DXオファリングを支える「NEC Digital Platform」

DXを支えるITインフラ

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が企業の存続のための必須の活動となり、多くの企業がビジネス環境に迅速に対応できるITシステムやサービスの立ち上げを求められています。

そうした課題を解決するためのDXオファリングを迅速に提供し、安心かつ安定的に利用いただくために、NECの強みを集約させた共通基盤「NEC Digital Platform(以下、NDP)」を整備しています。

本稿では、NDPの概要と幅広いお客様のニーズへの対応を可能とする開発・実行基盤及び運用・運営機能についての特徴を概説します。

1. はじめに

2018年9月に経済産業省が「DXレポート」を公開して以降、DXという言葉が広がり、多くの企業が事業のデジタル化を意識するようになりました。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し、デジタル化への取り組みが企業業績の明暗を分ける結果となりました。

このように大きな変革が必要とされ、先読みのできない環境のもとでは、データを分析し、お客様の真のニーズに応じた迅速なサービスの立ち上げとその改善を繰り返すことがますます重要となり、それを実現するITシステムが必須となっています。

そこで、NECは、お客様の課題を解決するクラウドサービスとして、より早く柔軟に提供するために共通基盤「NEC Digital Platform(以下、NDP)」の整備を国内から進めており、今後グローバルにも展開していく予定です。

NDPでは、これまで多様なシステムニーズに対応してきた経験とナレッジを生かしつつ、先端クラウド関連技術の適用、他システムやサービスとの接続性の向上、マルチクラウド対応の運用運営の適用を進めています。

これにより、お客様がより安定的に安心してクラウドサービスを利用できるようになります。更に、ベストプラクティスをベースとした標準化と多様な要望に応える柔軟性を両立させ、お客様課題を解決するDXオファリングを支えます。

本稿では、まず、第2章でNDPの概要を説明し、第3章で開発・実行基盤と運用・運営機能について述べます。続いて、これらの機能を活用して実際にクラウドアプリケーションを開発したPoC(Proof of Concept)の内容を紹介します。

2. NDPの概要

NDPは図1のアーキテクチャに示すように、「SaaS」「PaaS」「IaaS」「Network」「Edge」の5層とそれらを支える「オペレーション」と「セキュリティ」で構成され、直接お客様に価値を届けるもととなる「商材」と開発・実行基盤と運用・運営機能からなる「標準化アセット」にグループ分けしています。

図1 「NEC Digital Platform」アーキテクチャ図

このアーキテクチャで構成される共通基盤を活用することで、お客様の幅広い課題を解決するDXオファリングをスピードと品質を両立して、NECがグローバルのお客様に提供することを可能とします。

具体的には、NDPの「標準化アセット」を活用することで、NECのクラウドサービスで次のことが実現できるよう目指しています。

  • クラウドネイティブな手法を整備し、より良いサービスを迅速に提供できる
  • サービスの運用手段と体制が一元化され、適切なサービスレベルを提供できる

より良いサービスの迅速な提供については、開発・実行基盤関連として、主に、UI開発の効率化、コンテナに対応した実行環境の統一とナレッジの提供、データ活用のリファレンスの提供を進めています。

また、適切なサービスレベルについては、ITILベースでのプロセスとツールの標準化を進め、Fit to Standardの実現に取り組んでいます。

3. NDPの提供機能

NDPのグローバル共通基盤として提供している内容について説明します。

3.1 開発・実行基盤の特徴

NECは、お客様のニーズにあったシステムをタイムリーに提供するために、開発フレームワークやツールを準備してきました。しかし、よりスピードと柔軟性を高めるためには、実行環境がプロジェクトごとに異なっていることが課題となっていました。

そこで、NDPでは、NECの技術的知見をもとにした「開発したサービスの実行環境の種類の限定」と「運用可能な実行環境を前提とした開発環境の整備」に「開発プロジェクトの立ち上げ支援」を加えた3つの施策を実施しています。

