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NECグループが考える環境経営の姿 ~クライアントゼロとして守りから攻めへ~
Vol.76 No.1 2025年3月 グリーントランスフォーメーション特集 ~環境分野でのNECの挑戦~近年、地球温暖化が加速し、プラネタリーバウンダリーにおいて複数の環境指標が安全域を超えるなか、企業は持続可能な地球共生に向けて環境に配慮した行動が強く求められています。NECは「NEC 2030VISION」で環境を重要テーマとして位置付け、自社の環境負荷低減と、製品・サービスを通じた環境貢献の両面から取り組みを強化しています。特に、自社をフィールドに最新のテクノロジーを実践し、そこから得た知見をお客様向けソリューション「BluStellar」へつなげるクライアントゼロの取り組みに力を注いでいます。
1. はじめに
ここ数年間で地球全体の平均気温が上昇し、私たちの日常生活はさまざまな局面で大きな影響を受け始めています。これは気温上昇だけに限られたことではありません。プラネタリーバウンダリーの最新の公表(2023年9月13日)1)によれば、地球環境への9分野の影響のうち、6つの分野(気候変動、淡水変化、土地利用変化、生物圏の一体性、窒素・リンの生物地球化学的循環、新規化学物質)において、人類が地球で生存し安全に活動できる限界値が安全圏を超えており、地球が切迫した状況にあると評価しています(図1)。私たちは地球と持続的に共生していくために環境へ配慮した行動がより一層求められていることを痛感させられます。


2. 環境経営のトレンド
環境へ配慮した行動は企業経営においても例外ではありません。昨今、企業の環境経営といえば、CO2をはじめとする温室効果ガス排出量削減に焦点が集まりがちでしたが、地球環境問題に対する関心の高まりや法規制の強化を受けて、その対象範囲は気候変動への適応、生物多様性などの自然資本回復、資源循環による循環経済の実現といった幅広い領域に広がってきています(図2)。企業を取り巻くステークホルダーはこれら領域における企業の活動に強い関心を示し、非財務の情報開示の充実を期待しています。


3. NECグループにおける環境経営ビジョン
NECはNEC 2030VISIONにおいて「地球と共生して未来を守る」を掲げました。これにおいて、「環境」を人や生物が地球上で生きていくうえでの土台ととらえ、事業活動にあたり環境を守ることはもちろんのこと、事業活動を通じて環境に関する社会課題解決に貢献することを目指しています(図3)。また、環境課題は一社単独での取り組みで解決できるものではなく、サプライチェーン上でかかわる企業をはじめとするさまざまなステークホルダーと連携することが重要です。NECは個々の組織の枠を超えた連携も意識しつつ、NECでの環境負荷低減の取り組みと、NECグループの製品・サービスをお客様にご使用いただくことで環境負荷低減に貢献する取り組みの両面から環境経営を強化、推進しています。


4. NECグループにおける環境経営の実践
NECの環境負荷低減の取り組みについては、NECグループ一丸になってサプライチェーン全体でのCO2排出量の削減活動をはじめ、再生可能エネルギーの利用拡大、水使用量及び廃棄物排出量の削減、資源循環活動の推進、絶滅危惧種の保全活動、環境法令対応など、多岐にわたる活動を展開しています。また、産官学連携した環境ルールづくりや政策提言活動にも積極的に取り組んでいます。これらをESGデータブック、TNFDレポート、Webサイトなどを通じて広く社外へ情報開示し、国際的にも高く評価されています。その代表的な例として6年連続でCDP Aリストに選定されたこと2)や米国TIME誌「世界で最もサステナブルな企業2024」で第2位に選出されたこと3)が挙げられます(図4)。


5. NECグループの環境ビジネス創出の取り組み
NECグループの製品・サービスの提供による環境負荷低減に貢献する取り組みについては、2024年度より特に注力しているクライアントゼロの取り組みと、それらをBluStellar(ブルーステラ)のソリューションへつなげていく活動を進めています。クライアントゼロとは、NECグループ自身を最初のクライアントフィールドにして、最新のテクノロジーを自社フィールドで実践、社内変革を推進しつつ、こうした取り組みを通じて得た「生きた」知見や経験をリファレンスとしてお客様の環境課題解決に貢献するソリューションを創出するという考え方です。また、BluStellarとは、お客様課題を起点としたビジネスモデルに基づく価値提供を通じてお客様の課題に貢献するソリューションです。ただし、1つのソリューションあるいはテクノロジーでお客様のすべての環境課題を解決することは難しく、お客様の課題状況に応じた最適なソリューションや技術の組み合わせで解決したり、あるいは段階的にソリューションを高度化して対応する必要があります。こうした点を踏まえながら、NECグループはクライアントゼロとして得た知見をBluStellarのソリューションにつなげます。
クライアントゼロで創出しているソリューションには、本特集で詳細に紹介しているNECグループが持つ製造業の知見を生かしたカーボンフットプリント算定支援サービス4)量子コンピューティングによる配送効率化でCO2削減に貢献するサービス5)、また環境コンサルティング・サービスの一環として提供している自然資本関連情報開示であるTNFD対応支援などがあります。いずれも、NECで実践している環境取り組みをソリューション化している事例であり、お客様への提供も始まりつつあります。今後はこれらのソリューションをBluStellarのなかにメニュー化していきます(図5)。


6. おわりに
現在私たちは、地球環境に与える負のインパクトを最小限に抑えながら事業の存続と持続的な成長を達成するという非常に難しい課題に直面していますが、NECグループは最先端のICT技術を活用し、この課題をお客様やパートナー様とともに乗り越え、より良い社会と明るい未来づくりに貢献していきます。NECグループにますますのご期待をいただけますよう、お願い申し上げます。
参考文献
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執筆者プロフィール
執行役Corporate EVP 兼 CSCO
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