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Digital Inclusion
~デジタルのチカラで、ひとりひとりが輝く社会へ~
C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2019 展示会報告 2019年11月7日・8日、「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2019」を、東京国際フォーラムで開催しました。テーマは「Digital Inclusion ~デジタルのチカラで、ひとりひとりが輝く社会へ~」。デジタル技術が社会の隅々まで浸透した「Digital Inclusion」な社会でのビジョンを描き、「安全・安心・効率・公平」の価値を提供し、「人が生きる。豊かに生きる」社会を実現するNECの姿勢をアピールするイベントとなりました。
概要
初日、NECの新野隆 代表取締役 執行役員社長 兼CEOは、NECが2019年に創設120周年を迎えたことに触れました。未来の社会として、デジタル技術が隅々まで浸透した「Digital Inclusion」な社会を掲げています。「Digital Inclusion」の社会では、実世界を見える化し、更に分析・対処することで、世の中のさまざまな仕組みが最適化されます。そのような社会において「安全・安心・効率・公平」の価値提供を行い、「人が生きる。豊かに生きる」社会を実現すると語りました。そして、デジタル技術によってさまざまなものや人がつながる新しい社会のコンセプトとして「I:Delight(アイディライト)」を発表しました。今回の展示やステージも、この基調講演に沿った内容となりました。デジタルの力でCX(顧客体験)の価値を高める「未来体験ゾーン」をメインに、「NEC Safer Cities」「NEC Value Chain Innovation」「社会・産業・生活を変革する先進デジタルプラットフォーム」の4つのゾーンからなり、43の展示と各種ステージや体験ができるデモンストレーションを紹介しました。
未来体験ゾーン
~「できたらすごいを社会に創る。」に向けた取り組み~
旅行やお買い物が、ストレスフリーにつながる体験デモや社会実装されたソリューションを紹介し、生体認証を活用した共通のIDで複数の場所やサービスで一貫した体験を提供するNECのコンセプト「I:Delight」を分かりやすく紹介しました。
顔認証でつながる未来の街
展示のサブタイトルは「あなただけの旅行体験」。知らない土地への旅は、楽しさの一方でさまざまな心配や面倒なこともあります。でも近未来では、そんな心配や面倒なことがなく、あなた好みの旅を実現できるのです。まさに「I:Delight」な体験。キーとなるのは「顔認証」を活用する共通IDのサービスです。会場では、訪日旅行客になったつもりでストレスフリーのツアーを体験していただきました。
まず、自分たちの望む旅のテーマ(スポーツ観戦、サブカルチャー、おしゃれでかわいい旅など)を選び、顔認証データなどを登録することから始まります。この情報は、本人同意を行うことで、利用する交通機関、ホテル、レジャー施設、レストランなどの提携企業に提供されます。続いて、機内で空港から目的地までのルートを検索し、交通機関の予約・支払いをまとめて行うことができます。空港では、顔認証で事前にホテルチェックイン。荷物も預けてしまえばホテルまで届けてもらえるため、手ぶらで観光に出かけられます。イベント会場であるアリーナも顔認証で入場。自分の座席までの案内がお手持ちのスマートフォンに届きます。レストランでは事前登録したアレルギー情報に基づく、自分に合ったメニューが表示され、安心して注文することができます(写真1)。また、提携しているお店のクーポンが進呈され、お土産などのショッピングに使うこともできます。ショッピングの決済も顔認証で素早く完了します(写真2)。
紹介したサービスの背景には、「Fast Travel」の技術や2020年春からの成田空港の新しい搭乗手続き「One ID」、和歌山県南紀白浜での「IoTおもてなしサービス実証」などの裏付けがあります。「顔認証というとセキュリティ面が強調されますが、もっとワクワクする楽しい旅にするのにも役立つことを示したかった」と担当者は語りました。
歩きながらでも虹彩認証を可能にする技術デモの展示
今回の数ある展示の中で、最も注目を集めたものの1つが歩きながらでも虹彩認証ができる技術デモの展示です(写真3)。虹彩認証とは人によってその模様が異なる虹彩を使って本人認証するものです。虹彩認証を用いた本人確認のシステムは既に実用化されていますが、これまではカメラの前で一旦静止し、目の位置をカメラに合わせる必要がありました。それに対し、この技術デモでは歩いている間に虹彩認証で本人確認できるのが特長です。これにより、高いセキュリティ(虹彩認証)と利便性(ウォークスルー)を両立させることができます。今後、実用化されれば多数の人々が通る改札やセキュリティゲートなどにおいて、利用者が立ち止まることなく歩いている間に高精度な虹彩認証による本人確認ができるようになります。
