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マイナンバーカードに関わる顔認証システムの活用
バイオメトリクスを用いたサービス・ソリューションマイナンバーカードは、マイナンバー法に基づき地方公共団体が希望者に交付するICカードです。このマイナンバーカードの券面及びICチップ内の顔写真データは、さまざまな業務に利活用が可能です。本稿では、マイナンバーカード交付時に利用されている「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」の概要と、マイナンバーカード内の顔写真データを活用した実証実験の状況について紹介します。
1. はじめに
NECは、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に対して、地方公共団体の個人番号カード(以下、マイナンバーカード)交付窓口で本人確認に利用される「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」を納入しています。
また、マイナンバーカードのICチップ内には、券面の顔写真データが格納されており、利活用が可能です。
本稿では、この「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」の概要と、マイナンバーカード内の顔写真データを活用した実証実験の状況について紹介します。
2. 「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」について
2.1 背景
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下、マイナンバー法)では、2015年10月から住民票を有するすべての住民にマイナンバーが記載された紙の「通知カード」が郵送されています。マイナンバーカード交付希望者は、同封されている個人番号カード交付申請書に顔写真を貼付し地方公共団体宛に申請を行うことで、マイナンバーカードの交付を受けることが可能となっています。
昨今、身分証明書の偽造・変造などの犯罪が社会問題となるなか、官民含めてさまざまな利用シーンが想定されているマイナンバーカードの交付時には、地方公共団体に厳格な本人確認が求められています。このような環境のもと、NECが提供する顔認証システムは、地方公共団体のマイナンバーカード交付時におけるなりすましの防止を支援しています。
2.2 「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」の概要
マイナンバーカードにおける券面の顔写真(交付時来庁方式の場合)または個人番号カード交付申請書の顔写真(申請時来庁方式の場合)をスキャナで読み込み、そのデータをカメラで撮影した来庁者の顔情報と照合して、類似度を数値で画面に表示します。職員は本数値を、各地方公共団体の基準に照らし合わせて交付の可否判断の目安としています。
具体的な地方公共団体の作業を説明します。まず、地方公共団体でパソコン、Webカメラ、スキャナを用意し、これを接続します。そのパソコンに「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」用アプリケーションのインストールを行います。これで事前作業は終了です。
次に、システム利用方法について説明します。パソコンの「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」のアイコンを押下してアプリケーションを起動し、スキャナにマイナンバーカード、もしくは、個人番号カード交付申請書をセットします(図1)。
用意したWebカメラで来庁者を写し、アプリケーションの「照合開始」ボタンを押下します。スキャナが動作し、スキャナで読み込んだ券面の顔画像とWebカメラで撮影した来庁者の顔画像を照合します(図2)。これにより、確実に本人の顔写真が券面に記載されたマイナンバーカードを、住民に交付することができます。
なお、顔情報はシステム内に保存されないため、個人情報漏えいに対する安全性も確保しています。
3. マイナンバーカードと顔認証システムを利用した実証実験について
3.1 マイナンバーカードについて
マイナンバーカードは、マイナンバー法に基づき地方公共団体が希望者に交付するICカードになります。なおマイナンバーカードには、12桁の個人番号(以下、マイナンバー)が記載・格納されていますが、マイナンバーはマイナンバー法で利用範囲が制限されている特定個人情報のため、今回の実証実験では、マイナンバーは利用していません。
マイナンバーカードの主な特長は、以下の4点になります。
- (1)地方公共団体の窓口で本人確認がなされたうえで交付されているカードであること(間違いなく本人にカードを交付していること)
