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No.4(7月)スーパーコンピュータSX-8特集

Vol.58 No.4(2005年7月)

スーパーコンピュータSX-8特集

NEC 執行役員常務 山本 正彦


伊藤 行雄・古井 利幸・西川 岳・山元 正人・井上 勝己

スーパーコンピュータの利用は今やあらゆる分野に及んでおり,科学技術や経済の発展を支える重要な共通基盤技術になっています。このような社会への浸透に伴い,より複雑化,高度化するアプリケーションの一方で,スーパーコンピュータにはさらに扱いやすく,容易に高性能を発揮できることが求められるようになっています。
NECはこのような要求に対応する製品として,20年余りにわたって培ってきたスーパーコンピュータ技術を結集し,世界最高速クラスのスーパーコンピュータSX-8を開発しました。
本稿では,SX-8について,開発の歴史,ユーザ動向,技術動向および開発の狙いなどを概説します。


野口 孝行・福島 武司・木下 耕二・花平 議臓・石井 英志

近年,解決すべき問題がより大規模化していく一方で研究・開発期間の短縮が求められ,コンピュータによる問題解析や設計の高速化,最適化に対する要求がよりいっそう厳しくなっています。このため,スーパーコンピュータの高速化に対するニーズはますます高まっています。
NECではこのようなニーズに応えるため,従来機種のSX-6に対して性能を大幅に向上させ,よりコストパフォーマンスの優れたベクトルスーパーコンピュータSX-8を製品化しました。
本稿では,最新鋭スーパーコンピュータSX-8のハードウェア,ソフトウェアについて,特長と概要を説明します。

SX-8のハードウェア

篠原 真史・古澤 一昭・西垣 泰洋・多賀谷 聡・鈴木 栄司

SX-8のCPUは,4セットのベクトルパイプラインを有することにより,16GFLOPSという高い単体性能を実現しています。また,最大128Gバイトのメモリを最大8CPUが共有することで,ノード当たり最大128GFLOPSという高い性能を実現しています。
本稿では,この高い性能を実現しているSX-8のCPU,メモリ,および高い実効性能を実現するために必須となるCPU-メモリ間のネットワークについて説明します。


安藤 憲行・井川 康宏・山本 孝人・長野 知明・萩原 孝

SX-8のノード間接続装置は,最大512ノードを接続する高いスケーラビリティを持つ専用高速ネットワークです。また,SX-8の入出力処理装置は,SX-7までの専用IOP方式からHBAにCPUが直接起動を指示するダイレクトIO方式に変更し,高速ファイルアクセス,通信ネットワークを提供します。本稿では,SX-8システムを構成するノード間接続装置および入出力処理装置の構成,特長,機能,性能,およびアーキテクチャについて紹介します。


稲坂 純・棚橋 俊夫・小林 英明・加藤 俊弘・梶田 幹浩・中山 直也

本稿では,SX-8のLSI技術・回路技術の概要について述べます。SX-8では,最先端CMOSテクノロジをNECエレクトロニクスと共同開発し,高速動作と高いコストパフォーマンスを実現しています。
また,超高速のデータ転送を実現する高速インタフェース技術およびノイズ低減技術を開発しました。


田中 慎二・浜口 博幸・筑木 博之・高橋 勲・名取 正樹・永田 哲也

本稿では,SX-8の実装技術の概要について述べます。
SX-8では,世界最高性能,高いコストパフォーマンス,優れた設置性を実現するために前機種(SX-6)で実現したワンチッププロセッサをさらに進化させ,その性能を最大限に引き出すために高密度LSI実装技術,高密度接続技術,高効率冷却技術,高性能電源モジュールを採用しました。また,これらの特徴を最大限アピールする先進的なデザインを採用しています。


吉川 浩・上島 紳二・今野 良展・後藤 崇・高田 聡・山成 聡子

本稿ではSX-8の設計に利用した設計手法とCAD技術の特徴について説明します。
SX-8では,大規模,高速,信頼性の高いLSIとパッケージ開発が必要でしたが,これらは高度なCAD技術により実現可能となりました。
CAD技術の特徴は,LSI設計に関しては,論理等価性検証を全回路に適用した論理設計技術,大規模高速回路を階層的に設計するレイアウト設計技術,LSIの信頼性を高める電源ノイズ解析技術,そしてディレイテストを取り入れたテスト技術にあります。パッケージ設計に関しては,高速配線の品質を高める設計,検証技術に特徴があります。


