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Smart Retail CXを実現するための情報システム基盤「Digital Store Platform」

NECは、リテール業において「あらゆるデータを統合・管理し、お客様の行動傾向やその時々の状況を推察、自然なタイミングで気の利いた提案」を可能にします。また、オンラインやオフラインを区別することなく、一人ひとりのニーズに合わせた魅力ある購買体験を提供します。それらのサービスを支える情報システム基盤「Digital Store Platform」を、あらゆるデータをリアルタイムに、データの格納場所を意識することなく情報提供が行えるリテールドメイン向けの基盤として整備することで、刻々と変化するお客様のニーズに応え迅速に低コストで導入できるベースを提供し、小売業の発展に貢献していきます。

1. はじめに

ECやSNS、5th Generation(5G)やAIなどデジタル市場が活況を呈しているなか、日本のリテール業はデジタルシフトにおいて非常に遅れていると言われています。

今後ネットとリアルの垣根はなくなり、さまざまなデバイスを通してオンラインとオフラインが融合したアフターデジタル時代を迎えようとしています。本稿では、リテール業におけるデジタルシフトの加速を支援するためのNECの取り組みを紹介します。

2. 「Digital Store Platform」の目指す世界観

Smart Retail CXが目指す、快適で心地よい顧客体験、それを生み出す店舗運営、従業員のやりがいのある業務環境といった世界観を実現するためには、情報システム基盤が重要な役割を果たします。

基盤が整っていなければ、アプリケーションの迅速な開発や、安全な店舗運用を支えることが難しく、顧客体験の向上や利便性のある業務環境の提供が行えません。

それらを支えるための情報システム基盤が「Digital Store Platform」が目指すものです。これを実現するためには、データの透過性、即時性、多様化するデバイスへの対応の3点が重要なポイントだと考えています(図1)。

図1 NEC Value Chain Innovationリテールドメイン向けの基盤「Digital Store Platform」の位置付け

2.1 データの透過性(データ利用者に格納場所を意識させない)

クラウドを利用したシステム構築が主流となりつつある昨今、データがどこに格納されているかをデータ利用者(開発者)側に意識させない仕組みが1つ目のポイントとなります。これまでリテール業におけるデータ管理といえば、センターやクラウド上での一元管理、店舗内でのローカル管理などデータ格納先を意識し、機能配置を決定するアーキテクチャを取ることが多くありました。しかし、Relational Database Management System(RDBMS)に代表される構造データのみでなく、画像や音声、集計データやSNSなど、取り扱うデータが多様化していることに加え、データ量も増加の一途をたどっています。そのようななか、データ自体は管理しやすい最適な位置に格納しつつ、データ利用者側はAPIコールにより格納先を意識せずにデータを利活用できる仕組みが、ますます重要になっています。

2.2 即時性(欲しいデータを必要なタイミングで取得)

お客様や従業員が求める情報をリアルタイムに提供していくためには、欲しいデータを即時に提供できる仕組みが重要となります。多種多様なデータから、欲しいタイミングで自由に、簡単に、安全に引き出せる仕組み・基盤の提供が2つ目のポイントとなります。

2.3 多様化するデバイスへの対応

数年前まで店舗システムといえば、POSや発注端末など専用機器により構成されることが主流であり、リテール業は、最近のIT市場におけるデバイスのめざましい進化に取り残されつつありました。昨今、タブレット端末やスマートフォン、スマートウォッチといった汎用デバイスの機能が著しく向上しており、さまざまなデバイスを業務運用に利用することが多くなってきています。またお客様が Bring Your Own Device(BYOD)端末により店舗情報を参照する機会も増えており、更には冷蔵庫や電子棚札などOT機器のIT化も進みはじめています。そうした多様化したデバイスからでも、柔軟に機能が利用できる仕組みが重要であり、それら機能を簡単に開発・運用できる基盤が3つ目のポイントとなります。

これら3点を支える情報システム基盤を提供することでSmart Retail CXが目指す世界観を実現します。

3. データの管理場所をデータ利用者に意識させないAPI基盤

これまでのリテールシステムは、ハードウェアリソースが乏しい時代に構築された情報システム基盤をベースにしていることが多く、現場部門での画面性能を優先した機能配置、データ配置となっていることが多々あります。データは各拠点に蓄積されていますが、セキュリティ的な観点からローカル環境でのデータ参照しか行えないケースが多く、外部からリアルタイムに取得できない構造となっています。昨今では、5GやWi-Fi6に代表されるネットワーク技術の発展や、サーバリソースコストの低下などもあり、データを発生元に分散管理してリアルタイムに参照する方式でも、性能上問題とならない外部環境が整いつつあります。また、データが多様化しSNSなどインターネット上のデータ利活用も多くなってきているため、データ利用者にロケーションを意識させずAPIでデータを集約して提供できる基盤があった方が利便性は高くなります。そうしたニーズに迅速に対応していくために重要な技術要素となってくるのが、マイクロサービス化でありAPI化となります。次にNECで取り組んでいるマイクロサービス化・API化に関し、Customer Experience(CX)・Operational Excellence(OPEX)・Online Merges with Offline(OMO)を事例に紹介します。

3.1 レジレス型店舗を支える基盤(CX)

レジレス型店舗、セルフレジ、食品自販機、カート(EC)といった多様なチェックアウト形態が求められているなかで、現状のリテール業のレジは災害発生時の業務継続性や画面レスポンスを重視し、デバイスローカルに機能・データを持った作りとなっていることが多くあります。レジで取り扱うデータは、大きく次の3種に分類されます。

