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「NECのデザイン思考」で新事業創造と事業改革を加速
Future Creation Design DXオファリングSuite

NEC技報 Vol.74 No.2 2022年3月 社会のデジタルトランスフォーメーションを加速するDXオファリング特集

予測困難なVUCAの時代における新事業創出や業務変革の取り組みとして、デザイン思考やサービスデザインの重要性が知られています。NECは、1980年代より多様なデザインアプローチに取り組み、経験に基づいたナレッジを有し、ビジネスプロセスや組織の仕組みに生かすことでさまざまな事業を生み出してきました。近年は、デジタルを活用したビジネスデザインの方法論にデザインアプローチを適用し、2021年4月より、お客様へのデザインコンサルティングとして新たに整備し提供を開始しています。本稿では、お客様の新事業創造と事業改革を加速するFuture Creation Design DXオファリングSuiteについて紹介します。

1. はじめに

近年、企業にとっては、デジタルトランスフォーメーション(DX)(以下、DX)と企業変革力は産業界全体としての喫緊の課題です。予測困難なVUCA*の時代において、新事業創造や事業変革を行うための方法論として、デザイン思考やサービスデザインなどの有効性が知られています1)。自社や技術の価値創出の仮説を素早く描き検証するMVP(Minimum Viable Product)とプロトタイピングの方法や、プラットフォーム型のビジネス創造に重要な共感や巻き込む力の強化、バリューチェーンや組織の壁を横断するコラボレーティブな進め方など、多岐にわたる効能も知られています。

政府や自治体にとっては、デジタル化によるデジタルデバイド対策や「誰一人取り残さない」システムの構築が課題であり、これらの解決策として市民巻き込み型のサービスデザイン、デザイン思考を用いたインクルーシブデザイン、ユーザーエクスペリエンス(UX)(以下、UX)の考え方を用いた体験のデザインが解決の助けとなることが知られています。各国で、デジタル・ガバメントに関するサービスデザインガイドラインが用意され、デザイン思考を活用した利用者目線を取り込む活動が行われています2)

NECでは、で示すように、1986年にユニバーサルデザインの取り組みを開始し、1993年からは、デザイン思考を生み出したとされる世界的に有名なデザインファームであるIDEO社とともに現在のデザイン思考のもととなるデザインプロセスの整備を行い、パソコンの領域やグローバル市場領域で長年国内トップシェアを維持する実績を挙げてきました3)

表 NECのデザインメソッド ヒストリー

2000年代に入ると、NECの事業は、社会インフラを中心としたSI事業にシフト。これに伴い、このデザインプロセスは、お客様の事業創造や事業改革を支援するデザインコンサルティングの方法論として進化し、さまざまな分野で活用され事業を創出しています。

昨今、デジタルの活用は経営課題そのものとなり、事業の創造や改革の目的(Purpose)を明らかにするために、デザインアプローチが適用されるようになりました。NECは、お客様の事業課題の解決への支援のために、グローバルでビジネスデザインの実績と洗練されたメソッドを持つBusiness Models Inc.と連携して「NECのデザイン思考」フレームワークを開発しました(図1)。

図1 「NECのデザイン思考」フレームワーク

このフレームワークとデジタルの力を活用し、お客様の「イノベーション創出」を支援するオファリングが「NECのFuture Creation Design DXオファリングSuite」です(図2)。

図2 NECのDXオファリングSuite体系
  • *
    Volatility変動性、Uncertainty不確実性、Complexity複雑性、Ambiguity曖昧性を持つ社会情勢を指す。

2. Future Creation Design DXオファリングSuite

第2章では、「Business Grand Design 60Days」「Service Branding Design 60Days」「Experience Design 60Days」「Technology Experiment」という代表的なオファリングと個別のメニューを紹介します。

2.1 Business Grand Design 60Days

お客様の事業機会探索または価値実証フェーズでグランドデザインを描きます。事業機会とサービスの実現イメージ、必要な活動全体を具体化します。

2.2 Service Branding Design 60Days

質の高いブランディング戦略を設計し、ブランドイメージを浸透させるためのコンサルティングサービスです。お客様の事業やサービスのブランド価値を市場に浸透させることで、安定した売り上げと経営を実現します。

2.3 Experience Design 60Days

お客様の価値実証または実効性検証フェーズでプロトタイピング検証をしながら洗練された体験を開発します。お客様とともにコラボレーション型で進める方法と、お客様のチーム力を高めるコーチング型を提供しています。

2.4 Technology Experiment

NECのキーアセットと新技術を組み合わせた実験を行いたい場合に有効です。例えば、VR+ローカル5Gを活用したトレーニング、顔認証と会議システムと感情分析の組み合わせなど、洗練されたユーザー体験を生み出す新しい技術の可用性と実現可能性を迅速に実験することができます。

