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「新たな行政サービス共創研究会」が創るこれからのあたりまえ
地域共創近年、地方公共団体において、少子高齢化の進展による社会保障費の増大や、東京一極集中に伴う地方での人口減少、マイナンバー制度やデジタル・ガバメントなど、わが国で進められている政策への対応など多くの課題を抱えており、従来とは違った「新たな行政サービス(行政のデジタルトランスフォーメーション)」の企画立案が求められています。
本稿では、これらの地方公共団体が抱える課題の解決に向け、NECの持つ技術やノウハウを生かした共創活動「新たな行政サービス共創研究会」の活動内容について、紹介します。
1. はじめに
NECでは、2013年のマイナンバー法公布を受け、マイナンバー制度に関わる行政サービスの課題の検討・研究を行う場として2014年に「マイナンバーに係る新たな行政サービス研究会」を発足しました。この研究会は「地方自治体情報システム研究会」のサブワーキングとして複数の地方公共団体とNECが共同で課題の洗い出しと解決策の検討を行い、内閣官房や総務省などへの提言を行っていくことを目的としました。
その後、2015年、2016年と研究会活動を実施、2017年は、マイナンバー制度以外にも活動の幅を広げることとし、「新たな行政サービス共創研究会」として新たな研究会を発足しました。
本稿では、この「新たな行政サービス共創研究会」での研究・検討内容について紹介します。
2. 「新たな行政サービス共創研究会」について
2.1 概要
「新たな行政サービス共創研究会」は、地方公共団体が抱える課題の解決に向けて、NECの持つ技術やノウハウを活用し新たな行政サービスを「共創」することを目的としたディスカッション形式の会合です。2017年度は全4回を実施、各回、政府機関の最新動向などを共有する『第一部』と、「住民サービス向上」をメインテーマに新たなサービスの実現に向けた意見交換を行う『第二部』の2部構成で開催し、会合終了後にはNECの最新技術を体験いただく機会を設けました。
会議開催に当たっては、東京(NEC本社ビル2階共創スペース)をメイン会場(写真)、NECの地方支社・支店をサブ会場とし、両会場をテレビ会議システムで接続、遠方の地方公共団体の参加に配慮しました。
2.2 第一回開催内容
第一回は、2017年6月27日に開催し、参加いただいた政令指定都市や中核市を中心とした14団体22名の地方公共団体と以下のテーマで意見交換を行いました。
第一部
(1)2016年度活動の振り返り
2016年度に開催した「マイナンバーに係る新たな行政サービス研究会」の活動内容を紹介しました。
(2)情報提供ネットワークシステムを使用した情報連携
マイナンバー制度の情報連携基盤として内閣官房が構築した「情報提供ネットワークシステム」や総務省がアプリケーション開発を行い、地方公共団体情報システム機構がプラットフォームを整備した「自治体中間サーバー」について、内閣官房のデジタルPMO*に公開されている技術資料の解説を実施しました。
(3)マイナポータル・子育てワンストップサービスの運用
内閣官房が整備を進めている子育てワンストップサービスの解説と本サービス導入における地方公共団体の注意事項を解説しました。
(4)国民健康保険の都道府県化
厚生労働省や国民健康保険中央会から地方公共団体に提供されている資料をベースに法改正の概要やスケジュール、地方公共団体で対応すべき事項などを整理し説明しました。
第二部
(1)官民データ利活用(非識別加工情報への取り組み)
官民データ活用基本法や改正個人情報保護法、改正行政機関個人情報保護法の施行に伴い、民間企業への提供が可能となる匿名加工された情報(非識別加工情報)について、法制度の概要などを説明、主に課題に関する意見交換を行いました。
(2)窓口改革(窓口におけるAI活用)
地方公共団体の窓口における、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」の利用例について、NECの仮説を基に意見交換を行いました。
2.3 第二回開催内容
第二回は2017年8月25日に開催し、以下のテーマで意見交換を行いました。
第一部
(1)情報提供ネットワークシステムを使用した情報連携
第一回に引き続きデジタルPMOに掲載された最新情報の整理と解説を実施しました。
(2)マイナポータル・子育てワンストップサービスの運用
第一回に引き続きデジタルPMOに掲載された最新情報の整理と解説を実施しました。
(3)保険者努力支援制度
厚生労働省の保険者努力支援制度について、国民健康保険領域の動向と介護保険領域の動向を解説しました。
第二部
(1)官民データ利活用(非識別加工情報への取り組み)のユースケース紹介
NECにて想定したユースケース「新店舗出店時における非識別加工情報の利用例」について、意見交換を実施しました。
(2)窓口改革
2018年度に公募が予定される総務省「業務改革モデルプロジェクト」の2016年、2017度の採択事例やNECにて開発中の「共創ナレッジAI(仮称)」のプロトタイプを紹介しました。
(3)働き方改革
NECの働き方に対する取り組みを紹介しました。
展示
新しい技術などを活用した以下のソリューションの展示を行い、会議終了後に自由にご覧いただきました。
