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IoTで変貌するものづくり ~Industry4.0は必ずやってくる~[7]
抱 厚志のものづくりコラム「IoT時代のものづくり4.0J」

抱 厚志プロフィール
昭和35年7月、大阪府生まれ。自称生産管理おたく。
海外25カ国、累計5,000以上の工場を視察し、1,000社以上の生産管理システム導入に関与した実績を持つ。
平成6年9月に株式会社エクスを設立し、代表取締役に就任。翌年2月に生産管理システム「電脳工場 for Windows」をリリース。最新版の「Factory-ONE 電脳工場」シリーズも含め、現在までに1400本を超える導入実績がある。
「生産管理システムは経営戦略を具現化するツールである」とのコンセプトをもって、「ソフトを提供するのではなく、ソフトの使い方を提供する」という『真のソリューションベンダー』となるべく、日々、精力的に活動中。
第7回 ものづくりに関連するシステムの系譜と今後の生産管理システム(2)

1990年代に入り、ネットワーク環境(オンライン)が整備され、流通業を中心に、受発注をオンラインで行うEDI(Electronic Data Interchange)が登場し、受発注や見積もり、決済、出入荷などに関わるデータを電子化した。従来の紙の伝票と比べ、情報伝達のスピードが大幅に向上し、事務処理時間人員の削減、正確性の向上などに貢献した。 EDIは製造業での垂直統合の強化にも応用され、企業グループ(系列)別のEDIが盛んとなる。
この流れは「SCP」(Supply Chain Planning)に引き継がれ、「SCM」(サプライチェーンマネジメント)として、引き取り方式のシステムが実現する。
トヨタの「カンバン方式」では、プル型方式を前提とし、前工程の「資材消費量」に連動した生産が行われるが、「SCP」ではこれを全社レベルで行い、在庫の最小化を目的としている。
さらにEDIによるフォーキャストや納入指示の管理徹底でリードタイム短縮が図られた。
EDIが社外の取引先との連携合理化であり、社内の情報統合を目的としたのが、CIM(Computer Integrated Manufacturing)である。
CIMとは、製造部門、技術部門、生産管理部門などの現場で発生する各種情報をシステムによって統括し、全体としての生産効率を向上させることを狙いとしている。当初、製造と販売の個別のシステムをネットワークで接続し、一元化されたデータ管理で企業活動の効率化を図るものとされていた。
その後、設計、資材調達から販売、物流に至るまでの一連のプロセスをシステムによって管理したり、部門間でのデータ共有や現場へのデータベースの開放などもその狙いとなっていったが、製販の社内利益相反、ITリテラシーや処理能力の不足などで、中堅以下の製造業でのCIM構築は困難であった。

1990年代の後半からは、国際会計基準の要求に対応するために、ERP(Enterprise Resource Planning)の概念が登場する。
企業が保有する資源(人、金、設備、モノ、情報、技術など)を統合的に管理し・再配分することで、業務の効率化や経営の全体最適を目指す手法である。
調達・購買、生産、物流、在庫、販売、人事・給与、財務・会計など、企業を構成する資源とその価値連鎖(バリュー・チェーン)を統合管理することで、部門単位での最適化の排除、自社を中心とした市場と供給の関連性をより強固に連結することを目的としていた。
ERPパッケージを謳う海外のシステムが導入ブームとなったが、会計や販売システムは稼働しても、海外とは文化の違いを持つ生産管理の分野では、巨額の失敗プロジェクトが続出した。
2000年に入ってからは、CADやPDM(Product Data Management)などの設計技術系のソリューションとの連携、生産スケジューラーなどの生産技術系ソリューションとの連携などが盛んになったが、これはネットワークとデータベースの技術が著しく進化し、Windowsなどの統一されたプラットフォーム上で異なるシステムを並行稼動させることができるようになったことが大きい。
そして現在のトレンドは「IoT」と「AI(人工知能)」を利用したIndustry4.0やIndustrial Internetであり、企業や系列と言う枠組みを超えて、産業構造や社会とのフィットを目指していると言える。