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安全で快適な人の移動を支える交通系IC・モバイルチケッティングソリューション

Intelligent Logistics & Mobility

日本国内における交通系ICカード発行枚数は累計1億5千万枚を突破1)、首都圏利用率98%と、ライフスタイルに密着した社会インフラとして定着しました。海外では、新興国を中心に急速なインフラ・IT整備とスマートシティ構想の進展で、日本からの技術輸出機会が増加しています。NECは、Suica導入当初からICTでその発展を支え続けるとともに、そのノウハウを海外へ輸出し導入実績を築きました。これからも、非接触・非対面やシームレスな移動など、ライフスタイルの変化に合わせ、モバイルや生体認証などさまざまな技術を融合させた次世代ソリューションを創出し、便利で豊かな社会の実現にグローバルレベルで貢献します。

1. これまでのNECの交通系ICカードへの取り組み

NECは、2001年のSuica立ち上げ時から、構築プロジェクトに参画し、2020年までに日本国内の合計11ブランドの交通系ICカードに携わってきました(図1)。NECは、センターサーバから駅サーバまでの基幹システムの導入に携わっています。センターサーバは、ICカードの発行から廃札までのライフサイクルを管理し、駅サーバは、センターサーバと機器の間でデータの集配信を行います。ステークホルダーとしては交通事業者だけではなく、地域でのICカード導入において、地域社会の活性化に尽力する金融機関や国・県・市といった行政との連携・協力も得ながらシステムを導入、導入エリアを広げてきました。

図1 国内での交通系ICカード導入実績

また、NECは、交通系ICカードの付加価値・用途の拡大に対応し、進化を支えています。代表的な例は、売店やコンビニエンスストアの決済に利用できる電子マネーや、モバイル乗車券です。FeliCaチップ搭載の携帯電話・スマートフォンをモバイル乗車券・電子マネーとして利用できることで、どこでもチャージが可能となり、利用拡大に寄与しています。

2. 海外展開への取り組み

2.1 インドの安全・安心な交通インフラを支えるAFCS/ITMS

NECは、日本国内で培ってきた交通系ICカードの実績とノウハウの海外展開先として、インドのバス高速輸送システム(Bus Rapid Transit:BRT)市場に注力してきました。

政府が掲げるスマートシティ計画の最初の20候補にも選ばれているグジャラート州アーメダバード市では、自動料金収受システム(Automated Fare Collection System:AFCS)を中核とする高度交通運用管理システム(Intelligent Transport Management System:ITMS)を導入しました2)3)図2)。IoTやビッグデータ分析により、利用者の増加に応じた計画・統合・拡張などを柔軟にできる、安全かつ信頼性の高いインフラを実現しています。また、同州スーラト市でもAFCSを導入し、バス車内のリーダ端末やBRT駅の自動改札において、交通系ICカードのみならずQRコード券によるキャッシュレス決済を可能にしています4)

図2 高度交通運用管理システム (ITMS)

また、両市で導入された交通系ICカードは、インド決済公社が提供する独自の決済サービスRuPay(ルペイ)に準拠しており、バス・BRT乗車時のプリペイド決済の他、デビット・クレジットカードとして、カフェやレストラン、図書館、娯楽施設など街中で利用可能なため、市民に高い利便性をもたらしています。

2.2 インドスマートシティ事業への展開

バス・BRTなどで導入を進める交通系ICカードやデジタルチケットの更なる普及に向けて、次にNECが目指したのは、大型スマートシティ事業への参画です。その一例として、2019年10月、カリヤーン・ドンビヴリ市とスマートシティ開発全体のSI契約を締結しました5)。本プロジェクトでは、AIによる映像解析技術を搭載した高度交通管制システムや幅広いソリューションを導入する他、ITMSや駐車場管理システムとの連携も行っていきます。

NECは、さまざまな社会課題の解決に向けて、安全・安心・公平・効率なスマートシティの実現にも貢献していきます。

2.3 インド交通AFCS/ITMS事業の他国・多面展開

更に、NECは日本とインドで培ったノウハウを生かして他国へBRT事業を輸出すべく、現在サウジアラビアのメッカでもバス事業者向けITMSの導入を進めています6)

