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No.1(9月) デジタルビジネスを支えるIoT特集

Vol.70 No.1(2017年9月)

NECは、多くのお客様とIoTプロジェクトを積み重ね、NECが保有するノウハウ、及びNEC独自の最先端AI技術を活用することで、さまざまな業種で具体的な成果を出しています。そして、これまでの実績を基にIoTシステムを実現する機能群「NEC the WISE IoT Platform」を確立しました。
本特集では、お客様とともに新しい価値を創出するためである「NEC the WISE IoT Platform」、それを用いて企業や社会インフラなど幅広い業種・業態に活用いただけるIoTソリューション群とその事例をご紹介します。

デジタルビジネスを支えるIoT特集

デジタルビジネスを支えるIoT特集によせて

執行役員
望月 康則


デジタルビジネスを支えるNECのIoT事業

技術イノベーション戦略本部 本部長
兼 デジタル戦略本部 エグゼクティブエキスパート
谷 幹也

さまざまな社会課題を解決し、持続する社会を実現するため、NECはICTを活用した社会ソリューション事業に注力しており、これまで多くのお客様とIoT関連のプロジェクトを積み重ねてきました。本稿では、デジタルビジネスの実現に向けてNECが目指す方向性と提供価値の進化について紹介し、更に、IoTプロジェクトの経験から紡ぎだしたデジタルビジネスの要諦と、AI・IoTを活用してお客様とともに新しい価値を創出するための「NEC the WISE IoT Platform」と共創プログラムについて概説します。

IoTを支えるプラットフォーム

ビジネス変革を支えるIoTプラットフォーム 「NEC the WISE IoT Platform」

淺野 友彦

「NEC the WISE IoT Platform」は、お客様のデジタルビジネスを円滑に進めるため、IoTシステムを実現する機能群を体系化したものであり、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」を使いやすく実装できるアーキテクチャとなっています。「IoTアーキテクチャ5層モデル」を元に、必要な共通機能を「ビルディングブロック」化し、それらを組み合わせて実装・連携させます。スケーラビリティ/ポータビリティ、非IT化デバイスの接続対応、オープンソースの活用など、さまざまな利点を備え、お客様の事業成長に合わせてカスタマイズし、新サービスのスピーディな立ち上げとその検証に役立てることができます。


IoTの顧客価値を支えるエッジコンピューティング

岡山 義光・飛鷹 洋一・樋口 淳一

IoTの時代では、大量の「モノ」や「ヒト」がつながり、実世界(Physical)で生み出された「コト」のデータは、クラウドなどのICT基盤(Cyber空間)で処理され、その結果を実世界へフィードバックするというサイクルが続きます。このサイクルのなかでデータの可視化やAIを活用した分析を行うことで、これまで気付かなかった新たな知見の獲得により、新たな価値創造が可能となり、よりデータが重要になるデータドリブンな世界が到来します。本稿では、このデータドリブンな世界を見据え、NECがこれまで培ってきたICT技術・アセットを活用したエッジコンピューティングが提供する顧客価値について紹介します。


IoTのミッシングリンクをつなぐエッジコンピューティング技術

横田 治樹・尾田 眞也・小林 宰
石井 大二・伊東 孝紘・五十棲 淳考

IoTの普及が進むなか、リアルタイム性が要求される新たな利用シーンにおいて、つど、クラウドにセンサーやカメラ映像からのデータをアップロードして、分析やアクチュエートを行うには、レスポンス時間や通信コスト上、困難な場合があります。このような課題への対応として、近年注目されているのが、エッジコンピューティングというコンセプトです。NECは、エッジコンピューティングがクラウドを補完し、IoTの利活用シーンを更に拡大することで、社会課題の解決に貢献できるとの考え方のもと、エッジコンピューティングを実現する技術の研究・開発を進めています。本稿ではそのなかで、自律分散協調技術、エッジエンジンアクセラレーション基盤、エッジSW、及びエッジを中心としたIoTセキュリティについて紹介します。


