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デジタルの力で国際機関と共に目指すSDGs
~Post COVID-19の新時代に必要な革新とは~
「創ろう明日を、描こう未来を」をテーマに、2020年11月12日(木)~12月4日(金)にかけて10日間にわたり開催された「NEC Visionary Week」。「ひと」「まち」「産業」「テクノロジー」をテーマに、80本以上のオンラインセッションを実施しました。
その中で「デジタルの力で国際機関と共に目指すSDGs~Post COVID-19の新時代に必要な革新とは~」と題されたセッションには、NECとパートナーシップを結ぶ国際機関や、政府から代表者が登壇。NEC取締役会長の遠藤信博とともに、人が生きる根幹に関わる「食」と「健康」をテーマに、テクノロジーの可能性と、SDGsの達成に向けた民間企業・国際機関・政府の連携の重要さについて、議論を交わしました。
テクノロジーで世界はどのように変わるのか?
変えられるのか?
本セッションは、「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の日本常駐代表である柏倉美保子氏がモデレーターを務めました。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、「All Lives Have Equal Value(全ての命の価値は等しい)」という信念のもと、低中所得国の貧困課題や保健医療課題の解決を目指し、公的機関や民間企業をはじめとした多様なステークホルダーと連携し活動している、国際的にも有数の組織です。現在は世界135か国以上で栄養対策やワクチン提供はじめ多様な保健医療課題に必要な研究開発や事業を支援しています。
パネルディスカッションでは、より公平で豊かな未来を創るために、「ICTなどのテクノロジーをどのように活用すべきか?」というテーマで、意見が交されました。
低中所得国で子どものワクチン接種普及に取り組む国際組織「Gavi ワクチンアライアンス」(以下Gavi)で副CEOを務めるアヌラダ・グプタ氏は、「予防接種を必要とするすべての子供を特定し、誰に到達し、誰が取り残されているのかを把握することはとても大切な事であり、テクノロジーを活用することでスケール(規模感)のある活動としてできるようになる」と説明しました。
GaviとNECとともに、ワクチン普及に向けた幼児向け指紋認証技術の実用化に取り組むイギリスのスタートアップ企業Simprints Technology(Simprints)の共同創設者兼CEO、トビー・ノーマン氏は、「開発途上国などで物理的・地理的に医療にアクセスしづらい状況では、テクノロジーを目的に合わせて活用することが重要。開発途上国などで物理的・地理的に医療にアクセスしづらい状況では、オフラインで作業できるようにしたり、医療従事者の負担が少ないシンプルな機能にしたりするなどの設計思想と実行によって、効果的に“ラストマイル”をつなげることができる」との考えを述べました。
国連世界食糧計画(国連WFP)は世界的な飢餓の撲滅に取り組んでいる組織です。最高情報責任者兼IT部長・緊急通信クラスター長を務めるエンリカ・ポルカリ氏は、「テクノロジーは人々と近づき、お互いの理解を深めることに役立つものであり、命を救い、人々の生活に変化をもたらす架け橋となる」と説明しました。そして、「パンデミックにより重度の飢餓に直面する人が増加する中、さらに遠いところまで、効率的かつ安全に食料を提供することに貢献する」と述べます。
開発途上国や市場経済移行国における包摂的で持続可能な産業開発をミッションとする国際連合工業開発機関(UNIDO)事務次長の国吉浩氏は、「テクノロジーの基盤がないと、開発途上国はさらに遅れを取ってしまうリスクもある。UNIDOは全ての人々が、より高いレベルで工業化を実現できるように取り組んでいる」と説明し、「テクノロジーはSDGsの達成に向けても鍵になる」との見解を述べました。
外務省の国際協力局兼経済局審議官である岡田恵子氏も、「国際協力においては、人間の安全保障の考えに基づいた”no one left behind(誰も取り残さない)”という原則が重要であり、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから回復するためにも、テクノロジーが大きな役割を果たす」と述べ、「ICTは中長期的に経済・社会を構築するために効果を発揮すると思う。中でも、ICT活用には民間の果たす役割が大きい」と民間企業への期待を話しました。
NECの遠藤は、「NECはICTを活用して社会価値創造に取り組んでいる。そして、効率的なワクチンの配布、食糧流通、パンデミックへの対応など、多様な課題に対処可能な技術を保有している」と話し、生体認証やAIなど「ICTは生活を支えるプラットフォーム(社会インフラ)を創るうえで、パワフルなツールになる」と述べました。
