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空港の税関検査場の混雑緩和とスムーズな手続きを実現する税関検査場電子申告ゲート

社会システムのDXを実現する技術 ~ 空港のDX

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大、世界人口の増加や国際行事への観光客の招致、及び日本の労働人口の減少など、世界の状況は日々変化しています。それらに対応するために、NECは税関検査場電子申告ゲートを提供しました。これにより、税関検査場の混雑の緩和、増加し続ける入国旅客の円滑な入国と待ち時間の短縮に貢献します。NECの世界No.1の顔認証技術及び空間デザインなどにより、訪日旅客の安心、ストレスフリー、及びスピーディな税関手続きを実現します。NECは、「NEC I:Delight(アイディライト)」のコンセプトを通じて、世界や日本を取り巻く環境の変化に対応した「より快適な体験」を提供していきます。

1. はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、COVID-19)の感染拡大の一方で、世界人口の増加や国際行事への観光客の招致などにより訪日外国人はまた増加していく可能性があり、空港での感染症対策がより一層注目されています。また、出入国手続きのデジタル化の加速も予想されます。本稿では、空港を取り巻く環境に対応する、安心、ストレスフリー、及びスピーディな税関検査場電子申告ゲートについて概要と特徴を紹介します。

2. 税関検査場電子申告ゲート

税関検査場電子申告ゲートについて説明します。

2.1 税関検査場電子申告ゲートの概要

税関検査場の混雑の緩和、増加し続ける入国旅客の円滑な入国と待ち時間の短縮を図るため、日本の税関検査場には税関検査場電子申告ゲートが導入されています。ターンテーブルに手荷物が出てくるまでの待ち時間に電子申告端末を利用して、「携帯品・別送品申告書」を電子的に提出することができます。この場合、書面の申告書の提出は必要ありません。手荷物を受け取った後、電子申告ゲートへ進むとウォークスルーの顔認証技術によって立ち止まることなく、スムーズにゲートを通過できます。デジタル化によるスピーディな税関手続きの実現とともに、人と人との接触を軽減し、COVID-19の感染対策にも寄与しています。

2.2 税関検査場電子申告ゲートの利用方法

税関検査場電子申告ゲートを利用するためには、まず、税関申告アプリをスマートフォンやタブレットにダウンロードして、「携帯品・別送品申告書」の情報が含まれたQRコードを作成します。税関申告アプリは、オフラインでも利用可能なアプリケーションです。事前にダウンロードしておくことで、Wi-Fiなどの通信環境のない航空機の中でもQRコードを作成することができます。また、2回目以降は、前回入力した情報を利用して、QRコードを作成することができます。

次に、税関検査場に設置された電子申告端末に、作成したQRコードとIC旅券(パスポート)をかざして、「携帯品・別送品申告」情報などの読み取りを行います。電子申告端末の画面の案内に従って手続きを完了させたら、電子申告ゲートに進みます。

電子申告ゲートを通過した後*は、税関検査場の出口から空港の到着ロビーに出て、入国となります。

なお、この一連の手続きの間に、顔認証による本人確認が行われています(図1)。

図1 税関検査場電子申告ゲートの利用方法
  • *
    税関職員の質問、検査を受ける場合があります。

2.3 税関検査場電子申告ゲートの導入空港

2021年4月時点では、成田国際空港、羽田空港、関西国際空港、中部国際空港、福岡空港、新千歳空港、及び那覇空港の7つの空港で利用することができます1)

なお、上記の7つの空港以外にも、2021年度中に、税関検査場にQRコードリーダーの設置を予定しており2)、税関申告アプリを利用した「携帯品・別送品申告書」の電子的な提出が可能になります(図2)。

図2 「携帯品・別送品申告書」の電子的な提出

3. 税関検査場電子申告ゲートの特徴

税関検査場電子申告ゲートの主な特徴は、次のとおりです。

3.1 電子申告端末

電子申告端末は、空港の税関検査場に設置されています。税関申告アプリで作成したQRコードとIC旅券(パスポート)を読み取らせ、案内に従って手続きを進めることにより「携帯品・別送品申告書」の提出手続きが完了します。また、端末で手続きをする間に顔写真を撮影し、旅券(パスポート)のICチップの顔画像と照合して本人確認を行います。なお、撮影した顔写真は、本人確認のための照合及びゲート通過時の顔認証に使用し、使用後は速やかに削除されます。

