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DX時代のFSM変革「守り」と「攻め」のアフターサービス
ものづくりの未来
アフターサービス領域での新たな価値提供を支えるIFS FSM【2022.01.19】
カテゴリ:保守・サービスSCM/MES/FSM
※本記事は、2021年4月に掲載した記事に最新の情報・ノウハウを反映し、新たに書き起こしたものです。
昨今は、日本の製造業においても製品販売方式からサービス提供方式へのビジネスモデルシフトを検討する企業が増加しています。そこで、ここではアフターサービスの事業化におけるデジタル変革の必要性と方法についてお話しします。
日本電気株式会社 製造・装置業システム本部 ものづくりコンサルティンググループ
ソリューションコンサルタント マネージャー 清水治彦
“売って終わり”のビジネスには限界
製造業において、これまでは高品質のモノを生産し販売する売り切り型のビジネスが主流でした。しかしながら、“売って終わり”のビジネスには限界が見えています。競争の激化によりビジネスのサービス化が進み、ライフサイクルにおけるすべての顧客接点で、いかに高品質な有形/無形のサービスを継続的に提供し、リピート受注を着実に獲得してLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化できるかが重要となってきているからです。
さらに、背景の一つとして、世界経済全体として早晩立ち行かなくなる畏れのある“大量生産・大量消費・大量廃棄”型の線形経済モデルから脱却し、資源投入量・消費量を抑え、長持ちする製品を活用しながら、サービス化によって付加価値の最大化を図る「循環型経済」(サーキュラーエコノミー)への移行のニーズが高まっています。
製造業は今後、新製品で入れ替え需要を喚起するビジネスモデルから、サービス化による長期利用やリカーリングを見据えた顧客接点改革により、循環型ビジネスにシフトしていく必要があります。
一方で、アフターサービスをビジネスとして強化していくには、デジタル変革が重要な要素になりますが、特に製造業のアフターサービス領域のシステム化は他領域と比べて整備されていない企業が多く存在しています。これまでのビジネスのスタイルにおいては、投資の比重は製品開発や生産に重点が置かれ、アフターサービス領域は劣後の存在であったためです。これからのアフターサービスの事業化においては、開発や生産と同等の経営資源を投入する必要性が高まるといえるでしょう。
変革への4つのステップ
では、アフターサービス事業の変革について、「守り」と「攻め」の観点で具体例を紹介していきます。
「守り」とは、アフターサービスを受動的に捉えた概念であり、「攻め」とはアフターサービス自体を“商品”としてビジネス化する概念と捉えています。
変革のステップを、下図のように縦軸に「(活用)技術の高度化」、横軸に「ビジネスの広がり」を取って、アフターサービス事業としての収益拡大を4つのステップに分けてマッピングしています。
守りのアフターサービス
まず、Step1から見ていきます。
契約形態については、これまでのアフターサービスは、「故障したら修理する」というスポット的な対応が中心の、いわば“保守の売り切り”といったスタイルのものでした。アフターサービスを事業化する上では、定額のサブスクリプション型によるビジネスモデルが有力になると考えられます。
そのためには契約に基づくサービス提供をするための保守作業の効率化が大きなテーマになります。
アフターサービスに係る情報を集約管理することで、顧客や製品シリアル毎に契約情報や、過去の修理履歴、ナレッジの蓄積を行い業務の見える化や分析を行い、改善のPDCAサイクルを回せるようにします。
一方、業務面については、製品の売り切りモデルからアフターサービスの事業化に転換し収益拡大を図りたいという戦略を持ちつつも、紙と手作業に依存し、熟練作業者の属人的なノウハウが継承されずに非効率な環境の企業が多くあります。
サービスマネジメントシステムの導入によりレガシーシステムの刷新や現場の紙運用を脱却し、「スポット修理から有償保守への誘導」を目指すのが、第一ステップといえます。
Step2は、IoTやAIを活用することで、サービス業務の予測・最適化を実現するステップです。
アフターサービスの事業化に向け、保守作業のボリュームが増えた際に安定したサービスを提供しつつ収益化を図るためは、保守パーツの最適配備や保守要員の最適配置が欠かせません。限られた人員で業務効率を最大化させる必要がありますが、この計画も熟練作業者が経験とノウハウを元に時間をかけて立案していることが多いのです。
このような計画立案はAIが得意とする領域になっており、熟練者のノウハウをAIのパラメータに落とし込むことで、従来よりも短時間で、明確な根拠を持った計画を立案することができるようになります。最近では、拡張現実(AR)の技術を用いて、経験の浅い現場作業者がスマートグラスやタブレット端末で現場の状況を遠隔の熟練作業者にシェアしつつ、作業支援を仰ぐといった働き方改革を実践しているケースもあります。
以上が、最新技術を活用した「守り」のアフターサービスの実現イメージです。
