DX時代の組織人材変革を支援するDXオファリング

デジタル人材の育成やデジタル組織運営を支援するDXオファリング

テクノロジーの飛躍的進歩と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機としたデジタルシフトの加速、不確実性の高まりを受けて、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)は待ったなしの状況にあります。企業価値向上のため、向かうべき方向を見誤ることなくDXを推進するためには、それを支える人材や組織の変革が必要不可欠です。本稿では、最初に必要と思われるDX人材像と推進組織のあり方について触れたうえで、NEC自身の人材・組織変革の経験を生かした、DX人材育成・組織変革をお客様との伴走型で支援するDXオファリングを紹介します。

1. はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機にデジタルシフトが加速し、消費者行動や価値観も多様化しており、また人々・企業・社会が相互につながることによるデータ化が予想以上に進みました。外部環境変化にスピード感を持って対応し、企業価値を向上させるためには、企業におけるDX推進はまさに待ったなしの状況になっています。そこに立ちはだかるのがDXを推進する社内人材の不足です。最新のテクノロジーを取り入れつつ、従来の発想を超えてアジャイルに全社規模で変革を推進できる人材が求められます。そうした背景を踏まえて、NECでは自身の人材・組織変革の経験を生かした、DX人材育成・組織変革を支援するDXオファリングの提供を開始しました。

一般社団法人日本能率協会が実施した、企業経営者を対象としたDX推進課題に関する調査結果では、「DXビジョンロードマップが描けない」を抑えて、9割の回答者が「DXに関する人材不足」を挙げました。DXに関連するいかなる施策に取り組むにしても、人材が不足していることを裏付けているデータです。

では、DX人材とはどのような人材なのでしょうか。NECでは、DX人材を「デジタルを活用して社会課題や経営課題を解決。社会に新たな価値を創造する人材」と定義していますが、抽象度が高いので本稿ではもう一段かみ砕いて、第2章で詳しく解説します。

2. DX時代に必要な人材要件

2.1 DX推進に必要な振る舞いとは

外部環境の変化に素早く、的確に対応するためには、図1に記載した4つの振る舞いが必要になります。

図1 環境変化と求められる振る舞い
  • (1)
    アジャイルな事業推進
    不確実性が高まり将来が見通し辛いため、スピード重視で検討を進め、不完全あるいは小規模でも早期に実行に移すことが求められます。その一連の動作をリードする役割が必要不可欠です。
  • (2)
    データ起点で活路を見出す
    デジタルシフトが加速しているなか、顧客志向や経営環境、働き方や従業員意識の変化を正確にとらえるためには、データを拠り所とした状況把握と打ち手の導出ができる人材が必要となります。
  • (3)
    組織横断的な推進
    新しい顧客体験提供や業務変革をアジャイルに推進するためには、事業部間やビジネス/IT間の垣根を越えて、自社の知見を集結した全社横断的なプロジェクト型組織を統率・運営できるケイパビリティが必要です。
  • (4)
    最新技術の実用化
    技術の急速な進歩により、従来では不可能だったことが実現できる可能性が高まっています。ビジネス目標達成や課題解決のために、最新技術をどう活用するのかをデザインできる人材が必要となります。

2.2 必要となるDX人材像

第2章1節に示した振る舞いを実践するDX人材像について、図2の通り一般論として定義してみました。第4章で紹介するDX人材育成共創サービスでは、お客様独自の人材像を定義したうえで、育成計画を立案しています。

図2 DX人材定義例

3. DX推進組織のあり方

次にDX推進組織のあり方について、ジェラルド・C・ケイン著書の「DX企業戦略」の内容をベースに、“DX競争環境で成功する企業に共通するモデル”という切り口で、図3を用いて説明します1)。まずリーダーシップや組織運営は階層型ではなく分散型の傾向にあり、部門の枠を超えたコラボレーション・協業が日常的に行われています。社員に対しては実験と学習が推奨され、全体的にアジャイルで迅速な行動特性が見られます。それに加えてリスク許容度が高く、大胆で探索的傾向が見られます。

