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DX時代のPLM戦略 New Normal を勝ち抜く救世主 BOPとは

ものづくりの未来

BOPで始める設計と製造デジタル連携【2021.05.19】

カテゴリ:DX・業務改革推進生産技術・製造PLM/CAD

※本記事は、2017年2月に掲載した記事に経年の実績・ノウハウを反映し、新たに書き起こしたものです。

1990年代以降、多様化する市場ニーズに対応し開発リードタイムを短縮するためには、「BOM (Bill of Materials) の戦略的活用が不可欠」ということが広く認知され、BOMを中核にして、図面などのさまざまな技術情報を関連づけて管理するようになりました。これがいわゆるPLM (Product Lifecycle Management) システムです。

2010年代以降、グローバルものづくりにおける競争力強化の次なる一手として、BOP (Bill of Process) が注目されます。BOMが「どんな部品をいくつ使って作るか」を表す製品の構成情報、つまりWhatの情報であるのに対し、BOPは「どの工程で」「どのように」「何の設備や治工具を使って作るか」を表す製造プロセス情報、つまりHowの情報を指します。BOMとBOPのグローバル統合管理に取り組むことで、グローバルレベルでのものづくり品質の均一化やトレーサビリティ強化、ロボット導入など、様々な効果を期待できます。そのため、電機メーカーや自動車部品産業、素材産業などを中心にBOP導入のPoC(概念実証)が進んできました。

さらに、このNew Normalな時代を勝ち抜くための経営戦略として、BOP検討と導入が急速に加速しています。激しい需要変動・自然災害・サプライチェーンの断絶など、突発的環境変化に、瞬発力よく、柔軟に対応し、市場に製品を届け続けるには、デジタル技術を活用したエンジニアリングチェーンとサプライチェーンの強固な連携、部門間のコミュニケーション強化によるダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)の強化が急務だからです。
BOPのデジタル化・BOM/BOPの統合管理がその救世主になるのではないかと、期待が高まっているのです。

今なぜBOPが必要なのか?

変化に強いものづくり、ダイナミック・ケイパビリティの強化には、グローバルレベルでの設計と生産間のコミュニケーション、データ連携がスムーズであることが最重要課題です。設計-生産間で伝達される最も重要な情報はBOMですが、設計者の視点で作成される設計BOMと、在庫や中間品などの生産側の情報を付加して作成される生産BOMは、その目的や形が異なるため、スムーズな連携が困難でした。設計BOMと生産BOMの間にBOPを定義し、それを仲介とすることで、設計と生産のシームレスな連携が可能となります。つまり、BOPはグローバルものづくりの最大のボトルネックである設計と生産の間の橋渡しをする役割を持っているのです。

今回は、各社でBOPの導入が進むことで見えてきた、BOPがもたらす様々なメリットとPLMの新たな価値についてユースケース毎に掘り下げてご紹介します。

BOP活用ケース(1):製造手順書のデジタル化

日本の製造業では、製造プロセスが工場まかせで、個人的に紙やExcelで管理されている企業が多くあり、特に多品種生産における製造手順書の作成業務は、属人的で相当な手間を要しています。さらに、生産技術者の高齢化や退職が進むことによる、製造ナレッジの共有・継承も課題となっています。

NECが考えるBOPとは、階層構造で定義した工順や工程に対して、使用する設備や治工具、金型などを関連づけたり、いわゆる製造三票と言われるQC工程表や作業指示書、工程図などのドキュメントを関連づけて管理する、製造ナレッジのデータベースです。

生産技術者が、工程設計するための情報をBOPとして集約することで、製造ナレッジの継承が可能となり、若手を早期に立ち上げることができます。また、BOM/BOPの統合により製造手順書など各種帳票が自動作成でき、ミスと負荷を大幅に軽減することが可能です。さらに、製造プロセスの標準化が進み、それを流用することで工程設計の生産性向上・品質の均一化がはかれます。

BOP活用ケース(2):グローバル生産拠点立ち上げと最適地生産の迅速化

ものづくりの基準情報であるBOM/BOPは、グローバルで統合管理されることで、さらに大きな効果を発揮します。工場ごとにバラバラであった製造プロセスを標準化、PLM上で集約し国内外に配信することにより、新生産拠点を短期間に立ち上げることが可能となり、新製品の世界同時立ち上げや、グローバル生産拠点全体で一貫したものづくり品質を維持することが可能になります。

