Japan
サイト内の現在位置を表示しています。
スマートメーター通信システム(AMI)における実績
Vol.68 No.2 2016年2月 ICTが拓くスマートエネルギーソリューション特集従来のアナログ式電力量計から、デジタル計測と通信機能を備えたスマートメーターの導入が加速している状況で、国内電力各社は、スマートメーター通信システム(Advanced Metering Infrastructure:AMI)における計器及び通信部のオープンな調達と導入拡大を目的とした、提案募集(Request for Proposal)を実施しました。電力事業者における業務効率化や顧客へのサービス向上として、スマートメーターが着目されるなかで、NECとしてのこれまでのAMI事業の取り組みと実績について紹介します。
1. はじめに 国内AMI市場について
国内電力事業者各社は、スマートメーター通信システムにおける計器部及び通信部のオープンな調達と導入拡大を目的とした、提案募集(Request for Proposal)を実施し、広く技術提案を受けるとともに、価格を含めた総合的インテグレーションを遂行する主幹事会社を選定しました。2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」の方針に基づき、2020年代早期の全世帯へのスマートメーター導入に向け、主幹事会社をメインとするインフラの整備を進めている状況です。
2. スマートメーターとは
スマートメーターは、従来のアナログ式電力量計とは異なり、消費電力量をデジタルで計測できるとともに、通信機能を持ち、測定した消費電力量を電力事業者へ送信できる機能を有しています。スマートメーターは、その実装機能から、消費電力量を遠隔で計測する自動検針、開閉器の遠隔操作、家庭内における電気の見える化などに活用されています。
また、検針データについて、従来のメーターでは、月に一度の検針員による目視検針で得ていましたが、スマートメーターでは、30分ごとに得られるようになるため、このデータの利活用に大きな期待が寄せられています。
適用する通信方式については、特小無線を利用したマルチホップ方式、3GあるいはLTEを利用した、1:N方式などさまざまであり、提案募集に求められる要件を満足する通信方式を主幹事会社が提案する形態となっています。
3. NECのスマートメーターにおける導入実績
NECはこれまで、図1に示す電力事業者のスマートメーター内の通信部提供の導入実績があります(2015年7月時点)。以下、各電力事業者における、NECの取り組みについて紹介します。
3.1 東京電力様スマートメーター通信システムへの参画
東京電力株式会社(以下、東京電力)様は、国内最大規模となる2,700万台を対象に2020年度までにスマートメーターを導入する計画であり、そのシステム構築のパートナー事業者の選定を進められてきました。
そのなかで、NECは東京電力様の「スマートメーター通信システム」の提案募集に対して、株式会社東芝(以下、東芝)及びNTTグループとの共同プロジェクト推進体制にて2013年5月1日から参画しています。
本システムでのNEC担当範囲は、スマートメーターに内蔵する通信基板である「スマートメーター通信部[1:N(3G)方式]」の一部を、東芝との共同開発により実現し
ています(図2)。
NECが本スマートメーター通信部を提供するに当たり、エネルギーインフラを支えるネットワークの一端を担うための品質・性能確保と、国内最大規模のスマートメーター展開計画に応えるための生産能力、また低コストの実現が重要なキーワードとなりました。これらを実現するための要素として、過去に培った無線設計開発の技術ノウハウや、国内生産実績での高い品質確保のノウハウを活用し、製品開発、海外生産体制の立ち上げを実行したことが挙げられます。
また、東芝と共同開発したスマートメーター通信部において、製品では初の取り組みとして、Wi-SUNアライアンスが策定した920MHz帯特定小電力無線向けの国際規格である「Wi-SUN Profile for ECHONET Lite」の認証取得を行っています。これにより、東京電力管内に設置されるスマートメーターにおいて、HEMS(Home Energy Management System)関連機器との高度な接続性を実現しています。
3.2 関西電力様スマートメーター通信システムへの参画
NECは2006年より、関西電力株式会社(以下、関西電力)様の自動検針システムである「新計量システム」プロジェクトに本格的に参画し、構築を支援してきました。