近年、メッカでは年間200万人以上の巡礼者が訪れており、より安全・安心で利便性の高い公共交通機関の整備が課題でした。本プロジェクトでは、800万枚もの交通系ICカードによるキャッシュレス決済を実現するAFCSや、およそ400台のバスの追跡や定時運行を支えるバス位置情報管理システム(Automatic Vehicle Location System:AVLS)などを導入することで、より利便性の高い安全で効率的なバス運行の実現を目指します。

また、インド隣国のバングラデシュやスリランカをはじめとするアジア各国で、鉄道向けにICTを導入するODA案件の動きが活発化してきています。鉄道は、バス・BRTに比べ、長期かつ高コストでの導入にはなるものの、モーダルシフトや交通渋滞緩和の効果は大きくなります。

そこでNECは、AFCSを基幹とする交通系ICTソリューションを鉄道向けにも展開し、複数事業者間で相互利用可能な交通系ICカードやQRコード券、モバイルチケッティングなど、安全で利便性の高いコンタクトレス・キャッシュレス決済インフラの提供に取り組んでまいります。更に、日本における交通事業者向けDXノウハウを活用し、お客様の既存サービス強化や新サービスの創出に貢献していきたいと考えています。

3. 新たな取り組み

3.1 日本国内市場の動向

従来、公共交通を利用した地域の主な移動手段は電車、バスでしたが、近年はオンデマンドバス、シェアサイクル、カーシェアなどさまざまなサービスが提供されています。

これらのサービス開始に伴い移動手段の選択肢が広がり、出発地から目的地まで、所要時間や費用、利便性など、利用者が自由に選択できるようになりました。

また移動手段の拡充は地域住民の移動だけでなく、国内外からの観光客に対しても利便性向上へとつながり、地域にとっての回遊性向上に寄与することが期待されています。

3.2 広島地区での課題

広島県広島市を訪問する観光客は年々増加しています。2004年までは900万人台でしたが、2018年には1,336万人となりました。また外国人観光客も2004年の20万人から、2018年には178万人へと増加しました。

広島電鉄株式会社様では観光客向けの乗車券として、電車一日乗車券や広島たびパスなどのラインアップがあり、近年では年間20万枚を販売していました。しかしこれらの乗車券は紙券のため、観光客は事前に購入できず、広島に到着後に窓口に立ち寄って乗車券を購入する必要があり、利便性の向上が求められていました。

3.3 MOBIRY構築の経緯

このような現状を受け、観光客の利便性の向上や地域内の回遊性を高める施策について、広島電鉄株式会社様と協議を重ねた結果、共同でのMaaSサービスの開発・構築を2019年7月より開始、2020年3月にサービスを開始しました7)

広島電鉄株式会社様向けMaaSサービス(正式名称:MOBIRY)はデータセンターに専用サーバを構築するのではなく、クラウド環境にバックエンドシステムを構築、またWebアプリケーションとしました。この結果、開発期間を短縮、検討開始から9カ月でMaaSサービスを提供することができました。

3.4 MOBIRYの特徴

2020年7月時点でのMOBIRYの特徴は次の3点となります。

  • (1)
    Webでの事前購入が可能
  • (2)
    8時間/24時間など、時間単位の乗車券
  • (3)
    高速バスとエリアフリー券を組み合わせたパック券も提供

今後は電車・バスだけでなく、オンデマンド交通やシェアサイクルなどさまざまな商業サービスと連携することで、更なる利便性向上に努めます(図3)。

図3 さまざまな商業サービスとMOBIRYの連携

3.5 インドマルチモーダルサービスへの拡張

海外に目を向けると、急速に経済が発展し人口が増加する新興国では、道路や公共交通といったインフラ整備がその需要に追い付かず、自家用車が増加して慢性的な渋滞が発生する、といった社会課題が発生しています。

その結果、人々の移動を支える新たな交通サービスが民間企業からも日々生まれていますが、移動の幹線となる公共交通と、情報や決済手段の統合がされておらず、結果として公共交通の利便性が下がり、自家用車への依存度が上がるという課題が生じています。

現在、NECはそうした課題を解決するために、2018年に設立したNECインド研究所とともに、都市に点在する公共交通やその他交通サービスの情報、並びに決済手段をモバイルアプリケーション上に統合し、住民にシームレスな移動体験を提供するソリューションを開発しています。そこに、NECが数多く保有する世界最先端のAIを活用すれば、集まったデータを元に消費者の行動を分析したり、需要予測を行うことも可能になります。