虹彩認証するコア部分の処理にはNEC独自の虹彩認証エンジンが使われています。NECの虹彩認証エンジンは2018年に米国国立標準技術研究所(NIST)による虹彩認証の精度評価で第1位を獲得*しました。そして、今回の技術デモでは、利用者の歩行中に本人認証を完了するため新たに2つ高速化技術が採用されています。一つは、前後の歩行状態から目の位置を予測することで撮影画像から目の部分だけを切り出した画像を生成する技術、もう一つは、撮影した複数の画像から虹彩認証エンジンの処理に適した画像を高速に選び出す技術です。NECで現在研究開発中の本技術については、2021年度までの実用化を目指しています。
「空飛ぶクルマ試作」の実機展示
2019年8月にNEC我孫子事業場で行われた実証実験で浮上に成功した実機(写真4)と試験飛行の動画を紹介して注目されました。NECは、航空・宇宙分野における航空管制システム・衛星運用システムなどで培ってきた管制技術や無線通信技術、無人航空機の飛行制御技術の開発実績及び重要インフラ分野でのサイバーセキュリティ対策に関する知見を有しており、これらの技術・知見を活用して、空飛ぶクルマのための新たな移動環境の実現に向けた検討を進めています。
NEC Safer Cities
情報社会の次に来るのが「科学技術イノベーションが先導する超スマート社会」であるというのが、政府の「第5期科学技術基本計画」(通称「Society 5.0」)です。高齢化・人口減少・インフラ劣化などの課題に直面する日本が、諸課題を戦略的に解決していくカギは、実社会におけるデータの利活用サイクルにあります。NECは、人々がより自由に、個人の能力を最大限に発揮して豊かな生活を送ることのできる、安全・安心で、効率・公平なスマートシティの実現に貢献します。このゾーンではその具体的事例を中心に紹介しました。
デジタル革命で実現するスマートシティ
「高度なICT活用」と「共創活動」によるスマートシティ実現のコンセプトと、事例紹介の展示を行いました。コンセプトでは「都市運営におけるデータ利活用」を直感的に体験できるジオラマを展示しました(写真5)。ジオラマでは「防災・広域連携」「平時・有事の産・官・民データ連携」の2種類のデモンストレーションを紹介し、AIやセンサーなどが都市データを可視化・分析し、オープンプラットフォーム「FIWARE」による産・官・民の分野横断でデータを利活用する、「地域の共創」と「持続可能なスマートシティ」の実現イメージをアピールしました。「FIWARE」は欧州で生まれたオープンなIoTプラットフォームで、スマートシティの共創活動の展示では、高松市や加古川市における防災・観光・安全・安心など、「FIWARE」を活用したデータ利活用基盤サービスによる実証事例を紹介しました。
一人ひとりのデータからパーソナライズされた健康ケア
AIで過去の健康診断結果を解析し、将来の健康状態を知り、生活習慣の見直しなどに役立てるNECの「デジタル・ヘルスケア」ソリューションは、これまでにも豊富な実績を重ねています。
今回は、AIでの健康診断結果解析に加え、健康管理増進のため、歩行状態を見える化する、靴や中敷き(インソール)型の薄型のウェアラブル慣性センサーを紹介しました。慣性センサー(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いて歩行状態を3次元計測し、取得した歩行計測データからその人の健康歩行状態に合わせた改善アドバイスを行うことが可能です。担当者は、「1日1万歩のように単にたくさん歩くだけではなく、姿勢を正し、リズム良く歩くことでよりよいウォーキングになると考えている。このセンサーで自分の歩行の質(≒歩容)を見える化し、健康管理増進のきっかけとして役立てて欲しい」と話しました。
NEC Value Chain Innovation
地球規模で顕在化している社会課題を解決し、ビジネスの成長や人々の安定した生活を継続するためには、社会あるいは産業の最適化や効率化が不可欠なテーマとなっています。NEC Value Chain Innovationのゾーンでは、5GやAI/IoTなど、最先端の技術を取り入れ、さまざまな産業における社会課題解決に向けた取り組みについて紹介しました。
これからの省人型店舗を体感
