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Connected Manufacturing
~現場とデジタルとの融合で、製造業から産業の革新をもたらす~

製造業の事業環境における課題は、人材不足・技能継承・マスカスタマイゼーションへの対応だけではなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、サプライチェーンの分断や従業員の移動制限など、より多様化し複雑になってきています。

NECは、「Connected Manufacturing」により、製造現場やサプライチェーンをデジタルで融合し、製造業を起点としたバリューチェーンすべての業界をまたいだ革新をもたらしていきます。その1つの概念「スマートファクトリー」が目指す、「さまざまなデータから、生産性や変動対応力が高いものづくりを迅速に創り出す仕組み」、また「人が活き活きと働ける環境を創り出す仕組み」の実現について紹介します。

1. 事業環境を取り巻く課題

人材不足・技能継承の問題が深刻度を増し、マスカスタマイゼーションへの対応が求められるなか、デジタル化の波はあらゆる産業まで行きわたり、企業間の連携が促進され、相互の強みが結び付くことで競争力のある新たなイノベーションが次々と生み出されていく社会になっていきます。また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、COVID-19)の影響を受け、サプライチェーンの分断や従業員の移動制限が発生し、New Normal社会における新たな課題が想像を超えたスピードで表面化しています。製造業では特に、従来のQCD強化だけでなく、「工場の働き方が変わる」「サプライチェーンの見直し」「激しい製品需要変動」など、さまざまな変化への対応がますます求められています(図1)。

図1 New Normal社会における製造業の変化

このような社会に対し、サイバーとフィジカルの融合で、製造業から産業の革新をもたらすのが「Connected Manufacturing」です。

本稿では、NECが提案する「Connected Manufacturing」と、その概念の1つ「スマートファクトリー」について説明します。第2章では「Connected Manufacturing」が目指す世界、第3章では「スマートファクトリー」の実現、第4章では適用事例:AI・IoTを活用した「プロセスイノベーション」、第5章では事業・ソリューションを支えるテクノロジー、第6章ではNECが描く「スマートファクトリー」の将来像について説明します。

2. 「Connected Manufacturing」が目指す世界

「Connected Manufacturing」は、工場やサプライチェーンのスマート化を実現する「スマートファクトリー」と、モノ売りからコト売りへの変化を促す「Product Innovation」で成り立っています。

「スマートファクトリー」とは、デジタルデータの活用によるQCD改善の高速化・自律化やライン自働化、製造間接業務の自働化・リモート化への対応による工場のスマート化を目指します。更には、サプライチェーン全体の自働化/自律化を進めることで、人がより強みを発揮できる高度な経営判断・意思決定への注力を可能とし、環境への配慮や急激な需要の変化に対応すること、と考えています。またプロセス業においては、消費財領域におけるマーケティングや需要予測、生産財領域の品質保証、新素材開発、建設領域における作業員の生産性向上などを、デジタル化により実現することも視野に入れています。

「Product Innovation」とは、サービス領域、セールス領域において、デジタルデータを活用して、顧客事業のビジネスモデルを変革することです。

「Connected Manufacturing」は、これらを通して産業の垣根を越え、アイデアやリソース、ノウハウを結び付け、今までにないイノベーションを生み出す「お客様のビジネスモデル変革」を目指しています(図2)。

図2 NEC Value Chain Innovation事業全体像と「Connected Manufacturing」

3. 「スマートファクトリー」の実現

NECでは「スマートファクトリー」を「さまざまなデータから、生産性や変動対応力が高いものづくりを迅速に創り出す仕組み」であり、「人が活き活きと働ける環境を創り出す仕組み」である、と定義しています。こうした姿は工場内のスマート化だけでは実現できません。「工場内のスマート化」と、企業間にまたがった「バリューチェーンのスマート化」の2つの方向性で取り組むことで「スマートファクトリー」が実現できると考えています(図3)。

図3 NECの考える「スマートファクトリー」

3.1 工場内のスマート化

工場内のスマート化は、大きく3つのステップがあります。1つ目は「デジタルデータ活用によるQCD(品質、コスト、納期)改善の高速化、自律化」です。これは製造業にとっての普遍的な価値である「スループット向上」「品質管理強化」のための改善サイクルを、デジタル技術により高度化する取り組みです。2つ目が「ライン自働化、自律制御」です。フィジカルなOT(制御技術)領域において、自働化領域を更に広げる取り組みです。これらを実現するにはAIやロボット、各種センシング技術の他に、工場内ネットワークの高速化などが重要になります。そして3つ目が「製造間接業務の自働化、リモート化」です。「スマートファクトリー」では、製造に携わる直接業務だけを対象にするケースも多いですが、実際には工場のなかでも生産管理や生産技術、品質管理など多くの間接業務が存在し、多くは効率的だとは言えない状況で運用されています。今後、人材不足がより深刻化し、COVID-19の影響によりテレワークが拡大するなかで、間接業務についてもリモート化などを進めることで、効率化や集中化が可能になります(図4)。

図4 工場内のスマート化

3.2 バリューチェーンのスマート化

次に、工場内での取り組みに加え、企業間にまたがったバリューチェーンのスマート化が求められます。デジタルデータを活用することで、企業の壁を乗り越えて、改善サイクルの高度化や自働化、自律化などを行うことができ、バリューチェーンを通してデリバリースピードの向上や在庫削減、高度なトレーサビリティ管理を実現できます。New Normal 社会において、対面でサプライヤからの詳細情報を入手することができないなか、これらの基盤を活用し、サプライヤとコミュニケーションを行うことが重要になります。

