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OpenADR(自動デマンドレスポンス)とNECの取り組み

Vol.68 No.2 2016年2月 ICTが拓くスマートエネルギーソリューション特集

スマートグリッドの進展において、電力需給のバランスを維持するための仕組みとしてデマンドレスポンス(DR)が重要なアイテムとして注目されており、DR市場の成熟が期待されます。本稿では自動デマンドレスポンス技術の国際基準の最新規格として規定されているOpenADR 2.0bについて紹介し、NECのデマンドレスポンスの取り組みを紹介します。

1. はじめに

国内外においてスマートグリッドに対する関心が高まっており、特に日本においては、2011年の東日本大震災以降、現実的な課題となっています。再生可能エネルギー電源の導入拡大が期待されますが、太陽光発電や風力発電は不安定な電源のため、導入量が増加すると電力系統が不安定になります。スマートグリッドにおいて、これらを安定的かつ効率的に運用することが要求されます。

その対策の1つとして、ICTを活用した電力需給のバランスを最適に制御する仕組みであるデマンドレスポンス(DR)が注目されており、各種実証が進められております。

DRは、電力の供給に対して需要側を調整するもので、電力供給リソースを効率的に使用するうえで有効です。また、需要側にとっても電力を効果的に無駄なく使うこと、また、電力需要逼迫時の対応として、発電所より早くピーク対応が可能であり、クリーンで経済性及び信頼性が高く、電力事業者と需要家の双方にメリットをもたらすものと思われます。

本稿では、自動デマンドレスポンス技術の国際基準の最新規格として規定されているOpenADR 2.0bを説明し、これをベースとした自動デマンドレスポンスの基盤ソフトウェア及びDRシステムについて紹介します。

2. OpenADR 2.0bの概要とシステム構成

図1はOpenADR 2.0bの情報伝達モデルを示したもので、電力事業者、アグリゲータ及び需要家間でDR情報メッセージ交換のデータモデルと通信プロトコルを規定しています。

図1 情報伝達モデル

メッセージの送信元であるVTN(Virtual Top Node)と、その受信先であるVEN(Virtual End Node)によりモデル化されており、電力事業者がVTN、需要家がVENに相当します。アグリゲータは、電力事業者に対するVENと需要家に対するVTNを兼ね備え、縦続して複数設けることが可能です。

VTNとVENはインターネットを使用してメッセージ交換が行われますが、伝達の仕組みとして、PULL型(VENからVTNにポーリングでメッセージ取得)、PUSH型(VTNからVENにメッセージを送信)の通信モデルが定義されています。プロトコルとしては、HTTP及びXMPPの使用が規定されています。メッセージはXMLにて記述され、各サービスのペイロードが定義されています。また、メッセージの保護としてTLSを採用し、XML署名を用いてセキュリティを規定しています。

電力事業者(VTN)は、DRプログラムに対応したDRイベントを作成し、アグリゲータまたは需要家へ発行するためのDRASサーバ(Demand Response Application Server)として構成され、アグリゲータ及び需要家(VEN)はVTNからのDRイベントを受信し、各種処理が行われます。需要家(VEN)は通常、BEMS(Building Energy Management System)などの各種EMS(Energy Management System)に実装されます。

にOpenADR 2.0bサービス機能仕様の概要を示します。EiRegisterParty(登録)、EiEvent(DRイベント)、EiReport(DRレポート)、EiOpt(受諾・拒否)の4種類のサービス機能で構成されます。

表 OpenADR 2.0bサービス機能

DRイベントには、単純レベル制御を行うための[SIMPLE]、電力価格通知を行う[ELECTRICITY_PRICE]、エネルギー価格通知を行う[ENERGY_PRICE]、需要値を直接指定する[LOAD_DISPATCH]、直接負荷制御を行う[LOAD_CONTROL]などがあり、エネルギーの広い領域に対応しています。

図2は、OpenADR2.0bの基本シーケンス及びDRイベントタイムチャートを示したもので、OpenADR2.0bの適用範囲はDR発動及び計量となっており、契約スキームは対象外となっています。

図2 OpenADR 2.0bシーケンス概要

図3にOpenADR 2.0bを適用したアグリゲータの場合を例に、DRASのソフトウェア機能構成を示します。電力事業者(VTN)からのDRイベントを受信するためのVENと、各需要家へのDRイベントを送信するVTN及びAPI(Application Programming Interface)を介して連携されるイベント管理、イベント分配などのアプリケーション及びデータベース(DB)から構成されます。

