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IoTで変貌するものづくり ~Industry4.0は必ずやってくる~[5]

抱 厚志のものづくりコラム「IoT時代のものづくり4.0J」
抱社長

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抱 厚志プロフィール
昭和35年7月、大阪府生まれ。自称生産管理おたく。
海外25カ国、累計5,000以上の工場を視察し、1,000社以上の生産管理システム導入に関与した実績を持つ。
平成6年9月に株式会社エクスを設立し、代表取締役に就任。翌年2月に生産管理システム「電脳工場 for Windows」をリリース。最新版の「Factory-ONE 電脳工場」シリーズも含め、現在までに1400本を超える導入実績がある。
「生産管理システムは経営戦略を具現化するツールである」とのコンセプトをもって、「ソフトを提供するのではなく、ソフトの使い方を提供する」という『真のソリューションベンダー』となるべく、日々、精力的に活動中。

第5回 2016年のものづくりのトレンドは?

抱社長

新年明けましておめでとうございます。
本年も倍旧の御愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

2016年の日本の景況については、各方面からの予測が出ているが、概ね実質GDPで+1.0~1.5%の伸びを予測が多く、景況は横ばいを維持しつつ、底割れのリスクは後退したと思われる。

今後は下振れのリスクをはらみつつも、企業業績の改善が設備投資や個人消費の伸びを後押しし、緩やかな景気回復が見込まれるが、4年目のアベノミクスも、円安や株高により経済効果を創出している反面、その施策の限界、すなわち「景気がマインドに追いつかない」と言う現実を露呈しているとも言えるだろう。

アベノミクスでは、「日本の不景気の最大原因を長期に渡るデフレである」と定義し、その解消を大きな目標に掲げていたが、実際の物価上昇率は、マネタリーベースの目標値に追いついておらず、完全なデフレ脱却はまだ遠く、2016年は今後の政治経済の方向性を見極める必要性に迫られる年になるだろう。

しかし雇用情勢は改善し、賃金も持ち直し傾向であり、有効求人倍率はバブル期並みの高さとなっており、いずれは個人消費や設備投資の増大が期待されている。

世界経済は、中国の景気後退や米国の利上げなどにより、これまでとは明らかに異なる方向性を明示しつつある。
特にTPP加盟国への輸出が、全輸出の1/3を占める中国では、これまでの様なコストメリットを求めることが困難になるとの予測から、外資企業の撤退が始まっているが、中国の後継として期待を寄せられていた東南アジア諸国も、その経済成長の鈍化が顕著であり、サプライチェーンのグローバル化が求められている日本企業も、その軸をどの地域に持って行くのか、今後の判断はさらに複雑なものとなるであろう。

これまで中国や東南アジアに積極的な投資を行っていた海外資本も、中国や一部東南アジアからの資本撤退が顕著であり、その代替として、地道な経済回復に努め、再評価されつつある日本への投資の積極化が予測される。

またここ数年、通貨危機など混迷を極めたEU諸国も、2015年前半は顕著な回復傾向が見られたが、ここに来てEUを中心的に牽引するドイツが、フォルクスワーゲンの不正事件により評価が下落し、リーダーが見えなくなった欧州全体の経済は、横ばいを維持すると予測するのが順当であろう。

そのような中で、各国からの日本経済への期待感は高まっており、日本が果たす役割や影響力は、確実な増大傾向にあると言える。

2016年は、ものづくりのトレンドを読む上でも、大きなターニングポイントになると思われる。
国策としてIndustry4.0を推し進めてきたドイツが、フォルクスワーゲン問題で躓いた。
この問題はフォルクスワーゲンと言う1企業の問題だけではなく、環境先進国として高い評価をされてきたドイツのものづくり全体の信頼喪失につながる可能性があり、「Industry4.0は国が主導する」と言う政治的なコミットメントが、今後、弱みと見られる可能性は否定できない。

これまでものづくりイノベーションで、ドイツのIndustry4.0やアメリカのIndustrial Internetに後塵を拝し、主役の位置に立つことができなかった日本版Industry4.0の注目度が大いに高まる可能性がある。

昨年、ドイツやアメリカの製造業経営者やエンジニアと話す機会があったが、Industry4.0やIndustrial Internetについては、まだまだ様子見の企業が多く、その実現可能性に疑問を持つ企業も多いと聞いた。

企業の垣根を越える大きなイノベーションは、その必要性は高く評価されつつも、自社における実現へのリアリティが欠け、コンセプトの域を完全に脱してはいないと言えるだろう。

日本でもIndustry4.0関連の書籍が多数出版され、まさにIndustry4.0ブームと言える2015年ではあったが、これは話題が先行し、過熱傾向にあったように思う。

企業は基本的にコンペティターとは競合の関係にあり、企業経営の社会性が求められる中でも、其々の企業の利益が優先するのは当然で、Industry4.0のように、企業や国の境界を越えた全体最適のコンセプトが、技術的に実現可能であったとしても、個の経営目標(収益増大)との整合性を構築できるかどうかが、イノベーション実現の鍵となる様に思う。
そういう面では、長年、「系列」と言う企業の枠を越えた垂直統合を強みとしてきた日本企業は、諸外国よりもIndustry4.0への適合力が高いと言えるかも知れない。

クラウド、IoT、データマイニング、人工知能などのIndustry4.0を実現するための技術は確実に実用化され始めており、新しいものづくりコンセプトは、少しずつ形を変えながら、10年ほどの期間の中で現実化してくることに間違いはない。
日本の製造業も、この新しいトレンドに「能動的解決」をするのか、「受動的対応」をするのか、大きな方向性を模索しなければならない1年となるであろう。

まだまだ二転三転が予想されるIndustry4.0などのトレンドについては、今後もより多くの情報や事例を収集し、2月にはセミナーと言う形で中間報告したいと考えているので、また改めてご案内させて頂きたく思いますので宜しくお願いします。

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