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New Normal時代に求められるこれからの集客施設向けソリューション

Smart VenueCX

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、集客施設のあり方は大きな変革を迫られるようになりました。リモートでの観戦/鑑賞といった新たなスタイルも確立しつつありますが、人々が集うリアルな場で楽しみたいというニーズは変わらずに存在します。本稿では、新たな日常となるNew Normal時代において、安全・安心に楽しめる集客施設に必要な、タッチレスかつウォークスルー型の手荷物検査と入場確認及び来場者の把握、スマートフォンアプリケーションを使った現地での楽しみ方、そして混雑を回避するための混雑度可視化や、人と人との間で密が発生していないかを確認するソーシャルディスタンシング測定技術などを紹介します。

1. はじめに

世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、COVID-19)によって、集客を事業の拠り所にしているエンターテインメント業界及びスポーツ業界は大打撃を受けました。自宅からのリモート観戦/鑑賞といった新たなスタイルも確立しつつありますが、現地でしか体験できないテーマパークの楽しみ方や、スタジアムでスポーツ観戦したいというニーズは変わらずに存在します。

本稿では、新たな日常となるNew Normal時代において、安全・安心に楽しめる集客施設に必要な、非接触な来場者管理や混雑を回避するためのソリューション、デジタルな来場体験価値向上のソリューションを紹介します。

2. タッチレスでデジタルな来場者管理

2.1 ウォークスルー手荷物検査

大型の集客施設においては、安全・安心を担保する最初の関門として手荷物検査があります。通常は人手を介して対面で行いますが、NECは、立ち止まらずに通過するだけで手荷物を検査する技術を開発しました。センサーから微小な電波を照射し、センサー前を通過する人や手荷物から反射した箇所をとらえて画像化(イメージング)し、危険物をスマートフォンや鍵などと区別して自動検知します(図1)。歩行速度に対応するビデオレートでの高速イメージング、歩行者の移動に伴う撮像ブレを抑制して高品質な画像を生成する移動補償、生成した画像から高速・高精度に危険物形状を検知する3D物体検知が特徴です。2021年度の実用化を目指しています。

図1 ウォークスルー手荷物検査の動作例

2.2 ウォークスルー入場

入場が有料の施設においては、手荷物検査の次にチケット確認作業が必要になります。タッチレスなチケット確認は、テーマパークの年間パスポートなどで顔認証によるウォークスルー入場を既に実用化しています。今後は更に、顔検出技術とサーマルカメラを組み合わせることで、来訪者の体表温度の測定を非接触かつスムーズに実現します。施設への入場時に設定値以上の体表温度が確認された場合は、対象者の顔情報と併せて管理者に通知し検温を促すこともできます(図2)。クラスター発生防止など、感染症対策に貢献します。

図2 顔認証技術とサーマルカメラでの体表温度自動測定

2.3 デジタルな来場者管理

今後の集客施設では、万が一COVID-19感染者が発生した場合には来場者に連絡を取るために、来場者リストを管理することが望ましいとされます。この節では、一般社団法人日本バレーボール機構(以下、Vリーグ機構)様におけるNECのファンマーケティングソリューションを使ったデジタルな来場者管理の具体例を紹介します。Ⅴリーグ機構様においては、バレーボール観戦のチケットを購入する際、紙のチケットではなく、スマートフォンのⅤアプリ受取という電子チケットを指定して入場することができます(写真1)。その場合、来場者とその連絡先などの情報が蓄積され、万が一連絡を取る必要性がある場合も、当日の来場者を検索してメール配信ができる仕組みとなっています。

写真1 電子チケットのスマートフォン画面

3. 来場体験価値向上とデータ利活用

3.1 来場体験価値向上

ファンマーケティングソリューションでは、スマートフォンアプリケーションを用いて、紙などを使わず、なるべく人手を介さずに実施できる抽選イベントや、クーポン発行などの来場体験を向上させる仕組みを提供しています。またスマートフォンから、ファンが選ぶMVP選手の投票などもでき、デジタルでのファンコミュニケーションを実現します(写真2)。

写真2 選手のMVP投票や抽選イベント画面

3.2 タッチレス決済

また、スマートフォンアプリケーションで顔情報とクレジットカード登録を事前に済ませておけば、顔決済によるタッチレスなショッピングもできます(写真3)。新たな日常においてはキャッシュレス決済が推奨されているなか、スマートフォンすら出さずに済む顔決済については、今後ますますニーズが高まるものとして期待されています。

