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作業効率化と品質向上を同時に実現する 画像・重量検品ソリューション

物流において求められる品質やスピードは年々高まっています。一方、国内では人手不足の深刻化により、物流サービスレベルの維持が困難になっています。特に検品作業は、従来の技術では省力化が難しく、多くの人手がかかっています。画像・重量検品ソリューションは、NECの高速・高精度な画像認識を活用し、検品作業の効率化と品質向上を同時に実現します。本稿では、本ソリューションの特長について紹介します。

1. はじめに

昨今、国際間取引やEC取引の伸長により、荷物の多様化及び小口貨物の増加による、物流現場作業の複雑化が進んでいます。同時に、環境変化に対応しつつ、品質は維持・向上させていくことが求められています。

一方、国内においては、労働力人口の減少による人手不足が深刻化しています(図1)。物流現場では、入荷から保管、出荷に至るまでに、多くの作業が発生します。市場から要求されるサービスレベルは年々高まっている一方、人手が集まらなくなっており、従来のサービスの維持さえも困難になっています。

図1 労働力人口の減少

以上により、物流現場においては、(1)サービスの多様化、(2)省人化、(3)品質の維持・向上、というトレードオフの関係にある3点を、同時に実現していくことが求められています。

2. ICTの物流領域への活用

近年、通信網やセンシング技術の発達を背景とし、モノのインターネット・IoT(Internet of Things)と呼ばれる技術により、実世界の情報をデジタル化する取り組みが進んでいます。更に、この取り組みは、実空間(Physical System)とICTによるサイバー空間(Cyber System)を結び付けて、サプライチェーン全体をデジタル化する取り組み(Cyber Physical System)へと発展しようとしています。

上記を物流の世界に適用して、説明します。まず、サプライチェーンのイベントや物流リソース(人や車両など)の情報を、IoTを活用して収集します。その情報を分析/知識化することにより、将来発生するイベントや必要となる物流リソースが、可視化されます。その結果を物流現場にフィードバックすることで、人や車両、輸送ルートを最適化することが可能になります。これにより、限られたリソースで、効率的なオペレーションを行うことが、可能になります(図2)。

図2 サイバーロジスティクスネットワーク

これまで物流現場は、人による作業(アナログ)に支えられてきましたが、第1章で説明した物流現場作業の複雑化と人手不足の深刻化により、従来と同等レベルのサービス維持さえも、困難になってきています。

そのため、物流領域においては、ICTを活用した課題解決の余地が大きいと、NECは考えます。

3. 画像・重量検品ソリューション

本稿で紹介する画像・重量検品ソリューションは、画像認識を活用し、物流現場の業務効率化と品質向上を同時に実現します。

物流現場では、省人化・効率化を目的とし、自動倉庫やデジタルピッキングシステムなど、さまざまな物流業務自動化機器が用いられています。ただし、入荷や出荷の際に商品の種類と数量の確認を行う検品作業は、大部分が人手に依存しています。

検品作業の具体例について、説明します。一般的な物流現場作業においては、バーコードが付加されている商品はハンディターミナルを利用した検品を行い、バーコードが付加されていない商品は人の目視による検品を行います。特に、通販用商品や販促品、添付物などにはバーコードが付加されていないケースも多く、目視検品の工数が発生します。物流センターを訪問すると、数十人で検品を行っている風景も珍しくありません。

NECは、物流現場の省力化に長年取り組んできました。その一例が、文字認識技術を活用、実用化した郵便自動化システムです。従来は人手で行っていた郵便物の仕分作業を自動化し、工数の大幅な削減に貢献しています。

画像・重量検品ソリューションは、NECが長年にわたり、文字認識・画像認識技術を物流現場の実運用に適用してきた経験を生かして、実現したソリューションです。本ソリューションは、独自の画像認識技術を活用し、出荷予定リストと出荷予定商品が合致しているかを、瞬時に判定します。商品にバーコードなどの識別情報が付加されていない場合でも、商品自体の画像を識別情報として活用することで、商品識別が可能です。これにより、検品作業の効率化と品質向上を、同時に実現します(写真1)。

写真1 画像・重量検品ソリューション全体イメージ

4. 画像・重量検品ソリューションの特長

画像・重量検品ソリューションの特長について、以下3点を説明します。

  • (1)
    画像認識技術を物流現場で実用化
    物流現場へ画像認識技術を適用する際に課題となるのは、1)照合・通信処理による応答遅延、2)撮影環境変動による識別精度低下、の2点です。
    本ソリューションでは、NEC独自の高速マッチング処理を活用しています。複数の対象物を、一括で数秒以内に識別することが可能であり、運用に耐えうる即応性を実現しています。
    また、商品が斜めに置かれている場合や一部が隠れている状態でも識別が可能であるなど、環境変動に左右されにくい点も強みになっています(図3)。
図3 商品の識別イメージ
  • (2)
    重量計の活用
    画像認識と重量計を組み合わせることで、例えば商品が完全に重なっていた場合でも、重量の差異により商品の過不足を検知することが可能となります。画像と重量でのダブルチェックを行うことで、全体の精度を向上させることができます。
  • (3)
    目視検品サポート機能の提供
    作業者が目視検品を行う場合のサポート機能も、用意しています。検品対象の商品画像をチェックポイントとともに表示することで、商品知識が少ない作業者でも実際の商品と表示された商品画像とを比較することにより、より確実な検品を行うことが可能です。