図3 DRASソフトウェア機能構成

(1)イベント管理

電力事業者(VTN)より受信したDRイベントの管理、及びイベント分配機能と連携して需要家へ発動するDRイベントの管理を行う機能です。

(2)イベント分配

電力事業者(VTN)より受信したDRイベントの内容に応じて需要家情報、ベースライン情報に基づき、DRイベントを作成し、アグリゲータ(VTN)より需要家(VEN)へ自動分配する機能です。抑制量の分配は、各需要家のベースラインから、あらかじめ設定された割合で抑制量を算出します。また、過去の需要家ごとの抑制量の実績とイベント受諾率を加味して、抑制割合を更新します。

(3)ベースライン

ベースラインは、需要調整未実施の場合の需要電力量の推定値であり、需要家がDRイベントに対して電力調整を実施した需要量を正確に把握するための基準線となるものです。本システムでは、計測された過去のデータに基づいてベースラインを決定しており、平均化法(High 2 of 10:直近の10日間のうち、電力使用量の高かった2日分のデータ)を採用しています。

(4)レポート管理

需要家(VEN)からの実績情報(計測値)を取得、管理する機能、及びVEN経由で電力事業者(VTN)へ送信する機能です。また、実績推移・分析を行い、DRイベントを自動分配するための情報として使用します。

(5)需要家情報管理

各需要家の保有負荷情報、ベースライン及びDRイベント受諾・未受諾状態の情報及びその他情報の管理を行う機能です。

(6)Web UI

上記の各機能におけるユーザーインタフェース(UI)を司るアプリケーションです。

3. 適用事例(ユースケース)

本章では、DRシステムの適用事例とその特徴について説明します。

3.1 DR情報の分配・送受信インフラとしてのサービス

図4に基本DRシステム構成を示します。電力事業者DRASでは、規模に応じて複数のVTNが実装されることが想定され、拡張性を考慮した構成となっています。基本DRASサーバはVTNとイベント管理、イベント分配など(図3参照)のアプリケーションを持ち、APIを介して電力事業者保有のシステム・機能と連携されます。

図4 基本DRシステム構成

本システムは、OpenADR 2.0bでのDR情報の分配・送受のインフラとしてのサービスを目的としたものです。既存電力事業者またはPPS(Power Producer and Supplier)と各需要家間のDR情報の分配・送受信を行い、VENが実装された各種EMS(BEMSなど)との接続、または直接負荷、蓄電池と接続してDR制御を行うことができます。

各既存電力事業者またはPPSが計画したDRプログラムに応じて、VTNによりDRイベントが作成され、各需要家のVENに通知されます。

図5は、APIを介した各種EMS及び発電予測・需要予測などの外部システムとの連携について、その概要を示したものです。例としてHTTP RESTを用いたDR Event[Distribute Event]の「POST」及びEvent Reportの「GET」があり、複数の外部システムとの連携を容易に行うことができます。

図5 API連携概要

3.2 DRアグリゲータのためのサービスソリューション

図6にPPS向けシステム構成を示します。

図6 PPS向けシステム構成

需給管理を中心に発電予測、需要予測及びDRとの連携を想定した構成となっています。

2016年4月に電力市場の完全自由化が開始されますが、PPSは30分間同時同量にて、電力の調達を行う必要があります。発電予測または需要予測の誤差などの理由により、30分間同時同量規定以内の達成が困難となった場合、DRによる電力抑制により対処すること、または、電力リソースの1つとして、電力調達(ネガワット)することが予想され、PPSにおける需給管理のリスク軽減施策としてのDRサービスが考えられます。

図7は、DRにて電力需給調整を行う場合のユーザーインタフェース例を示しています。①は、電力需給管理からDR調達要求を受け、その要求量に対して地域内の需要家情報及びベースラインに基づき、各需要家にDRイベントを発動します。DRイベントの受諾状況を時間別に集計して、DR抑制量を管理します。②は、対象負荷(ビルなど)のDRによる抑制電力の実績値を表示したもので、ベースラインに対する実際の抑制状況を把握することができます。

図7 ユーザーインタフェース例

4. むすび

以上、OpenADR 2.0b及び具体的なDRシステムのユースケースについて紹介しました。

OpenADR 2.0bは、電力市場の要求により、改版されていくと思われます。NECは、今後も引き続き、自動デマンドレスポンスの各種サービスへの取り組みを中心に、スマートエネルギー領域でのビジネス発展に貢献してまいります。

参考文献

  • 1)
    スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会(JSCA):デマンドレスポンス・インタフェース仕様書
  • 2)
    OpenADR Alliance : OpenADR 2.0 Profile Specification B Profile,Revision Number 1.0,2013.7
  • 3)
    インターテックリサーチ:デマンドレスポンスの基準,インターテックリサーチ レポート,No.26,2013.3
  • 4)

執筆者プロフィール

佐藤 哲二
NECエンジニアリング
第一システムソリューション事業部
チーフテクニカルアドバイザー
東海 泰久
NECエンジニアリング
第一システムソリューション事業部
マネージャー

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