これにより、開発から実行・運用までのソフトウェアライフサイクルを統合的に提供して開発効率を上げるとともに、その方法の定着化を進めています。

3.1.1 コンポーネント指向UI開発(CoUI)

利用者が迷うことなく、直感的にシステムを利用できることは、サービス活用効果を最大化するためのキーの1つであり、UIはその実現のための重要な要素です。しかし、市場やお客様のニーズをとらえたUIのLook & Feelを実現するために、スピードと柔軟性の両立を追求しながら多様なサービスを開発することは、難しい課題です。それに対し、コンポーネント指向UI開発(以下、CoUI)は、上流、実装、運用の各フェーズでスピードと柔軟性の向上を可能にします。

CoUIでは、サービスの構成要素においてCRUD(Create/Read/Update/Delete)部分に普遍性があることに着眼し、標準のコンポーネントを整備しており、大きく2つの特徴を持ちます。

1つは、プロトタイピングツールで活用できるUIデザインと実装のライブラリをセットにしたコンポーネントを拡充している点です。

これにより、提案/設計フェーズでは、プロトタイピングにおいてコンポーネントのコピー&ペーストによるデモ作成を行い、上流工程での素早く柔軟な試行が可能となります。また、実装フェーズでは、試行の結果で最適だったライブラリをすぐに活用して実装でき、サービスの開発スピードを加速できます。

もう1つは、再利用性を高めるコンポーネント設計手法である「Atomic Design」を設計思想として取り入れ、CoUIのコンポーネントがモノリシックにならない最適な粒度で設定している点です。

その結果、運用フェーズでは、部品の改修範囲を最低限に抑えることができ、変更対応へのスピードと柔軟性を向上させています。

3.1.2 コンテナ対応した実行基盤の統一・開発基盤の強化

これまで、サービス開発では、プロジェクトごとに異なる実行基盤を理解したうえで開発を進める必要があるため、その統一が課題になっていました。

NDPでは、「本番の実行基盤の統一」と「実行基盤へのデリバリーを標準として実現する開発基盤の整備」を行い、開発スピードの向上を実現しました。

実行基盤は、アプリケーションのデプロイメント方式とシステムのスケール方式を業界標準のコンテナ基盤である「Kubernetes(以下、K8s)」を採用し統一したうえで、商用利用のための非機能要件を追加しました。

具体的には、インターネットを経由せずにコンテナイメージを取得できるよう環境設計している他、通信暗号化・アクセス制御や脆弱性検知などの企業活動に必須の非機能要件を実現しています。

開発基盤は、ソースコード変更を契機にビルド・テスト・デプロイメントを自動で実施する仕組みを持っており、実行基盤に対してパブリックなインターネットを経由せずにデプロイします。これによって、アプリケーションが常にテストされた状態で、効率的かつセキュアにデリバリーされることで、マイクロサービス開発のQCDを向上します。

このように開発してから実行基盤にデリバリーするまでのプロセスを垂直統合型で提供し、ITサービスの市場投入までの期間を短縮しています。

更にNDPを活用する開発チーム立ち上げを加速するために、Scrumに基づく開発スプリントを回すための実践的なプラクティスとコンテナアプリケーション開発チュートリアルを提供しています。

3.1.3 データ活用基盤

NDPは、データ活用の重要性が高まってきている流れを踏まえ、データを統合・活用するために必要な実行基盤として「データ活用基盤」を提供しています。

従来データを扱う際には、データに合わせてサービスや製品をどう組み合わせて構成するかその都度検討する必要があり、実行環境のアーキテクチャが標準化されていませんでした。

その課題を解決するために、NDPは、過去のNEC実績をもとにデータ収集・蓄積・統合及びデータ管理に関して標準ユースケースと要件を定め、それに対するAWSの各種サービスや製品を組み合わせた標準構成を定義しました。これにより、利用者が迅速にデータ活用基盤を導入し、その基盤上で業務システムやIoTなどさまざまなデータを収集・可視化・分析できるため、サービス開発を効率的に行うことができます。