3.3 ものづくりの現場課題

ものづくりの現場は一律ではないため、それぞれの形態により現場課題も異なります。そこでNECでは「ジョブショップ型」「プロセス型」「フローショップ・組み立て型」「プロジェクト型」という4つの形態に応じた改善シナリオをベースに各種ソリューションを提供しています(図5)。

図5 ものづくり形態ごとの課題

「ジョブショップ型」や「プロセス型」は、装置を対象にした場合がほとんどであり、AIを使った品質分析や、自律制御に向けた取り組みが進んでいます。従来、装置産業では多くのデータを取得し管理が行われてきましたが、属人的な仕組みから抜け出せていないことが課題になっていました。熟練の技術者がリタイアしていくなかで、デジタル化が困難だった部分にアプローチしており、データ分析の結果からどのようなアクションをとるべきかを技術者に自動でフィードバックすることを目指しています。

「フローショップ・組み立て型」は、人手による作業が多いことが特徴です。ここでは、作業手順を音声や画像で案内し、省人化や作業ミスを撲滅する機能や、AIを用いた外観検査などが有効です。

「プロジェクト型」で作る製品、例えば人工衛星や大型発電機などは受託型生産ですが、これらは生産工程での繰り返し作業が多くありません。加えて人的作業への依存度も高く、データ活用へ結び付けにくいところがあります。そのため、まずは人作業の見える化、デジタル化を進めることで、課題解決の糸口を探ります。

また「スマートファクトリー」を進める際、どのような組織でどのように企画構想を実行するべきかについて課題になることがあります。NECは市場や経営課題から具体化を進める「グランドデザイン型」と、特定課題やソリューション選定から進める「効果確認型」の2つの進め方を、お客様の状況に応じて提供しています(図6)。

図6 NECの考える「スマートファクトリー」検討の進め方

3.4 「スマートファクトリー」を実現する未来のものづくりコンセプト「NEC DX Factory」

NECでは、デジタル技術で「スマートファクトリー」を実現する未来のものづくりコンセプト「NEC DX Factory」を提唱しています。「NEC DX Factory」は、NECが実践してきたIoTやAIへの取り組みをソリューション群として具体化したもので、設計から製造、出荷、物流までのすべてのプロセスをデジタル化し、バーチャルでシミュレーションした後、フィジカルにフィードバックし、ものづくりの革新につなげる、というコンセプトになっています(図7)。

図7 「NEC DX Factory」全体イメージ

これらを実際に形にした「NEC DX Factory 共創スペース」をNEC 玉川事業場内(神奈川県川崎市)に立ち上げており、ここで次世代製造ラインを体験していただきながら、将来のものづくりのあり方を議論するような取り組みを進めています。既に100社以上のお客様にご来場いただき、具体的なものづくり革新について検討を進めています。

4. 適用事例:NECプラットフォームズ株式会社

NECプラットフォームズ株式会社では、NEC Industrial IoT Platformを活用し、複数工場の生産ラインにおける品質や稼働状況など、人・設備・モノに関する情報のリアルタイムかつ一元的な見える化を行い、経営者・工場管理者・現場の各階層でのタイムリーかつ適切な意思決定の支援を実現しました。また、NEC独自の「物体指紋認証技術」やAI技術を活用することで、トレーサビリティ強化、品質向上を実現し、50%の生産性向上につながりました(図8)。

図8 製造業NECで改革を推進してきた実装効果

5. 事業・ソリューションを支えるテクノロジー

NECではNEC Industrial IoT Platformを中心としたあらゆるソリューションやアプリケーション群を展開し、製造業のお客様の状況に応じて課題を解決していきます(図9)。

図9 「NEC DX Factory」ソリューションマップ

これらのソリューションは、NECの生産工場であるNECプラットフォームズ株式会社で実際に使用され、効果を創出しています。NECでは、ソリューション開発と製造現場での活用が一体となって進められることで、製造業のお客様においても効果を実感しやすい形での提供が可能になっています。

6. NECの描く「スマートファクトリー」の将来像

今後、更に「スマートファクトリー」を進化させ、ブレークスルーにつなげる大きな技術革新が、ローカル5Gです。5Gが持つ超高速、超低遅延、多数同時接続といった特性を生かし、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速していきます。

5Gを含めた未来の工場の目指すべき(あるべき)姿は、「生産ラインの在り方」と「人の働き方」が変わることにあると考えています。作る品種や生産量が急激に変わっても、自働化や無線化によるデータ活用が進み、生産ラインのレイアウトや人の配置を大きく変更する必要がなくなっていくと考えられます。

また5Gを活用することにより、遠隔操作・制御ができるようになり、自宅・オフィスから現場を管理したり、ストレスのたまる作業や体力的にきつい作業も、快適な環境から楽に操作できる、といったことが可能になります。

これらにより製造業における人材不足の問題は抜本的に改善され、かつてない柔軟な働き方が可能となります。これこそが将来の人間とロボットの協働のあり方だと考えています。

労働人口が激減し、New Normal社会において現場に行くことが困難、など課題があるなかで、NECはこれからの工場を「労働力不足の心配もなく、人が活き活きと働ける魅力ある工場」へと変えていきたいと考えています。更には工場内でデジタル化されたあらゆる情報は、今後工場内にとどまらず、工場が立地する街へと広がることで、ものづくりだけでなく街の暮らしも変わっていくかもしれません。NECはデジタル技術を活用して、お客様にとっての価値を一つひとつ実現しつつ、将来を見据え、New Normal 社会においても人が活き活きと働ける「スマートファクトリー」を目指していきます。

執筆者プロフィール

北野 芳直
スマートインダストリー本部
主幹
吉村 槙浩
スマートインダストリー本部

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