また、育成した人材の定着化・リテンション強化にも配慮した組織設計が必要です。組織の機能と必要な要員を明確にすること(組織設計と要員計画)、計画的に活躍の場を提供すること(要員配置計画)、スキルやキャリアパスの可視化(スキル管理)、組織目標にアラインした業績目標設定と公平公正な評価制度(目標管理と業績評価)などを、人材育成と併せて検討することが重要です。

図3 DX競争環境で成功する企業に共通するモデル

4. NECが提供する組織・人材変革のDXオファリング

これまで述べてきたDX時代に必要な組織人材変革に向けて、NECではさまざまなDXオファリングを提供しています。第4章では主要な3つのサービスを紹介します。

4.1 全体像

DX推進のための組織人材変革に向けて、NECでは2方向のアプローチでお客様と共創しています。1つ目はビジョンや戦略、組織構造や業務内容・規程など、明文化、形式化されるものを対象としたハード面からのアプローチ、2つ目は人的側面からのスキルや対人関係、リーダーシップ、意思決定パターンや意識など、明文化、形式化されにくいものを対象としたソフト面からのアプローチです。

いずれか片方だけでは変革の実現は困難になるため、両方合わせて検討していくことを推奨しています。図4では、最近の問い合わせが多い代表的なDXオファリングを記載します。

図4 DX実現の2つのアプローチ

4.2 ハード面からのDXオファリング

現状のFIT&GAP分析から、組織設計~タレントマネジメントまでを対象とした、次の3つのサービスを提供しています(図5)。

図5 ハード面からのDXオファリング一覧
  • (1)
    組織・人材変革アセスメント
    組織設計・要員計画から要員配置計画・スキル管理・目標管理までの全体像についてアセスメントを行い、改善点と優先度を明確化します。NECでの実践に基づいたフレームワークをベースにするため、1カ月という短期間でのアセスメントが可能です。
  • (2)
    組織設計・要員計画立案支援
    (1)の後続として、組織の機能と必要なポジション、ジョブディスクリプションの作成と要員計画を設計します。
  • (3)
    タレントマネジメント導入支援
    (2)の後続として、要員配置計画・スキル管理・目標管理の各要素を設計します。育成した人材に活躍機会を与え、魅力的なキャリアパスを提示し、チャレンジすることを評価する評価制度に変革することが、人材のリテンションと優秀人材獲得には効果的です。

4.3. ソフト面からのDXオファリング

お客様の課題感やニーズに応じて、次の3つのDXオファリングを提供しています。

  • (1)
    DX人材育成共創サービス
    DX人材像の定義から必要なスキルを導き出し、現在保有している従業員スキルとのGAP分析から、必要な育成計画を策定します。また、研修効果測定方法の検討や、活躍機会の検討も併せて実施します。お客様のニーズに応じて、例えば、対象とする人材の範囲を、まずはDX推進組織やIT部門のメンバーにするなど、柔軟に対応しています(図6)。
図6 DX人材育成共創サービス
  • (2)
    チェンジリーダー養成プログラム
    全社的な変革の先導役として、全社横断的なチームにおいても健全な関係性を構築し、周囲の人を巻き込む力を育み、DX推進を促進するリーダーを養成します。方法論を座学で学習するだけではなく、DX実践をテーマにした実業務のなかでの活用方法にまで踏み込んでコーチングしています(図7)。
図7 チェンジリーダー養成プログラム
  • (3)
    組織風土改革支援
    変革のための実践活動から見えてくる、組織の持つ強みや特長、懸念・悩み、壁に触れて、組織の理想形を実現する継続した活動を伴走型で支援します。いきなり全社規模ではなく、まずは特定の組織から変革に取り組むケースが多いです(図8)。
図8 組織風土改革支援

5. むすび

本稿では、NECが考えるDX時代に必要な人材像・組織のあり方を紹介したうえで、NECが提供しているDX人材育成・組織変革に関するDXオファリングにも触れました。当サービスは、NECの組織変革や人材育成の経験値、各種アセットをベースにしているため、現実的でスピード感のある変革実現に寄与します。今後更にサービス提供実績を積むことでアセットを充実させ、お客様への提供価値をより高めていきます。

参考文献

  • 1)
    ジェラルド・C・ケインほか:DX企業戦略,NTT出版,2020.10

執筆者プロフィール

戸田 雅仁
DX戦略コンサルティング事業部
Executive Consultant Lead

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