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「はやぶさ」、最後の24時間
帰還後の情報を元に改訂:2011年6月2日
「はやぶさ」は再突入の約3時間前に、高度約7万kmでカプセルを秒速10cmという遅い速度で分離しました。その後ウエスタン・オーストラリア州上空からオーストラリア大陸上空へ。6月13日22時51分(日本時間)ころに、高度約200kmで大気圏へ突入しました。
その時の速度は秒速12kmにも達します。高度110km以下になると大気が急激に圧縮(断熱圧縮)されることにより急激に表面温度が上がります。カプセルの周囲は高温のプラズマに包まれ、地上からは明るい流れ星として見ることができました。高度110km以下でしか光りませんので、残念ながらこの流れ星を日本から見ることはできません。カプセルと「はやぶさ」本体はほとんど同時に大気圏に突入してきますので、非常に接近して一緒になって見えました。高度65~55kmくらいで最大の明るさになりました。(満月の明るさを大きく越えて、人の影が地面に映ったと報告されました。)
その後、急速に速度を減じて流れ星としての発光は終わります。「はやぶさ」本体は高度47kmまでにばらばらに破壊されて溶融消滅しました。カプセルは高度約5kmでパラシュートが開傘、23時08分頃にゆっくりとウーメラの砂漠地帯に降下しました。
この時の光景を、「はやぶさ」プロジェクトにも長いこと係わった的川さんが、「はやぶさ関係者メッセージ」として、見事に表現されました。
「はやぶさ」が自らの最期に渡した「いのちのバトン」を受け継いだ光の玉手箱だ。
わずか10秒あまりの凝縮されたバトンタッチは、波瀾の連続だった「はやぶさ」の一生の、見事で完璧なフィナーレを飾るあまりにも美しいシーンとなった。
「はやぶさ」の7年にも渡る旅がこうして終わりました。
- *時刻は日本時間で示します
- 約19時間前:
6月13日 4時頃 -
「はやぶさ」と地球の距離が、地球 - 月の距離(約38万km)より近くなる。
- 約8時間前:
15時頃 -
ハワイにある、国立天文台の「すばる望遠鏡」が、約17万kmに近づいてきた「はやぶさ」の姿を、14時59分~15時06分にかけて撮影に成功。光度は21等と報告されています。
- 約7時間前:
16時頃 -
7年前「はやぶさ」が旅立った内の浦上空を通過。距離約15万km。
- 約3時間前:
19時51分頃 -
高度約7万km、カプセルが秒速10cmのゆっくりした速度で切り離される。ここから3時間の飛行なので、カプセルと「はやぶさ」本体は時間にして1秒以下、距離で1~2km程度しか離れないまま地球大気に突入した。(ほとんど同時といえる)
-
地球突入の3時間前、地球から約7万kmでカプセルを分離する - 約50分前:
22時02分27秒 -
カメラ「ONC-W2」によって地球ラストショット撮影
- 約20分前:
22時28分頃 -
「はやぶさ」からのテレメトリ電波途絶
(内之浦での消感) - 約5分前:
22時46分頃 -
高度約600km、ウエスタン・オーストラリア州上空からオーストラリア大陸へ、地表に対する速度は秒速12km。
- 22時51分12秒
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高度200km、大気突入。地表面に対して10度程度の浅い角度で突入した(まだ大気の影響は少ないので流れ星としては見えない)。
- 22時51分50秒
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高度約110kmで光始める
- 22時52分
14秒~20秒 -
高度約65~55km 数度の爆発、満月よりも明るく見えた。
- 22時52分28秒
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高度約47km 本体がばらばらになりながら溶融消滅する。ばらばらになっていく本体から、カプセルの流れ星だけが生き残り、突入を続ける、このころから周辺プラズマの輝き(白っぽい)に代わって、カプセルの表面の数千度の熱輻射が見えてきて、カプセルの流れ星が赤く見えてきた。
- 22時52分50秒
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カプセルの輝きが失われた。この後ダークフライトへ。
- 22時56分
-
高度5kmでパラシュートが開傘。
- 23時08分
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ウーメラ砂漠へ着陸。
- ※本ページの経過内容は、以下の情報を元に記載しています。
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所「Hayabusa Live」
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平成22年度宇宙航行の力学シンポジウム
"はやぶさ地上観測から予想されるカプセルの飛行環境,"
藤田和央、山本真行、阿部新助、石原吉明、飯山青海、柿並義宏、平松良浩、古本宗充
高柳大樹、鈴木俊之、柳沢俊史、黒崎裕久、Michae Shoemaker、上田昌良、司馬康生
- ※はやぶさ地球帰還の画像はJAXAビデオ「はやぶさ地球帰還カプセルと母船」より抜粋。