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DX時代におけるDigital Financeの取り組み

Digital Finance

目まぐるしい環境変化がある金融業界において、NECが金融機関の皆様と一緒に取り組めることはなんでしょうか。本稿では、金融機関を取り巻く環境の変化について共通理解を持ちながら、NECとしてのオファリングを説明します。また、今後の金融の可能性として、デジタル・ガバメントとの関係についても触れていきます。

1. 金融機関を取り巻く環境の変化

1.1 金融ビジネスの変換点

4.4%。これは銀行の収益源である貸金における2018年の世界全体の成長率です。過去5年間の世界のGDPの平均成長率5.9%を大幅に下回る数値であり、これは銀行の既存ビジネスが変換点に来ている兆しかもしれません1)

1.2 新たなプレイヤーの台頭

ここ数年で生活者と直接の接点を持ち、主にスマートフォンを介して簡単に金融サービス(家計簿や決済、個人間送金、少額から始められる証券・保険サービスなど)を提供するプレイヤー(以下、FinTechプレイヤー)が登場してきました。

1.3 オープン化の流れ

2018年1月、欧州ではEU決済サービス指令(Payment Service Directive Ⅱ:PSD2)が施行され、金融機関にAPI開放などのオープンバンキングを義務付けました。

日本では、2018年6月施行の改正銀行法により、電子決済等代行業(電代業)が定められ、銀行はその電代業者が銀行口座に接続できるよう、オープンAPIの体制整備を行うことが努力義務として制度化されました。

また、2020年6月、「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。そのうちの1つとして、多種多様な商品・サービスをワンストップで提供する「金融サービス仲介業」の創設が認められました。

金融機関にとってこれらの動きは、FinTechプレイヤーにより既存金融ビジネスがディスラプトされる可能性とFinTechプレイヤーとの協調によるビジネス拡大の可能性の両側面を併せ持っています。直近の動きをみると、金融機関は、これまでにないほど異業種との提携を進めており、FinTechプレイヤーとの協調路線を軸にしていると見受けられます。

1.4 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で経済活動がストップし、多くの企業や個人事業主は、資金繰りに苦心しています。日本政府は、約12兆円の資金繰り対策への予算を設定し銀行を支援し、金融庁は、銀行に企業への資金繰り支援を要請しています。今、銀行業の真価が問われているときでもあります。

2. NECからのオファリング

このように目まぐるしく環境が変化するなかで、NECは、金融機関を支援すべく、Digital Financeのオファリングを3つに分けました。

2.1 お客様接点改革(Digital Customer Engagement)

現在、金融機関の店舗は、いつでもインターネットに接続できるスマートフォンというツールを介して、生活者の手元に開店しています。更に、VRやARなどの技術が進展することで、それがよりリアリティを増したものにもなってくるでしょう。また、NECが強みを持つ生体情報などを活用した認証技術を使えば、より便利に高セキュリティのサービスを提供できるようにもなります。NECは、顔認証技術を活用して口座開設時などの申し込みができる「Digital KYC」(KYC: Know Your Customer)サービスを提供しており、厳密な本人確認を要する金融機関をはじめ、多種多様な事業者で活用可能です。また、顔認証技術を活用した店舗決済も提供しており、両手がふさがっているときやお財布などを持っていないときに、手ぶらで顔だけで決済ができるようになります。より安心に、より便利に、より積極的に、生活者は、ライフスタイルに合わせたサービスを楽しむことができるようになります。

2.2 業務変革(Business Process Transformation)

AIなどの最新技術を使い、業務の効率化と高度化を同時に実現します。例えば、NECは金融機関の為替振込業務をBPOセンターへ集約し、入力・補正・確認をAIで自動化することで、事務コスト削減と品質向上を実現しています。また、銀行のビジネスマッチング業務において、対面で行っていたものをオンライン化し、受注先と発注先や業務提携先などの開拓をスピーディかつ多数案件を取り扱うことができるビジネスマッチングプラットフォームサービスを提供しています。

そして、NECは、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代における新しい金融システムとして、BaaS(Banking as a Service)に取り組んでいます。これまでの金融システムの思想を変え、オープンAPIによる外部サービスとの連携性の向上やマイクロサービスによるビジネス環境の変化への対応、クラウドによる柔軟なスケールを目指します。

これにより、金融機関は新たな価値が創出できるビジネスへと注力できるようになります。

2.3 リスク対策(RiskTech)

