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日本のプロセス産業の課題を解決!AVEVAとNECが実現するデジタル変革日本のプロセス産業の課題を解決!AVEVAとNECが実現するデジタル変革

日本のプロセス産業の課題を解決!
AVEVAとNECが実現するデジタル変革

特別企画:AVEVA×NECスペシャル対談【2024.10.25】

カテゴリ:SCM/MES/FSM生産技術・製造

[目次]

NECはこのほど、製造業向けソフトウェアにおいてグローバルで数多くの実績を持つAVEVA株式会社(以下、AVEVA)との協業をスタートさせました。これにより、日本のプロセス産業のお客様のDXを推進し、高品質・高効率なものづくりを持続的に行うデータドリブン型ものづくりの実現に貢献することを目指していきます。
そこで、日本のプロセス産業の課題や解決の方向性、この協業がご提供できる価値などについて、AVEVAのバイスプレジデント・日本統括の小暮正樹氏と、NEC第二製造ソリューション統括部長の三島武典に聞きました。

AVEVA株式会社 バイスプレジデント・日本統括 小暮正樹氏
日本においてソフトウエアベンダーのセールスマネージャーとして、
ダッソー・システムズ株式会社CATIAブランドセールスのジャパンセールスマネージャー、
PTCジャパン株式会社ALM事業部のシニアセールスマネージャー、
日本オラクル株式会社Construction & Engineering Global Business Unit北アジアのジェネラルマネジャーを経て、
2019年よりAVEVA株式会社に入社し現在はVP日本統括。

NEC 第二製造ソリューション統括部長 三島武典
NEC入社後、営業としてプロセス製造業から大手電機メーカーまで幅広く担当し、
これまで数多くのものづくり現場へのソリューション提案・導入支援など、豊富な経験を持つ。
2023年から第二製造ソリューション統括部⾧を務め、プロセス製造業のお客様のDX推進と
最適なソリューションの提供を推進している。

●プロセス産業を支援するAVEVA社とNECの強み

――まず、AVEVA社の事業内容や特長についてお教えください。

AVEVA株式会社 バイスプレジデント・日本統括 小暮正樹氏
AVEVA株式会社 バイスプレジデント・日本統括 小暮正樹氏

小暮氏 AVEVAは1967年にイギリスのケンブリッジで設立され、現在は世界約40か国で約1万6,000社のお客様を擁しているソフトウェア企業です。日本の現地法人は1998年に設立されました。

お客様は製造業の中でも特に化学や食品、医薬品、素材などのプロセス産業を得意としており、カーボンニュートラルやDXに積極的に取り組むお客様に対してデータドリブンな経営をご支援するクラウドソリューションをご提供し、お客様のサステナビリティに貢献することを目指しています。
当社はこうしたお客様のあらゆるライフサイクルにおける課題にお応えするために、様々なソリューションを揃えるべく戦略的なM&Aを繰り返してきました。

個々のソリューションでの競合は数々存在していますが、その全体をカバーしている存在としてはグローバルでも唯一無二であると自負しています。

――次に、NECの第二製造ソリューション統括部について教えてください。

NEC 第二製造ソリューション統括部部長 三島武典
NEC 第二製造ソリューション統括部長 三島武典

三島 第二製造ソリューション統括部は、日本のプロセス産業のお客様に対して、システム化などについてのコンサルテーションからシステムの構築、運用までを一貫してご提供してきた部門です。

長年に渡ってお客様とお付き合いする中で、お客様の環境変化や改革の方向性を常に学びながら最適なサービスをご提供してきましたが、特色としては、NEC自身が製造業であるという点にあります。

社内ではよく“クライアントゼロ”※と呼んでいますが、弊社自身をゼロ番目のユーザーとして施策に取り組み、うまくいったこと、いかなかったことを含めてお客様にお伝えし、共に最適な施策を考えてご提供しています。つまり、“絵に描いた餅”ではなく、実際に改革を進めるパートナーたるところが弊社の強みであると自負しています。

※参考:NECのものづくり領域 クライアントゼロの取り組み

●NECとAVEVAの協業の背景と狙い

――両社の協業の背景や経緯について教えてください。

三島 提携は2021年の半ばから検討を始め、2022年5月に正式に成立の運びとなりました。※
AVEVA社の「AVEVA PI System」が元々日本の化学業界に広く使われているという実績がありましたが、NECとしては、グローバルのプロセス産業において豊富な実績を持つAVEVA社をパートナーとし、NECの強みを組み合わせることでより効果的なソリューションをご提供できると考えたことが背景にあります。

従来、お客様はこれまで工場での設備データ収集システムをスクラッチで開発していましたが、AVEVA社のプラットフォームを活用することで、より早く属人性を排除したシステム導入を図ることができます。また、お客様がグローバル展開を図っていく中で、AVEVA社のプラットフォームを活用すれば全世界の拠点で統一された仕組みを活用できることも大きな要因です。