小林 勝美・竹村 功夫・中曽 浩子

SX-8は高信頼化の要求に応えるため,回路レベルからシステムレベルに至るまで,長年培った高信頼化技術を結集し,より高度なレベルで,信頼性(Reliability),可用性(Availability),保守性(Serviceability)を実現しています。
本稿では,最新の技術を駆使したSX-8のRAS技術について紹介します。

ストレージSAN製品

滝柳 真澄・江田 由則・斉藤 義洋・萩原 博之・相合 孝雄

SX-8 シリーズに接続可能なSAN対応のディスクアレイ装置iStorage S2800/S2400を製品化しました。これらの製品は,先進のテクノロジにより科学技術計算領域に要求される高性能,高拡張性に加えて,大容量システムを安定稼働させる高信頼,高可用性を実現しています。
本稿では,iStorage S2800/S2400の特長と製品に搭載されるテクノロジについて紹介します。

基本ソフトウェア

梁川 貴志・宮崎 恵美子・大谷 敦久・長谷川 晶一

SX-8のオペレーティングシステムSUPER-UXは,SX-5/6/7シリーズで信頼と実績を築き上げてきたSUPER-UXをさらに強化したものです。
SUPER-UXでは,従来からの特長である,高速・大規模システム,高信頼性を引き継ぎながら,いっそうの大規模システムでの使い勝手の良さ,運用管理の充実を追求しています。
本稿では,SUPER-UXの特長とGFS,NQSIIの強化内容について述べます。


横谷 雄司・工藤 淑裕・田村 正典・林 康晴・廣谷 良彰

SX-8では,優れた最適化・ベクトル化・並列化機能を持つFortranコンパイラFORTRAN90/SXおよびC/C++コンパイラC++/SX,分散並列処理用のデファクト標準言語であるHPFコンパイラHPF/SX V2,さらに分散並列処理プログラム・インタフェースMPI-1.2,MPI-2.0仕様に完全準拠したMPI/SX,MPI2/SXを提供しています。また,大規模分散並列プログラムのデバッグ・チューニングを容易に行えるプログラム開発支援環境も提供しています。
本稿では,これらのプログラミング開発環境におけるSX-8向けの高速化技術に関する機能や特長について紹介します。

成果論文

武井 利文・田 光江・田中 高史・天羽 宏嘉・小原 隆博・島津 浩哲

宇宙環境擾乱は,太陽活動に端を発し,惑星間空間,地球磁気圏,電離圏に至り,衛星の故障など様々な障害を起こす可能性があります。宇宙天気予報はこれら擾乱の発生を予測することであり,そのためには各領域における擾乱の発生とその応答の機構を知る必要があります。
筆者らは,その第一歩として,衛星のリアルタイム観測データを入力データとした,リアルタイム数値宇宙天気予報システムを開発しました。本システムでは,太陽風に対する地球磁気圏の応答のシミュレーションとその結果の可視化をNEC製スーパーコンピュータSX上でリアルタイムに実行します。HPFを利用したシミュレーションの並列実行と,NEC製リアルタイム可視化システムRVSLIBの利用がこれを可能にしています。3次元シミュレーションによる地球磁気圏の全体像がリアルタイムで常時モニタ可能になったのは世界で初めてです。


陰山 聡・大淵 済・草野 完也・高橋 桂子・渡邉 國彦・佐藤 哲也

地球シミュレータの能力を最大限に生かすために,地球シミュレータセンターでは様々な研究・開発を行っています。その中から実際に我々が地球シミュレータを利用して行っているシミュレーション研究,特に,大気・海洋シミュレーション,固体地球シミュレーション,連結階層シミュレーション,全球-領域・大気・海洋・陸面・海氷結合シミュレーションと,それらの成果について紹介します。


武井 利文・岩田 直樹・小久保 達信・亀山 隆・久保 克維・中野 英一

スーパーコンピュータの普及に伴い,科学技術計算ソフトウェアへの要望も,高速でロバストな数値計算技術の追求とともに,大規模計算/データ処理結果の効率的把握,ネットワーク分散環境の活用,高いユーザビリティなど,多様化しつつあります。本稿では,このような要望に対応するソリューションとして,NECが開発した数学ライブラリ,分子科学,計算結果可視化,HPCの利便性向上のためのソフトウェアの概要を紹介します。