衛星測位技術

スマートフォンやカーナビゲーションで自分の位置情報がわかりますよね。cm単位の高精度な測位を実現しているのが、準天頂衛星システム「みちびき」です。衛星からどのように位置情報を把握しているのでしょうか。NECとのかかわりについてもご紹介します。

日本版GPS「みちびき」

「みちびき」は、簡単にいえば「日本版GPS」です。日本のほぼ真上で8の字を描く準天頂と呼ばれる軌道(※)に測位衛星を打ち上げ、より高精度で安定した位置情報サービスを提供します。

  • 衛星は、地球周りを回りますが、地上からみると8の字の軌道を飛んでいるように見えます。本軌道を準天頂軌道と呼んでいます。
準天頂衛星システム「みちびき」

現在、準天頂衛星システム「みちびき」は4機体制で運用されており、米国GPS衛星の補完と補強の役割を果たしています。今後、7機体制構築に向け追加3機を順次打ち上げ予定となっています。7機体制が構築されれば、米国GPS衛星に頼らずとも日本独自で測位が可能となり、位置情報サービスのさらなる活用が期待されます。

みちびきの7機体制では、準天頂軌道・静止軌道・準静止軌道にそれぞれ1機の衛星が追加配置されます。追加される3機により、みちびきが送信する信号の受信可能範囲が広がります。
・出典:qzss.go.jp
・提供:内閣府宇宙開発戦略推進事務局

衛星からどうやって位置情報を計測しているの?

測位とは、「モノの位置を測ること」を意味しています。利用者は、4つの衛星からの測位信号を受信し、衛星との距離を測定します。

一機の人工衛星との距離を求めただけでは、今自分がいる位置を特定することはできません。そこで人工衛星が4機必要になります。まず自分と4機の人工衛星との距離をそれぞれ計算し、4つの距離を求めます。すると4つの距離が一つに交わる点が出てきます。これが衛星測位によって求められる、今自分がいる位置ということになります。

「みちびき」とNECのかかわり

NECは、初号機から測位ミッションペイロードの開発・製造を担っています。衛星測位サービスを実現するための重要な機器である測位ミッションペイロードは、測位信号を生成する機器や、距離計測を行う機器、測位信号を地球へ届ける通信機器等によって構成されています。

衛星は、宇宙に打ち上げたのちは10年以上メンテナンスができません。そのため、その間に生じる経年劣化、温度変化、放射線なども考慮し、誤差を極力抑え、補正できる設計を行っており、地上においても状況を管理しています。これにより、数ある世界中の測位衛星の中でも世界一の精度を誇る準天頂システムとなっています。

衛星測位サービスの活用

「みちびき」の衛星測位サービスは、スマートフォンやカーナビなどでも日常的に活用されており、2023年度末時点で「みちびき」に対応する製品数は429もあります。数cmレベルの測位精度を実現する測位補強サービスは、クルマの自動運転や農業機械の自動化などに向けた実証実験を展開中で、一部はすでに実用化も始まっています。さらなる高精度化の実現により、自動車分野、ドローン分野、物流分野などにおいて、充実したサービスの実現、産業振興に不可欠なインフラとなっていく予定です。

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