小暮氏 日本企業にはものづくりに対する固有のこだわりがあるとともに、AVEVA本体としては言葉の壁があります。こうしたハードルを越えてAVEVAのソリューションを日本にローカライズさせることがお客様のニーズに応える上で重要になりますが、弊社自身がお客様一社一社にきめ細かくご対応するにはリソースが不足しているという実情があります。また、「AVEVA PI System」が使われていても知名度はまだまだ低いという課題もあります。
その点で、NECさんは日本における認知度の高さや日本企業との関係性の深さという強みがあり、弊社がこれから日本のプロセス産業を広くご支援していくには欠かせないパートナーであると認識し、協業を決めさせていただきました。

AVEVA株式会社 バイスプレジデント・日本統括 小暮正樹氏とNEC 第二製造ソリューション統括部部長 三島武典の対談の様子

●人材不足や省力化、日本のプロセス産業が抱える根本的な課題とは?

――協業していく対象である日本のプロセス産業には、どういった課題があるとお考えですか?

三島 そもそも装置産業であるプロセス産業は温室効果ガス排出抑制に向けて強化されている規制や社会的要請に応えていかなければなりません。また、戦争や米中対立などの国際政治問題、ROIC向上等資本市場からの要請への対応など、様々な経営環境の変化に対応する必要もあります。

こうした環境変化にあって、国内市場が総じてシュリンクする中、どの企業にもグローバル展開が求められていると言えます。
例えば化学や鉄鋼などの素材産業では、グローバルでの競争が激化する中で日本企業としては、高付加価値なものづくりで差別化するなどの必要があります。
また、デリバリー先を世界中に広げていくための生産体制の整備も必要になっていると思います。

小暮氏 日本のプロセス産業は、自社独自のものづくり品質を高めることに傾注する傾向が強いですね。一方で、生産効率を上げるためにデジタル化を進めるという姿勢が海外企業に比べて弱いように思います。ものづくりの品質において「海外とは違う」との自負が根強く、海外発の技術に対して独自のカスタマイズなしで受け容れることを良しとしないからではないでしょうか。
これまでは、こうした品質の維持向上はマンパワーに頼ってこられましたが、最近になって続々とこうしたスキルを持つ人材がリタイアし、真の人材不足に陥っていると見ています。省力化は待ったなしの状況にあると言えます。ですから、海外企業のデジタル化への取り組みに対して、いいものは柔軟に評価し取り入れる姿勢も必要ではないでしょうか。

一方、部品製造や組み立てなどのディスクリート産業においては、比較的デジタル化が進んでいますね。この産業では、ISOやIECなどの規格や法規制という非競争領域に対して日本企業が不利にならないための働きかけも見られますが、プロセス産業では業界一丸となっての対応が不足していると思います。このままでは、グローバル市場で淘汰されかねない業界も出てくるのではと危惧しています。

三島 欧米企業は人材の流動性が高いので人に依存しない仕組みが必要であるのに対し、日本企業は流動性が低いので属人的にやれてきたという違いがあると思います。

小暮氏 欧米企業には、「DXに取り組まないと今後どうなるかわからない」といった危機意識が強くありますね。

三島 それと、先ほど小暮さんも言われたとおり、日本企業はものづくりに拘りを持っていて、工場内における品質や生産性の向上には強みがあります。リードタイムを何分何秒縮めるかというところまで突き詰めていらっしゃいます。
しかしながら、サプライチェーンで見ると、工場出荷後、実は在庫が何十日分も積みあがっているといった不整合な状況も起こっています。

●環境変化や多様化するニーズへの対応力

――こうした課題を克服するためにどのようなことが必要であるとお考えですか?

小暮氏 今のお客様は「品質のいいものを買う」というより「欲しいものを買う」のだと思います。お客様のニーズが多様化していく中で、変化するニーズに機敏に対応する必要がありますね。プロセス産業の製品の品質面では、中国企業が日本企業に追いついています。そうなると、競争力の差はお客様の要求への即応性にシフトしていきます。

三島 多様化、変化するニーズに機敏に対応するには、多品種少量の製品を短サイクルで市場へ供給できる仕組みづくりが必要です。そのためには、メーカー一社だけでなくサプライチェーン全体で対応しなければなりません。その点で、プロセス産業のサプライチェーンは数多くのプレーヤーで構成されており、その全体を人が管理するのはキャパシティを完全に超えています。サプライチェーン全体の動きをデータ化し、何が課題でどう対応すべきかをデータに基づいて判断し、最適化を図るマネジメント体制が不可欠です。

小暮氏 今までのサプライチェーンは、メーカーの下にただサプライヤーが連なっているだけでした。そういった状況に対し、海外のトップメーカーはデータの利活用を自社だけでなくサプライチェーン全体にもシェアし、各社が全体の状況を可視化し必要な対応を即座に講じられるような体制をつくっています。日本企業でこうしたことができているところはまだまだ少ないのではないでしょうか。

