世界同盟Gavi、NEC、英Simprintsが途上国の予防接種率向上に向けた生体認証活用で覚書を締結
~世界初となる、ワクチン普及を目的とした幼児指紋認証の実用化に向けて活動を開始~
2019年6月6日
Gaviワクチンアライアンス
日本電気株式会社
Simprints Technology Ltd.
Gaviワクチンアライアンス(以下 Gavi(ガビ))、日本電気株式会社(以下 NEC)、Simprints Technology Ltd.(以下 Simprints(シムプリンツ))は、開発途上国の予防接種率向上を目的とした生体認証の活用に関する覚書を締結しました。3者は世界初となる、開発途上国におけるワクチン普及を目的とした幼児(1~5歳)指紋認証の実用化を目指します。
Gaviは予防接種を推進し、世界の子どもたちの命を救い健康を守ることを目的として、2000年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で設立された世界同盟です。Gaviには各国政府、国連世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、世界銀行、ワクチン業界、研究機関などが参画しており、活動の中心を開発途上国に据えて、設立から現在まで7億人の子どもたちに予防接種を行い、1,000万人の命を救ってきました。
各国・地域では、出生登録や母子手帳の整備、ワクチンの運搬・保管体制の強化、ワクチンの重要性を周知する活動などが推進されているものの、依然として約2,000万人の子どもが標準的なワクチンすら受けられておらず(注1)、誰一人取り残さないワクチンの提供が求められています。
このたび、Gavi、NEC、Simprintsの3者は、開発途上国の幼児を対象に指紋認証で本人を特定することで、ワクチンの予防接種を推進する活動について覚書を締結しました。
幼児の指紋は、指先が柔らかいため変形しやすく画像が不鮮明になりやすいため、従来の抽出・照合エンジンでは認証が困難でした。このたびSimprintsのスキャナーで撮影した幼児の指紋画像を、幼児指紋用途に最適化したNECの指紋認証エンジンで照合する技術検証を行ったところ、認証率99%(注2)と高い精度を達成しました。指紋画像と氏名・年齢・性別などの情報を組み合わせることで、IDを保有していない幼児でも指紋認証による本人確認が可能となり、ワクチンの公平な配布と接種記録の管理に貢献します。
3者は本活動を、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」の具体的な目標として掲げられているワクチンのアクセスの提供(ターゲット3.8(注3))と5歳以下死亡率の低減(ターゲット3.2(注4))に貢献するものとして推進しています。3者は2020年前半にバングラデシュとタンザニアで幼児指紋認証の実証実験を行う予定であり、今後も本活動を拡大し、各国政府や国際機関・団体と連携してユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(注5)達成を目指します。
本覚書の締結に当たり、各社からのコメントは以下です。
- Gaviワクチンアライアンス 理事長 ンゴジ・オコンジョ=イウェアラ
私たちは世界的なアイデンティティ危機の真っ只中にいます。アフリカを中心に何百万人もの子どもたちが、医療記録だけでなく正式な出生登録さえありません。このようなデータの欠如は、ワクチンを含む重要な医療の提供を非常に困難にしています。最先端技術とGaviのノウハウを結集させた今回のパートナーシップで、開発途上国の子どもたちを世界で最も危険な病気から守ります。 - 日本電気株式会社 代表取締役 会長 遠藤信博
このたび、Gaviが世界中で進めている活動にNECが強みをもつ生体認証「Bio-IDiom」(注6)の一つである指紋認証技術で貢献できることを嬉しく思います。今後の活動による実績を活かし、各国で生体認証による様々なサービスの提供を通じて、安全・安心・効率・公平な社会の実現を目指すとともに、事業を拡大していきます。 - Simprints Technology Ltd. CEO トビー・ノーマン
SimprintsはGaviおよびNECとのパートナーシップにより、世界の最も傷つきやすい何百万人もの子どもたちの命を救うために、生体認証を活用して予防接種を行うというプロジェクトに携われることを大変喜ばしく思います。私たちの使命は、世界の貧困と闘う方法を変革し、世界の成長に向けた技術の透明性と有効性を高め、あらゆるワクチンや資金などを最も必要とする人々に確実に届けることです。
また、以下のコメントをいただいています。
- 日本国外務省 国際協力局参事官/TICAD担当大使 紀谷昌彦様
低中所得国の予防接種支援を率いるGaviの活動にNECが日本発のイノベーションとして指紋認証エンジンを提供して参画することを歓迎いたします。3者のパートナーシップが、ヘルスケアにおけるイノベーション活用の有用性を証明すると共に、ワクチンのみならず様々な保健サービス提供への活動を通して、「誰一人取り残さない」ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成により途上国の発展へ寄与することを期待しています。
以上
- (注1)出典:Gaviアライアンス
https://www.gavi.org/about/value/health-equity/ - (注2)1対N認証により、本人が本人であると判定される確率。
- (注3)SDGs目標3・ターゲット3.8
「すべての人々に対する財政保障、質の高い基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、および安全で効果的、かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。」 - (注4)SDGs目標3・ターゲット3.2
「全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児および5歳未満時の予防可能な死亡を根絶する。」 - (注5)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること。 - (注6)
「Bio-IDiom(バイオイディオム)」は、顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響など、NECの生体認証の総称です。世界トップクラスの技術や豊富な実績を活かし、ニーズに合わせて生体認証を使い分け、あるいは組み合わせることで、「誰もが安心してデジタルを活用できる世界」を実現していきます。
Gaviワクチンアライアンスについて
2000年に設立された、スイス・ジュネーブに本部を置く官民パートナーシップ。開発途上国における平等なワクチンの導入・普及と接種率上昇の加速化や、保健システム強化のための支援、また適切なワクチン市場の形成等も行いながら、世界中の予防接種を受けられない子どもたちのためにワクチンを提供し、子どもたちの健康的な未来のために活動するユニークな組織です。
Simprintsについて
2014年に設立された、英・ケンブリッジに拠点を置く生体認証のスタートアップ企業(従業員約20名)。ケンブリッジ大学からのスピンオフで、開発途上国の過酷な環境下でも使える指紋スキャナーや照合ソフトを開発しており、様々な国際機関とパートナーシップを結んで各国への導入実績を有しています。
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC グローバル事業推進本部
E-Mail:contact@global.jp.nec.com
NECは、社会ソリューション事業を推進する
ブランドメッセージ「Orchestrating a brighter world」のもと、
今後の世界の大きな変化(メガトレンド)に対応する
様々な課題解決や社会価値創造に貢献していきます。
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