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水リスク管理と水資源の有効活用
考え方
水はすべての人間にとって必須の資源です。しかし、人口増加による需要増や気候変動による世界各地で水不足によるリスク拡大が懸念されています。
そのため、NEC環境方針のもと、環境関連法規制を遵守し、水利用量の削減や環境負荷の低減に努めるとともに、水不足、水質汚濁、洪水などの水リスク管理を進めています。
水管理に関する体制では、環境経営推進会議で、水使用量や削減目標に対する進捗状況を管理し、必要に応じて環境担当役員へ結果を報告します。これらの活動結果は、必要に応じて事業戦略会議で報告し、社外へ公表しています。
洪水などにより事業へ重大な影響を及ぼす可能性がある施設については、サプライチェーン統括部門が影響予測と対策を検討し、事業戦略会議や取締役会で随時報告・審議し、対策の実行と監督をします。
水リスクへの対応
リスク調査と対策
NECでは、水不足、水質汚濁、気候変動に関連した洪水などの水リスクが当社グループの各生産拠点やサプライチェーンにどのような影響を及ぼすかを評価・確認しています。
具体的には、世界資源研究所(WRI)が提供している水リスク評価ツール「Aqueduct」や自社独自の水リスク管理アンケートをもとに、国内外の各生産拠点でどのような水リスクがあるのか特定します。
特定にあたっては、まず1次調査として「Aqueduct」を使い、水量・水質・風水害に関する物理的リスク、水に関する税制改正や政策などの規制リスク、企業のESG行動に関する評判リスクの3つに分けて、状況を把握しました。この一次スクリーニングで対象拠点のうち2拠点で水関連のリスクが高いと評価されました。
2次調査では、1次調査の結果を現地の生産拠点担当者の認識と比べたうえで、過去に洪水や水不足などの水害により物理的に水の使用が困難になった経験や、これら物理的リスクの予防措置、実際に洪水や水不足が起こった際の対策など11項目について細かく調査を行いました。
2020年度に生産拠点を中心に国内外26拠点へ調査した結果、主な水リスクは、風水害での河川氾濫による浸水リスクとそれによる断水であることが判明しました。リスクがあると答えた拠点では、浸水対策として、防水扉の設置や電源設備の移動など、洪水に備えたハード面の補強対応を行っています。また、断水対策としては、受水槽の設置や井戸水飲料化設備の構築、飲料水の備蓄などの対策を取っています。
そのほか、事業場・生産工場・研究所では、放流口で水量モニタリングや水質サンプル検査を実施し、変化をいち早く認識できるようにしています。また、国や地方自治体の規制基準よりも厳しい自社基準を設定し、水リスクへの対策を行っています。
調達取引先を含んだサプライチェーンの水リスクとしては、調達取引先の水の使用量や排水量の集計・把握の有無や風水害に対する事業存続の対策状況などに関する環境リスク調査を行い、状況の把握を行うとともに問題がある場合は是正・改善に向けて活動しています。
なお、2022年度の水に関する環境法違反・事故はありませんでした。
水ストレス地域における対策
NEC製品の生産拠点であるNECプラットフォームズ タイ社は、「Aqueduct」による調査結果では、利用可能な水量における水ストレス*地域に当てはまります。そのため、同社では、3日間の使用量分を確保できる貯水タンクを設置しており、緊急事態の場合には、地元州政府や工業地帯団体と一体で連携した対応を取れる仕組みを構築しています。また、工業地帯団体や隣接する企業団体とは洪水対策の状況共有など平時から定期的にコミュニケーションを取っており、協力体制維持を意識し緊急時に備えています。
- *水ストレス:地域水需給が逼迫している状態。指標として「人口一人当たりの最大利用可能水資源量」が用いられ、生活、農業、工業、エネルギーおよび環境に要する最低基準の水資源量を年間一人当たり1,700m³として、これを下回る場合は水ストレス下にあるとみなされる。「Aqueduct」では、地域の取水量が地域の年間水資源量の平均値の80%以上を非常に高リスクと規定。
インターナルウォータープライシング
NECでは、設備投資可否判断にインターナルカーボンプライシングの考え方を用いてCO2排出量削減効果金額を算出していますが、水に関しても同様の対応を行っています。ウォータープライシングの設定にあたっては、将来的な水コストの上昇を考慮し、将来の水費用単価を現在の単価の2.5倍と設定しました。5m³/日以上の水使用量変化が新たに想定される場合、それに基づいてコスト影響の試算を行い判断します。
リスクと機会
リスク/機会 | 内容 | リスク低減対策/機会の具体例 |
---|---|---|
リスク | 渇水や災害による断水により、事業存続や生産の遅延・停滞が生じる | 各拠点で断水に備えたBCP対策を実施済み |
機会 (経済価値) |
台風など風水害での被害を低減させる防災ビジネスの市場ニーズが高まる | 河川水位予測など、水害対策支援システムの導入拡大 |
水質汚濁防止と排水
NECでは、国や自治体が定めているその地域の水関連法令の基準を超えた排水が発生しないように、より厳しい自社基準を設けて管理しています。
また、排水処理に関する化学物質とのトレードオフの影響を小さくするために、化学物質の使用量の削減に取り組んでいます。具体的には、水質の状態を常にモニタリングすることで、必要以上の化学物質の投入を防いでいます。
目標と実績
項目 | 目標 | 実績 |
---|---|---|
水 使用量 | 2.0%削減(2018年度比) | 達成 25%削減(2018年度比) |
BOD・CODの 排出量(絶対値)*1 |
1%以上削減(2017年度比) | 未達 |
- 活動:冷却水の循環利用の拡大や生産設備の運用効率化、節水対策の再徹底
- *1公共用水域に排出される排水のBOD、COD排出量を対象とする
(但し、テナントオフィスから排出される排水、雨水の排水は対象外とする)
水使用量削減の取り組み
NECでは、経営計画を環境面から推進する「エコ・アクションプラン」により水使用量の削減目標を設定し、国内外のすべてのグループ会社(連結子会社 289社(2022年3月末現在))に展開しています。
蒸気ドレン回収設備の導入による水使用量の削減
NEC本社ビルでは、空調用(暖房・加湿)に蒸気を利用しており、蒸気ドレン回収設備(ホットウェルタンク)を導入することで、蒸気供給工程で発生するドレンをボイラ給水として再利用しています。これにより、2020年度の水使用量を年間1,670m3削減することができました。
また、NEC相模原事業場でも同様にボイラによる蒸気ドレン回収を行っており、このシステムを使い同敷地内に入る他社とともに水使用量の削減に努めています。

排水再利用システムの導入による水使用量の削減
NECグループの各事業場や施設では、設置可能な拠点において、トイレや給湯室等に排水再利用システムを導入し、施設内での排水の一部を中水として再利用することで、水使用量の削減に努めています。NEC本社ビルでは、トイレの手洗い・給湯室の排水・冷却塔ブロー水・雨水を汚泥法や活性炭ろ過法で処理し、トイレの洗浄水(大便器・小便器の排水)に中水として再利用しています。また、NEC相模原事業場では、冷却塔ブロー水の一部を処理し、トイレ洗浄水に中水として再利用しています。これにより、2020年度の水使用量を年間5,650m3削減することができました。


モジュールチラー導入伴う水使用量の削減
NECプラットフォームズ 福島事業所では、施設内の熱源設備の冷却として新たにモジュールチラーを導入したことで他冷凍機の稼働に伴う冷却水の使用量削減に繋がっています。これにより、2019年度の水使用量を年間9,334m3削減することができました。