5. 導入効果

本ソリューションの導入により、以下の3点の効果を実現します。

  • (1)
    作業の効率化
    従来の検品作業では、リストとの照合や複数人での読み合わせといった方法で、正誤判定を行っていました。本ソリューションでは、人の目視確認や手作業で実施していた検品業務の工数を削減し、効率化することが可能です。
  • (2)
    作業品質の向上
    人が行う作業の場合、商品知識不足や経験不足などにより、ある程度の検品ミスが発生する可能性があります。検品ミスにより誤出荷が発生すると、CS低下や対応工数の増加につながります。
    本ソリューションでは、ICTシステムによる判別を行うことで、検品ミスを防止することができます。また、画像データを使用している点を生かし、撮影した検品時の画像を、エビデンスとして活用することも可能になります。
  • (3)
    作業の標準化
    作業者は、標準的かつ単純なオペレーションで、検品作業を完結させることが可能です。商品知識に依存することなく、誰でも一定以上の作業レベルを担保することができます。
    また、これにより作業の属人化を防ぐことが可能です。

6. 「画像・重量検品ソリューション」の導入事例

本章では、画像・重量検品ソリューションを活用されている事例を、説明します。

  • (1)
    ヤマトシステム開発株式会社様
    ヤマトシステム開発株式会社様(写真2)の物流アウトソーシング事業では、バーコードなど商品識別情報が付加されていない、カタログやパンフレット、マニュアルや医薬品の添付文書が取り扱われています。当該業務においては、品質担保のため、過誤のないように二重三重で読み合わせを行っており、多大な作業工数が課題となっていました。

    写真2 ヤマトシステム開発株式会社様
    画像・重量検品ソリューションの導入により、ICTシステムによる品質担保を確実に行えるようになり、従来行っていた二重三重の読み合わせを、一度の検品で完了させられるようになりました。結果、倉庫作業全体で時間とコストを2割削減することが可能になりました。
  • (2)
    株式会社ビルディング・ブックセンター様
    株式会社ビルディング・ブックセンター(以下:BBC、写真3)様はKADOKAWAグループの出版物などを取り扱う物流サービス会社です。同社では、出版物をはじめ、アニメやアイドルのキャラクターグッズを扱うネットショップなど、複数サイトの荷受・在庫管理・出荷業務を担っています。
写真3 株式会社ビルディング・ブックセンター様

BBC様が取り扱う商品の約3分の1に、特典物が付属していますが、これらにはバーコードが添付されていません。そのため、作業前に商品コードを貼りつける作業や、検品時に二人一組で読み合わせる作業などが、品質確保のために必要となっていました。

BBC様では、画像・重量検品ソリューションの活用により、従来行っていた二人一組での読み合わせを廃止するなど、大部分の工数を削減されました。削減した工数は、他のラインや業務に振り分けることができ、全体プロセスの効率化が実現されました。

7. おわりに

従来、(1)サービスの多様化、(2)省人化、(3)品質の維持・向上は、トレードオフの関係にあるとされていました。3つの要素を同時に実現することができるのが、画像・重量検品ソリューションの最大の特長です。

物流現場作業の複雑化、人手不足の深刻化は、今後も継続すると想定されるなか、ICTを中心とした技術革新により、課題解決を図ることができる領域は、多数存在すると考えています。画像・重量検品ソリューションはその一例であり、既に複数の物流現場で、活用されています。

NECでは、本稿に紹介した画像・重量検品ソリューション以外にも、国内外において物流領域における取り組みを多数行っています。

海外では、インドのデリー・ムンバイ大動脈構想において、物流可視化を図る取り組みを実施しています。

インドでは、企業誘致のための物流インフラ整備が重要テーマとなっています。そのなかで、輸送用のコンテナにICタグを取り付け、ゲートを通過する際に位置情報を収集することにより、コンテナの輸送情報の可視化を実現しています。これにより、輸送リードタイム短縮や在庫削減、生産計画の精度向上などを実現します。

このようにNECは、最新のICTと経験を組み合わせ、それぞれの課題に応じたソリューションを提供しています。

今後もNECは物流領域における課題解決を通じて、バリューチェーン全体の効率化・最適化に貢献していきます。

執筆者プロフィール

梅田 陽介
交通・物流ソリューション事業部
武藤 裕美
交通・物流ソリューション事業部
部長
冨田 充
交通・物流ソリューション事業部
マネージャー
近藤 克彦
システムデバイス事業部
技術部長
小南 友宏
システムデバイス事業部
エキスパート
日高 康
システムデバイス事業部
主任

参考文献