攻めのアフターサービス
「守り」のアフターサービスでは、テクノロジーは業務効率化にいかに寄与するかという観点で捉えていましたが、「攻め」のアフターサービス事業の変革はそれだけで達成することはできません。
さらなる収益拡大を図るためには、システムや最新のテクノロジーだけでなく、経営戦略に基づく業務改革が必要となります。
Step3では、アフターサービス事業化シフトに伴い、様々な契約形態への対応や保守パーツ販売の強化により顧客の囲い込みを図るステップになります。
契約形態については、利用状況に応じた課金サービスやサブスクリプション型、年間契約など、多様なモデルへの柔軟な対応が必要となってきます。
Step4では、他社との競争優位性を高め、収益拡大を図るために新たな価値提供が必要となり、場合によっては新事業を立ち上げることになります。
そのために、納入機器にIoT機器を組み込み(外付け設置でも可能)、納入後も稼働データを提供してもらうことで様々な用途での活用を検討します。
例えば、稼働データを活用した安定稼働支援のコンサルティングや、故障予兆を検知するサービスの提供が可能となります。また、先ほどご紹介した拡張現実(AR)の技術を活用して、対お客様への遠隔支援サービスなども取り組んでいる企業が増えてきています。特にコロナ禍の今は、海外のお客様先に出張してのサービスが難しく、また移動にかかるコストや時間を節約するためにも、こうしたサービスへのニーズは高まる一方でしょう。
これらを実現するためには、製品自体へのIoT機器の組み込み、新契約の締結、業務プロセスの見直し、顧客とのデータ提供の交渉等と実現へのハードルは高いですが、保守を必要とする機器を扱う企業にとっては確実に新たな収益の柱となる事業にすることができます。
アフターサービス事業化を支えるソリューション
ここまでは、アフターサービスのデジタル変革を4つのステップに分けて説明してきました。次に、アフターサービスのデジタル変革による事業化を支えるソリューションについてご紹介します。 NECでは、サービスマネジメントシステムとして高い評価を受けている『IFS Cloud』(2021年3月発表)の前身である『IFS Applications』を1998年から国内外の製造業を中心にご提供しており、設計~生産~保守とつながる製品のライフサイクルを一元的に管理することができます*。IFS社は1983年にスウェーデンで設立され、原子力発電所向けの高度な保守管理システムからスタートしたグローバルなソリューションベンダー。6年連続でGARTNER社のMagic Quadrantでリーダー評価を受けるなど、グローバルに高く評価されています。
- *設計領域は弊社『Obbligato』と連携して実現するケースもあります。
アフターサービス領域において『IFS Cloud』は幅広い業務に対応しており、機器の据付管理に始まり、契約管理、コールセンタ対応、自動ディスパッチ、保守パーツ管理、現場作業支援、請求までエンドツーエンドで貢献できます。
修理機器の返品修理にも対応しており、『IFS Cloud』はアフターサービスに必要な機能を全て備える数少ないパッケージシステムといえます。
またNECのIoT/AIソリューションとの連携により、さらなる高度化も望めます。
機器製造企業だけではなく、さらにその先の機器を利用する企業にとっても良い変革をもたらすことがNECの重要な目標と考えています。このため、機器製造企業と顧客である機器利用企業との間にチャットボットや遠隔支援サービスといった多様な接点を設けるなどにより、スムーズなコミュニケーションの実現をご支援しています。
NECでは1万か所を越えるフィールド作業とマネジメントの効率化のため、NECの設置工事管理の共通基盤として、「IFS Applications(現IFS Cloud)」を導入・活用しており、順次グローバル展開中です。
これにより、リアルタイムでの進捗状況の把握や現場での作業品質の向上につながりました。さらに、社内のマネジメントの効率化だけでなく、現地パートナーのエンジニアの効率化、バックオフィスの効率化も見込んでいます。
NECは、フィールドサービス領域だけでなく、生産管理、製造実行管理でも自社システムとして「IFS Applications」を利用しています。自社導入を含む多くのお客様への導入ノウハウを標準業務テンプレートとして提供しており、パッケージ標準業務・標準機能を最大限活用して、新業務プロセスの構築、業務標準化を促進します。
システム導入は導入効果が狙い通りに出るか、本当にパッケージを利用できるか等の不安を持つ企業も多くいらっしゃると思います。
NECでは、こうした不安を取り除いていただくためのシステム導入検討のご支援として、企業の事業戦略に基づく導入効果算定や自社業務との適合率を算定する簡易アセスメント等を実施しています。
また、お客様のDXを加速するコンサルティングメニューも多く用意しており、ビジネス変革のコンサルテーションの段階からのご支援も可能なため、まずはご相談いただければと思います。
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