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「ものづくりデータ基盤」活用によるデータドリブン型ものづくりに向けた方策とは「ものづくりデータ基盤」活用によるデータドリブン型ものづくりに向けた方策とは

「ものづくりデータ基盤」活用によるデータドリブン型ものづくりに向けた方策とは

データ基盤の導入と活用事例【2024.03.21】

カテゴリ:DX・業務改革推進生産技術・製造スマートファクトリー(IoT基盤/AI)

【目次】

製造業を取り巻く環境が複雑化する中、事業継続のために生産体制のレジリエンス強化は不可欠です。そのためには“データドリブン型のものづくり”が必要ですが、実際にどのように行えばいいのでしょうか。
NECでは、自社の生産革新活動を通じて蓄積した当該ノウハウを、ソリューションとして製造業のお客様のDX化推進のためにご提案しています。ここでは、製造システム統括部ものづくりコンサルティング第一グループプロフェッショナルの深見友彦が、その方策についてご紹介します。

NEC 製造システム統括部 ものづくりコンサルティング第一グループ プロフェッショナル 深見友彦

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1. 市場動向とNECの取り組み

製造業を取り巻く環境と経営アジェンダ

製造業は地政学上のリスクなど急激な外部環境の変化に直面しています。また、日本では労働人口減少など、事業継続のリスクにさらされています。様々なリスクに対応しつつ事業を継続するために、5つの経営アジェンダに注目しています。

  • (1)
    データドリブン経営判断、リスクマネジメント
  • (2)
    生産体制の複線化による変動対応力強化
  • (3)
    カーボンニュートラルなど法規制対応
  • (4)
    デジタル人材育成
  • (5)
    技術革新、デジタル化のためのテクノロジー

NEC 製造システム統括部 ものづくりコンサルティング第一グループ プロフェッショナル 深見友彦
NEC 製造システム統括部 ものづくりコンサルティング第一グループ プロフェッショナル 深見 友彦

NECも2011年に発生した東日本大震災やタイの水害、COVID-19によるパンデミックなどの経験を通じ、サプライチェーンが断絶してモノが届かない、設備が稼働できない、または稼働率が低下するという事態に遭遇しました。
その際、生産活動を維持すべく他工場への生産移管を模索しましたが、同じ設備でも工場によりルールや定義が異なっていたり、またシステムの違いからデータ形式が異なるため、生産移管に時間を要するといった困難に直面しました。

その後、NEC One Factoryという構想を掲げて、データを活用したものづくりの実践(データドリブン型ものづくり)をすべく、NECでは、業務の標準化・システム/データの一元化を進めてきました。今まで以上にデータやネットワークの重要性を再認識し更なる整備を進めております。
データドリブン型ものづくりに向けた生産体制のレジリエンス強化の方策についてご説明します。

生産体制のミラー化によるレジリエンス強化

大きな方向性としては、ものづくりに関わる「データ」を集め、蓄積したデータを可視化・分析・判断、フィジカルなものづくりにフィードバックする一連のプロセスを通じてものづくりを行うということ、つまり“データドリブン型のものづくり”が重要です。まずは生産体制のミラー化によるレジリエンス強化の視点で、「BOM/BOPのミラー化による短納期開発・生産」についてお話しします。

“ミラー化”には二つの思いが込められています。

一つ目は “デジタルツイン”という概念で、バーチャル空間でデータを活用しシミュレーションを行う事です。フィジカル、現場の試作や試行をデジタルで行い、生産ラインの立ち上げや品質向上を短期間で実現します。
このデジタルで行うシミュレーションの実現性や実効性を高めるために、現実との差をなくす、精度を高める必要があります。そのためには、もとになるフィジカル、現場のデータが不可欠必要です。シミュレーションした結果とリアルのデータを突き合わせることで精度が高められるでしょう。
二つ目は、製造品質の均質化です。例えば、どの工場で製造しても一定基準の品質を満たす、ものづくりができるようにすることです。ある工場で作っていたものを別の工場でも生産しなければいけなくなった場合、同じことがすぐにできるように備える必要があります。
そのためには、ものづくり全体を俯瞰でき、人がデータにもとづいて、最適な判断をできる仕組みが求められます。
具体的には、

  • 工場ごとにリソースや調達先が異なるなど、違いがある前提で、設備やリソースなどを把握して、差異が分かる
  • 製品に対して国ごとに部品構成品やリソースの違いが分かる
  • 製品構成やリソースを考慮し、ものづくりの手順を作成する際に、現場のデータと突き合せて、精度を高められるように、どこでも使えるようにデータを整備する
  • データにもとづき判断や分析を行うために、ルールや定義などのKPIを統一する

など、やるべきことはたくさんあります。
さらに、日本の熟練者の大量退職を考慮すると、経験者のノウハウや紙に記載されている内容といった様々なアナログ情報をデータとして蓄積して活用できるように備えることも必要です。

