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今だけ、ここだけ、私だけの買い物体験を提供するOMOソリューション

Smart Retail CX

ICTの技術が進展し、リアル店舗を中心としたオフライン接点や行動が常時オンラインに接続する環境が整うアフターデジタル時代において、オンラインとオフラインを融合し、一体としてとらえたうえで、これをオンラインにおける戦い方や競争原理としてとらえる考え方であるOMOへの対応が求められています。また、OMO時代には、幅広いデータをオンライン/オフライン問わず、つないで一元化し可視化したうえで、エクスペリエンスサイクルを高速化することが必要となっています。本稿では、OMOが注目を浴びている背景とポイント、そしてOMO時代に求められるシステムの方向性、NECのソリューションの考え方について説明します。

1. はじめに

現在の日本市場においては、スマートフォンとSNSを中心としたデジタルの普及により人々が密接につながり、常に情報を交換し、必要に応じて行動を取るようになった結果、購買行動の変化・多様化が起こり、小売業界における競争ルールが変化しました。それにより、オンライン、オフラインの垣根がなくなり、近年ではさまざまな企業が個別チャネルありきではなく、あらゆるタッチポイントを駆使して顧客にアプローチをしていくといったオムニチャネル施策に取り組んでいます。しかし、この先、リアル店舗を中心としたオフラインな場所や行動も、常時オンラインに接続している環境が整うアフターデジタル時代が到来します1)。オムニチャネル時代はオフラインの付加価値的存在としてオンライン領域が広がっていましたが、アフターデジタル時代はすべての顧客接点がオンラインに内包され、オンラインとオフラインの主従関係が逆転します。そのようなアフターデジタル時代を勝ち抜くために重要な要素が「Online Merges with Offline」(OMO)という概念になります(図1)。

図1 オムニチャネル時代とOMO時代

近年、オンラインとオフラインを融合し一体としてとらえたうえで、これをオンラインにおける戦い方や競争原理としてとらえる考え方であるOMOについて、日本でも頻繁に耳にするようになってきました。本稿では、OMOが注目を浴びている背景とポイント、OMO時代に求められるシステムの方向性、NECのソリューションの考え方について紹介します。

2. OMOが注目されている背景

OMOというキーワードが急速に広がっている背景には、IoT、5G、AIといった3つのメガトレンドが存在します。現在、デジタル化の発展により、日本市場におけるBtoCのEコマース市場は2019年ベースで約19.4兆円(前年比7.65%増)と急速に拡大を続けていますが、EC化率はいまだ6.76%にすぎず、93.24%の商取引はオフラインチャネルによって実施されています2)。また、私たちの生活のなかにもデジタル化されていない勘や経験に頼った膨大な量のアナログプロセスが存在し、オフラインの世界でデジタル化されているものはごく一部にすぎません。

しかし今後、IoTの発達に伴い物的資産のデジタル化が進み、5Gの超低遅延化によってリアルタイム処理が可能となり、多数同時接続の実現によって身の回りのあらゆる物がオンライン空間に接続可能となります。IoTと5Gによりオフライン空間のオンライン化が進み、オンラインとオフラインが融合してボーダレスとなり、どこでもオンライン化した状態になります。そしてAIの発達によってビッグデータ処理が進み、自動化によってデータの可視化スピードと質が向上するため、デジタル起点の考え方が必要であるというOMOという考え方が注目を浴びています。

3. OMO時代の目的とポイント

昨今、中国をはじめとした海外のオンライン発先進企業を中心に、あらゆる企業がOMOというキーワードのもと、さまざまな施策に取り組んでいます。アリババが運営する中国の盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)というOMO型スーパーマーケットでは、すべての購買がスマートフォンアプリケーションに集約されており、データを活用して個人に最適化したおすすめやクーポンが表示され、データに基づいた店舗ごとに最適な品揃え、更には新規出店の立地場所選定が行われています。また米国のAmazonはオンライン、オフライン接点から得られた膨大な購買データ、行動データ、生活データを基に、価格、品揃えを変え、個人に最適化したレコメンデーションを提供しています。

この他にも各企業によりさまざまな取り組みが実施されていますが、共通して言えることは、データに基づいた消費者理解により、「消費者中心視点」を徹底させ、その結果として「消費者に選ばれる理由(=新たな価値の創造)」が作られているということです。このようにOMO自体は、手段、考え方であり決して目的ではありません。また、消費者に対してどのような価値を提供していくかは各社によって異なり、OMO戦略も各社各様です。消費者中心視点でオンライン、オフラインを融合し、オンラインの「高効率性・利便性・広範囲性」とオフラインの「体験性・信頼性・感動性」を組み合わせることでビジネスをトランスフォームし、「顧客経験価値」いわゆる「カスタマーエクスペリエンス(CX)」の向上を図っていくということが真の目的であり、本質です。そしてOMO時代のCX向上には、(1)情報の一元化、(2)可視化、(3)エクスぺリエンスサイクルの高速化という3つのキーワードが重要になります(図2)。

図2 OMO時代の3つのキーワード

3.1 情報の一元化

現在、オンラインチャネルにおいては購買データに加え、消費者がどんな関心を持って訪れ、どのような興味を持ち、商品を閲覧して、買い物かごに入れたのかといったような購買前の行動データが取得できます。今後IoT、5G、AIの発展により、オフラインチャネルにおいても行動データの見える化がより進み、更には購買後の生活データの可視化が進んでいくことが予測され、個客をとらえる範囲が莫大に広がります。そのような状況において、オンライン、オフライン双方の行動データ、購買データ、生活データをつないで統合し、一元化することがOMOの第一歩となります(図3)。

