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IoT活用の「タテとヨコの拡大」で次世代型ものづくりを実現する(後編)IoT活用の「タテとヨコの拡大」で次世代型ものづくりを実現する(後編)

IoT活用の「タテとヨコの拡大」で
次世代型ものづくりを実現する(後編)

工程の高度化とバリューチェーンの最適化【2017.9.14】

カテゴリ:DX・業務改革推進スマートファクトリー(IoT基盤/AI)

関 行秀
NEC プロセス業ソリューション事業部 バリューインテグレーション部

入社後、およそ20年にわたって大手製造業への統合基幹業務システム(ERP)やサプライチェーンマネジメント(SCM)導入プロジェクトに従事する。2012年からスタートした「NEC ものづくり共創プログラム」「NEC Industrial IoT」の立ち上げメンバーの一人。

製造プロセス全体の最適化を目指して

IoT活用は一製造現場における「タテの拡大」(Manufacturing Process innovation:製造工程の高度化)と、製造現場間、企業間における「ヨコの拡大」(Value Chain Innovation:バリューチェーン全体の最適化)の両方が実現して初めて大きな価値を生み出す──。それが私たちの考えです。では、ヨコの拡大とはどのようなものなのでしょうか。

バリューチェーンのあらゆる工程で生み出されるデータを統合管理し、ライン間、部門間、企業間全体の製造プロセスを最適化する──。それがヨコの拡大です。ここでもいくつかの事例を見ていくことにしましょう。

一つめは、ある自動車部品メーカーの取り組みです。同部品メーカーは、国内自動車メーカーの系列内で主にビジネスを展開してきましたが、取引先を増やしてビジネスを拡大していくことを目指してドイツの自動車メーカーにアプローチしたところ、工場における「抜き取り検品」や「紙による情報管理」に対して改善要求が寄せられました。

同部品メーカーの経営陣は、その要求を聞いて「今後は製造業のあり方が大きく変わっていく」ことを即座に感じ取り、国内外に10以上あるすべての工場においてIoTを使った新しい管理の仕組みをつくることを決めました。もっとも、そのすべてを同時に行うことは現実的ではないので、まずは日本のマザー工場から改善の取り組みを始めたのです。

取り組みの過程で同メーカーが重視したポイントは3つでした。一つは「チームビルディング」です。生産技術や情報システム部門だけでなく、調達、品質保証などの各部門を加えた改革チームをつくり、その中での役割を明確に決めました。

二つめは、「データ収集ノウハウの確立」です。現場には多種多様な設備があります。データ活用の目的を明確にした上で、必要なデータをどのように収集するかのノウハウを蓄積することに注力しました。

三つめは、「拡張性と柔軟性のあるシステム構築」です。今後、IoTが導入されていく工場ごとに実装の方法や実装の領域が異なるケースが想定されるため、クラウドサービス、ものづくりデータベース、エッジコンピューティングなどを活用しながら、拡張性と柔軟性に富んだ可変的なシステム基盤をつくることにしたのです。

このメーカーは、現在、国内工場におけるIoTの実装を着々と進めており、順次、海外工場に取り組みを拡大していく予定です。

グローバル展開を見据えた、段階的なプロセス最適化

工程間、部門間の連携をIoTで実現する

この部品メーカーの取り組みは、「工場間」のヨコの拡大を目指したものでしたが、「工程間」のヨコの拡大を目指した事例もあります。例えば、素材製造における各工程(焼く、練る、混ぜる、加工する、延ばす)でデータを取得し、それをバリューチェーンの川上に当たる「受入・検査実績」や、川下に当たる「検査実績」のデータと統合することによって、商品開発へのフィードバックのサイクルを速めたり、トレーサビリティを実現したりすることを目指す取り組みです。

さまざまな製造工程をトレース

さらに「部門間」のヨコの拡大を目指す取り組みもあります。従来の製造業では、部門ごとにKPIを決めるのが一般的でしたが、それが経営上のロスにつながることも少なくありませんでした。そこでプロセス全体で統一的なKPIを定め、経営の効率化を図るという動きです。

例えば、調達部門で「調達コスト」を、製造現場で「作りやすさ」を、物流部門では「輸送コスト」をそれぞれ重視した結果、在庫が過剰になったり、生産量と輸送量との整合が取れなくなったりするというケースがあります。しかし、IoTを活用して、各部門のデータを統合することができれば、バリューチェーン全体を最適化するためのKPIを全部門が共有できるようになります。結果、ロスが少なくなり、コストの大幅な削減が実現するはずです。