三島 日本企業はデータを外に出さないところが少なくありませんが、カーボンニュートラルにおけるSCOPE3など、サプライチェーン上の温室効果ガス排出量のデータを集める必要が生じ、こうしたことが完成品メーカーの取引条件にもなっています。ところが、対応しようにもオーガニックなデータがなく、人が諸要素から計算してつくっている状態がある。今後は、製造現場から出たデータとしてのエビデンスが求められるようになるでしょう。

●“One Data/One Place/One Fact”で判断できる環境づくり

三島 経営の観点では、製品別の在庫がサプライチェーンにどれぐらい滞留してキャッシュフローを棄損しているかを把握したいことに対し、当該データの発生源である工場とERPが直結しておらず、人がデータをサマライズしてERPに登録しているという状況があります。つまり、人の意思や加工が加わったデータを経営が見ているわけで、それで正しい意思決定ができるのかという問題があります。もちろん、現場では正しいデータを経営に届けるために努力していますが、時間や工数がかかる、一方、現場の事実と乖離している問題を抱えているお客様もいらっしゃいます。

小暮氏 おっしゃる通りですね。

三島 実は、NECにも過去そのようなことがありました。多様な製品を取り扱う中で、どの製品がどういった生産状況にあり、どれだけ収益に繋がっているのかよくわからないという状況にあったのです。一時期は在庫の山が溢れるという危機的な状況に陥りました。
そこで、データドリブン型のものづくりへの経営改革に着手し、“One Data/One Place/One Fact”で判断できる環境づくりに取り組んできています。
こうした施策は、プロセス産業にも活用できるはずです。

――海外企業の取り組みとして、どのような事例がありますか?

小暮氏 お馴染みのスターバックス様は、世界中に数万店舗を展開していますが、生産ラインの情報とERPが分断され、経営は相当遅れた時点でのデータを見て意思決定を行うという状況にありました。そこで、弊社のMESを導入いただき、工場とERPを繋いでリアルタイムでファクトベースのデータを経営が見て判断できる環境を構築しました。
また、ペプシコ様は多様化する消費者の嗜好に対応する必要がありましたが、同様にMESを導入し工場や物流とERPを繋ぐことで、それまでより2.5倍以上の品種に増やすことができたのです。このように、データドリブンには柔軟かつ迅速なものづくりを実現できる力があります。

●お客様の課題をフルに解決できる意義

――課題や対応策がよくわかりました。そこで、両社の協業はプロセス産業にどういった価値や意義をもたらすとお考えですか?

三島 各社の製造現場には多様な設備があり、多様な製品を生み出しています。その製造プロセスは独自色の強いものです。AVEVA社のMESを用いれば、こうした多様な設備やプロセスからのデータを収集でき、その入力画面などはローコードで柔軟につくることができます。そして、製造現場からのデータをERPに繋いで事実を把握することで、データドリブンの意思決定ができるようになります。しかも、全世界の工場で標準化されたデータを用いることで、グローバルのサプライチェーン全体をリアルタイムに可視化できるようになります。
かつ、スクラッチ開発ではなくパッケージなので、開発時間や開発リスクをカットできるメリットもあります。

小暮氏 そういったAVEVAのソリューションですべてが解決できるとは考えていません。そこを、NECさんと組み、NECのICTやAI、IoT、セキュリティなどのソリューションと組み合わせることでお客様の課題をフルに解決できる協業の意義があると考えています。例えば、AVEVAのMESとNECさんの顔認証ソリューションを組み合わせれば製造プロセスのセキュリティを大幅に向上できます。
また、AVEVAは欧米企業のお客様が多く、NECさんはアジア・パシフィック地域のお客様が多いといった相互補完性もあります。それぞれのお客様に対し、マーケットを拡大していくご支援もやりやすくなると考えています。

――最後に、この協業でどういった“ものづくりの未来”を描いているか、お話しください。

三島 弊社は“日本電気株式会社”ですから、やはり日本の製造業が世界で高い競争力を発揮することをご支援していきたいと考えています。
日本の製造業の強みは、高品質なものづくりや誠実な企業姿勢にあるでしょう。これから、海外企業と戦っていく上で、こうした強みを強化するとともに、世界中からリスペクトされるような存在となることをお手伝いしていきたいと考えています。

小暮氏 グローバルな競争力を保つために、日本の製造業は従来のやり方からの脱却と変化が求められています。弊社は、グローバルの先進企業とお付き合いしている立場から、これまでの良さを活かしながら打ち勝つ支援ができると考えています。
また私は日本で生活する日本人としても日本の製造業が復調していただきたいと願っており、応援し続けていきたいと考えています。

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