図3 広がる消費者可視化範囲

3.2 可視化

次のステップは、統合したデータからの徹底した消費者理解により、消費者の状態や興味・関心と貢献度を可視化することです。「消費者は自社の商品やサービスをどこで知り、どこでその理解を深め、何をきっかけに行動に移るのか、どこから来訪し、どこでつまずいているか、どういった状況でアクセスし、何を求めているのか」といった消費者のカスタマージャーニーを可視化し、そのデータを基に消費者の自社に対する貢献度を可視化することが重要になります。

これまで消費者の貢献度は「購買」といった「カスタマーライフタイムバリュー(CLV)」のみで測定されることがほとんどでしたが、消費者のパワーが圧倒的に増している現代において消費者の貢献度はもはや「購買」だけでは測れません。CLVに加えてどれだけ情報をシェアし、消費者を紹介してくれているかという「カスタマーリファラルバリュー(CRV)」、どれだけ周囲にインパクトを残してくれているかという「カスタマーインフルエンスバリュー(CIV)」、商品開発や共創のアイデアをどれだけフィードバックしてくれているかという「カスタマーナレッジバリュー(CKV)」といった4つの消費者の価値で貢献度を図り、可視化することがポイントになります3)

3.3 エクスペリエンスサイクルの高速化

最終ステップは、可視化した消費者の状態と貢献度合いに基づいて、オンラインの「高効率性・利便性・広範囲性」とオフラインの「体験性・信頼性・感動性」を組み合わせて最適なタイミングで最適なコミュニケーションを継続的に回していくことです。消費者のニーズは絶えず変化します。そのようなニーズ、環境の変化に合わせて常に消費者の声に耳を傾けつつ、可視化したデータを観察(Observe)し、データを基に情勢判断(Orient)を行い、意思決定(Decide)、行動(Action)をするといったOODAループを繰り返していき、「消費者と対話し続ける、消費者のことを考え続ける」仕組みを構築することが非常に重要になります。

4. OMO時代に求められるシステムの方向性

デジタル市場は世界的に見ても成長を続けており、スマートフォンの急速な普及により消費者にとってますます身近な存在になるとともに、現在のUnder COVID-19時代においてその重要性は一層高まってきています。そしてすべてが常時オンラインへとつながるOMO時代において、ECをはじめとしたオンラインチャネルは大きな変化の時を迎えており、単なるデジタルチャネルの1つとしてではなく、オンラインの特性である「高効率性・利便性・広範囲性」を生かし、オフラインチャネルを高度化させていく役割を担います。

一方、消費者に「楽しさ」「感動」を与え、CX向上を図っていくことが重要なOMO時代は、人と人が密に接する場であるリアル店舗を代表とするオフラインチャネルも今まで以上に非常に重要な位置付けとなり、来たるPost COVID-19時代において非常に重要な位置付けとなります。

そのようななか、OMO時代のシステムには、オンライン、オフライン問わず、チャネルシームレスにデータをつないで統合し、その可視化したデータを基に適切なタイミングで最適なタッチポイントを駆使し、消費者と継続的にコミュニケーションを取っていくことができる仕組みが求められます。また、消費者からのサービスニーズは常に移り変わり、対応するシステムには、消費者起点で常に進化し続けることが求められます。そして、変化の速いOMO時代には、SNSなどのサービスやスマートデバイスなどの新しいデバイス・技術が次々と誕生するため、関連サービスとの連携性や拡張性も重要になります。機能の部品化を加速し、さまざまなサービスや新技術との高い親和性を提供していくことが今日のシステムに求められます。そのような仕組みを使い、あらゆるパーソナルデータを基に消費者に対して「おもてなし」を提供し、「感動」を生み出すことでアンバサダーが醸成されて、消費者から“選ばれる”小売業になることができます(図4)。

図4 OMO時代のあるべき姿

5. NeoSarf/DM、NeoSarf/POS

NECのECソリューションであるNeoSarf/DM、店舗ソリューションであるNeoSarf/POSはともに従来のシステムとは発想を180度転換させ、変化を前提としたOMO時代のソリューションです。環境変化のスピードが非常に速い今日の社会において、従来型のシステムの発想では太刀打ちできません。変化を前提として、変化が起きた時に素早く柔軟に対応できるシステム基盤が必要になります。NeoSarf/DM、NeoSarf/POSはともに、機能を疎結合に部品化した「コンポーネントベースシステム」です。この仕組みをつなぎ合わせることで、将来の事業環境変化に対し、柔軟・迅速な機能追加や機能置換、他システムやサービスとの連携が図れ、消費者行動の変化や技術革新などに対し、スピードとオリジナリティを持ったビジネストランスフォームを実現することが可能になります。

6. むすび

消費者の購買行動と小売業における競争原理が大きく変化するOMO時代において、小売業も消費者に合わせて常に変化を続け、オンラインとオフラインの特性を駆使しながら、CXの向上を図っていくことが求められています。NECは長年のリアルとネット双方における実績に裏付けされた業務ノウハウ、要素技術により、OMOソリューションの強化・進展を図り、小売業の発展をICTで支え続けていきます。


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参考文献

  • 1)
    藤井保文、尾原和啓:アフターデジタル,日経BP,2019.3
  • 2)
    経済産業省:令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書,2020.7
  • 3)
    藤崎実、徳力基彦:顧客視点の企業戦略-アンバサダープログラム的思考-,宣伝会議,2017.3

執筆者プロフィール

吉廣 祐
第二リテールソリューション事業部
マネージャー
浦井 英雄
第二リテールソリューション事業部
主任
守田 咲絵
第二リテールソリューション事業部
主任
中屋 裕登
第二リテールソリューション事業部
渋川 慧
第二リテールソリューション事業部

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