NECがこれまで培ってきた交通市場における知見、そして保有する数多くの先進技術を掛け合わせ、今後とも新たなソリューションを開発していきます(図4)。

図4 マルチモーダルサービスへの展開

4. 今後の展望

4.1 交通系ICカードを取り巻く環境変化と展望

これまで述べてきたように、NECは、安全で快適な人の移動を実現するために、交通系ICカードやモバイルチケッティングソリューションをさまざまな領域で提供してきました。そして、更なる快適な移動のためには、乗車券としてだけでなく、エンターテインメントなども含めた幅広い領域で活用できるチケッティングサービスが望ましく、なおかつユーザーの属性に応じたきめ細やかなサービスが求められていきます。また、そのためには、重厚長大な機器やその維持管理コストも効率化していく必要があります。そういったニーズのなかでは、従来のカード管理型のCard Base Ticketing(以下、CBT)方式ではなく、センター集約型のAccount Base Ticketing(以下、ABT)方式への移行が叫ばれており、NECは、双方の方式を踏まえながら、さまざまなソリューションを組み合わせ、社会価値創造を果たしていきたいと考えています。

4.2 ABT方式におけるNECの新たな価値創造

交通系ICカードは基本的にCBT方式を採用しており、ICカードにSF(StoredFare)残高が紐付いて管理されています。そのため、駅務機器側で高速な計算処理を行う必要性から駅務機器に求められるスペックも高くなり、乗車券の仕組み全体のコスト高の一因にもなっています。それがABT方式となることで、残高や個人情報が上位のセンターに集約され、駅務機器の低廉化を図ることが可能です。更に、ICカードだけではないさまざまな認証方式に対応することが可能であり、近年、新たな決済手段として浸透してきているQRコード決済や、ハンズフリーを実現できる生体認証決済など、利用シーンや事業者環境に応じた認証方式を選択していくことができます。

NECは、顔や虹彩をはじめとした生体認証領域において多くの実績を重ねており、生体認証を軸にさまざまなサービスをワンストップでつなぐソリューションを「NEC I:Delight」というコンセプトで体系化しています。また、5Gなどの次世代通信技術にも力を入れており、高速なデータ通信が求められるABTを支えるプラットフォームを提供していきます。

また、移動と属性情報がプラットフォーム上において紐付けられることで、これまで独立していた情報群がデジタル化して有機的につながり、デジタルマーケティングへの応用が期待できます。昨今では、シェア&サービスをはじめ、さまざまな形態で交通サービスが提供されており、移動手段は多様化してきています。NECは、それらのニーズに対して、最先端AI技術群「NEC the WISE」をはじめとしたAIとIoT技術群を組み合わせ、デジタルデータの活用・分析を行い、ラストワンマイルを含めた移動のトータルサポートを目指していきます(図5)。

図5 NECの考える次世代チケッティング

4.3 大きな社会環境の変化とNECの目指す姿

2020年春は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、あらゆる人の移動が抑制され、ステイホームが叫ばれてきました。今後は、新たな日常である「New Normal」として、徐々に制限が緩和されつつも、従来の常識とは異なる価値観のなかで日常が定義されていくと考えられます。交通領域においても、テレワークの加速による通勤や出張のあり方の変化、混雑の回避、非接触の推進など、さまざまな新しい価値観が生まれています。そのなかでNECは、前述のような多様な認証方式やデジタルマーケティングを活用した統合的なプラットフォームを提供し、New Normalにおける新たな移動の可能性を広げていきたいと考えています。

5. むすび

このように、これまで国内外において培ってきた交通系ICカードシステムの実績・ノウハウをもとに、国内におけるモバイルチケッティング事業とともに、インドをはじめとした海外でのスマートシティ・BRT事業へ展開してきました。今後も、さまざまな社会課題・社会情勢をリアルタイムにとらえながら、NECの新技術と融合させたイノベーションによる社会価値創造に貢献します。


  • *
    Suicaは、東日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。
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    FeliCaは、ソニー株式会社の登録商標です。
  • *
    QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
  • *
    その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。

参考文献

執筆者プロフィール

西 高宏
交通・物流ソリューション事業部
シニアエキスパート
原田 智之
交通・物流ソリューション事業部
主任
小椋 慎
交通・物流ソリューション事業部
主任
黒澤 一貴
交通・物流ソリューション事業部
浜野 真一
交通・物流ソリューション事業部
飯野 洋太
交通・物流ソリューション事業部

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