  • (1)
    価格情報や販促などのマスタデータ
  • (2)
    売上、決済、消費税などの会計計上データ
  • (3)
    販売・返品したことでの在庫変動データ

いずれも基幹システムとの連携が必要なデータですが、パターンが膨大なためロジックも複雑になりがちです。これらをチェックアウト形態ごとに個別実装すると開発コストも大きくなるため費用対効果が合わず、導入へのハードルが高い一因となっています。

そこで「Digital Store Platform」では、基幹システムとのデータ変換・連携用機能群、価格算出・販促判定・決済・売上計上といったチェックアウトAPI群に分け、かつマイクロサービス化により疎結合な機能粒度となるようにしています。これらをクラウドに配置し、さまざまなデバイス・チェックアウト形態から参照できるようにすることで、開発コストの低減、開発期間の短縮を図るとともに、お客様へよりスピーディーなサービス提供が行える基盤整備を進めています。

レジレス型店舗では、前述した基本的な機能群に加え、商品のバーコードスキャンの代替として、棚から商品を取った行動情報を元に、商品バーコードをキーとしたチェックアウトAPIにより価格算出を行うことで実現しています。

更には、新たに生まれた行動情報データを基幹システムデータと組み合わせることで、分析・マーケティングにつなげるなど新しいサービス提供も可能となります(図2)。

図2 レジレス型店舗を支える基盤

3.2 店外発注を支える基盤(OPEX)

店舗での重要な業務の1つとして、発注業務があります。発注業務は、売り場の状況を確認しながら利用することを前提としており、店舗専用デバイス上にデータや機能を配置しているケースが多くあります。発注業務は商品マスタ、売上実績、天気情報、販促データなど多種多様なデータを用いる業務となりますが、大量のデータを扱いながらも従業員の利便性確保のために画面レスポンスを重視したアーキテクチャを採用しています。そのトレードオフとして、リアルタイム性や他のデバイスの活用による利便性向上を犠牲にしてきた面は否めません。

しかし、昨今のUnder/Post COVID-19対策として、店外からも店内同様に業務継続が可能であることが求められており、その解決策の1つとして、「Digital Store Platform」上に店舗のローカルデータを取得するAPIを実装し、これまで店内からしか取得できなかったデータを、店外からリアルタイムに取得して業務継続が可能となるように、基盤整備を進めています。API化する際のポイントは2点あります。

ポイントの1つ目は、従来のように画面レスポンスを重視し、画面レイアウトに合わせた機能とするのではなく、データ種ごとにマイクロサービス化を意識した機能粒度でAPIを定義することです。これにより、利用デバイスや利用シーンによりUI要件が変わったとしても、APIを変更せずにUI側のみの変更で対応できるようにしています。

ポイントの2つ目は、データを利用する側にデータの格納場所を意識させず、各APIが取得したデータを集約して呼び出し元に返すような多段階呼び出し構造を前提とした設計方針とすることです。これによりデータ利用者はリアルタイムに必要な情報を簡単に取得できるようになります。

これらの仕組みを使うことで、店舗外でタブレット端末を用いた発注システムや、SNSなどインターネット上にあるデータを活用した発注システムなど、新しい取り組みがスピーディーに構築できるようになります。

3.3 OMO時代における変化を前提とした基盤

これまでのリテール業におけるお客様との接点は、主に店頭における接客からの購買行動を中心に、SNSなどを利用したお客様の囲い込み、ECサイトへの誘導、O2Oによるオンライン顧客のリアル店舗誘導などが主流でした。

しかし、デジタル市場の拡大によりサイバー領域とフィジカル領域の境界が曖昧となり、よりシームレスな連携が実現しつつある昨今、お客様との接点(タッチポイント)も多様化し、かつお客様がアクセスしたいタイミングに適切な情報を的確に提供できるリアルタイム性がより重要となります。

また、5Gが当たり前となった環境では、スマートフォンの次世代デバイスが主流となることも想定され、多様化するアクセスデバイスに柔軟に追従するために変化を前提とした、次の要件を満たした基盤であることが求められます。

  • Contents Management System(CMS)などを活用した柔軟な画面構築
  • レスポンシブデザインによるサイズへの柔軟な追従
  • コンポーネントベースによる機能間結合度の疎結合化
  • マイクロサービス化による最適な機能粒度
  • XaaSを柔軟に取り入れられるアーキテクチャ
  • ゼロトラストを前提としたセキュリティ設計
  • 開発者・運用者がシームレスにやりとりできるコミュニケーション基盤
  • サービス更新時に開発部門と運用部門が連携しやすいDevOps基盤

「Digital Store Platform」では、こうした要件を考慮した情報システム基盤の提供を目指した構成としています(図3)。

図3 OMO時代のあるべき姿

4. むすび

変化の激しい時代だからこそ、変化することを前提としたアーキテクチャ、システム構築が求められています。NECは、日進月歩で進化する新しい技術、デバイス、開発手法、サービスなどを柔軟に取り入れつつ、多様化するデータの利活用を行いやすいシステム基盤を提供することで、リテール業界の発展を支え続けていきます。


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    Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの登録商標です。
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執筆者プロフィール

岩尾 智宏
リテール・サービス業システム本部
シニアマネージャー
中島 健
リテール・サービス業システム本部
プロジェクトマネージャー
石田 ひとみ
リテール・サービス業システム本部
プロジェクトマネージャー

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