デジタルテクノロジーの進展により金融犯罪も複雑化・巧妙化しているという事実もあります。また、それに対応するため、金融関連規制も更に高度化していきます。こういった金融リスク対策に対応するために、NECは、AIを活用した「AI 不正・リスク検知サービス」を提供しています。これは、不正な金融取引のパターンをAIが学習し、不正やリスクの度合いをスコアリングするサービスで、不正スコアだけでなく、不正と判断した根拠も提示するため、金融機関は利用者や規制当局への説明責任も果たすことができます。NECは、金融業界を代表するパートナーと共同開発することで、業界標準化されたサービスレベルを実現しています。

3. パートナーとの共創事例

NECはお客様やパートナーと一緒に事業やサービス創出をすることで、新たな可能性を追い求めています。

2014年、株式会社三井住友銀行様とのジョイントベンチャー(以下、JV)である「株式会社ブリースコーポレーション」を設立しました。現在、スマートフォンを活用した新たなコンビニ収納サービスを提供しています。

2019年、SBIグループ(SBIセキュリティ・ソリューションズ株式会社)様とのJVの「SBIデジトラスト株式会社」を設立しました。最新技術を活用したAML(Anti-money Laundering)やKYCサービスの提供を目的にしており、現在サービスを開発中です。先に説明したリスク対策(RiskTech)関連のサービスをこのJVで取り扱うこともできます。これにより、従来NECとは取引がなかったお客様に向けても提供の裾野を広げることができます。

また、共同サービス創出の観点では、先に説明した「為替BPOサービス」は株式会社しんきん情報サービス様と、「ビジネスマッチングプラットフォーム」は株式会社三井住友銀行様と共同開発を行い、「AI 不正・リスク検知サービス」は株式会社横浜銀行様や証券コンソーシアムでの実証を経てサービス開発を行いました。

業界の盟主であるこれらの金融機関とジョイントベンチャー設立やサービス創出を行えたことはNECにとって価値ある実績となりました。

4. 「金融」の枠を超えて 行政システムとの連携例

金融は、社会インフラとして重要な役割を持ちます。NECは、金融システムと行政システムが紐付くことで、更に良い社会を実現できると考えます。今、政府はデジタル・ガバメント実現に向けた取り組みを行っています。首相官邸主催のデジタル・ガバメント閣僚会議では、マイナンバーカード及びマイナンバーに対する公金振込口座の設定などの議論が開始され、また、総務省は国民1人について1銀行口座の登録義務化を目指す考えを明らかにしました。

世界に目を向けると、既にインドでは2009年から国民IDシステム「Aadhaar」(アドハー)が導入され、12.3億人以上が登録しています。システムで管理されているため、国からの補助金などが効率的に支払われます。この他にもデンマークでは「Easy ID」、スウェーデンでは「BankID」、シンガポールでは「NDI」(国家デジタル認証)といったデジタルIDが普及しています。エストニアも電子政府で有名で、99%の行政サービスがオンラインで提供されています。

こういった構想を実現するためには、デジタル上で個人を特定したり、証明したりするためのデジタルIDの実現が必要になります。NECは、「NEC I:Delight」というブランドを打ち出し、共通のIDでさまざまなサービスを享受できる世界が実現できるよう、複数のパートナーと議論しています。また、NECはデジタルIDの入り口となる本人確認をオンラインでできるサービス「Digital KYC」の提供もしており、この領域に貢献できるはずです。

金融では、デジタルIDが普及すると、例えば、個人の資産などが、より簡単に管理できるようになります。給与口座や投資用口座、クレジットカードや電子マネーなどを個人のデジタルIDに紐付け、その内容を1つのスマートフォンアプリケーションで閲覧したり、契約内容を変更したりすることが可能になります。更に、各種納税申告もできるようになるかもしれません。デジタルIDと紐付くことにより、今までより一段高い利便性の金融サービスが誕生するでしょう。

このように、デジタル・ガバメントの実現のためには金融が大事な役割を担うことになります。そして、そこで必要となるデジタルIDを活用すれば、金融サービスはより便利になってきます。デジタルIDを接点とし、デジタル・ガバメントとDigital Financeは相乗効果を生みます。

デジタル・ガバメントやデジタルIDの実現に向け、日本では、先進的な取り組みをしている前述の各国を参考にしつつ、日本の国民性や倫理観、プライバシーへの考え方、法制度など、無視してはならないさまざまな日本特有の状況を勘案しながら推進していくべきと考えられます。そこでは、長年、行政や金融システム双方に携わってきているNECだからこそ貢献できるものがあると考えています。

参考文献

執筆者プロフィール

渡邊 輝広
デジタルインテグレーション本部
マネージャー

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