これらにより、外部の環境変化や内部の異常が発生しても、迅速な対応(レジリエンス)が可能となります。

2. ソリューションの方向性

データを活用し改善サイクルを回す

しかし実際には、在庫管理や品質管理といった部分最適でデータをためているケースが多く見受けられます。テーマや部門ごとに目的をもち、段階的にDX化に取り組むのは良いのですが、ものづくり全体を考慮したデータの活用を考えた際に、部分最適なシステムの使い方に留まり、更なるデータ活用ができてないケースを多くお見受けします。一連の情報を連携し、全体で使える形にしておくには、データの一元化のためにデータ基盤を整備するとともに、データを収集し活用するための仕組みやプロセス、データ活用のマインドが求められます。

例えば、MESシステムで日々の作業指示と出来高を管理するお客様が、設備を含む様々な工程のデータと最終検査のデータを連携し、タイムリーに見える化した場合、午前中に作ったものの検査を昼に行い、不良が出ていたら午後のもの作りの設定を少し変えてみるなどの対策を講じ、不良を抑えて出来高を増やせる可能性があります。これまで一日のサイクルが、半日サイクルでチェック・対処でき、生産性が向上する可能性があります。

設備データからの設備稼働率の見える化や、品質管理業務のペーパレス化などの部分最適の効果に加え、多くのデータを使える形にしてタイムリーなデータ活用ができるようになると、改善できることが増えます。例えば日時での人手による詳細情報収集・集計作業から解放され、収集データを日に二回活用し、対処が早くなるといったプロセス改善につながります。

また、ものづくりのプロセスは、開発や生産技術の人が考えてラインの立上げや製品品質を担保しているので、変更内容や結果データなどのフィードバックが必要です。しかし、一旦ラインが稼動すると、ものづくり現場の状況や日々の結果は、開発や生産技術部門には分かりにくい状況になります。この時、取れている日々のデータ、現場での対処、改善結果などを見える化し、上流へフィーバックできれば、今後は改善したプロセスでのライン立上げが可能となり、次回以降の仕事の質が高く、早くなり、源流管理・源流改善につながります。

ものづくりの源流となるBOMやBOPをデータ化し、現場の様々なデータを活用して生産性向上や効率化・更なる気付きを得て改善につなげる、という大・中・小、様々なものづくりの改善サイクルを迅速に行えるのがデータドリブン型ものづくりであり、生産体制のミラー化によるレジリエンス強化につながると考えます。さらには、実行するための仕組みやプロセスに加え、現地現物の精神とデータ活用のマインドも重要です。

NEC自身のソリューション導入

NECでは、2015年より、IoT/AIの活用によるスマートファクトリー化を進めています。
プロジェクト開始時に、QCDの視点でインパクトのあるテーマで設備と人に当たりをつけ、どのようなデータを使い、どのような改善を見込むか、どのようなKPIで見える化を実現するかなどを事前に検討し進めました。
まず、設備のデータを収集し、見える化を1工場のモデルラインで検証しました。その結果、想定以上の効果が出て、ラインや、他工場へ展開しながら、設備に加えて、人の作業のデジタル化も段階的に進め、現在もBOPのデジタル化など色々なテーマに取り組んでいます。

このように、どんな改善ができそうかを事前に十分に検討し、データを使って何ができるか、ルールの標準化や何を見える化するか、何の改善を目指すか検討・検証・実践したことで、成果に繋がったと考えています。

NECはそこで得た成功体験をDX化ご検討のお客様へのご提案に活かしています。

各ソリューション活用

部品構成情報(BOM)や製造プロセス情報(BOP)は、生産管理システムや製造実行システム、ものづくり現場のデータを収集するIoTシステムのマスタデータとなるので重要です。統合BOMという考え方でBOMやBOPの管理や活用に強みを持つ「Obbligato」というNECのPLMソリューションを、NECではグローバルレベルで活用しています。

BOMやBOPを作成する際、技術者は設備や人などのリソースを考慮して、ものづくりの手順を作成し、試作などを経て製造品質を作り上げます。その際に管理すべき項目や値を決め、繰り返し製品品質の作り込みを行いますが、このベースとなるのが、Man(人)、Machine(機械設備)、Method(方法)、Material(材料)、Measurement(計測)の「5M」情報です。

データを活用して改善サイクルを回すには、このBOM/BOPの5M情報に対し、ものづくり現場のデータを収集し、突き合わせることが重要です。それにより、変化点や異常値を見つけ、変化点管理や良品条件ものづくりといった品質管理の考え方にそったデータ活用が実現できます。
データ活用におけるもう一つの重要なポイントは、SORのシステムとは別にSOIの仕組みが必要な点です。従来からの生産システムや製造実行系システムといったSoR(System of Record)を記録するシステムは、業務プロセスを効率的に行えるよう必要最低限のデータで処理に主眼をおいたシステムです。これに対し、SoI(System of Insight)を記録するシステムは、データの出力形式が異なる様々な設備データ、音声情報、画像情報やセンサー情報など多くのデータが対象となるため、設備固有のコードを変換する、インデックスを付けるなどのデータの加工が必要となります。

