250メートルの力

「しきさい」による地球観測が始まり、従来の地球観測衛星よりも大きく向上したのが地球の表面を見る「細かさ(解像度)」です。従来の衛星では、地上を1000メートル四方の点に分けて画像表示していました。これが「しきさい」では1点が250メートル四方に向上しています。同じ面積の場所を16倍の情報量で表すことができるようになったのです。
この「しきさい」の地上を見る目の細かさは、たとえば漁業にとって大きな問題になる「赤潮」の発生の観測に力を発揮します。赤潮とは、植物プランクトンの異常繁殖により海の色が変化して見える現象で、「有害藻類ブルーム(Harmful algal blooms:HABs」とも呼ばれます。「しきさい」は海の色を詳細に把握することができ、赤潮が発生している状況をきめ細かく捉えることができるのです。
広い海だけでなく、陸上でも「しきさい」の解像度は重要です。観測を始めてまもない2018年夏には、大きな話題となった猛暑の日本列島を観測しました。このとき、250メートルの解像度のおかげで興味深いことがわかっています。ヒートアイランド現象のため非常に暑い東京都心の中でも、日比谷公園や皇居など樹木が豊かな場所は周囲に比べて少し温度が低くなっていました。「しきさい」の目で見れば、密集した都市の中で木々が地上を冷ましてくれる現象までわかるのです。

2018年8月1日、日本列島の猛暑を捉えた画像が「しきさい」の名を知らしめた。関東地方の都市域(画像右中程)はヒートアイランド現象により非常に暑くなっている。その中で、都心にわずか温度が低い場所があり、皇居の緑が熱を冷ましていることがわかった。
クレジット:JAXA

取材・執筆:秋山文野
2020年3月30日 公開

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