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ERP導入を成功に導く『Fitting型導入』手法と先進事例【2023.3.15】
カテゴリ:DX・業務改革推進調達・生産管理SCM/MES/FSM
【目次】
製造業を取り巻く環境が複雑化する中、多くの製造業がデジタルデータを活用したビジネスモデル変革を目指すのに伴い、ERPには柔軟性や継続性が一層求められるようになってきました。しかし、既存スクラッチシステムからのERP標準機能導入は難しく、多くの解決すべき課題があります。そこで、ここではデータドリブン型ものづくり実現に向けたNECのコンセプトや、標準機能を最大限活用しながらERP導入を成功に導く『Fitting型導入』手法について、事例を交えてご紹介します。
NEC 製造システム統括部 ものづくりコンサルティンググループ 主任 猪島みなみ
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今、製造業を取り巻く環境は、エネルギー価格の高騰や部素材不足、人材不足、自然災害、感染症の拡大、ESG経営の要請、世界情勢不安といった変動要因の枚挙に暇がありません。どの製造業にも、こうした不確実な情勢への対応が求められています。
経済産業省『2022年版ものづくり白書』によると、IT投資で解決したい今後の重点課題として、現状からのギャップが最も大きかったのが「ビジネスモデルの変革」です。また、営業利益率と固定資産増加率や研究開発費増加率の関係を見ると、営業利益率の高い企業は積極的な投資を行っていることがわかります。つまり、今後はビジネスモデル変革に対する投資が加速することが見て取れます。
では、企業は今後どう動くべきか。経済産業省『DXレポート2.2』によると、DXへの取組で成果を出している企業は、収益向上に目的を置き、トップ以下全社で変革を実施していることが読み取れます。したがって、DXは仕組みだけでなく、トップが目指す姿を明示し指針を定めることが重要であると言えるでしょう。
NECの「ものづくりDX」ソリューションでは、図のとおり「マインド」、「活用プロセス」「仕組み」を包括的に準備し、自社の既存事業の改変や新規事業の開発を「感知」「捕捉」「変容」のステップで実施する必要があると考えています。
NECの考えるものづくりDXコンセプトの中の「仕組み」にスポットを当て、ERPの導入についてご説明します。
不確実な時代を勝ち抜くには、組織の壁を越えて情報を一元管理し活用する「データドリブン型ものづくり」へのシフトが肝要です。
そこでNECでは、ものづくりDXを支える基盤「NEC Industrial IoT Platform」だけでなく、SCMやFSM/MRO、MESといった領域を包括するERPの『IFS Cloud』をご提供しています。
『IFS Cloud』とは、スウェーデンのIFS社が開発した、23言語に対応し1万社以上のユーザーを擁するグローバルERPパッケージです。Gartner社の調査では、2020年度においてFSM、EAM、ERPのそれぞれにおいてNo.1の顧客満足度を獲得しています。
『IFS Cloud』は豊富なモジュールを用意しているので、あらゆる生産形態に対応可能かつ、重点課題からのステップを踏んでの導入や、事業変化にも柔軟に対応できます。
NECは、IFS社と25年にわたるパートナーシップを構築。製造業向けSIやAI/IoTなどのDX推進サポートの豊富な実績、NEC自身がIFSのユーザーとして蓄積した知見をベースに、ベンダーとして日本のものづくり企業への導入を担っています。
更なる不確実性への対応が求められる中、製造業が目指すべき早期現状把握と迅速な意思決定や、ビジネスモデル変革と収益力向上のためにNECが『IFS Cloud』を通じてご支援できることは、次の5項目です。
IFSの1万社以上の導入実績やNECの製造業への理解およびNECの205社におよぶIFS導入ノウハウを基に、「標準業務テンプレート」(業務フロー/機能一覧/適用企画書/画面・項目一覧)を用意。このテンプレートにお客様の業務を合わせていただく「Fitting導入」をご提案しています。
「Fitting導入」を担うのは、IFSスキルと業務知識を備えたNECの人材である認定IFS Solution Consultantです。Fitting型プロジェクトを上流フェーズから推進するリーダーとして、最新の標準業務テンプレートを提供しながらIFSの活用方法を提案します。
『IFS Cloud』は、引合から設計、受注・調達~製造・納入、保守サービスまでプロダクトライフサイクルの全体をend to endでサポートします。
その中で、例えば、受注プロセスでは引合時の見積もり作成や仕様選択(コンフィグレーション)による製番BOMの生成をサポートします。また、製番管理とMRP、発注点管理を融合させた部品表管理が可能なので、中長期販売計画、生産計画を元に共通部品や在庫補充品の先行手配をかけることができます。
外部仕入先⇒販社・工場等⇒外部顧客のそれぞれ複数からなるサプライチェーンを自由に定義できます。また、部材・仕入先ごとにかんばんやMRP自動発注などの調達方式を決め、間接工数削減と在庫適正化を支援します。
サプライヤのパフォーマンス管理や取引情報サマリをダッシュボードで“見える化”もできます。例えば、朝、PCを立ち上げた時にダッシュボードを確認し、必要な手配を行うといったことが可能になります。
1つのシステムで複数のグループ会社を管理できます。事業所(工場や販売拠点)ごとの管理ももちろん可能です。また、『IFS Cloud』の豊富なモジュールにより、新規事業や事業拡大に柔軟に対応可能です。
輸送機器やプラント設備などの受注設計生産、産業機器などの個別・受注生産、自動車などの受注組立生産、塗料など化学品の繰返生産といった多様な生産形態に対応可能です。
