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No.5(11月) 電子デバイス特集
Vol.59 No.5(2006年11月)
電子デバイス特集
システムLSIを中心とする半導体デバイスはこの10年、従来の微細化技術に加え、低電力化技術や並列化技術、さらには高度なソフトウェアの急速な進歩によって、より高機能・高性能を安価に実現できるようになってきました。しかしその一方で、個々の技術が複雑になったため、タイムリーに適切なコストでこれらを統合してお客様に最適なソリューションを提供することが困難になってきています。そこでNECエレクトロニクスは事業分野ごとに最適なプラットフォームを構築し、IDMとして複雑な技術群を最適統合することによってお客様に満足頂けるソリューションを提供すべく活動を進めています。
本特集では、NECグループの電子デバイス事業における中核企業として「素材型デバイス創造企業」をめざすNECトーキンの製品開発技術をご紹介します。NECトーキンは、素材技術をコア技術とし、当社独自のイノベーションキーデバイスを世界にさきがけて実用化することで、お客様に最適なソリューションを提案しています。
本特集では、素材技術を活用し開発されたデバイスに関し、プロードライザ、ネオキャパシタ、リチウムイオン二次電池などのエネルギーデバイス、チョークコイル、ノイズ抑制シートなどの磁性デバイス、および圧電応用デバイスの3分野に関する技術動向、デバイス技術、開発製品をご紹介します。NECトーキンでは、これらの製品を通じて、携帯電話やデジタル家電などのIT分野から、環境・医療・福祉など幅広い市場におけるソリューションを提案してゆきます。
SoC製品
NECエレクトロニクスでは、世界で初めて2番組のデジタル・ハイビジョン放送の同時受信/録画が可能な1チップ・システムLSIを開発しました。本LSIは、従来、2つの機能ユニットに分かれていた、地上デジタルなどのハイビジョン放送の受信機能およびDVDレコーダの主要な機能を、世界で初めて1チップ上に集積しています。このLSIを使うことにより、従来の構成では実現できなかった高性能と低コスト化を同時に可能にし、ユーザに最適なソリューションを提供します。
2006年は2つの次世代DVD規格であるHD DVD、BD(Blu-ray Disc)それぞれに対応したプレーヤが共に市場に投入された最初の年となりました。また、大画面、高精細なテレビの普及やデジタルHD放送の開始などにより、次世代DVDへの期待もますます高くなってきています。
このたびNECエレクトロニクスは、HD DVD、BD両規格および現行規格であるDVD、CDのすべてのメディアに対応した記録再生ドライブ用システムLSI「SCOMBO/UM」を世界に先駆けて開発、製品化に成功しましたので、その紹介をします。
Audio Processorシリーズは、携帯電話で長時間のオーディオ再生を行うためのオーディオコンパニオンLSIです。既存の携帯電話端末のセットシステムに容易にアドオン可能な構成になっています。
シリーズの1つであるAP130では著作権を侵すことなく音楽データのダウンロードや活用ができる「SDAudio」の機能を有します。アプリケーションプロセッサを稼働させておく必要が無いため、50時間以上の長時間音楽再生機能を低コストかつ短期間で構築することができます。
IMAPCARは、車載画像認識を行う上での機能・性能、品質、信頼性を備えた動画像認識プロセッサです。NECメディア情報研究所の研究成果である“ 多数のプロセッサが並列動作するIMAPアーキテクチャ” を基に、NECエレクトロニクスが車載品として製品化しました。昨今の自動車の安全に対する意識の高まりとともに、自動車の目として大きな期待を寄せられるデバイスです。
MCU製品
All Flashマイコンは、お客様のシステム競争力向上のため、すべての製品をフラッシュマイコンで揃えました。フラッシュマイコンは、ソフトウェアの書き換えが可能であるため、システム開発において、リードタイムやコストの面で大きなメリットがあります。また、NECエレクトロニクスのフラッシュマイコンは、従来の「製品が少ない」、「価格が高い」といった不安を解消し、「安心」を提供しているため、開発から生産までフラッシュマイコンで行うことができます。さらに、システムの開発効率を向上する開発環境、生産効率を向上する書込み環境を提供することで、フラッシュマイコンのメリットを最大限発揮することができます。
個別半導体製品
NECエレクトロニクスは従来から携帯機器に使用されるリチウムイオン電池保護用のMOSFET製品をラインナップしてきました。
今回開発したCSPタイプのMOSFET:EFLIPは、パッケージの実装面積がわずか2.6mm2とリチウムイオン電池保護用のMOSFETとしては世界最小クラスであり、リチウムイオン電池パック・携帯機器の小型化に貢献します。
先端製品を支える共通技術・基盤技術
現在システム・オン・チップ(SoC)の多くには組み込みCPUが内蔵され、重要な役割を担っています。SoCデザインは年々複雑化、高機能化が進んでいますが、システムに対しCPU単体の性能のみが問われる時代からアプリケーションの要求から決まるバス構成設計やデータ処理の分散処理設計がより重要視されるようになってきています。
