5℃
  • 国や自治体の政策および市民の関心は、wellbeingや環境に重点がおかれている。
  • 脱炭素政策は国・自治体において優先度が高く、2020年代の法規制や企業、自治体の努力も相まって脱炭素社会に移行しつつある。
  • 脱炭素先行地域では、再生可能エネルギー導入やエネルギーマネジメントが推進され民生部門のCO2排出量がゼロである。
  • マイナンバーカードは普及率100%となり、これを活用したインセンティブ制度や助成を行う行政サービスも増え、市民の行動変容を促している。
  • 再生可能エネルギーベースの分散型電源
  • EV化・インフラ構築
  • 環境活動に対するインセンティブ
  • 自然資本の見える化
  • well-being意識の向上
  • デジタルツインを活用した防災計画
  • マイナンバーカードを活用した災害後支援
  • 自治体業務の一部を請負、事業化
  • 再生可能エネルギーデータセンターの増加
  • 健康インセンティブが重要視され、ヘルスケア事業の拡大
  • 制度のシステム化(排出量算定、炭素税、排出権取引、カーボンフットプリント)
  • センシング、可視化、数値化市場の拡大(生態系、環境保全、損害&被害)
  • コンパクトシティ内における画像解析技術利用の増加
  • 行政DXとシステムの標準化・共通化が進むことによるこれまで築いてきたビジネスモデルの転換
  • 競合や新規参入者との競争激化
1.5℃・エネルギーマネジメント:住民の取り組み・行政施策効果の見える化による自治体の脱炭素支援サービス

4℃・防災:災害前(災害自分化シミュレーション)、災害中(止まらない通信、被災証明発行支援)、災害後:ボランティア支援促進システム

両方・ヘルスケア:来訪者向けのヘルスケアと環境価値に基づいた地域ブランディングを向上させるためのデータ利活用システム
4℃
  • 国内の多くの地域は人口急減と財政難に直面する。
  • 国や自治体は、すべての人々へのインフラやサービスを提供することが困難となる。
  • 広域連携、官民連携が進む。限られたリソース(行政職員・財源)から気候変動緩和に関する施策は優先度が下がる。
  • 災害の多発・大規模化を見据え危機管理能力の向上と行政機能の継続性が求められ、適応分野は重点的に取り組まれる。
  • 格差の拡大、コミュニティの階層化と分断が進み、あらゆる政策分野(経済・福祉・教育・都市計画・財政など)に影響を与え、社会課題となっている。
  • デジタルツインを活用した防災計画
  • マイナンバーカードを活用した災害後支援
  • 化石燃料ベースの集中型エネルギーシステム
  • エネルギー・食糧など物価の上昇
  • 自家用車中心
  • 自然資本の減少
  • 防災・減災対応・災害時・災害後ソリューションニーズの増加
  • パーソナルデータ・行政データを活用した行政ソリューションの創出
  • 気候変動に適した農産物への対応ニーズの増加
  • 再生可能エネルギー導入・地産地消エネルギー推進ソリューションの増加
  • 個別化医療・オンライン診療への市場算入
  • 産業間のサプライチェーンBCPの取りまとめ
  • セキュリティビジネスニーズの増加
  • 顧客の減少、システム統合による市場・パーク減少
  • 自由競争の激化
  • 個人情報・生体情報利用に対する抵抗感

リスク管理(含む機会創出)

NECでは、気候変動が与える影響について、リスクと機会の視点から短期・中期・長期に分けて分類し、認識しています。検討プロセスとしては、まず既存事業を気候変動の視点で整理後、シナリオを用いて気候変動により将来生じる影響を評価しています。同時にリスクへの対策と機会に対するアセットを確認しています。特に大きなリスクと機会においては、中期経営計画にも反映しています。

リスク 内容 リスク管理と対策
移行リスク カーボンプライシングによるリスク
  • CO2排出実質ゼロ(2040年)に向けた2030年度新目標達成時のNECのScope 1、2(約16.4万t)すべてにカーボンプライス(130米ドル/tCO2)がかかると想定すると、28億円のコスト増(1米ドル=130円で想定)
  • サプライチェーンの上流、下流のコスト増もインパクトを与えると想定
CO2排出実質ゼロ(2040年)達成に向けた効率化の徹底と再生可能エネルギーの活用拡大(サプライヤーエンゲージメントや製品の省エネルギー性能向上への継続的な取り組みを含む)
物理リスク 気象災害(洪水、土砂崩れ、水不足など)に伴うサプライチェーンの寸断、電気・ガス・水道などライフラインの長期間にわたる停止を想定 サプライチェーン全体のリスク評価と河川氾濫など気象災害を含むBCP対策(防水扉の設置や電源設備の移動など)、データセンターでの発電設備強化
機会 内容 機会創出と拡大
移行リスク対策への価値提供(緩和) CO2排出の少ない交通インフラ整備 AIおよびIoTを活用した物流可視化・ルート最適化。EV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド自動車)充電クラウドなど
再生可能エネルギーの活用拡大支援 仮想発電所(VPP)、電力需給管理、リソースアグリゲーション事業(需給調整市場)、xEMS( エネルギーマネジメントシステム)、再生可能エネルギーを活用したデータセンターサービス提供など
エネルギーの無駄の削減支援 DXによるプロセス改革(業務自動化、スマートファクトリー、需給最適化)、データセンターの省エネルギー化を支える製品・技術(新冷媒)など
物理リスク対策への価値提供(適応) 気象災害の増加への備え
  • AIおよびIoT、画像解析などを活用した災害発生前の予兆検知、河川氾濫シミュレーション、避難支援など
  • 防災・減災による将来のCO2抑制量を可視化し、金融商品化することで防災・減災対策への投資を促進する仕組みを検討
森林火災の増加への備え 森林火災監視・即応システム、衛星による災害監視など
農業生産適地の変化への備え 影響予測シミュレーション、農業ICTソリューションなど
感染症の拡大への備え 感染症対策ソリューション、地球規模感染症発生時の物流情報管理プラットフォーム、リモートワーク、遠隔診療支援、教育クラウドなど

