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データドリブン経営を実現する、DXオファリングとその導入事例

お客様の業務改革を推進するDXオファリング

変化の激しいVUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の時代が到来し、従来の「勘」「経験」「度胸」のKKD経営から、アルゴリズムとデータを使ったデータドリブン経営が求められています。本稿では、データドリブン経営が注目される背景、実際に導入する場合に直面するお客様課題について説明します。そして、課題解決に有効な、NECが提供するデータ活用のためのDXオファリングとその導入事例を紹介します。

1. はじめに

1.1 データドリブン経営とは

データドリブン経営1)2)とは、事業目的を達成するためにデータ主導での意思決定をする経営のことです。例えば、天気予報で降水確率80%だから傘を持って出かけよう、というようなこともデータ主導での意思決定です。データを活用・分析して客観的に事象を把握し、その結果に対して継続的にデータ主導での意思決定を行い、企業の成長を積み上げていくことが、データドリブン経営の考え方です。

1.2 データドリブン経営の重要性

データドリブン経営が定着すると、次のような効果が期待されます。

  • (1)
    データに基づいた客観性の高い事象把握
  • (2)
    AIなどの分析技術による複雑な意思決定基準の標準化
  • (3)
    グラフなどの可視化による正確で素早い意思決定

データドリブン経営を実現することで、市場変化に素早く対応できるため、売上増大、費用削減を同時に成し遂げることができます。

2. データドリブン経営が注目されている背景

データドリブン経営を実践している企業は、そうでない企業に比べ成功を収める確率が高く、事業成長スピードは世界のGDP成長率の7倍で成長し、企業価値の高まりも著しいことが分かってきています。変化の激しい時代にデータ活用によっていち早く対応できる企業が、成功を収める時代となって来ているのです。

3. お客様の直面する課題

データドリブン経営を目指しているお客様が直面する課題として、次の4つが挙げられます。

3.1 データのサイロ化

分析に必要なデータが不足しているために、良いインサイトが導出できないということが、現場ではよく発生します3)。データの所有者、保存先が組織・部門で細かく分断されており、必要なデータが何かを定義できても、それらにアクセスできず、結果として良いインサイトが導出できません。その背景にはデータのサイロ化という事象があります。必要なデータにアクセスできるようにするには、データのサイロ化の解消が課題となります。

3.2 教育とマインド

現場にKKD(勘、経験、度胸に基づく意思決定)が定着している場合、これまでの業務の進め方で問題ないと認識されている場合が多く、なかなかデータドリブン経営は定着しません。まずはデータドリブン経営により業務が効率化し、現場が成果を上げられるということや、KKDでは対応しきれない状況になってきているということを理解してもらう必要があります。次にその実行のために現場レベルでKPIを設定し、データと連動させて業務に組み込むなどの対応を行っていきます。現場にデータを使った成功経験をしてもらうことで、「意思決定はデータに基づいて行うもの」というマインドを醸成し、業務改革を進めていく必要があります。

3.3 投資対効果

決裁者に投資対効果を見出してもらえないことがよくあります。投資対効果を具体的に説明しても、これまでの業務のやり方と異なるため本当に効果が出るのか疑問が拭えず、投資の判断ができないため、プロジェクトを先に進められません。この場合、小さい投資でデータ活用の効果の検証を行い、効果を確認しながらプロジェクト規模を大きくしていく必要があります。

3.4 組織間連携

IT部門が業務部門と連携せずに用意したデータ分析環境では、業務部門の分析に必要な詳細部分が省略されている場合があり、分析に使えない/現場が欲しい分析結果が得られないということがよく起こります。この場合、データ活用のための横ぐしのニュートラルな組織をつくり、業務部門の細部の要望を取りまとめ、データ分析環境の活用目的/成果目標を合意する必要があります。

4. データ活用のためのDXオファリングの紹介

前述した課題を解決するために、NECは図1に示すデータ活用のためのDXオファリングを提供しています。

図1 データ活用のためのDXオファリング

4.1 データ活用アセスメント

お客様のビジネスゴールを関係者で共有したうえで、ビジネスゴール達成のためのフォーカスエリアの選定/課題整理をワークショップ形式で行い、ビジネスゴール達成に向けたロードマップを描くアセスメントを実施します。また、ロードマップ実現のために後述するDXオファリングの提案も行います(図2)。

図2 データ活用アセスメントの概要

4.2 データ活用基盤導入企画支援サービス

お客様が既に持っているデータを価値化するための道のりを作るために、データ活用の現状とありたい姿の整理、データの組み合わせによる代表的なユースケースの検討、ビジネスゴール実現のためのデータ活用戦略ロードマップの策定を行い、具体的なシステムアーキテクチャを提案します。