政府・国際組織・民間企業の役割と
パートナーシップの在り方
Gaviのグプタ氏は、「早く行きたければ一人で行け。遠くまで行きたければみんなで行け(If you want to go fast, go alone. But if you want to go far, go together.)」というアフリカのことわざを例に出し、Gaviのような国際機関と、政府による仕組み作りや融資、民間企業の独自技術、効率性、イノベーションを組み合わせて、「1者ではできないことを実現していくことが重要」と述べました。
国連WFPのポルカリ氏は、「パートナーシップは新たなリーダーシップの形である」と話し、SDGsの2番目に掲げられている2030年までに「飢餓をゼロに」という目標も、「パートナーがいなければ実現できない」と述べました。そのうえで、「パートナーシップには、信頼の構築、長期的なコミットメント、共同でのソリューションの創造・開発が必要」だと指摘しました。
民間企業や業界との連携で活動を展開してきたUNIDOの国吉氏は、SDGsの17番目に「パートナーシップで目標を達成しよう」が掲げられていることを指摘し、「民間企業は仕事や収入、生活必需品の提供者であり、イノベーションのけん引役でもある」として、民間企業が果たす役割の重要性を強調しました。
NECの遠藤も、「持続可能な社会の構築には、政府や国際機関、民間企業の協力と対話により、開発途上国と世界の真の課題を理解すること。そして民間企業は、継続性を持った企業活動を続けていくことが重要」だと述べました。
人道支援活動において限られたリソースしかない場合、どのように優先順位をつけていくべきか?という問いに、Simprintsのノーマン氏は、「持続可能性をもった取り組みを念頭に、適切な組織とパートナーシップを組むこと。強固なパートナーシップを築くためには、きちんと時間をかけることが重要。(Gaviの事務局がある)ジュネーブを訪れ、日本を訪れたからこそ、GaviとNECと強力なパートナーシップを築くことができた」とコメントしました。
外務省の岡田氏は、官民パートナーシップについて「互いの強みを生かすもの」と述べ、「国際協力のために日本政府として、SDGs達成に向けて自社の製品やソリューションの活用に取り組む民間企業を支援したい」と話し、そのために「SDGsという概念の啓蒙にも努めたい」と話しました。
NECとのパートナーシップ
低中所得国でのワクチン普及を目的とした幼児指紋認証の実用化に向けて取り組んでいるGaviとSimprintsとNEC。Gaviのグプタ氏は3者でのパートナーシップについて、「国際機関、大企業、スタートアップ企業が経験と専門知識を活かして連携する好例であり、NEC の献身的な取り組みとSimprintsの柔軟で創意工夫な姿勢に感銘を受けた」と話しました。
Gaviの活動を支援するビル&メリンダ・ゲイツ財団も、NECとともに啓発セミナーを行うなどしています。
UNIDOとNECは、開発途上国における産業開発に向けて、グローバルに先進ICTを利活用するパートナーシップを結んでいます。UNIDOの国吉氏は、「ICTを活用して途上国に大きなインパクトを与えられる」と、NECとの取り組みに期待を寄せます。
明るい未来を作っていくために
国連WFPとNECは、WFPのデジタルIDによる食料支援の受益者管理システム「SCOPE(スコープ)」に関する技術パートナーシップを締結しており、同パートナーシップを通じて、より安全で効率的な食料支援につながるシステムの開発を目指しています。
生体認証についてはSimprintsのノーマン氏は、個人情報の保護の重要性を強調し、「プロジェクトを進めるにあたっては、技術的な課題だけではなく『幼児の親から、指紋採取に関して説明と理解を得る』といったことに取り組むことが重要」だと述べました。
パネルディスカッションを通して、各組織がパートナーシップに前向きであり、ICTの活用で世界を変えていくという強い思いを表明しました。
NECの遠藤は、「社会・経済に貢献するよう事業としての継続性を保ちながら、社会と会話を重ね課題を理解し、長期的なビジョンに向けて取り組むことが、民間企業が持続可能な社会を作るうえで果たすべき重要な役割だ」と述べ、「グローバルな連携こそが、より公正で持続可能で明るい未来を作っていく。そして、皆さんの参加を待っている」という言葉で最後を締めくくりました。
本セッションを通して、それぞれに立場や取り組む事業は異なるものの、参加メンバーが同じ方向性を見ながら共創に取り組み、より良い未来を作るための可能性を広げようとしていることが感じられました。
NECは、地球規模で発生し続いている課題を解決したいという思いを持つ政府や国際組織、民間企業など様々なパートナーとの協業可能性を、今後も模索していきたいと考えています。
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