Japan
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日本電気株式会社
1万カ所を超えるフィールド作業とマネジメントを効率化
NECの設置工事管理の共通基盤として、順次グローバル活用を推進
- 業種:
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- 製造・プロセス
- 業務:
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- 設計・開発・製造
- その他業務
- 製品:
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- ソフトウェア/情報管理
- ソリューション・サービス:
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- 共通業務/SCM
- 共通業務/ERP
- 共通業務/その他
事例の概要
課題背景
- 1万カ所もの設置工事が発生する超小型マイクロ波通信システムのプロジェクトでは、遅延リスクを防ぐために多くの管理工数を要した
- 工事に付随するシステムの調整・立ち上げの難易度が高く、設定情報などの紙の文書を参照しながらの作業は、ミスを防ぐために時間と労力が必要であった
成果
リアルタイムで進捗状況の把握が可能
現場の作業員がモバイル端末上のチェックリストに従って作業を行い、結果を同じモバイル端末にインプットすることにより、バックオフィスの管理者へ作業実績情報が共有される。作業レポートも自動生成され、標準化したフォーマットでの進捗状況の即時把握が可能に。工事の現場で撮影した写真を自動貼付することで、作業品質が担保され、お客様の迅速な承認が得られるようになった
現場での作業品質が向上
モバイル端末の画面上に表示されたチェックリストに基づき、あらかじめ定めた順番で作業を進めることでミスを回避。これによって、再訪問による作業のやり直しなど、工事期間の長期化の要因をなくした
フィールド作業でマネジメントの高付加価値化へ
実施件数が多く、なおかつ難易度の高いフィールド作業で、マネジメントの高付加価値化による、顧客満足度および効率の向上などを実現するための設置工事管理の共通基盤のベースができた
導入ソリューション
機器設置工事管理システムとして「IFS FSM」を活用し、工事進捗のリアルタイム把握や、作業計画の高度化、作業品質向上、作業レポート作成の効率化を実現。順次グローバルでの活用を推進していく
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事例の詳細
導入前の背景や課題
手作業に頼る管理と現場作業が招く工事遅延の解消が課題に
NECでは、超小型マイクロ波通信システム「パソリンク」をグローバル展開。世界中どこにいても情報にアクセスできる通信環境の構築に貢献しています。
しかし、その設置作業は簡単ではありません。通信キャリアが発注する広域ネットワーク構築のプロジェクトでは、1万カ所以上の装置やアンテナなどの設置を行います。その中には普段、人が踏み込まないところも多くあり、設置工事自体が大変な作業になります。
さらに、機材を搬入するだけでは高品質の通信は実現できません。装置間の配線や設定など、難易度の高い設置・立ち上げ作業を行う必要もあります。その際、作業ミスや作業品質の低下を防ぐために多くの工数を要していました。
これまでは、各地域の工事を管理するマネージャーが、Excelを使って進捗状況を整理した作業レポートを手作業で作成。それを統合してプロジェクト全体の進捗を把握していました。しかしこの方法では、レポートの作成に長時間を費やし、しかもマネージャーごとにフォーマットや情報の精度・鮮度がバラバラだったため、進捗状況を正確かつタイムリーに把握することが困難でした。その結果、「プロジェクト遅延によるお客様検収の遅れが発生し、積送棚卸や損益が悪化するという課題を抱えていました」とNECサプライチェーン統括本部の澤永正行は話します。
加えて、作業員のプロセスにも課題がありました。紙の文書に書かれたマニュアルなどを参照しながらの工事や設定作業では、ミスにつながるリスクがあり、作業品質に影響を与えます。作業後のエビデンスの取得を忘れてしまったりすれば、お客様から検収をもらえず、再度、現場を訪問する必要が出てきます。顧客満足度向上のため、また工事期間を短縮するため、現場での作業品質を維持する仕組みが求められていました。
選択のポイント
200種類の候補から4つの選定条件とPoC/PoVを実施して「IFS FSM」を採用
プログラム不要で多様なプロジェクトに対応可能
こうした課題の解決に向け、NECは「IFS FSM」を採用しシステムを構築しました。FSM領域のアプリケーション・ツールには様々なものがあり、NECでは4つの選定条件を定義し、目的に合ったツールを選びました。
1番目の条件は、基本的なマネジメント機能を備え、NECが行う工事プロジェクトの実施と管理のプロセスに適合していること。2番目は、現場負担にならない作業チェックリストを定義可能で、その中に写真撮影によってエビデンスを残す機能を備えていること。3番目は、チェックリストや撮影した写真などの情報を基に、作業レポートを自動生成できること。4番目は、工事する国、カスタマー、ビジネスごとにテンプレートを個別に定義可能で、異なるプロセス・作業手順・作業レポートに対して、容易に対応できることです。この際、プログラミングが発生しないことが重要でした。
NECは、200種類の候補をリストアップし、条件に照らし合わせ10種類に絞り込みました。ベンダーからの紹介後、さらに2種類に絞りPoC(Proof of Concept:概念検証)とPoV(Proof of Value:価値検証)を実施。最終的に「IFS FSM」を採用しました。
