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バイオメトリクスを活用した非日常空間体験向上の取り組み
バイオメトリクスを用いたサービス・ソリューション近年、訪日外国人数は急激に増加し、体験価値が高まっていることから、ホテルやテーマパークなどのサービス業需要は増えてきています。一方、労働力不足が深刻化し、現場オペレーション負荷軽減が喫緊の課題となっています。サービス提供側の業務負荷軽減と利用客の顧客満足度向上を両立させるためには、「早く」「正確に」利用者本人であることを認識する技術が求められます。NECの顔認証技術は、登録が簡単に行え、非接触認証で素早く正確に本人認識が可能な技術です。本稿では、ホテルや集客施設における顔活用ソリューションの取り組みと、顔を共通IDとしてカスタマージャーニーをつなぐ将来構想について紹介します。
1. はじめに
2017年の訪日外国人は2,800万人を超え、2018年は3,000万人を超えました(図1)。また、「コト消費へのシフト」が取り上げられるように、非日常における体験に価値を求める傾向が年々強くなっており、消費者のホテルやテーマパークなどサービス業へのニーズが高くなっています。
一方、サービス業では、労働力不足による影響も深刻化してきています。ホテルやテーマパークにおいては、顧客を理解して適切なサービスを提供し、顧客満足度を高めてリピートにつなげることが重要ですが、それがままならない状況になってきています。
本稿では、ホテルやテーマパークなどのサービス業において、これらの課題に対するバイオメトリクスを活用したソリューションの取り組みを紹介します。
2. ホテル業務省力化ソリューションの紹介
ホテルにおけるフロント業務において、チェックイン、チェックアウトの受付対応や、氏名や住所を記載する宿帳の入力などは、特に顧客が集中しやすい時間帯においては負荷の高い業務になります。既に、自動精算機を導入してチェックアウト業務の一部負荷軽減を図るケースは増えていますが、抜本的な解決策になり得ていません。これを解決するソリューションとして、スマートフォンアプリケーションでゲストカードの必要事項をあらかじめ登録しておき、ホテルのフロントでは本人確認をするだけでスマートにチェックインが完結し、ホテルの部屋も本人であることを認識して開錠できる仕組みをリリース予定です(図2)。この仕組みを実現するうえでキーデバイスとなるのが、顔認証技術になります。
具体的には、各ホテルが共通で利用できるスマートチェックイン用スマートフォンアプリケーションにあらかじめホテルの宿泊予約情報を読み込み、氏名、性別、住所などゲストカードと同様の情報を入力しておきます(図3)。また、併せて顔画像を登録しておきます。宿泊者がホテルにチェックインする際は、KIOSK端末もしくはフロントに設置されたカメラ付きの端末に顔を向けることで、その日にチェックイン予定の宿泊者であることが確認されます。通常、チェックイン時には部屋の割り当てなどの業務も行う必要がありますが、このような業務をできるだけ自動化する仕組みも併せて提供することで、チェックイン時のフロント業務負荷を軽減します。
チェックインした宿泊者はそのまま部屋に向かい、部屋の扉に付けられたカメラに顔をかざすだけで顔認証が行われ、扉が開錠されます。宿泊者は、ルームキーを部屋に忘れたり、紛失したりするリスクがなくなり、また、家族など同室の人同士での鍵の受け渡しなどの手間もなくなります。ホテル側は、フロント業務においても鍵の受け渡しが不要になるため、工数の軽減につながります。
ホテル滞在時に、レストランやショップなどを利用される宿泊者は、会計の際も顔をかざすだけでルームチャージが完了します。これまでは部屋番号を伝えることでルームチャージを行っていましたが、顔認証で行うことにより、より速く確実に本人確認が行えるようになります。
これらの仕組みを実現するためには、PMS(Property Management System)と呼ばれる宿泊予約管理システムとの連携が必須となりますが、NECは既に「NEHOPS」ブランドにてPMSをサービスとして展開しており、シティホテルマーケットにおいて60%を超えるシェアを有しています。そのため、「NEHOPS」とのインタフェースは既に用意されており、利用者の許諾を得たうえで宿泊情報を連携することで、容易に本ソリューションを導入することができます。