関西電力様では、お客様へのサービス向上、及び検針業務の効率化を目的として、1999年から積極的に自動検針の実現に向けた研究開発に着手しています。構造・方式検討・業務検討を進められ、2008年には、日本における自動検針実証の先駆けとして、無線マルチホップ方式による3,000台規模のフィールド実証を開始されました。2009年には先行エリアでの試験運用を開始し、2012年から全エリアでの展開を進めています。また、関西電力のスマートメーターは、通信部のみの取り替えができる構造であることから、通信方式を適材適所で変更することが可能です。
自動検針システムの構築により、お客様へのサービス面では、電気の見える化や省エネのシミュレーションができるサイトを公開。また、遠隔でお客様の状況が確認できるため、問い合わせ対応時間を短縮する効果も生まれ、サービス向上を実現されています。
また、自動検針の実現による業務の効率化や、メーター作業時の感電災害の回避、盗電被害の発見、検針困難個所の解消及び、30分ごとに得られる検針データを活用した設備形成の合理化など、社内的にも大きなメリットが生まれています。
関西電力様では、2014年度末で約400万台のスマートメーターを設置し、2022年度末までに全メーター約1,300万台の交換に向けた取り組みを目指しています(図3)。
NECはスマートメーターの通信ユニットをこれまで120万台以上納入し、サーバシステムとともに、関西電力様の新計量システムを支えてきました。
これまでの実績を元に、関西電力様のシステム支援と新たなサービス開発に向けた提案を行っていきたいと考えています。
3.3 九州電力様スマートグリッド共通通信基盤への参画
九州電力株式会社(以下、九州電力)様では、2010年より、商用サービス導入に向けた、スマートメーター試験導入を実施しています。NECは2011年より、試験導入向けに国内電力事業者で初となる、公衆無線である1:N方式(WiMAX方式)による、スマートメーター通信用の上位サーバ「スマートグリッド共通通信基盤」の開発に従事しています(図4)。
本スマートメーター試験導入では、数十万台規模の通信ユニット(WiMAX方式)が導入されており、スマートグリッド共通通信基盤を介した通信の有効性が確認されています。
また、本試験導入で開発に従事した、スマートグリッド共通通信基盤は、開発当初の目的である、「業務システムから通信方式を意識せず通信機器との通信を行うこと」及び「複数の通信方式を意識せず、通信機器との通信を行うこと」を実現するため、各機能と役割に応じた複数のサーバから構成されており、複数の通信方式及び業務サービスに依存しない共通フォーマットの提供を可能としています。
今後、将来的なスマートグリッド関連システムの収容と、新規業務システムの追加を容易にする拡張性を備えた、本システム基盤の活用に貢献していきたいと考えています。
4. むすび
AMI事業を担当しているNECスマートエネルギービジネスユニットでは、スマートメーター用の通信端末は検針データの確実な収集を実現する重要な通信基盤であると考えています。
特に2016年4月以降は低圧小口向け小売りの自由化に伴って、このネットワークを活用したさまざまなサービスが出てくるものと想定しています。これら市場の動向に合わせて、今後も通信端末の更なる高度化や機能拡充を検討していく予定です。以下に、その取り組みを紹介します(図5)。
(1)次世代通信方式の適用検討
現在提供しているPHS、無線LAN、WiMAX、3Gの通信方式に加え、LTEなどの次世代通信方式に向けた通信端末のラインアップ拡充を検討していきます。
(2)共同検針に向けた取り組み
将来のガスや水道などとの共同検針への発展を想定し、事業者と連携した実証活動への参画や、実現のための通信インタフェースの調査活動に取り組みます。
(3)Bルートデータ利活用への取り組み
HEMSによる検針情報の見える化をはじめとするBルートデータの利活用方法の検討、NECのビッグデータ分析技術を活用したエネルギーマネジメントへの発展などの新サービス創造に向けた検討を進めます。
NECでは、引き続き電力事業者や主幹事会社と協力し、通信・ICTの分野でスマートメーターの普及に貢献してまいります。
- *ECHONET Liteは、エコーネットコンソーシアムの商標または登録商標です。
- *Wi-SUNは、Wi-SUN Alliance, Inc.の商標または登録商標です。
- *WiMAXは、WiMAX Forumの商標または登録商標です。
- *LTEは、欧州電気通信標準協会(ETSI)の登録商標です。
- *その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。
執筆者プロフィール
第一スマートエネルギー事業部
マネージャー
第一スマートエネルギー事業部
エキスパート
第一スマートエネルギー事業部
マネージャー
第一スマートエネルギー事業部
マネージャー
第一スマートエネルギー事業部
部長