ビジネスの常識を変える生成AI特集によせて

Vol.75 No.2 2024年3月 ビジネスの常識を変える生成AI特集 ~社会実装に向けた取り組みと、それを支える生成AI技術~
執行役Corporate EVP 兼 CTO
兼 グローバルイノベーションビジネスユニット長
西原 基夫
NISHIHARA Motoo

生成AIを支える大規模言語モデル(Large Language Model、以下、LLM)が、大きな注目をあびています。そのトリガーとなったOpenAI社のChatGPT(Generative Pre-trained Transformer)は、史上最速の5日目で100万人のユーザーを獲得しました。Netflixの1,278日、Facebookの304日に比べて、驚くべき普及速度です。突然登場したように見える生成AIのLLMですが、自然言語処理の専門家のなかでは、元になる技術として近年の目覚ましい研究成果が知られていました。2017年のTransformerの論文*1や2020年のScaling Lawの論文*2などが挙げられます。それらの研究成果に加え、GPU(Graphics Processing Unit)の性能向上により大規模なモデルが扱えるようになったことが、LLMを一気に商用レベルまで発展させました。

生成AIをビジネスに活用するためには、技術課題(ハルシネーション*3、学習データに起因するバイアス、個人情報・著作権情報の有無など)を正確に把握するとともに、LLMが持つポテンシャルを損なうことなく、安全に利用する必要があります。LLMが持つポテンシャルの一つは、どのような問いや議論に対しても、人間と同等レベルで応答することができる点です。しかも有する知識やデータは、人間のケイパビリティを遥かに凌いでいます。すべての社会システム、技術システム、産業システムは言葉を介して説明できるので、社会のあらゆるシステムがLLMの技術で自動化されうると言っても過言ではありません。

NECは、過去30年にわたり、AI技術の研究開発に注力してきました。NECの研究成果は、AI関連の国際会議でも高い評価を受けており、超難関学会(NeurIPS、ICML、ECML-PKDD、KDD、ICDM)の2000年から2022年の論文数では、NECはトップ企業の一つにランキングされています。生体認証、映像認識、分析・対処AIの国際特許出願件数もトップです。NECはAI技術の領域にて、まさにリーディングカンパニーの一つと言えます。更に、2023年3月には、国内最大級のAI専用のスーパーコンピュータが稼働開始し、7月には日本語LLMの開発を完了しました。このLLMを中核とした生成AI「cotomi(コトミ)」の提供開始を12月に発表しています。

NECは今後、(1)マルチモーダルAI(画像・音声・センサー信号などのマルチモーダルとLLMの融合)、(2)独自ファウンデーションモデル(LLMのサイズを柔軟に拡張し、多彩な専門AIとも連携可能な新しいアーキテクチャにより、目的に合わせたAIモデルを構築)、(3)システム構築・運用の自動化、(4)オーケストレーション機能(各種業務をタスク分解し、自律的にAIモデルの配置や連携、ネットワークやセキュリティ制御を行い、実世界の多様な業務を自動化)、(5)安全・安心なLLM(サイバーセキュリティのみならず倫理・ハルシネーション・データ信頼性まで含んだ安全・安心を担保するセキュリティ)など、新たな生成AI関連の技術に取り組んでいく予定です(図1)。NECでは、これらの新たなAIを活用したアーキテクチャや、NECが取り組んでいる生成AI技術の一部を2023年12月のNEC Innovation Dayでも発表しました*4。本特集では、更にNECが取り組んでいる生成AI技術のソリューション全体を幅広くご紹介します。

図1 AI技術と一体化するデジタルツインシステムと技術方向性

現在、私たちは生成AIという大きな技術革新の節目に立っています。NECはお客様と緊密に連携しながら、生成AI技術を活用し、より良い社会の構築とビジネスへの貢献を目指して力を尽くしてまいります。生成AI技術とともに歩んでいく未来へ、皆様がともに思いをよせていただけますことを心より願っています。


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    ChatGPTは、米国OpenAI社の商標です。
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    Netflixは、Netflix, Inc.の登録商標です。
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    Facebookは、Meta Platforms, Inc.の商標または登録商標です。
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    その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。