全生産拠点の情報はPLMで統合管理されているので、需要変動に応じた最適地生産の検討や、不測の事態の際でも、代替生産可能な工場を迅速に把握し、柔軟な生産移管を行い、チャンスを逃さず事業継続することができます。

BOP活用ケース(3):品質トレーサビリティ

昨今、様々な製品におけるリコール問題などを背景に、品質のトレーサビリティ強化も強く求められています。現状では、BOPのデジタル化、BOMや拠点情報のデータ統合がされていないために、不具合発生時のグローバルレベルでの影響調査など、一つ一つ工場に問い合わせして調査しなければ情報が集まらず、膨大な手間と時間を要していました。

BOMとBOPを関連づけて統合管理しておくことで、設計変更や不具合が発生した際には、部品だけでなく工程や設備も含めて影響範囲を特定し、グローバル拠点に渡って迅速に対処することが可能になります。

例えば図のように、品目Bに変更が発生した場合に影響するのは、品目A-1、工順B、工程A-1、設備1、治具1、というように、モレなく迅速に関連を辿り、調査することができるのです。
BOPを導入し全生産拠点をつなぐことで、マザー工場に居ながら海外工場の実態を把握したり影響をトレースし、お客様へ迅速正確に回答、対応することができるのです。

BOP活用ケース(4):精度の高い原価企画

設計者にとって、設計上流から原価の作りこみ・コストダウン検討することは重要です。BOMだけでは、直接材料費の積み上げレベルですが、BOPにコスト情報を持つことで、実績ベースの製造経費も含めたコストシミュレーションが可能となり、設計上流段階から精度の高い原価企画が可能となります。また、コスト低減活動の見える化につながります。

BOP活用ケース(5):設計-生産コンカレントエンジニアリング

「今なぜBOPが必要か?」でも既述しましたが、設計者が作る設計BOMは、製品の部品構成を表現するものであり、生産管理者が作る生産BOMは、設計BOMが完成してから生産性検証を経て、部品の在庫情報や発注情報などを付け足して作られるため、後になってからの設計への手戻りが多くなり、結果、納期に間に合わなくなるといった問題が発生しています。

また、設計者からは設備の情報が見えないため、設備の共通化が進まず、ラインの変更や新拠点立ち上げ時に固定費がかさみ、経営投資に大きな影響を与えています。そうした課題を解決するためにも、BOPが活躍します。

設計BOMと生産BOMの間にBOPを定義し、両者を仲介することで、設計-生産技術-生産管理の間のコミュニケーションを円滑にして、精度の高い生産BOMを早期に作成することが可能となります。

また、生産性検証結果を設計へ早期にフィードバックすることで手戻りを防止し、設計と生産技術の協調設計を促進することで開発期間を大幅に短縮できます。

さらに、設計時から、設備や工程を意識した設計が促進されることで、設備の共通化による固定費削減が期待できます。

BOP活用ケース(6):製造業DX・スマートファクトリーの実現

PLMで定義されるものづくりの基準情報BOM/BOPは、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの連携を強固にする肝であり、各システムをシームレスに連携し、変化に強いものづくりを実現します。BOMはSCM・ERPに連携し生産計画や調達へ、BOPはMESに引き継がれ製造指示情報として製造現場に繋がり、設計変更情報の製造現場への迅速で正確な情報伝達を可能とします。

また、IoT技術の活用により、製造現場の実績を収集・可視化することができるようになりました。設備の実績値とBOPの基準値を比較分析することにより、ライン構成や設備の設定条件など、BOPを継続的に最適化していくことができます。PLM-MES-IoT連携で製品開発のPDCAを回して、継続的に企業全体の生産効率の最大化を図ることができるのです。

さらに、サイバーとフィジカル連携の強化とAI技術のさらなる進化と利活用により、多品種変量生産に合わせた部品供給や、設備異常検知から工程や設備の制御変更を自律的にするスマートファクトリーの実現、あらゆる情報をサイバー領域に統合することで事業継続や収益確保に向けた素早い経営判断を支援して、製造業DX(デジタル変革)を実現します。

New Normal な時代に製造業が生き残るためには、不測の事態に迅速柔軟に対応する企業変革力を強化し、市場に製品を届け続けることが重要となります。BOPがその救世主となって大きく貢献できるのではないかと考えています。

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