空中投影/チャットボット/電子サインソリューション/非識別加工情報
2.4 第三回開催内容
第三回は2017年10月20日に開催し、以下のテーマで意見交換を行いました。
第一部
(1)情報提供ネットワークシステムを使用した情報連携
第一回、第二回に引き続きデジタルPMOに掲載された最新情報の整理と解説を行いました。
(2)医療・介護改革
後期高齢者医療制度、国民健康保険関係における法制度改正の概要と地方公共団体における影響範囲を解説しました。
(3)地方自治情報化推進フェア2017の出展内容紹介
2017年11月9日~10日に開催される地方公共団体情報システム機構主催の「地方自治情報化推進フェア2017」におけるNECブースの出展概要、及びベンダープレゼンテーションの概要について、説明しました(図1)。
ベンダープレゼンテーション「自治体AIとマイナンバーが織りなす新たな社会」については、本研究会でのディスカッションの結果を踏まえた内容となっており、多くの地方公共団体から好評を得ることができました。
第二部
(1)行政におけるIoT推進
総務省の外郭団体である一般財団法人全国地域情報化推進協会企画部担当部長の吉本氏を講師に招き、最新動向の講演を実施しました。
講演概要:「地域IoT官民ネット」及び「地方の官民データ活用推進計画に関する委員会」の動向
(2)官民データ利活用(非識別加工情報への取り組み)
これまでの検討結果を踏まえ地方公共団体をフィールドにした実証実験の計画を立て、意見交換を実施しました。本計画をもとに、参加いただいた1団体との実証実験を開始しました。
(3)窓口改革
総務省「業務改革モデルプロジェクト」におけるNEC案の提示、及び自動応答サービス(チャットボット)を活用した実証実験の計画を提示し、意見交換を実施しました。本計画をもとに、参加団体のホームページに掲載されているFAQを踏まえ、住民からの一般的な問い合わせに対する自動応答サービス「共創ナレッジAI(仮称)」を構築。参加いただいた「共創ナレッジAI」を育てる(精度を高める)実証実験を開始しました。
展示
以下のソリューションの展示を行い、会議終了後に自由にご覧いただきました。
統合型GISシステム/スマートフォンによるマイナンバーカード読取/非識別加工情報
2.5 第四回開催内容
第四回は2018年1月19日に開催し、以下のテーマで意見交換を行いました。
第一部
(1)情報提供ネットワークシステムを使用した情報連携
本格運用後の残課題、2018年7月度データ標準レイアウトの改版について、デジタルPMOに掲載された最新情報の整理と解説を実施しました。
(2)医療・介護改革
以下の4つのデータについて、最新情報の解説と意見交換を実施しました。
- 医療保険インセンティブについて
- 介護保険インセンティブについて
- 税申告における医療費通知対応などについて
- オンライン資格確認システムへの対応について
(3)戸籍・税制改正
法務省や総務省から公開されている研究会資料を整理し、地方公共団体への影響が想定される以下の法制度改正概要を解説しました。
- 戸籍分野へのマイナンバー制度導入について
- 個人住民税特別徴収税額決定通知書(様式3号別表)の電子化について
- 個人住民税の現年課税化について
第二部
(1)官民データ利活用(非識別加工情報への取り組み)
実証実験を実施していただいた地方公共団体から結果と課題の報告をいただきました。
(2)窓口改革
- 「共創ナレッジAI(仮称)」
参加いただいた9団体とNECで「共創ナレッジAI」の試用・評価・改善を繰り返し、AIの精度を高めた実証実験の結果を報告しました。 - 電子サイン及びRPAを用いた業務効率化
タブレットと電子サインを利用して窓口での申請書作成を完全デジタル化、RPAによる基幹系システムへの登録を実施するNEC案を提示、意見交換を実施しました。
- * PMOとは、Project Management Officeの略で、組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門や構造システムのこと。
3. むすび
本研究会の終了後、参加いただいた地方公共団体にアンケートを実施しました。結果、図2のようにすべての地方公共団体に満足いただけることとなりました。
また、併せて地方公共団体より「新たな行政サービスを共創する本取り組みは重要で意義がある」「国の方向性・技術の進歩と現場のギャップを少なくする役割を担っているように思う」などの意見をいただきました。本研究会は、1対1の実証実験とは異なり、複数団体とディスカッションを重ねながら、より実用性の高いソリューションを創り出すことができる点が大きな特長と考えており、例えば、AIとマイナンバー制度を組み合わせた新たなソリューションが生まれるなどの成果もありました。
今後もこのような地方公共団体との共創活動を通じて、「今のあたりまえ」をささえ、さまざまな社会課題解決に貢献します。更に「これからのあたりまえ」を創りつづけ、未来の暮らしをよいものに変えていきたいと考えています。
執筆者プロフィール
番号事業推進本部
本部長
番号事業推進本部
シニアエキスパート
公共ソリューション事業部
公共ソリューション事業部
シニアエキスパート
番号事業推進本部
マネージャー
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マネージャー
番号事業推進本部