2.5 個別メニュー

2.5.1 インサイトリサーチ

お客様やエンドユーザーの生の声や行動を分析することで、新しいサービスや事業を企画するうえでの起源となる本質課題(インサイト)を導出します。

2.5.2 製造業のサービタイゼーション支援

サービタイゼーションを成功に導くために重要な戦略方向性の設定を支援するプログラムです。

2.5.3 UIUX デザイン

UXに配慮したUIデザインを行い、体験とサービス価値を向上、利用者の行動・心理に沿った製品・サービスを実現します。

2.5.4 MVP&プロトタイピング

目的に応じたMVPやプロトタイプを作成することで受容性・事業性・実現性の検証を実施します。

2.5.5 スマートコントロールルーム

人間工学・HCD4)に基づくUXとテクノロジーの活用を通じて、リアルタイムで変化する多種多様な情報から、ヒト単位での判断の最適化を可能とし、コントロールルームの業務の品質向上・効率化を実現するメニューです。

3. Future Creation Designの実行体制

NECのデザインコンサルティングチームは、お客様の事業に関する、社会や企業体の抽象的課題の解決から、製品デザインの具現化まで、デザイン思考を共通言語にしながらさまざまな領域の解決を支援するために7つの専門性を持つ多様な人材で構成されています(図3)。プロジェクトのテーマに合わせてチームを組成、お客様とともに事業を変革する実行メンバーとしてプロジェクトに参画し活動します。

図3 Future Creation Designの実行体制

4. NECアカデミーfor FCD (Future Creation Design)

デジタルデータとNECのデザイン思考を活用して社会課題を解決し、次世代の事業をデザインする人材を育成する“学び”と“実践”の場としてNECアカデミーfor FCDを提供しています(図4)。次世代の事業をデザインする人材の育成を支援します。本プログラムはNECアカデミー for DXのデザイン人材として位置付けられています。

図4 NECアカデミーfor FCD

5. 導入事例

全日本空輸株式会社様(以下、ANA様)にはデジタルを活用した事業の道筋を描く「Business Grand Design 60Days」、アイテック阪急阪神株式会社様(以下、アイテック阪急阪神様)には「Experience Design 60Days」コーチング型を活用いただきました。Future Creation Designは、既に、さまざまな領域の新事業創造や変革で活用いただいています。

5.1 ANA様
 【総合トレーニングセンターにおける最新テクノロジーとVR活用】5)6)

ANA Blue Base(ABB)は、3万m以上の敷地面積と世界最先端の訓練設備を有する日本最大級・最新鋭の訓練施設です。経営の基盤である安全をはじめ、オペレーション品質の向上、イノベーション推進、働き方改革及びANAブランドの発信を行う人財育成の拠点です。最新テクノロジーを導入し、訓練のパーソナライズ化によるサービス品質の向上、並びに共創による新たなサービスの開発を目指しました。例えば、現在実施している訓練では収集しきれなかった姿勢・手順・視線・訓練生の感情変化などのデータを、カメラ・視線測定機器・バイタルセンサー・VRゴーグルなどのさまざまなIoTデバイスからリアルタイムに収集・分析し、一人ひとりにフィードバックすることにより、訓練の効果を更に高めます。あるいは新たなテクノロジーを活用し、ABB内の端末やシミュレーター、モックアップなどと組み合わせることで、新たなサービス開発を行っていく、といった取り組みです。DXが急速に進展するなか、ANA様とNECは、最新テクノロジーの活用をはじめとしてデジタル化に積極的に対応し、従来の産業構造の枠にとらわれない新たな事業・サービスの創出に取り組んでいます(写真1)。

写真1 ABBでのワークショップの様子

5.2 アイテック阪急阪神様
 【鉄道車両分野での新たな価値づくり】7)

NECのデザイン思考を導入して収益向上につながる新規事業開発の実践を体験いただきました。阪急阪神東宝グループの一員として事業を展開しているアイテック阪急阪神様。ビジネス環境が変化するなか、社内では“従来の受託型から、自ら開発したサービスやビジネスモデルによる提案型へと事業を変革したい”、“次の時代を見据えた収益性の高い事業をスピーディに立ち上げたい”、“部門を超えた交流を通じて、次代を担う人材育成を図りたい”といった課題がありました。次代につながる新事業の開発に向けて、NECのFuture Creation Design DXオファリングSuiteを導入いただきました。若手を中心としたメンバーによるプロジェクトを立ち上げ、事業創出のメソッドとアイデア開発を体験いただきました(写真2)。部門を超えた交流や顧客視点による意識改革など、プログラムで得たスキルや経験をもとに、今後参加メンバーにはそれぞれの職場で新たな価値創出の活躍が期待されています。

写真2 実践セミナーの様子

6. むすび

本稿では、Future Creation Design DXオファリングSuiteのメソドロジーである「NECのデザイン思考」の成り立ちと、それぞれのオファリングの特徴と活用例について説明しました。これまでに培ってきたナレッジ及び実践力と、NECのテクノロジーをベースに、お客様へのデザインコンサルティングを通じて、安全・安心・公平・効率という社会価値を生み出し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現に貢献します。

参考文献

執筆者プロフィール

安 浩子
DX戦略コンサルティング事業部
シニアマネージャー

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