今や新しい社会インフラともいわれるコンビニエンスストアですが、労働力不足などが深刻な課題となっており、デジタル技術を活用することによる「快適・便利」な省人型店舗の実現に向けた取り組みが始まっています。今回のステージでは都内にある実際の先進的な店舗とリアルタイム中継し、どのような技術が導入されているかに加え、より快適で便利な新しい買い物体験を紹介しました。顔認証でスムーズにウォークスルー入店し、顔認証のセルフレジで素早く決済するまでの一連の体験は、非常に多くの聴講者を集め、関心の高さがうかがえました。店舗運営の面では、店舗の来店者人数/属性/行動などのデータを映像分析により“見える化”し、そのデータを活用することでマーケティングにも役立つことを紹介しました。
5G活用が期待されるモビリティとNEC DX FACTORY
「超高速・大容量通信」「多数同時接続」「超低遅延」などの特徴を持つ5G通信実用化時代を迎え、どのような活用ができるのかに関心が集まっています。今回の展示では、まずモビリティソリューションとして、NEC玉川事業場に置かれたクルマ(ミニチュアの無線操縦車)を会場から遠隔操作するデモンストレーション(写真6)が関心を集めていました。「適応ネットワーク制御技術」及び「適応映像配信制御技術」をクルマと管制センターに組み込み、変動する混雑した通信環境でも、安定して高品質な映像配信を行い、高度な遠隔監視や遠隔操作の実現が狙いです。また、例年多くの人が関心を寄せる「NEC DX FACTORY」でも5Gの活用がテーマ。製造現場におけるローカル5Gを活用したロボットの遠隔操作のデモンストレーションなどを行いました。更に、従来のIT領域に加えOT領域でもデジタル化が加速し、自働化、自律化、リモート化が進展するとともに、人・設備・ロボットが有機的、自律的につながった、より高度なものづくりを紹介しました。
社会・産業・生活を変革する先進デジタルプラットフォーム
誰もがデジタルの恩恵を享受し、デジタル変革を実現するために、AIや生体認証、5Gやクラウド、セキュリティなど、変革に必要不可欠なテクノロジーを活用したプラットフォームを紹介したのがこのゾーンの展示です。最先端AI技術群「NEC the WISE」や生体認証「Bio-IDiom」など、NECが世界に誇る先進技術は、DX(デジタルトランスフォーメーション)社会のプラットフォームをコア技術として支えています。
IoT化で新たに生じるリスクに対応するセキュリティ
工場、店舗、設備だけでなく自動車や医療分野でもIoTの利活用が進んでいます。しかし、インターネットに接続された各種デバイスやエッジコンピュータの誤作動や、サイバー攻撃(サービス停止、不正操作、情報漏えいなど)も急増しています。近年、明らかになってきたのは、「要員の不足」「既設ネットワーク設備との不適合」「低スペックなIoT機器のセキュリティ対策が不十分」などといった課題です。今回の展示では、特にエッジ/デバイスのセキュリティ強化対策を取り上げ、従来のエッジ/デバイスのID・認証情報集中管理や未登録信号をエッジ側で遮断するソフトウェアに加え、低スペックデバイスでも使用可能なNEC独自の「軽量暗号 開発キット」「軽量プログラム改ざん検知 開発キット」などの新製品を紹介しました。
「5G+ロボティクス」による産業DX
「適応予測制御技術」を組み入れたロボット(自律運転)システムと5G通信を組み合わせて産業分野のDXを加速させる。そんなコンセプトを分かりやすく紹介したのが、大手建設会社と共同で開発した「建設機械の自律運転」のデモンストレーション(写真7)でした。会場に設けた「建設現場」では、ミニチュアの油圧ショベルが土砂をすくってダンプカーに移す様子を見せていました。分散配置したさまざまなセンサーデータを「5G通信」でリアルタイムに収集し、NECの「適応予測制御技術」により高精度でリアルタイムの制御を可能にしています。トンネル工事での土砂排出作業のような膨大な繰り返し作業を自動化することで、建設業界の深刻な人手不足の解消につながると期待されています。
複雑な社会問題を解決する量子コンピュータ
従来方式のコンピュータが不得意としてきた複雑な大規模計算に役立つことが期待される「量子コンピュータ」は、世界中でさまざまな方式による実用化が進められています。NECは20年以上前から超電導方式による量子コンピュータの研究開発を進めてきました。現在は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業のもとで、量子コンピュータの1方式である量子アニーリングマシンの開発プロジェクトを推進しています。今回は、NEDOプロジェクトで制作した量子アニーリングマシンのモック(高さ約2m)を展示(写真8)。軀体は冷却装置と多くの配線で構成され、最深部の先端に8個の「超電導パラメトロン量子アニーリング素子」が取り付けられているのを見ることができます。また、ベクトル型スーパーコンピュータ SX-Aurora TSUBASA上に実装した、シミュレーテッド・アニーリング方式で人員のシフト最適化問題を求解するデモンストレーションも行い、既存の半導体技術でありながら圧倒的な能力を示しました。その用途は、科学技術分野はもとより、工場の生産管理や金融のポートフォリオ管理などにも広がると期待されています。