IFS FSMでは次の機能を活用しています。サービスオーダーを管理する「作業オーダ管理」、現場のエンジニアやバックオフィスのマネージャーなどのスケジュールを自動作成・アサイン・管理する「作業者管理」、現場での高品質かつ効率的な作業およびレポート作成を支援する「モバイルフィールドサービス管理」です。また今後の展開に応じて資材の在庫や保守パーツを管理する「保守パーツ管理」、下請けへの注文書の送付業務を効率化する「サービス契約管理」を活用していく予定です。
「IFS FSMでは、工事プロジェクトのプロセスに応じて、作業手順や作業レポートなどのテンプレートを、パラメーター設定によってプログラミング不要で定義できます。このため、多種多様なプロジェクトの要件に対応することが可能です」と澤永は語ります。
また、現場のエンジニアが作業する際には、モバイル端末の画面上に示された正しい手順で作業し、終えた作業をチェックしないと次の作業に進めない仕組みになっています。さらに、端末のGPS機能を利用し、指定場所に行かないと作業できないジオフェンス機能も搭載しています。
導入後の成果
工事期間の短縮が期待できると同時に、現地パートナー業務の効率化にも貢献
これらの機能によって、作業結果をモバイル端末にインプットすることで管理者へ情報が共有され、ミスのない作業を実現。加えて、設置作業が完了すると自動的に報告されます。正しい作業が行われたことを証すエビデンスとなる写真を撮ると、規定されたテンプレート上に自動的に添付され、リアルタイムで完了報告書を送付できます。これにより、作業品質が担保され、お客様の迅速な承認を得るために効果を発揮します。
NECは、2020年10月からブラジルで「IFS FSM」の導入を実施。その後、ラテンアメリカ各国で進めるパソリンクの工事プロジェクトへと導入していきます。
「IFS FSMを活用すれば、プロジェクトマネージャーの業務効率を大幅に改善できると期待しています。また、現場のエンジニアとの間のコミュニケーションもより円滑化し、効率化や高品質化に向けた情報やKPIを迅速に共有できます」とNEC Corporation Indiaの Ankit Singh(シン・アンキット)は多角的な効果が期待できると語っています。
これまでにも、NECでは、各工事に要した日数やレポート作成に費やした時間など、作業効率を評価するためのKPIを常に収集・管理してきました。そして、IFS FSMの導入に際して、その効果の内訳を金額換算して評価しました。最も大きな効果が期待できるのはリードタイムの短縮であり、総導入効果の43%を占めます。この他にNEC内部でのマネジメントの効率化、現地パートナーのエンジニアの効率化と現地パートナーのバックオフィスの効率化を見込んでいます。
パソリンクの工事プロジェクトは世界中で行われており、2020年度中には、メキシコとアルゼンチンでの工事プロジェクトに適用する予定です。また2021年度にコロンビアとチリ、さらにアジア太平洋地域の手始めとしてインドネシアへと展開していきます。その後も、ヨーロッパ、南アフリカ、トルコ、台湾などへの適用も検討しています。
また、IFS FSMは、機能面での拡張余地を持っています。既に、プロジェクトポートフォリオ管理(PPM)との連携を実現。将来的には、ハードウェア機器や工事資材などの在庫管理および工事ロケーションへの機器の搬送指示などの効率化に向けた機能の追加を検討しています。
パソリンクの工事プロジェクトに限らず、機器や設備を利用現場に設置し、難易度の高い立ち上げ作業を実施する製品は多くあります。NECが扱う製品の中でも、情報によって都市の安全や効率化を実現する「Safer City」に関連した情報システムや5G、6Gの基地局などの設置にも同様のマネジメントが必要になります。NECではこうした分野への適用も可能な共通基盤としてIFS FSMを活用していく考えです。
NEC担当スタッフの声
汎用性と拡張性に優れた「IFS FSM」、応用領域を積極的に開拓
今回導入したIFS FSMは、パソリンクの例に見られるような、通信ネットワーク設備の工事のマネジメント、および現場での作業の効率化だけで効果を発揮するソリューションではありません。汎用性と拡張性が高いフィールドサービス管理全般の共通基盤になり得ます。例えば、産業機器やプラント、電気・水道などのインフラの導入、設置、メンテナンスなどを効率的に実施、管理する用途にも適用できます。
NECでは、工事以外にも、生産や保守など様々な領域において、豊富な導入経験を持っています。こうした経験を通じて得たノウハウを標準テンプレートの形にまとめ、お客様に提供していきたいと考えています。これによって、プロジェクトの効率化、高品質化、短納期化、低コスト化を推進し、お客様の業務改革に貢献していきます。
IFS FSMは、今後も世界の中でフィールドサービスの分野をリードしていくソリューションとして、更なる成長をしていくことでしょう。日本では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性は認識されていても、その実践は諸外国に比べて遅れているのが現状です。フィールド作業に関わる領域のDXについても、まだ進みが遅い印象です。ただし裏を返せば、多くの企業が投資していない領域だからこそ、早期に取り組めば企業競争力を高めやすい領域だと考えています。
企業プロフィール
日本電気株式会社
所在地 | 〒108-8001 東京都港区芝5-7-1 |
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設立 | 1899年7月17日 |
資本金 | 4,278億円 (2020年7月10日現在) |
売上高 | 単独 1兆7,897億円 連結 3兆952億円(2019年度実績) |
従業員数 | 単独 20,125名 連結 112,638名(2020年3月末現在) |
事業内容 | 端末からネットワーク機器、コンピュータ機器、ソフトウェア製品、サービス基盤に至るビジネス向け製品、およびそれらをベースとした広範なソリューションサービスを一括提供するIT総合ベンダー。 |
URL | https://jpn.nec.com/ |
この事例の製品・ソリューション
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(2021年3月16日)