また、前述したコンテナを中心とした開発・実行基盤と組み合わせて利用できるように連携しています。これにより、データ統合から可視化・分析までをワンプラットフォームで実現し、アプリケーションで入力したデータのスムーズな見える化や分析での活用が可能となります。

3.2 運用機能の特徴

NECは、これまで、運用において、独自ポータルの開発や、Redmineなどを活用したチケットシステムを運用に合わせて利用してきました。

独自開発やRedmineは、カスタマイズによる利便性の高いシステムの構築は可能ですが、機能維持に必要なメンテナンスコストや発展のためにデータ活用する際の対応が課題となります。

そこで、NDPは、デファクトスタンダードとなっているツールのデータ構造をベースにシステムを変更してFit to Standardを実現し、メンテナンスコストの削減とさまざまなクラウドサービスとの連携や機能拡充に対応可能なアーキテクチャとしています。

また、運用の実装時には、開発プロジェクトの立ち上げ支援の一環として、独自のデータ構造での実装を避け、標準で準備したデータ構造に業務を合わせて実装するように要件定義を実施しています。標準的な要求管理のフローに合わせた独自の実装を極力行わないことで、開発スピード向上と保守性の向上を目指した設計と実装の標準化を行っています。

4. NDP提供機能を利用した実証実験(PoC)

これまで述べた開発・実行基盤を活用したサービス開発の効果などの検証と運用の標準機能の実装検証を目的としたNDP上でのサービス開発PoCを実施しました。

このPoCでは、NEC社内の「投資管理業務における意思決定支援」をテーマとして、図2に示すシステム構成で、投資情報の登録及び投資対効果の見える化を実現する機能を開発しました。その中からPoCで検証を行った具体的な内容を次に示します。

図2 投資管理PoC図
  • CoUIを用いて投資情報登録を行うUIのプロトタイピング・実装を行うことで、素早い価値創出と実装ができること
  • 開発実行基盤(EKS、GitHub)とそれを利用した開発ベストプラクティスを用いたScrum開発を行うことで、コンテナ基盤上でのアプリケーション開発を加速できること
  • 開発実行基盤とデータ基盤を組み合わせることで、投資情報をもとにした投資対効果を短期間で見える化できること
  • 標準ツールを用いた運用運営基盤と連携し、開発したアプリケーションの障害通知と一時対応などの運用が標準化できること

このPoCでは、開発面では、3時間でのデモ作成と4週間でセキュアなMVP(Minimum Viable Product)開発ができ、運用面では、運用標準化対応できることを確認しました。また、サービス開発者が直面するアプリケーション開発やデータ連携情報の課題の解決を図るべく、検証内容をもとにしたリファレンスガイドを整備し、公開しています。これにより、クラウドネイティブなサービスアプリケーションの迅速な開発とお客様への提供を支援します。

5. むすび

NECがお客様のニーズにあった柔軟なクラウドサービスを迅速に提供するために、NDPがグローバル標準の共通基盤として、開発・実行基盤と運用・運営機能を提供することで貢献していることを紹介しました。

今後は、これらの機能を生かし、NECの持つ多くの技術を連携させることで、お客様の課題を解決する提案型のDXオファリングを増やし、お客様の事業拡大に貢献していきます。

執筆者プロフィール

井上 康博
DXオファリング・プラットフォーム戦略本部
本部長代理
笈川 豊英
DXオファリング・プラットフォーム戦略本部
シニアマネージャー
土持 幸久
DXオファリング・プラットフォーム戦略本部
エキスパート
辻 篤史
DXオファリング・プラットフォーム戦略本部
エキスパート
八木沼 修
DXオファリング・プラットフォーム戦略本部
主任
清水 誠之
DXオファリング・プラットフォーム戦略本部
プロジェクトディレクター