なお、『IFS Cloud』は半年に一度の機能アップデート、毎月のセキュリティパッチなどのサービスアップデートを行う“Ever Green”をコンセプトにしています。
NECは、IFS社のパートナーとして、これまで205社・371拠点(うち海外は95社・164拠点)と、日本における『IFS Cloud』導入の大半を占める実績を持っています(旧『IFS Applications』含む)。導入先は、量産品の見込生産から個別受注生産まで多様で、いずれにおいても自社導入の知見を活かしたトータルサポート、PLMソリューションとの連携、サービスマネジメントへの拡大といった点に強みがあると自負しています。
その導入先の中から、3社の事例をご紹介します。
音響機器などのオーディオ事業、カーナビ製品「カロッツェリア」をはじめとするカーエレクトロニクス事業大手であるパイオニア株式会社様は、グローバルな顧客ニーズにこたえるため、製品仕様が多様化し、短納期化にも対応が求められていました。また、サプライチェーンが複雑化し、拠点を横断する生産形態にもかかわらず、各拠点の生産管理システムが個別最適化されており、市場変化への即応に課題がありました。業務プロセスやデータが標準化出来ていないことで、自然災害など有事の際もサプライチェーン全体の迅速な俯瞰が難しく、懸念がある状態でした。
そこで、『IFS Applications』のSCMとMES、およびPLMやWeb EDIを導入・連携。これにより、KPIの見える化と精度向上に繋げ、納期回答の制度とスピードが大幅に向上し、在庫適性化によるコストダウンに成功しました。
世界的な半導体製造装置メーカーの樫山工業様は、世界的な需要増に対応すべく、より短納期・高効率での生産を必要としていました。ところが、基幹システムが老朽化し、事業拡大に伴う変更対応が困難な状況にあったのです。また、品質やスピード、利益の最大化に向けたデータ活用が課題となっていました。
NECは、PLM『Obbligato』とERP『IFS Applications』を連携させ、設計から生産、保守までのライフサイクル全体の情報を集約・可視化する基盤の構築をご提案し、テンプレート活用により低リスクで効率的な業務標準化・システム導入を行いました。これにより、メンテナンス事業のリードタイムは一週間以上短縮し、設計と生産の連携を強固にし、データ活用による生産革新を可能にしました。
NECは、90年代初頭に商品在庫の肥大化という大きな課題を抱えており、これを機にものづくり革新に着手したという過去があります。その後、今日までグローバルSCM改革や設計領域の標準化、経営システム改革に取り組んできております。
特にSCMの領域では、2011年に発生したタイの洪水によりタイ工場が長期的な生産停止状態になるなど、経営に大きなインパクトをもたらす出来事もありました。これまでNECが培ってきた考え方や経験は、いつでもどこでも同じものづくりが行える「生産マップフリー」をキーワードとするグローバルSCM改革の推進にも繋がっています。
NECでは、製品特性に応じた生産方式として見込生産、先行手配受注生産、部品見込受注生産、個別手配受注生産の4類型に分け、それぞれにおいて「ものづくり」「生産管理業務」「情報システム」の標準化を実施し、製品や事業部ごとに異なるプロセスを見える化しました。
さらに、SCMとMESに『IFS』を導入し、PLM『Obbligato』や『NEC Industrial IoT Platform』、販売・購買・会計ERPとも連携しております。これにより、グローバルSCM改革を実現させるNEC生産標準モデルを確立させ、事業変化対応力の向上や生産マップフリーによる最適地生産や、システムをはじめとするTCO削減に繋げています。
以上のような多くの製造業への導入実績から得たノウハウやスキルをベースに、NECは独自に標準業務テンプレート、Fitting型SI方法論、標準機能+NECアセット、Solution Consultantによる『Fitting型導入メソッド』を整備。この『Fitting型導入』により、追加開発を最小限にとどめ、低コストかつ早期のスムーズな導入を目指しています。
導入に当たっては、実機デモを交えた基本的な機能や操作方法の説明の後、標準業務テンプレートに対するお客様の適合性評価を行います。生産方式を4類型に照らして分類、評価シナリオを定義し、各生産方式やシナリオに対して標準業務テンプレートの適用範囲を決定します。
NECでは、「見える化したいのに現場が整理できていない」といった課題に対し、長年生産革新に取り組んできた“匠”がモノと情報の流れを分析しシステム/現場改善に繋げるSCM改革のコンサルサービスや、「DX化を考えているがどこから手を付けていいかわからない」といった課題に対し、NECのDXコンサルタントがトータルにサポートを行う「ものづくりDXコンサルティング」、「SCM/LCM/MESをパッケージで刷新したい」といったニーズに対し、NECのIFS Solution Consultantが適用検証を行う「IFS簡易アセスメント」といった各種ソリューションをご提供しています。詳細はぜひお問い合わせください。
IFS Cloud
「IFS Cloud」は、世界的なERPベンダー・IFS社(本社:スウェーデン)のコンポーネント型グローバルERPパッケージです。「IFS Cloud」のユーザでもあるNECは、IFS社のパートナーとして、自身の製造業としての課題や取り組みをベースに、DX時代のお客様のグローバルなものづくりを支援しています。
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NECは、製造業である⾃⾝をゼロ番⽬のクライアントとして、AI/IoT などの最先端テクノロジーを⾃ら取り⼊れ実践し、その経験から得た製造業DXのノウハウをお客様に提供します。
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