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グリーントランスフォーメーションへの取り組み ~NECグループの実践と共創による社会課題解決~

Vol.76 No.1 2025年3月 グリーントランスフォーメーション特集 ~環境分野でのNECの挑戦~

豪雨などの気象災害や農林水産業への悪影響をもたらす地球温暖化、マイクロプラスチックなどの環境汚染、安全保障面からも重要な資源循環・自然資源保全など、環境に関するさまざまな問題が私たちの暮らしやビジネスに深刻な影響を与えるようになってきました。これら問題の解決に向けて、ICTやDXソリューションが果たす役割への期待も更に高まっています。本特集では、気候変動への対策や資源循環の推進などのグリーントランスフォーメーション(GX)に向けたNECグループの取り組みを、実践や共創の事例も含めて紹介します。

コーポレート事業開発部門
カーボンニュートラルビジネス推進PMOグループ長
石井 健一


1. はじめに

これまでの気候変動や資源循環への取り組みは、エネルギーの転換や河川堤防の強化、資源回収への呼びかけなど、アナログ的ともいえる対策が中心でした。しかし近年、より効率的な対策の実現を目指し、環境に関するさまざまな領域においてもICTやDXソリューションの導入が始まっています。本特集では、NECグループが考える環境経営の姿と環境課題領域ごとの取り組みについて紹介します。

2. 気候変動への適応策の加速

地球温暖化の原因となっている温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gas)の削減に向けて、京都議定書(1997年採択)やパリ協定(2015年採択)などの国際的な合意形成への努力は続いていますが、地球温暖化の進行自体を食い止めるまでには至っておらず、海面上昇による高潮や豪雨による河川の氾濫、平均気温の上昇や干ばつ、森林火災など、気候変動の影響による被害は拡大し続けています。そのため、GHG削減による気候変動緩和の努力を続けるだけでなく、災害被害自体への対策や気候変動への適応も急務となっています。

しかし、気候変動からの被害に備える「適応策」については、喫緊の課題であるにもかかわらず資金調達が十分ではないという問題があります。これは、適応策がもたらす価値や投資効果が計りづらいことに加え、プロジェクトも長期的で正しいリスク評価も難しく、民間企業にとって投資判断が困難なことなどが理由に挙げられます。

NECグループでは、これらの課題への解決策の1つとして、リモートセンシングやAI、デジタルツインなどのデジタル技術を活用し、リスク評価に必要な情報を迅速・適切かつ継続的に取得・解析し、適応策の効果を可視化する「NECデジタル適応ファイナンス」の取り組みを始めています。適応策の効果を定量的に可視化することで、適応策の費用対効果をより明確にし、適応策への資金投下につなげていきます。NECデジタル適応ファイナンスに関しては、気候変動に関する国際会議である国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の場で2023年にコンセプトを提唱し、2024年には具体的な取り組みの進捗を報告しました。本特集では、これら気候変動適応策の加速に向けたNECグループの取り組みについても取り上げます。

3. 気候変動緩和への貢献

近年、GHG排出量削減や資源循環への取り組みは、個々の企業や個人の環境対策にとどまらず、国・地域における経済政策と密接に結びつき始めています。環境関連の規制で先行する欧州では、電気自動車向けバッテリーの製造時に排出したCO2量を開示することを義務付け始めており、この規制は他の製品にも拡大していく見込みです。また、鉄鋼製品などの素材に対しては、製造時に排出したCO2量に応じた関税「炭素税」を課す動きもあります。これらの規制や関税は、欧州における環境対策の推進だけでなく、参入障壁の創出による市場の保護や域内企業の競争力確保といった経済対策の側面も持っています。

NECグループでは、これまでに製造業として化学物質規制や省エネへの対応を行ってきましたが、これからは、更にそれら知見や経験を生かしたコンサルティング・サービスやICTを用いたソリューション・サービスの提供を通じて、お客様や社会のCO2削減に貢献していきます。また今後はCO2排出量などの環境負荷を考慮した設計・製造や、物流効率化によるCO2削減などが重要になるほか、食料や原材料の供給源である農業においても、環境負荷削減に取り組む必要があります。本特集では、これらの分野におけるNECグループの先進的な取り組みを紹介します。

さらに、昨今では生成AIなどの利用急増に伴ってデータセンターのエネルギー消費の増加も大きな問題として広く認識されつつあり、NECグループにおけるデータセンターのエネルギー効率化の取り組みについても述べます。

4. 資源循環を加速させるICT

今日までの経済活動は、大量生産、大量消費、大量廃棄に象徴される一方通行型のリニアエコノミーを基調にしていましたが、最近はそれを見直し、持続可能な循環型経済活動を目指す、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みが増えてきています。サーキュラーエコノミーを実現するためには、企業と消費者の行動変容を促すことが重要であり、社会全体としても資源循環に関する情報を共有する仕組みが必要となります。

資源循環を実現するためには、モノ・製品の流れを組織や企業の垣根を越えて、バリューチェーン内で正確かつ適切にトレースし、情報管理をライフサイクル全体において継続しなければなりません。製造事業者、流通事業者、消費者、回収事業者、再生事業者などの間をモノや製品が流れていく過程で、従来の商品情報に加えて、詳細な素材成分やリサイクルに関する情報も正しく引き継がれていく必要があります。欧州では、このようなトレーサビリティ情報の連携を実現するためにデジタルプロダクトパスポート(DPP)や情報流通基盤GAIA-Xなどの情報連携プラットフォーム実装が始まっています。日本でも経済産業省のOuranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム)や、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)におけるサーキュラーエコノミーシステム(SIP-CE)などの開発が進められています。

NECグループはSIP-CEにおいて、プラスチックにかかわる環境情報を企業間でやりとりするためのプラスチック情報流通プラットフォーム(PLA-NETJ)の構築に取り組んでいます。企業間で情報をやりとりする際には、その信頼性担保や開示制御が非常に重要となります。NECグループはトラスト技術などを活用し、安全・安心に企業間で環境情報をやりとりできる仕組みの実現を目指しています。

また、資源循環においては資源の再生効率も重要となります。NECグループではプラスチックとアルミニウムのそれぞれの再生工程において、多様なパートナーと連携しながら、AIを用いた効率的な資源再生の実現に取り組んでおり、その内容についても示します。

5. GXを支えるICT

GXの推進においては、自然環境の可視化(データ化)や複数企業間でのデータ連携・最適化、再生可能エネルギーインフラの安定運用など、NECグループがこれまでに培ってきたICTやICTインフラ構築・運用技術が貢献できる領域が多くあります。本特集では、衛星画像解析や複数企業間での最適化シミュレーション技術、光通信インフラの構築運用技術を洋上風力インフラへ適用した事例などについて紹介します。

6. おわりに

気候変動への対策や資源の有効利用の重要性は年々高まっており、企業や政府・自治体、その他法人にとってもはや地球環境の保全に貢献するといった漠然としたCSR的な話ではなく、エネルギーや食糧問題、BCP対策などの具体的・財務的な問題としてとらえるべき時代となってきています。これら課題への取り組みには、まず、実世界で起きていることをより正確に可視化し、そして、可視化したデータを元にさまざまな予測や最適化を進めていく必要があります。NECグループは引き続き、さまざまなICTやサービス、ソリューションの開発や提供を通じて、地球環境の保全・回復や持続可能な社会の実現に貢献していきます。

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