データドリブン型ものづくりを目指すには、基準となるBOM/BOPのデータ、生産計画や製造実行等のシステムデータ、ものづくり現場からの収集データを取り扱う必要があります。データの一元管理と言っても、物理的に大きなデータ基盤の器を1つ準備し、そこにデータを溜めれば良いのではなく、このデータを使える形にそろえていくことが重要で労力を要するところになります。

以前はお客様ごとの状況やニーズに基づいて試行錯誤しながら仕組みを設計していましたが、NECでは5Mデータモデルという器をつくり、個別の設計を不要にしました。そのデータ基盤ソリューションが「NEC IoT Industrial Platform」です。

「NEC IoT Industrial Platform」では、PLMのBOM/BOPデータやERP・MESの製造指示や実績データと製造現場の多様なデータを取り込み、データを使える形へ編集・紐づけることができます。これにより、お客様のものづくりの改善サイクルを迅速に回し、データドリブン型ものづくりの実現につなげることができるようになります。

NECでは、お客様のDXを成功させるために、データを収集し活用するための仕組みやプロセス、データ活用のマインドづくりをトータルでご支援するソリューション&サービスをご用意しており、DXに関する様々なお悩みにお応えしていきます。

3. 主要ソリューション

ものづくりデータ基盤「NEC Industrial IoT Platform」

「NEC Industrial IoT Platform」はNECが自社で実践した“データドリブン型ものづくり”のノウハウをパッケージ化したものです。改善や変更サイクルに追従するシステムを目指し変化追従をしやすいシステム、ものづくりに必要な機能をご提供しています。

また、改善活動や日々の変化への対応を想定し、変更追加をしやすいデータ構造、ノンプログラミングで簡単なデータパイプラインの構築、データ格納時のイベント生成、異常発見を促すアラート機能、改善やデータ利活用を想定した5Mデータモデル、格納データを使った見える化、改善を促す改善ガイドなどをご提供しています。

より詳しい内容については以下よりご参照ください。

人作業のデジタル化

NECでは、製造現場の人の作業効率を向上させるための様々なソリューションの開発を行っており、ものづくりDXソリューションとして各種ソフトウェア群をご提供致します。代表的なソリューションをご紹介致します。

・NEC 人作業ナビゲーション
NEC独自の音声認識技術を活用し、音声を活用した作業証跡のデジタル化を行います。ハンズフリーによる組立作業の着手完了時間の登録や作業チェックの登録で、生産性を向上します。 人作業品質の平準化や従来の人手による時間計測のタイミングを常時行うことで改善サイクルの高速化が見込めます。NECでは、ライン投入前の作業要員の教育期間を1月間から10日間へ短縮、作業者の組立作業時間が平均15%短縮などの効果をあげています。従来の人が行っていた時間計測による作業チェックを月1回から、人作業ナビゲーションのデータを活用して、日に2回集計・確認することで改善サイクルを40倍アップするという実績もあげています。

・ビデオマネジメントシステム
映像の送受信や閲覧、データ管理が行えるアプライアンス製品です。車のドライブレコーダーのように、一定の範囲内での動きを検知してから録画することも可能で、問題が発生した場合の改善やさらなる業務効率化に繋げられます。

・工場付加価値時間計測ソリューション(手ログ)
組立作業の人の手の作業に関し、お客様のライブ映像データや蓄積データを活用してAIが作業時間の計測を行います。

・NEC ものづくりDX映像AI分析ソリューション
ものづくりの現場の人の作業に関して、AIの学習モデルを登録しており、お客様のライブ映像データや蓄積データを活用して様々な分析が行えます。

データ利活用のためのAI技術

NECでは、製造業のお客様の業務にAIを活用するご支援を致します。

未来に向け、日本の製造業を強くするために、全力でご支援したいと考えています。
今回ご紹介した各種ソリューションは、大規模な製造業のお客様だけでなく、コンパクトにご導入いただけるソリューションや段階的にご導入いただけるソリューションです。データドリブン型ものづくりにお悩みのお客様や製造DXを推進したいお客様はNECまでお気軽にご相談ください。

データドリブン型ものづくりの必要性とは?
ものづくりDX資料ダウンロード

【掲載内容】

  • データドリブンものづくりとは何か?
  • 現場の自動化と自律改善の必要性
  • 各社のスマートファクトリー領域の取り組み状況や課題など

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関連リンク

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設備、人(音声、映像)といった現場データに加え、ERP、PLM、MESなどのデータも集約し、工場、会社を横断したものづくりデータの見える化、分析を実現するのが「NEC Industrial IoT Platform」です。これにより、お客様の工場/ライン視点での生産性向上、品質安定化、さらに全社視点での損益の向上に貢献します。

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