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IoTで変貌するものづくり ~Industry4.0は必ずやってくる~[4]
抱 厚志のものづくりコラム「IoT時代のものづくり4.0J」

抱 厚志プロフィール
昭和35年7月、大阪府生まれ。自称生産管理おたく。
海外25カ国、累計5,000以上の工場を視察し、1,000社以上の生産管理システム導入に関与した実績を持つ。
平成6年9月に株式会社エクスを設立し、代表取締役に就任。翌年2月に生産管理システム「電脳工場 for Windows」をリリース。最新版の「Factory-ONE 電脳工場」シリーズも含め、現在までに1400本を超える導入実績がある。
「生産管理システムは経営戦略を具現化するツールである」とのコンセプトをもって、「ソフトを提供するのではなく、ソフトの使い方を提供する」という『真のソリューションベンダー』となるべく、日々、精力的に活動中。
第4回 IoTで変貌するものづくり ~Industry4.0は必ずやってくる~[4]
新しいワーキングスタイルとコンピュータとの協働

IoTによりものづくりの形が変わる事が必然の理であるならば、ものづくりに携わる人や組織の役割も変化し、そこには「IoTを前提としたワーキングスタイル」や「コンピュータとの新しい協働」が必要になることは想像に難くない。
米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が2011年8月、ニューヨークタイムズ紙のインタビューに対し、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と答えている。これまでにもコンピュータやシステムの進化により、無くなった職種も多く、今後、益々その傾向に拍車が掛かると言うことであろう。
コンピュータと対話しながら、新しい職種・職能や役割分担を作り出す事が、企業競争力に発展する可能性があるように思う。
IoTを前提とした製品やサービスの設計・開発や人材育成
今後は既存製品やサービスのIoTへの対応が求められるが、一歩進めれば、IoTの対応を前提とした製品設計やサービスの開発が必要となる。最終的には、マーケティング、営業、設計、調達、製造、物流、サービスなどのバリューチェーンがIoTへの対応を条件として満たすものに変わって行くだろう。
また現場においてはものづくりに偏向した能力だけでは不十分であり、ものづくりとITの両方の知識を有する人材育成が求められ、マネジメント層では、集積されたデータを、コストダウン、リードタイム短縮、品質向上などに活用できる、「データ解析の感性」を持った管理職育成が急務となるであろう。
プライバシーや国際法などの法的規制や問題の解決
人と機械を情報で繋ぐIoTのデバイスも、ウェアラブルデバイスなど、人体への密着度や携行性に優れ、リアルタイムの相互通信が可能なものが開発されて行くであろうが、その場合には個人情報やプライバシーなどへの配慮が欠かせない。
またIndustry4.0では、国境を越えたサプライチェーンを構成する機会が大幅に増加し、国別の法制や情報の取り扱いなどの法規の違いへの対応も重要なテーマになると思われる。
センサーネットワークの上位を構成するレイヤー構築(B2B、PF2PF、E2Eなど)
今後、現場に一番近い最下層はセンサーネットワークで形成され、その上位に基幹システム、B2B、インフラやプラットフォームなどのレイヤーが構成される。
センサーネットワークと強い関係性を持つ基幹システム(生産管理システム)などは、その運用にIoTなどを取り込みながら、外部に繋がるサプライチェーンとの連携を行わなければならず、企業に存在する情報のレイヤーが透過性に優れたものである必要が高まる。
合わせてレイヤーを俯瞰し、ネットワーク全体を強固に管理するセキュリティの必要性が高まってくる。
クラウドを前提とした業務システム

今後の基幹業務システムは、ネットワーク上でのBOMやトランザクションの共有・連携が必須であり、クラウド対応のシステムがよりベターと言えるだろう。
仮にオンプレミスのシステムであっても、最低限のI/Oはネットワークに対し、柔軟に開口していなければならない。ネットワーク上における「基幹システムの柔軟さ」の重要度が増すだろう。
以上のようにIndustry4.0やIndustral Internetなどの新しいコンセプトへの対応について書いてきたが、中堅・中小製造業には、今すぐこれらに対応する「人・モノ・金」と言う経営資源が豊富なわけではなく、新しいトレンドに対応する必要性は強く感じながらも、その他の直近に解決すべき問題が山積である。
新しいものづくりのトレンドに対応することは重要なことであるとしても、それは経営課題の一部であり全部ではない。
また中堅・中小製造業では投資に対して、早期の効果創出を求められるので、その優先度も決して最上位にあるとは言えないだろう。
次回はこうした狭間で揺れる中堅・中小製造業のトレンドへの対応のあり方について考察してみたい。