宙(そら)への挑戦
2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、リュウグウへのタッチダウンに成功し、2020年末に地球に帰還する予定です。経済産業省による支援のもとでNECが主体的に取り組んだ研究開発プロジェクトである「ASNARO」プロジェクトは、2014年に高性能小型光学衛星の「ASNARO-1」が、2018年に高性能小型レーダー衛星の「ASNARO-2」が打ち上げられ、後者は2019年の台風19号による河川の氾濫・水害の様子を克明に捉えました。また、地球より太陽に近い“水星”の磁気圏を探査する衛星「みお」は、国際水星探査計画「ベピコロンボ(BepiColombo)」に基づく日欧初の大規模共同プロジェクト。2018年10月に打ち上げられ、現在、水星に向かっている最中です。NECはこれら話題を集める衛星の開発・製造・運用に携わり、宇宙開発利用の進歩に貢献し続けています。会場には「はやぶさ2」のタッチダウンの様子を表現した実物大のジオラマ(写真9)を設置するなど、衛星ファンならずとも魅了される展示でした。
その他の展示やデモンストレーション
「未来体験ゾーン」「NEC Safer Cities」「NEC Value Chain Innovation」「社会・産業・生活を変革する先進デジタルプラットフォーム」の4つのゾーンの展示のほかにも、会場には来場者が体験・参加できる展示もありました。今回はそのいくつかを紹介します。
会場案内AIチャットボット
今回、会場案内をしたのは、展示会場の随所に置かれていた「AIチャットボット」です。展示や講演・セミナーなど、会場内での質問をキーボードで入力すると、モニター画面にチャット形式で回答してくれました(写真10)。この「AIチャットボット」には、最先端AI技術群「NEC the WISE」の「テキスト含意認識技術」を活用した「NEC 自動応答」が搭載されており、自然文の多様な表現を認識して高精度・高速に質問に答えます。また「NEC 自動応答」では、音声でのやりとりも提供しています。従来のテキストチャットでの自動応答に加え、電話やスマートフォンアプリ経由での音声を利用した対話・問合せ回答が行えるため、利用者の利便性の向上が図れます。
次の一歩を後押しする「体験ワークショップ」
AIやサイバーセキュリティなどの先端技術を「見る、知る、わかる」だけでなく、業務への活用を目指したワークショップが今年も開催され、多くの方が参加しました。AIのワークショップではさまざまなビジネス課題を事例に、データ分析の基礎や企画力、人材育成力のノウハウを、またサイバー攻撃のワークショップではその手口や具体的対策、NECの実績なども紹介し、参加者は熱心に聞き入っていました。
虹彩情報から生まれるユニークなデザイン
虹彩認証とは、人によってその模様が異なる虹彩を使って本人認証するものです。NECは、この唯一無二の生体情報を、一人ひとりにパーソナライズされたものづくりという新たな目的に転用する試みを進めています。虹彩情報をグラフィックパターンに変換し、その人のためだけの個性的で多様なファッションアイテムやアクセサリーとして表現しようというもので、江戸小紋の職人やジュエリーデザイナー、ガラス工芸家などとコラボレーションしています。今回、参加者の虹彩を実際に撮影し、その人だけのデザインが描かれたステッカーを印刷してプレゼントしました(写真11)。円や半円が並ぶモノクロのパターンがおしゃれで、人気を集めていました。
関連URL
- C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2019特集
- NEC Safer Cities
- NEC Value Chain Innovation
- 生体認証 ~Bio-IDiom~
- NEC CAN
- Fast Travel
- 成田空港の新しい搭乗手続き「OneID」にNECの顔認証システムが採用決定
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- NEC DX Factory
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- 最先端AI技術群 ~NEC the WISE~
- IoTセキュリティ
- 土砂の積み込み作業を自動化するバックホウ自律運転システムを開発
- ローカル5G
- 量子アニーリングマシンで、夢の量子コンピュータを実用化に導く
- 宙(そら)への挑戦
- NEC 自動応答
- NECアカデミー for AI
- サイバーセキュリティ プロフェッショナルな人材の育成
- NECのデザイン