顔認証をキーデバイスとすることで、ホテル運営者は業務負荷軽減を実現し、宿泊客はチェックイン、チェックアウト時の手間が省け、鍵を持ち歩く必要がなくなるなど利便性が向上し、結果的に顧客満足度向上及びリピート率の向上につながります。
3. 「集客施設価値向上ソリューション」における顔認証活用
NECでは既に、スタジアムやテーマパークの価値向上を促す「集客施設価値向上ソリューション」のサービス提供を始めています(図4)。
利用者に対しては、スマートフォンアプリケーションを活用した各種情報提供やスタンプラリー、ファン投票や動画サービスなどを提供することで来場体験価値を高め、運営者に対しては顧客の見える化を実現するダッシュボードを提供することで、施策立案やプロモーションに生かすことができます。これに加え、今後は集客効果を高めるために、施設への顔パス入場を可能とする「1要素ウォークスルー顔認証サービス」を提供する予定です(写真)。
ウォークスルー顔認証自体は、これまでにも集客施設やコンサート会場で活用されていますが、顔認証精度に限界があり、従来方式はICカードやQRコードと顔認証を組み合わせた2要素のウォークスルー顔認証の実現にとどまり、テーマパークにおける年間パスポートの不正利用防止やコンサートにおけるチケット転売防止といった用途を目的としていました。「1要素ウォークスルー顔認証サービス」は、カードやICチップといった媒体を不要とし顔パスでの本人認証を実現できるため、お客様に対する「利便性向上」や「優先入場によるおもてなし」を実現しつつ、集客施設側は「入場管理に係る人員の省力化」を実現することができるようになります。
スタジアムやテーマパークにおいては、チケットの他に飲食やグッズ販売も顧客単価をアップする重要な要素となるため、これらタッチポイントにおいて支払いの手間軽減を図るための顔認証決済も検討しています。
4. 顔でつなぐカスタマージャーニーの実現
これまでホテルや集客施設における顔認証の活用について取り上げましたが、利用者は本来、ホテルだけを目的として宿泊するのではなく、観光やスポーツ観戦、温泉や食事など、その地域のアクティビティを楽しむためにホテルに宿泊します。利用者は、空港や鉄道などの移動から、ホテルのチェックインやルームキー、食事の決済、レジャー施設の入場パスなど、非日常体験動線のなかで一連の本人確認アクションがストレスなくつながることを望んでいます(図5)。本稿で取り上げたソリューションで活用する「顔」は、忘れることがなく、なくすこともない、本人確認をする絶好のキーデバイスとなります。NECでは、顔認証を共通IDとしてソリューション同士をシームレスにつなげ、カスタマージャーニー全体の顧客満足度を高める取り組みも始めています。
また、共通IDをつなげるだけでなく、ホテルの利用者に好みに合った地域のアクティビティを提案したり、アクティビティの利用者に次のホテルプランを提案するなど、利用者の許諾を得たうえで共通IDに紐付いた行動データを取得、活用し、地域全体の活性化を図る取り組みもしています。
このような事業者間をまたいだ取り組みは、インフラレベルの取り組みになるため、セキュリティの強固な基盤が求められます。NECの顔認証基盤ノウハウや運用ノウハウを結集し、実現していきます。
5. むすび
リアルな場における顧客サービスを本質的にとらえれば、「Face to Face」が不変的な人の認知方法であり、顧客体験の価値向上につながるものと考えます。これまで顔認証技術は個々のソリューションへの適用がほとんどでしたが、今後は、顔でつながるカスタマージャーニーを促進していきます。さまざまな非日常空間における体験価値を高めて、人と場を結び付け、繰り返し人を動かすことにより地域の活性化を図ることができます。顔による共通IDを黒子として、地域を支える仕組みを実現していきます。
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執筆者プロフィール
トレード・サービス業ソリューション事業部
マネージャー
トレード・サービス業ソリューション事業部
主任