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車いすテニスクアード(重度障がい者)について
クアードクラスの選手の障がいについてはかなり個人差があります。クアードクラスの選手に多い頚髄(けいずい)損傷者について説明します。ヒトの脊椎は26(32~34)個の椎骨が連結した細長い円柱状をしており、その部位により頸椎、胸椎、腰椎、仙骨(仙椎)、尾骨(尾椎)に分けられます。頸椎は脊椎の最上部にあって7つの椎骨で構成され、頭蓋骨を支える役割を果たしています。脊椎の内部には脊柱管という空洞があり、その中を脳から続く中枢神経・脊髄が貫いています。脊髄自体も脊椎に対応して、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄に分類されます。頸髄は脊髄の一部、首の部分にあたります。外傷や頸部の病変によって、脊髄にダメージを受ける事を脊髄損傷、そのうち首の部分で受傷する事を頸髄損傷と言います。脊髄からはたくさんの神経がのび、頸髄からも頸神経とよばれる大切な神経が8対のびています。この神経を通常は上からC1~C8とよび、それぞれが身体の運動や知覚を少しずつ分担しています。
原因のほとんどは交通事故、スポーツ事故などの外傷による脊椎の骨折であり、頸椎は、脊椎の中で最も骨折を起こしやすい部位にあたります。脊髄を損傷すると、そこから下の神経領域の運動機能や知覚が麻痺してしまいます。麻痺の程度は、損傷部位と神経組織の受けたダメージの大きさによって変わるため一様ではありません。脊髄のいずれの部位を損傷しても身体に麻痺を来たしますが、特に頸髄を損傷すると上肢にまで麻痺が及び、つまり首から下のほぼ全身が麻痺してしまいます。そのため、車いすの操作はおろか、飲んだり食べたりという生きていく上で最も基本的な動作すらできない人も多く、損傷の部位が脳に近い場合には、呼吸筋も麻痺し、人工呼吸器が必要になる事もあります。
また、脊髄が完全に途切れて全く動かない「完全マヒ」と、部分的に途切れて所々動かない「不全マヒ」があり、「頸髄損傷」といっても、個人差が大きく、さまざまな症状があります。全く同じ状態の人は2人としていないといってもよいでしょう。完全マヒの状態でC5レベルより上位を損傷した場合、車いすテニスをプレーする事はかなり苦労すると思います。
頸髄損傷の人の多くは、汗がかけないため、体温の調整ができません。夏など暑くなると体に熱がこもり、体温が38~39度になってしまうことがあります。これを発熱ではなく、「熱発」と呼んでいます。逆に寒くなると今度は体温が下がりすぎてしまうこともあります。これは、頸髄損傷により、自律神経が正常に機能しなくなるために起こるものです。夏場の試合での熱中症については十分注意が必要です。
指導方法について
「車いすテニスを始めたばかりのクアードの選手に対して、どのように指導していけば良いのだろうか。」というような質問をよく聞きます。指導する方々が、どのような事について注意しながら指導すればよいのかを考えてみました。
車いすに関する工夫
握力が不足している選手は、握力の不足を補う為にハンドリムにゴム素材のコーティングを施しハンドリムを手の平で押さえつけて車いすをこぎます。コーティングの代わりに市販のホースを加工して利用している選手もいます。また、手動式の車椅子を上手く操作できない場合などには電動車いすの使用する事もあります。
グリップに関する工夫
握力が少ない為にテーピングでラケットを完全に固定する場合や、グローブなどの利用する場合があります。
障がいの状態に個人差があるので各自の工夫が必要です。
各選手いろいろと工夫しているようです。
練習方法に関する工夫
- プレー中にグリップチェンジが可能か、グリップを固定する必要があるか、などを選手と話し合い障がいのレベルに合ったグリップを工夫する。
- フォアハンド、バックハンドでボールを飛ばす為に自分に合ったグリップ、フォームを見つける為に同じリズムで簡単なボールの球出しを繰り返し行う。
- 初めはダブルスの練習で実践的なボールに慣れるようにする。
頸髄損傷の場合、受傷後はかなり体力が低下している方が多いと思います。各選手の体力に合わせ気長に練習を続ける事が必要です。
當間 寛 氏 記(車いすテニスクアード日本代表)
クアードクラスの参加資格
車いすテニスプレーヤーとしてITF公認大会、およびパラリンピックで競技するには、恒久的な運動機能障がいを引き起こす身体障がいがあることが医学的に診断されなければなりません。恒久的な運動機能障がいは、下肢のいずれか、あるいは両方にあり、それは、部分的な機能障がい、あるいは全疾の機能障がいでなくてはなりません。プレーヤーは以下の最低障がい基準のいずれかを満たしていなければなりません。
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S1(仙髄1番)レベル以上に運動機能障がいをひきおこす神経障がいが見られる。
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関節硬直、重度の関節炎、または臀筋、ひざ、あるいは足首上部が人工関節である。
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指とくるぶしの間の関節切断も含め、下肢の一部が切断されている。
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下肢1本または片側以上に機能障がいがあり、1、2、あるいは3に該当。
クアードプレーヤーはまず、上記1~4項に記されている下肢の恒久的身体障がいを含み、さらに下記の少なくともひとつを満たさなければなりません。
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C8(頚椎8番)レベル以上で運動機能障がいをともなう神経障がいがある。
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上肢切断。
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上肢に“アザラシ症”がある。
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上肢に筋症、あるいは筋ジストロフィーがみられる。
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上肢の1本または片側以上に機能障がいがあり、1、2、3、あるいは4に該当。