写真3 スマートフォンから顔登録の画面イメージ

3.3 データ利活用

来場者情報やファンの行動データの活用は、緊急事態の連絡手段のみならず、滞在時間などを分析することで、密を発生させずに楽しい来場体験を演出するためのマーケティングデータとしても活用できます(図3)。プッシュ通知やスタンプラリーによって、ファンの行動を誘導したり、また近隣のショップや観光地などへの送客などにも役立てることが可能です。

図3 宇都宮市におけるスマート・ホスピタリティ実証
実験における来場者の行動分析

4. 密を避けるための混雑度可視化

混雑度を把握し、3密を避けることで、新たな日常においても安心して楽しむことができます。本章では、混雑度を可視化するソリューションを紹介します。

4.1 カメラ画像解析による混雑度可視化

監視カメラの映像から人工知能(AI)技術によって群衆を認識し、混雑状況(混雑度・人数)をリアルタイムに把握できる群衆行動解析サービスがあります(図4)。本ソリューションにより、幅広いエリアの混雑度の可視化ができ、それをスマートフォンやサイネージに表示することで、人々が混雑を回避する動きをとるように促すことができます。

図4 混雑度可視化イメージ

また、画像から得られた人数情報と、画像内の動き(移動の向きと速さ)の情報から、人の流れ(人の位置・移動速度・数)を確率的に推定する群衆流量推定機能も有しており、大勢の人が行き交う場所でも通行人数の予測を行うことができます(図5)。人々が集う空間の動線の通行人数を定量把握することで、状況に対応した空間整備や誘導、イベントの創出など、快適なエリア空間づくりに役立てることができます。

図5 群衆流量推定のプロセス

本サービスは、カメラの近傍(エッジ)に解析用のPCを設置して解析を行い、個人情報となる人物画像を即座に廃棄して匿名加工情報として混雑度や人数情報のみを記録することで、プライバシーに配慮した形での社会実装が可能です。

4.2 IoTセンサーによる混雑検知

トイレについては、集客施設において最も密になりやすい場所ですが、混雑度検知にカメラを活用することには抵抗があります。そこで、このような場所には、IoTセンサーを活用したソリューションが適しています。NECでは、施設IoTサービスにて、トイレの個室単位にIoTセンサーを取り付け、個室単位の稼働状況をリアルタイムにサイネージやスマートフォンに表示することができます(図6)。また清掃中かどうかの可視化も可能です。NECの玉川SC棟(神奈川県川崎市)で実証したところ、トイレにおける待ち時間が大幅に減り、98%の社員がトイレ可視化サービスの利用継続を希望したという結果が出ています。

図6 トイレ混雑度のサイネージ表示

4.3 ソーシャルディスタンシング判定技術

カメラの映像を解析し、人と人との間に適切な距離が確保されているかどうか(ソーシャルディスタンシング)を判定できる技術も、NECは開発しました。映像内の人体を検知し、半径1m(自由に設定することが可能)の円にお互いが接触していないかどうかを解析して、密集度合いを判定することができます(図7)。本技術によって得られた密集リスクの高い時間帯やエリアをデジタルサイネージに表示することで、来場者と情報を共有し、リスクを避けた時間での利用を促進することができます。

図7 ソーシャルディスタンシング判定イメージ

また、施設スタッフ側のリスク管理や安全確保にも貢献します。どの時間帯、どのエリアでのリスクが高いかが明確に分かるので、リスクが高いところでスタッフを長時間働かせることがないようにするなどの工夫や対策も可能になります。

5. むすび

本稿では、新たな日常となるNew Normal時代においても、リアルなイベントを楽しむために必要な、集客施設向けのソリューションを紹介しました。NECは、さまざまなセンシング技術、カメラ画像解析技術、データ分析基盤を用いて、人々が安全・安心に楽しめる感動空間の場づくりに貢献します。

執筆者プロフィール

星 一史
トレード・サービス業ソリューション事業部
主任
有吉 正行
データサイエンス研究所
主幹研究員
宮脇 聖吾
PSネットワーク事業推進本部
エキスパート
鍋谷 翼
サービスプラットフォーム事業部
中野 学
バイオメトリクス研究所
主任

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