この電子申告端末は、バリアフリー設計となっています。筐体の高さを変更可能とし、ポール型の形状とすることで、子どもや車いすを利用する方など、さまざまな方の手が操作画面に届きやすくなるよう工夫しています。また、操作中には手続きの流れなどについて音声ガイダンスやアニメーションが流れるため、初めて利用する場合でもスムーズに申告手続きすることができます(図3)。

図3 バリアフリー設計の電子申告端末

3.2 電子申告ゲート

電子申告端末での手続きを完了させ、電子申告ゲートに進むと、出口ゲートに向かう間に、再度、顔写真撮影と顔認証が行われるため、歩きながらスムーズに電子申告ゲートを通過することができます。なお、撮影した顔写真は、ゲート通過時の顔認証に使用し、使用後は速やかに削除されます(写真1)。

写真1 電子申告ゲート

この電子申告ゲートは、扉の間口を十分に確保しており、荷物を積んだカートを押したままでも、キャリーケースを引いたままでも、車いすを利用する方も、スムーズに通過することができます。また、旅客が通過する間に装飾品を検知することができますので、顔認証を妨げるサングラスなどを装着した旅客にそれを通知し、速やかに本人確認ができるように工夫しています。

3.3 ピクトサインなどによる空間デザイン

電子申告端末や電子申告ゲートの設置場所及び旅客の動線を、旅客が視覚的かつ容易に認識できるように、壁面や床面にピクトサインを貼付したり(写真2)、天井から電子申告ゲートなどの垂れ幕を吊り下げたり、デジタルサイネージに案内表示をしています(写真3)。これによって税関検査場電子申告ゲートの利用が「快適な体験」になるように工夫しています。

写真2 壁面や床面に貼付されたピクトサイン
写真3 電子申告ゲートの垂れ幕やデジタルサイネージ

4. 導入技術

税関検査場電子申告ゲートに活用されているNECの技術を説明します。

4.1 世界No.1の顔認証技術

この税関検査場電子申告ゲートには、NECの世界No.1の顔認証技術が活用されています3)。米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology:NIST)が実施したFace Recognition Vendor Test 2018(FRVT2018)という最新の顔認証技術のベンチマークテストで、1,200万人分の静止画の認証エラー率0.5%という、他社を大きく引き離す第1位の性能評価を獲得しました(図4)。

図4 顔認証の精度評価で第1位を獲得

4.2 優れたデザイン性

税関検査場電子申告ゲートは、「税関検査場での電子的な手続きをトータルにデザインし、顔認証技術を生かした総合的なサービスデザインであること」などが高く評価され2019年度グッドデザイン・ベスト100に選ばれました(図5)。さらにデザイン界のアカデミー賞とされるドイツの「iF DESIGN AWARD 2020」も受賞しました(図6)。

図5 2019年度グッドデザイン・ベスト100
図6 「iF DESIGN AWARD 2020」

5. 「NEC I:Delight(アイディライト)」

「NEC I:Delight(アイディライト)」(図7)は、顔や虹彩を使った生体認証を共通のIDとして、複数の場所やサービスにおいて顧客へ一貫した体験を提供するコンセプトです。旅行や買い物、通勤など、私たちの生活に関わるさまざまな場面をシームレスにつなげることで、安全で快適な体験を提供します。更に、一人ひとりが自分の好みにあった体験を楽しむことができます。個人のIDやデータの持ち主は個人が管理しながら、企業や自治体の複数のサービスが連携することで、これらの体験が可能になります。

図7 「NEC I:Delight(アイディライト)」

NECは、本稿で紹介した事例に加えて、これらの体験の実現を目指します。

6. むすび

COVID-19の感染拡大により、世界の状況は一変しました。今後、より一層の非接触、非対面による感染症対策が求められます。また、世界人口の増加や国際行事への観光客の招致、及び日本の労働人口の減少などにより、将来的に訪日外国人が増加する可能性があります。NECは、これらの世界や日本を取り巻く状況の変化に対応し、本稿で紹介した最新技術などを通じて「よりよい体験」を提供します。


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    QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
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    Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの登録商標です。
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    その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。

参考文献

執筆者プロフィール

鳥居 聡
第一官公ソリューション事業部
マネージャー
石井 伸明
第一官公ソリューション事業部
主任

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