- (2)官公庁、及び企業で利用が可能な公開鍵基盤(Public Key Infrastructure:PKI)の電子証明書が格納されていること
- (3)住民票に基づくカードであるため、最新の氏名、住所などが券面に記載、かつICチップに格納されていること
- (4)当面の間、無料で交付されていること
次に、マイナンバーカードのICチップ内の構造は、以下の図3のようになっています。
このうち、「券面AP」内には、券面の顔写真データが格納されており、官民で利用が可能です。この顔写真データは、カード交付時に地方公共団体が厳密な本人確認を実施しているため、確実に本人の情報であることが公的に保証されており、更に利活用には制約がないため、顔認証システムにおける顔画像情報の初期登録に最適な利用方法といえます。また、運転免許証のICチップ内にも同様の顔写真情報が格納されているため、初期情報登録時に運転免許証とマイナンバーカードを併用すれば、運転免許証保有者約8,200万人に加えて、免許返納後の高齢者層や免許未取得の若年層などをマイナンバーカード(約1,700万人)でカバーでき、多くの住民を対象とすることが可能です。
更に、マイナンバーカードには、公的個人認証サービスの電子証明書が格納されているため、顔写真データに電子署名を付与することで遠隔での本人確認を伴う顔写真データ登録に対応できます。例えば、自宅からスマートフォンを利用して顔写真データを含む利用者登録を行い、手ぶらで店舗の顔認証ゲートを通過、顔認証決済を実施する、という利用方法も可能です(図4)。
3.2 実証実験について
NECでは、マイナンバーカードのICチップ内の顔写真データを活用した実証実験を2017年から2018年にかけて3回実施しました(図5)。
初回は、2017年6月11日の「秩父宮みなとラグビーまつり2017」において、ボランティアの顔認証入場に利用しました。事前のボランティア登録手続きの際、マイナンバーカード所有者はICチップ内の顔写真データを登録、非所有者は写真撮影を実施。当日は顔認証システムで本人確認を行い、入場受付からボランティア向けの指示書の発行や被服配付を実施しました。
2回目は、2017年11月3日の「ザ・コーポレートゲームズ東京」です。初回と同様にボランティアの顔認証入場を実施しました。
3回目は、2018年3月6日~9日で開催されたリテールテックJAPAN 2018のNECグループブースにおいて、各種顔認証ソリューションデモとの連携を行いました。具体的には、展示ブース内の各種顔認証システム体験における顔情報登録の際、マイナンバーカード所有者はマイナンバーカードを利用して顔写真データを登録していただきました。
実証実験の結果、概ねマイナンバーカードのICチップ内の顔写真データが、顔認証システムに利用できることが分かりました。しかし、顔写真データが顔認証システムに利用できない事例も2%程度存在しました。顔写真の髪の毛が目にかかっているケースです。この課題については、自民党IT戦略特命委員会において、自民党や各関係府省にお伝えしました。
3.3 更なる利活用に向けて
マイナンバーカードは、オンラインでの厳格な本人確認が可能であるため、官民データ連携の本人確認手段として、政府機関や地方公共団体が保有する個人情報のAPI連携に利用される予定です。具体的には、企業のサイトとマイナポータルとの認証連携後、所得情報などの個人情報を、本人同意のうえで企業側に提供することが可能となります。この場合、マイナンバーカードの利用が必須となりますので、併せて顔写真データを顔認証システムに登録することで、API連携の利活用が加速化する可能性があると考えています。例えば、クレジットカードの申し込み時において、マイナンバーカードのICチップから氏名、住所、性別、生年月日、顔写真データを自動入力し、マイナポータルとのAPI連携で所得情報や世帯情報を入力することで、オンラインでの申し込みを行い、その後、顔認証システムの活用によりカードレスでのクレジット決済を実現するなどの利用が、将来的には可能になります。(図6)
今まで、書面に必要事項を記入し身分証明書のコピーを添付して郵送で申し込み、審査後にクレジットカードを郵送で受け取っていたものが、すべてオンラインで完結できるようになるのです。まさに官民データ連携によるデジタルトランスフォーメーション(DX)、企業におけるデジタル・ガバメントの恩恵となりうると考えます。
このように顔認証システムは、マイナンバーカードとの連携により、将来的には政府が進めるデジタル・ガバメント、官民データ連携の中核となりうるソリューションと位置付けられると確信しています。
執筆者プロフィール
番号事業推進本部
本部長
第二官公ソリューション事業部
主席技術主幹
第二官公ソリューション事業部
シニアエキスパート
第二官公ソリューション事業部
シニアマネージャー
公共ソリューション事業部
マネージャー
公共システム開発本部
主任
番号事業推進本部
主任