これは、NECの20年以上にわたる豊富なデータ活用基盤導入実績から現場のエンジニア目線で実践可能なシステムアーキテクチャであり、データ活用シナリオをお客様とともに作っていくオファリングです(図3)。

図3 データ活用基盤導入企画支援サービスの概要

4.3 経営戦略支援サービス(基盤導入)

データ活用基盤導入企画支援サービスで定めたシステムアーキテクチャをもとにインフラを構築するオファリングです。継続的なユースケースの積み上げや段階的なユーザー数の増加、機能の追加、データの増加への対応など、要件が大きくなるにつれ成長できるインフラを構築し、運用を提案します。

スモールモデルによりまずは小さい投資でデータ活用基盤の導入を始めるという提案も可能です(図4)。

図4 経営戦略支援サービス(基盤導入)の概要

本オファリングにより、データ活用のノウハウを定型化して提供することで、短期間でのデータ活用の価値検証を実現します。また、NECのセキュア開発・運用実施ガイドラインを適用し、重要なデータをセキュアに取り扱うことができます。

4.4 データカタログ整理・データ品質可視化サービス

一度データカタログを作成しても、業務部門の分析に使えるデータがないなどの問題がよく発生します。

データ分析者がどこにどのようなデータがあるのかを紐解くのは難しく、設計書を見たとしてもビジネス上の意味をくみ取って理解するのは難しいです。このDXオファリングは、データの意味やビジネス上の位置付けをお客様にヒアリングし、カタログの形で再整理していくオファリングです。

また、集めたデータが欠損している、ルールに沿ってデータが作られていないなどの問題に対し、活用できるデータかどうかの品質検査を行い、状況をレポートします(図5)。

図5 データカタログ整理・データ品質可視化サービスの概要

本オファリングでは、NECのノウハウを提供することで、お客様はデータカタログ・データ品質ルール・データ追加・更新プロセスのファーストバージョンを短期間で作成することができます。

5. 事例:シチズン時計株式会社様

シチズン時計株式会社様は、2019年度から「Innovation for the next ~時を感じ、未来に感動を~」というグループ中期経営ビジョンのもと、新たな中期経営計画をスタート。

変化を続ける時代への対応力をより強固なものにする施策の1つとして、データ活用基盤構築のプロジェクトを進めています(図6)。

図6 事例:シチズン時計株式会社様

5.1 課題背景

同社の既存のデータウェアハウス(DWH)(以下、DWH)には、販売系のデータ蓄積が中心で、製造や工程のデータ、または会計のデータがほぼ蓄積されていない状況でした。

更に切実な課題として、社内の各部門から期別の販売進捗状況や固定費実績などのデータ活用について要望があった際、その都度データマートの設計、開発を手作業で行い、かなりの工数が必要となっていました。

部門や業態の異なるグループ各社で管理されているデータを統合して、全社横断で活用するための標準化されたデータ活用基盤の構築を目指しました。

5.2 導入後の成果

同社は、NECのデータ活用のためのDXオファリング「データ活用基盤導入企画支援」を活用して、DWHに格納する分析に適したデータモデルの策定、そして用途に合わせてデータモデルを作成するためのルールづくりに着手しました。

NECは同社からスキーマーと呼ばれるデータの構造情報の提供を受けて、実際にデータの構造分析を行いました。どういった内容のデータが、どこから連携され、どういったテーブル定義で保持しているのか、現状を確認した後、全体を俯瞰して、お客様がより必要とする情報を保持できるよう、テーブル定義情報を整理し、全体を統合しました。

その後、NECのノウハウをもとに抑えるべきポイント、論点を整理したうえでディスカッションを重ねていき、今後新しくデータが発生した場合にも対応できるよう、データモデルを作成するためのルール策定を進めました。

今回、データを整理統合する過程でグループ会社間の売上データの構造の統一など、非常に多くの課題があぶり出されました。そのような課題もまた、今後のシステム構築の方向性を決めていくうえで重要なものとなりました。

これらの対応によりさまざまな部門/立場の人が、必要なデータを迅速に活用できるための文化とプロセスが整理され、お客様がデータドリブン経営を実践するための礎を固めることができました。

6. おわりに

企画から導入、運用、そしてまた企画と、データ活用は単純にウォーターフォールではなく、お客様の成長とともに図7で示すサイクルが循環し続けていきます。

図7 お客様のデータ活用プロセス

NECの強みは、多数のお客様のデータ活用提案を行ってきたノウハウと、このサイクルをどこからでも支援できるデータ活用のためのDXオファリングです。今後もDXオファリングの提案を通じてお客様のデータドリブン経営の実現に貢献していきます。

参考文献

執筆者プロフィール

大井 和哉
デジタルビジネスオファリング事業部
マネージャー
鈴木 翔
デジタルビジネスオファリング事業部
主任
江畑 俊宗
デジタルビジネスオファリング事業部
主任

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