エッジコンピューティングのソリューション事例

斉藤 謙志・三上 明子・有賀 健一
安武 宏・木村 重夫・羽根 秀宜

エッジコンピューティングの目的は、リアル(現場)でのIT資源を極小化しながらも、AIやビッグデータ処理など、クラウドコンピューティングのメリットを提供することも目的の一つです。本稿では、NECのエッジコンピューティングにおけるソリューション事例を5つ取り上げます。例えば、ウォークスルー顔認証装置と人物行動分析サービスは、エッジ層での顔認証などの画像処理を行い、警報などのアクチュエーションやクラウドと連携した行動分析を行う事例です。また、ビーコンを活用した事例、温度センサーをエッジで収集して可視化するケース、更に、嗅覚IoTセンサーソリューション実現に向けての取り組みについて、紹介します。

お客様に価値を提供するIoTソリューション

IoT時代のものづくり 「NEC Industrial IoT」

岡野 美樹・小梁川 秀樹

NECは、現在9工場の基幹システムを標準化し、更なるQCD強化を目的にIoT実装を推し進めています。製造現場のリアルな情報をデジタル化し、サイバーにある標準化された基幹システムにデータを上げ、その結果を見える化したうえで分析、製造現場にフィードバックします。このNECの取り組みが、成果を上げリファレンスとなり、製造業のクライアントに対してその知見を価値として提供でき、日本の製造業の更なる発展に貢献していきたいと考えています。
本稿では、まずNECが自社の強みをソリューションとして体系化した「NEC Industrial IoT」を概説したうえで、NECが自らIoT実装に取り組んだ事例とその成果について、紹介します。


作業効率化と品質向上を同時に実現する画像・重量検品ソリューション

梅田 陽介・武藤 裕美・冨田 充
近藤 克彦・小南 友宏・日高 康

物流において求められる品質やスピードは年々高まっています。一方、国内では人手不足の深刻化により、物流サービスレベルの維持が困難になっています。特に検品作業は、従来の技術では省力化が難しく、多くの人手がかかっています。画像・重量検品ソリューションは、NECの高速・高精度な画像認識を活用し、検品作業の効率化と品質向上を同時に実現します。本稿では、本ソリューションの特長について紹介します。


AI技術「自律適応制御」を用いた倉庫人員最適配置ソリューション

桑子 静帆・立花 誠・岡崎 巧

近年の物流は、需要の多様化により多頻度小口化が進んでいるため、配送に関する作業は複雑となり負荷が増大しています。労働人口が減少するなか、限られた作業人員を効率的に配置し配送業務を遂行することは、物流業の経営課題です。作業人員の最適な配置は、突発的な作業への対応や、人員の体調などによる作業効率性の変動を考慮すると、過去の傾向を踏まえ制御するという一般的な最適化の手法では対応しきれません。
本稿では、NEC独自のAI技術「自律適応制御技術」により、リアルタイムな状況に合わせ倉庫内の出庫業務の人員を最適に配置するソリューションを紹介します。


ヒアラブル技術によるヒューマン系IoTソリューションの取り組みと展望

古谷 聡・越仲 孝文・大杉 孝司

IoTとAI、それらをつなぐネットワーク技術の進展は、人間の五感と脳そして神経になぞらえて説明されることがあります。また、画面を経由してアクセスしてきたインターネット体験も、AR、MRという技術やオムニチャネルというコンセプトとして、フィジカルな空間を前提にデザインされ始めました。ヒアラブル(hearable)技術は、人とAIやロボティクスが協働していく近未来を見据え、フィジカル空間での人々の活動を妨げることなく、ヒトとモノやAIがつながるためのツールとしてデザインされたものです。本稿では、NECのヒアラブル事業のコア技術となる、耳音響認証技術と地磁気屋内位置測位技術の取り組み状況と将来の展望を紹介します。


パブリックセーフティを支える映像配信技術

吉田 裕志・甲斐 夏季・金友 大・里田 浩三

警備や救急医療などのパブリックセーフティの領域で、映像配信を活用した新たなソリューションが提案されています。しかし、これまでは安定して映像を配信するためには、衛星通信や移動基地局などの高価な専用の通信設備が必要なため、映像配信の活用は限定的なものでした。本稿では、モバイルネットワークやインターネットなどの品質が保証されない安価な公衆通信網でも、安定して高品質な映像をリアルタイム配信できる適応映像配信制御技術について解説し、ランニングポリスへの活用事例を紹介します。本技術により、パブリックセーフティでの映像配信も実用レベルに達し、今後、本格活用が進んでいくものと考えます。