「部門ごとのKPI設定」から「部門間で連携したKPI設定」へ

IoT導入のハードルを越えるための二つのポイント

以上見てきたように、各製造プロセス間のデータを統合したり、川上・川下領域を統合したり、バリューチェーン全体を最適化したりすることがヨコの拡大の具体的な内容です。ヨコの拡大を実現することによって、経営効率を上げるだけでなく、市場の要求や事業環境変化に応じてバリューチェーンをそのつど再構築していくことも可能になります。

「ヨコの拡大」が実現する価値

繰り返しになりますが、一製造現場内のIoT活用領域を広げるタテの拡大と、バリューチェーン全体でのIoT活用領域を広げるヨコの拡大の二つがあって初めて、製造IoTは「実践」の段階に入り、プロセスイノベーションを実現したといえると私たちは考えています。真のプロセスイノベーションが実現すれば、マスカスタマイゼーションを徹底的なローコストオペレーションで実行することが可能になり、ライフサイクルを通じて新たな価値を生み出し続ける製品やサービスを創造することができるようになるでしょう。

もちろん、乗り越えなければならないハードルもあります。例えば、IoTの実践を進めてもなかなか目に見える効果があらわれず、IoTの可能性に対する疑問が社内に生じるといったケースです。

そのハードルを越えるためのポイントは二つです。一つは、経営と現場との協調・協力関係をしっかりとつくることです。生産現場には、「現場のことは現場で」と考える人たちもいて、経営サイドに情報を積極的に見せたくないという風潮がある場合も少なくありません。そういった現場の人たちとIoTへの取り組みの意義を共有し、IoTの実践で得られた新しいデータを共有することが大切です。

もう一つは、そうやって獲得したデータを、現場の効率を下げている「犯人捜し」などに使うのではなく、「プロダクトの品質を上げる」「生産性を向上させる」という明確でポジティブな目的のために使うことです。

これらの取り組みによって、例えば班長が朝礼で昨日までのデータを見て具体的な指示を従業員に出すなど、現場主導の改善・改革が進んでいくことも期待できます。

多様なニーズに対応する「IoTプラットフォーム」を

NECでは、次世代ものづくりソリューションを「NEC Industrial IoT」と呼んでいます。このソリューションによって、2つのイノベーションが実現すると私たちは考えています。ここまで説明してきた「プロセスイノベーション」と、IoTやAIの技術を製品に組込むことで新しい価値を生み出す「プロダクトイノベーション」です。前者が「つながる工場」を実現するとすれば、後者は「つながる製品」を実現することになります。

IoT活用には、唯一の答えはありません。どのようなプロダクトをどのような市場に提供しているのか。その市場はどのように変化しているのか。自社の強みは何か──。それらはすべて各社各様であり、したがってIoTへのニーズも多種多様であるはずです。

多様なニーズに対応するためには、さまざまなシステム、デバイス、ソリューション、コンサルティングサービスを提供する「IoTプラットフォーム」が求められます。「NEC Industrial IoT」には、製造業のバリューチェーンで必要とされる幅広い商材が含まれています。しかし、それだけでIoTの実装・実践を目指すすべての企業に最適なソリューションを提供できるわけではありません。さまざまなプレーヤーとのアライアンスによってプラットフォームをつくり、多種多様なニーズに対応していくこと。それがこれからの方向性であると私たちは考えています。

お客様、パートナー、サプライヤとの共創による2つのイノベーションをもたらす「NEC Industrial IoT」
NEC プロセス業ソリューション事業部 バリューインテグレーション部 関 行秀
NEC プロセス業ソリューション事業部 バリューインテグレーション部 関 行秀

欧米に数年の遅れをとっているといわれる日本の製造業ですが、IoTの実装と実践によって、日本のものづくりは確実に新しいフェーズに入っていくはずです。日本の製造業の最大の資産は「人」です。テクノロジーの導入によって、人が担っていた作業の多くの部分は機械化・自動化していくことになるでしょう。しかし、最終的に機械やコンピューターに置き換えることのできない領域は必ず残るはずです。

例えば、熟練の匠の知見や経験などがそれです。また、プロダクトやプロセスの質を最終的に判断するのは、今後も人であり続けるでしょう。その「人」の力をITと組み合わせることで、ものづくりの新しい時代を切り開いていく。それが、日本のものづくりが目指すべき未来ではないでしょうか。

そのような新しいものづくりによって、社会や消費者も大きなメリットを享受できるようになるはずです。エネルギーコストを下げて社会全体の無駄を削減すること。適切なコストで高い品質の製品を提供すること。新しい時代に対応した新しい製品をスピーディに生み出すこと──。それらはすべて、製造業のイノベーションが社会や人々にもたらす果実といえるでしょう。次世代型ものづくり実現のための貢献を、私たちは続けていきます。

※本記事は、2017年に作成されたものです。

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