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AI活用で日本の製造業に迫り来る「技術継承問題」を克服!AI活用で日本の製造業に迫り来る「技術継承問題」を克服!

AI活用で日本の製造業に迫り来る
「技術継承問題」を克服!

スペシャルインタビュー【2024.08.21】

カテゴリ:DX・業務改革推進設計・開発・技術PLM/CAD

生成AIが目覚ましく進化を遂げ、労動力不足が深刻化する中、様々な現場における課題解決への活用が広がり始めています。
そこで、NECは製造業で課題となり始めている技術継承へのAIの活用を探求。コンサルティングサービスに加え、PLM「Obbligato」にも機能実装し、課題解決をご支援していく方針です。
本記事では、製造業における技術伝承の現状からNECの考える解決策について、エンタープライズコンサルティング統括部の杢田竜太がご説明します。

NEC エンタープライズコンサルティング統括部
PLMグループ ディレクター 杢田竜太

2002年より、20年以上に渡って、製造業:特に設計を主体としたエンジニアリングチェーン領域におけるデジタル技術を活用した業務革新(PLM/BOM/コンカレントエンジニアリング/原価企画等)支援に従事。製造業を中心とするお客様に対して、設計開発プロセスにおける業務コンサルティングを手がけている。

【目次】

生成AIの急速な広がり

NEC エンタープライズコンサルティング統括部 ディレクター PLMグループ長 杢田竜太
NEC エンタープライズコンサルティング統括部 ディレクター PLMグループ長 杢田 竜太

2022年11月に公開された、米OpenAI社の「ChatGPT」。2か月という史上最速で1億アカウントのユーザーを獲得し、その後も世界中で急速に広がっているのはご存じのとおりです。日米におけるAIの利活用は、2022年度でアメリカは19.7%の企業が全社に導入しているのに対し、日本は2.4%と出遅れています。

NECは、2023年7月に生成AI事業を開始。世界トップクラスの日本語性能を有する高速・高精度なNEC開発の生成AI「cotomi」をリリースしました。業務活用に向けた提供を進めています。
生成AIが優れている点は、膨大な蓄積データを活用して人の相談相手となり、悩みへの解決策を提案できる点にあります。これによって生産性が大幅に向上することが期待されています。

業務において、これら生成AIを含むAI活用を広げるためには、①どのようなAIを用いるかを選定できる人材の育成、②AI推進者を含む導入マネジメント組織の編成、③AI学習データの膨大かつ早急な蓄積、の3つの課題をクリアする必要があります。

AI活用における課題

① AI選定者の育成

AIと一口に言っても、情報収集AIや分析AI、対処AIなど、特化された機能による様々なタイプがあります。ちなみに、生成AIは対処AIに属します。人と対話し相談相手となるようなAIを構築するためには、これら複数のAIを適切に組み合わせる必要があり、こうしたスキルや知見を持つ人材を育成しなければなりません。

② AI推進者を含む導入マネジメント組織の編成

AIは、各現場が好きに活用するというやり方では高い効果は得られず、結果的に浸透せずに失敗に終わる可能性が大きいと言えます。成功のためには、AI推進者がAIの導入効果を得られる対象業務を洗い出し、導入の進捗管理や効果の把握を行ってマネジメントするといった施策が重要です。

③ AI学習データの膨大かつ早急な蓄積

NEC エンタープライズコンサルティング統括部 ディレクター PLMグループ長 杢田竜太
NEC エンタープライズコンサルティング統括部 ディレクター PLMグループ長 杢田 竜太

AIの回答精度は、データの量や種類の多さとそのデータ学習量に比例してアップします。データ量が多いほど“使えるAI”になります。ここで重要なのは、AI技術そのものは刻々と進化していて、常にその時点での最新のAIを導入すれば済む一方、その企業内のデータの蓄積や学習には非常に時間がかかるということです。したがって、工数を掛けてでも、学習データの蓄積は早急に取り組む必要があります。

“技術承継”の現状と課題

以上のような3つの課題をもつ製造業のAI活用戦略を、NECでは「ものづくり with AI構想企画サービス」としてサポートいたします。まずは、今本当に押し迫った課題と言ってよい“技術継承”にフォーカスしてサービスリリースいたします。