IoT・AIによる小売業の革新

尾川 和之・小池 雄一・塩野入 匡宏
納富 功充・藤井 麻衣子

消費者のライフスタイルの多様化や少子高齢化の進展による労働力不足に対する対応に加え、地球環境に配慮した商品提供など、小売業は革新を求められています。
NECは、IoT・AIを活用し、買い物の利便性向上、お客様一人ひとりに合わせた「おもてなし」の接客、従業員や店舗業務の効率化・省人化、商品やサービスの安定供給を支える店舗づくりなど、顧客体験の追求と止めない店舗運営の構築を支援します。


工場機器をリアルタイムに遠隔制御する無線ネットワーク技術:無線ExpEther

林 佑樹・鈴木 順・竹中 崇・飛鷹 洋一

NECは、工場などの製造現場において、センサー・アクチュエータ・ディスプレイなどの入出力デバイス(I/Oデバイス)を無線環境で遠隔のコンピュータからリアルタイムに集中制御するネットワーク技術「無線ExpEther」を開発しました。工場などの製造現場は、金属による電波の反射・減衰などが起こりやすく、通信ロス(パケットの途中消失)が頻発する可能性があるため、無線での遠隔制御には過酷な環境です。そのような過酷な環境でも、コンピュータとI/Oデバイスとの間の制御信号やデータを正しく伝送する「レートレス符号方式」を用いることで、コンピュータとI/Oデバイスとの安定した無線ネットワーク接続を実現します。本技術の開発により、産業機器とIT機器の融合による新しい機能の実現を可能にします。


IoTにおける多様なデバイスに適用可能な軽量暗号

岡村 利彦

実世界のデータを活用するIoTシステムでは、デバイスからのデータ収集もサイバー攻撃の対象となり、暗号化による対策が重要になります。軽量暗号は、非力なデバイスへの暗号適用の拡大を目指して、小さなフットプリントや計算量を実現する暗号方式であり、国際標準化やガイドライン作成も進んでいます。秘匿と改ざん検出を併せて行う認証暗号は、特に注目され、技術コンペティションCAESARが開催されています。NECは、優れた実装性を持つ軽量ブロック暗号TWINEと認証暗号OTRを開発しており、OTRはCAESARの2次選考を通過しました。


NECの生産拠点における需要予測の取り組み ~AI×エスノグラフィによる現場定着~

鷲田 梓・中臣 政司・芳竹 宣裕・梅津 圭介
山田 聡・本橋 洋介・長田 司

NECは、NECプラットフォームズ甲府事業所において、部品の欠品防止と棚卸削減の両立を目的として、AI技術を使ったサーバの需要予測に取り組んでいます。需要予測が納得して使われるよう、NEC独自のAI技術である異種混合学習技術を活用し、単なる予測結果だけでなく、予測の根拠も併せて提示できるようにしてきました。更に、調査手法として「エスノグラフィ」を取り入れることにより、予測結果や予測の根拠が人の意思決定に対し、最も有効に働きかけるタイミングの特定や提示方法の設計を行っています。本稿では、その一連の取り組みについて紹介します。

普通論文

画像認識技術を活用したマイナンバー収集サービス

宇田川 裕之・増田 隆・岩元 浩太・秋山 達勇

2016年1月から税や社会保険などの手続きにマイナンバーが必要になり、事業者は、従業員やその扶養家族のマイナンバーを収集する必要性が出てきました。これを受けて、NECネクサソリューションズでは、マイナンバー収集のためのスマートデバイス(iPhoneやAndroid端末)向けアプリを開発しました。今回開発したアプリでは、画像認識技術を活用し、スマートデバイスでマイナンバーを「読み取る」ことによって、より簡単に、そして、より正確にマイナンバーを取り扱うことを実現しています。本稿では、「画像認識技術で何ができて、それを今後どのように活用していくのか」について紹介します。