指標および目標

2023年度の温室効果ガス排出量の実績は以下のとおりです。なお、全ての実績において第三者保証を獲得しています。

  2023年度排出実績 2020年度比
Scope1,2 226千t 31.0%削減
Scope3 5,738千t 6.8%削減
温室効果ガス排出量実績(Scope1、2、3) ※Scope2はマーケットベースの数字

対象範囲:NECグループ

物理リスクに脆弱な資産と事業活動

NECは神戸、神奈川含め全国9ヵ所でデータセンターを運営しています。 データセンターは政府機関や企業にクラウドサービスやハウジングサービスを提供しており、数多くの情報システムを運用する重要な施設です。データセンターの運用継続性は、中断することなくお客さまにサービスを提供するために非常に重要です。 
近年、日本における自然災害は頻発しています。2019年、記録的な大雨をもたらした台風が日本の広い範囲に上陸しました。 この雨により、停電や水道本管の破損などライフラインに大きな被害が発生。河川が氾濫し、被害は広範囲にわたりました。気候変動による異常気象で災害が増加する可能性があり、データセンターの継続稼働にリスクが生じる可能性があります。
そうした点をふまえ、NECのデータセンターは、水による施設への被害を避けるため、洪水や津波の影響を受けにくい地域に建設しています。
データセンターは非常用電源を設置し、停電時でも情報システムの稼働を継続できるよう、72時間以上の発電機燃料を確保しています。

緊急時に優先的に燃料供給を受けられるよう、燃料供給会社と優先燃料供給契約を締結しています。 
また、将来の気候変動に積極的に対応できるよう、全データセンターの自然災害耐性の再評価と負荷試験(実際の停電を想定した非常用発電機の起動試験)を毎年実施することを決め、活動しています。

国内データセンターの実績と次年度目標

  年度
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
目標
項目 平均PUE
(電力使用効率)
1.43 1.38 1.45 1.44 1.50
エネルギー総使用量
(MWh)
121,444 129,556 147,910 145,727 148,051
再生可能エネルギー利用率(%) 8.7 9.3 18.3 41.9 48.3
  • 数値は当社のデータセンターのみ
  • NECクラウドIaaSは、再生可能エネルギー100%で運用しています。
  • 2024年度は神奈川、神戸にてデータセンターの新棟を建設した影響で、一時的にPUEが悪化する見込みです。

インターナルカーボンプライシングの導入

NECでは、エネルギー効率化と低炭素設備導入推進の視点から、インターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)を設定して設備投資によるCO2排出削減量を金額換算し、投資判断の情報として活用しています。
また、本仕組みは、将来の炭素税増額や排出権取引拡大の可能性を見据えた脱炭素社会によるリスクの低減と将来の脱炭素活動の推進にもつながっていると考えています。

気候変動に関連する役員報酬への反映

取締役会では、2022年度に「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」への取り組みが反映される重要な評価指標(KPIs)/サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、発行年限を5年、7年、10年としたサステナビリティ・リンク・ボンドを発行しました。いずれのSPTも未達成の場合、本社債の償還までに、社債発行額の0.1%相当額の排出権(CO2削減価値をクレジット・証書化したもの)を購入することになり、収益に影響します。またNECの評判に大きく影響するため、取締役を含む執行役員の評価に直結することになります。その影響の割合は5%未満です。
CSCO(チーフサプライチェーンオフィサー)は、サプライチェーン全体に責任を負います。NECでは、2050年までの長期的な視点に立った気候変動対策ガイドラインを策定し、2030年までの中期目標、さらに毎年見直しを行う短期・中期目標を統合した目標を設定しています。NECグループ全体の中長期目標はCSCOが責任を負い、目標達成状況は年次業績評価で賞与査定の要素として組み込まれ、NECグループ全体の排出目標達成に向けた顕著な進捗が反映されます。 その影響の割合は5%未満です。

CPO(チーフプロキュアメントオフィサー)の責任はCSCOにもあります。CPOはエンゲージメント措置を管理および監督し、サプライヤーと協力して気候変動の緩和を含む調達プロセス全体の持続可能性を確保する責任を負います。施策の全体的な進捗状況を業績評価の1つの基準として賞与を配分します。
その影響の割合は5%未満です。

炭素クレジット

現時点では、NECはCO2排出量の削減目的として炭素クレジットを活用していません。今後の炭素クレジットの活用については、2040年カーボンニュートラルの実現を見据え、残余排出量の中和の目的で使用する予定ですが、具体的な検討はこれから行う予定です。