“技術承継”の現状と課題

製造業の就業者数は、2002年の1,222万人から2022年には996万人まで18%減少しており、2040年にはさらに924万人まで減ることが予測されています。

また、技能継承に問題があるとする事業者の割合は、2022年において全産業が41.2%の中、製造業は59.5%と、建設業などと並んで突出しています。日本の製造業には優れた技術や豊かな知識・経験が存在しているものの、属人性が高くその継承に苦労し、技術資産としての再利用が十分に行われていないという現状があります。

「車輪の再発明」という言葉がありますが、車輪のように誰でもその価値がわかる確立された機能があるにもかかわらず、それを一から作り直すようなムダを指す例えです。属人化された技術や知識を継承する局面では、「俺の背中を見て覚えろ」と言わんばかりに、熟練者が経験してきたことを後進にも経験させるといった非効率的な方法に止まっている現場が多いのではないでしょうか。
特に近年では、SDGsへの対応要請の高まりなどもあり、製品のライフサイクルが長期化。このままでは「数十年前に開発された製品の設計ノウハウを持つ技術者が不在で、発生した問題に対処できない」といった事態が頻発する恐れがあります。

また、製品は多機能化・多品種化しており益々複雑化しているのに加え、脱炭素、化学物質、廃プラ等の環境規制対応の付帯業務が設計者の業務を圧迫しています。人材不足も相まって、特に現場のベテラン技術者が多忙となり、若手や中途採用技術者への指導に時間が割けないという問題も起きています。

AI活用による「技術競争力継承・強化サービス」

したがって、その属人化し“暗黙知”となっている経験や知識の“形式知”化が進まず、誰もが使える価値に繋がらないという大きな課題があるわけです。

技術継承が不十分であると、業務の生産性は低下し企業としての競争力は漸減します。究極には、日本の製造業のコアコンピタンスと言っても過言ではない積年の貴重な技術が失われることが危惧されます。こうした課題を解決するには、①属人化されている経験・知識の体系化・形式知化、②用途に応じた情報検索・提供手段の構築、③コア技術・情報の“サイロ化”を改め、全員参加による情報資産化の意識づくり、の3点が求められます。

この3つの施策により、技術承継において過去の経験・知識(技術資産)から価値を引き出す面積を最大化することが重要です。この価値としては、技術資産の世代間の継承だけでなく、設計部門と製造部門いった組織を超える協調や、翻訳機能などにより場所を超える価値も生みだすものであることが理想といえるでしょう。

NECの考える技術継承のコンセプト

そこで、NECではAI活用による「技術競争力継承・強化サービス」をリリースしお客様に伴走しながら技術継承および業務の生産性向上をサポートいたします。
解決策のステップとして、図のとおり前述した3つの解決策を遂行します。

技術競争力継承・強化サービスのコンセプト

コア技術情報は、技術文書だけでなく技術者が後進を指導する動画や音声といったマルチモーダルでのデータ化も可能になります。情報検索・提供においては、NEC開発の「cotomi」に限らず様々な生成AIの中から最適なものを選定可能です。

「Obbligato」に機能実装

また、NECでは、PLM「Obbligato」に蓄積されている製品企画書や設計仕様書、DR資料/議事録、過去トラブル、図面といったドキュメントや成果物をソースに生成AIを活用して、そこから知りたいノウハウやアイデア出しを支援する機能を実装予定です。

人とAIの協調:技術伝承・品質向上による設計の高度化

具体的には「Obbligato」とLLM(大規模言語モデル)を連携させ、「Obbligato」が選択したドキュメントに登録されているファイルを要約するとともに、技術情報に関する質問に対しLLMが過去の製品開発で蓄積された情報をもとにチャット形式で回答するという機能を検証・実装予定です。「Obbligato」要約による短時間での内容把握や対話型の情報探索など、PLMとAIのコラボレーションによって、ベテランのノウハウ・スキルの伝承をサポートします。


NECは、AI技術と、ものづくりに関するコンサルティングサービス・ソリューションを通じて、製造業の業務生産性の向上や技術・技能の伝承をご支援いたします。技術・技能の伝承が進まず、お困りのお客様や、PLMとAIを組み合わせて、高度な製品開発を実現したいお客様は、ぜひ、NECまでご相談ください。

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技術競争力継承・強化サービス

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PLM「Obbligato」は、企画~設計~生産~保守に至る製品ライフサイクル全般に渡り、ものづくりの基準情報であるBOMとBOPを核に情報を連鎖・集約・共有し、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンをつないで、変動対応力・競争力を強化します。

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