本稿では主にデジタル家電、携帯電話といったアプリケーション分野別にユーザと半導体ベンダ間で開発される「顧客密着型ASIC」向けに提供される組み込みCPUのNECエレクトロニクスでの現状を述べ、特に英ARM社のARMコアおよびプラットフォームベース設計のサポートについて紹介します。
トランジスタのゲート絶縁膜に微量のハフニウムを付着させ、仕事関数制御によるしきい値電圧コントロール技術を確立し、低リーク電流で高性能、かつ製造工程数を大幅に削減したトランジスタを開発しました。この技術を液浸リソグラフィー加工技術と組み合わせた55nmノードCMOS「UX7LS」プロセスを紹介します。 UX7LSでは、しきい値電圧制御範囲を0.3V~0.5Vとして、幅広いアプリケーション領域を同一トランジスタ構造でカバーすることが可能になりました。さらに、65nmノードのトランジスタと比較して約20%の性能向上と、最大15%の工程削減を実現し、SRAMサイズは0.446μm2まで縮小しました。
近年、家電製品や各種装置において高機能化、小型軽量化に拍車がかかり、それに伴いそれら製品に搭載するLSIも微細化、大規模化が著しく進んできています。そのなかで故障解析技術は、短納期設計の設計上の問題や製造工程での問題の解明と解決、また万一お客様のところで問題が起きてしまった場合、その問題を短期間で解決しフィードバックするといった局面で非常に重要な技術となっています。
本稿では、効率良く短期間で問題を解明する上で重要となる、故障箇所を精度良く絞り込む故障診断、ピンポイントまで場所特定を行う故障箇所特定、現象を解明する物理解析の各技術に関して事例を含め紹介します。
NECエレクトロニクスはNECと共同で、高密度な配線体を介してメモリチップとロジックLSIの接続を可能とする、超小型のシステム・イン・パッケージ(SiP)を開発しました。この技術は、システム・オン・チップ(SoC)が持つメモリへの広帯域アクセス性能と、SiPの特徴である、メモリとロジックをそれぞれ別のチップで製造することで可能となるメモリ大容量化を両立させるものです。メモリ帯域拡大によるパフォーマンスの向上と、チップ間通信消費電力の低減などが期待できるため、高機能化が進む携帯機器を始めとした広範な用途への適用をめざして実用化を進めています。
エネルギーデバイス
プロードライザは、数10kHz~数GHzの広い周波数範囲において、低インピーダンスでフラットな周波数特性を持ち、かつ大容量であるという特徴を併せ持つ、現在、および将来の市場要求にマッチした画期的なデカップリングデバイスです。本稿では、プロードライザの特徴、構造、特性、信頼性、量産化およびシリ-ズ化について解説します。
NeoCapacitorは導電性高分子を使用したタンタルコンデンサです。NECトーキンではこれまでに、市場要求であるCPUの高速化・低消費電力化・低電圧駆動化などを設計コンセプトとして、定格電圧2.5V~16Vの製品化を進めてきましたが、さらに高機能、高信頼性を必要とするサーバ、LCDモジュール市場から商品開発を求められています。これらの市場に必要となる定格電圧20Vや25Vをはじめとする高圧品の高耐圧化を達成するために、要素技術開発、素材開発、市場標準品の分析を行いました。同時に設計の最適化や後戻りの排除を目的に品質工学を用いることにより、目標とする破壊電圧50V以上の高圧品開発に成功しました。
近年、リチウムイオン二次電池はインパクトドライバやハンマードリルなどの電動工具にも使われ始めており、大電流用途への拡大が始まっています。
NECトーキンは、材料の優位性と大容量電池の製品化で培った技術を応用して、新たに3Ahクラスで高出力型の大容量リチウムイオン二次電池を開発、製品化しました。今回開発した大容量ラミネート型リチウムイオン二次電池“IML126070”は、「①電極材料に電動アシスト自転車で実績のある材料を用いる」「②大電流出力や急速充電に対応できるように電極仕様の見直しを行う」「③集電構造などについて大電流対応やエネルギー密度を向上させるため改良し最適化を行う」などにより、30Aの連続放電や13分の急速充電(90%充電)を可能としています。
磁性デバイス
各種電子機器の搭載部品の高密度化への動向が加速し、大電流に対応するチョークコイルの要求が、近年さらに強まっています。その要求に対応する金属磁性材料を使用した一体成形構造の「MPCシリーズ」「MPLCシリーズ」のチョークコイルを紹介します。このチョークコイルはパソコンのCPU駆動用DC/DCコンバータなどに最適で、金属磁性材料を使用し、一体成形しており、低損失・直流重畳特性・電磁騒音特性・電源負荷効率特性などに優れています。今後も、小型化、高密度化、高効率化などをはかり、ラインナップの拡大を推し進めていく予定です。
フェライトめっき膜は、常温で成膜できる可とう性を有する磁性シートで、高い電気抵抗を持ちUHF帯まで大きな透磁率を保つので、厚さわずか数μmの膜で高周波電磁ノイズを副作用を伴わずに効果的に抑制できます。電子部品や回路基板にも直接成膜できる上、ポリマーなどの有機物を含まないので、リフロー処理にも耐え、半導体集積素子の内部や多層基板の内層への実装も可能です。今後ますます複雑化する電子デバイスの高周波ノイズ対策やシグナルインテグリティ改善の簡便なソリューションとして応用開発が進んでいます。
圧電応用デバイス
圧電アクチュエータは、高変位精度、高速応答性、高発生力を特徴とするデバイスです。これまで精密位置制御を必要とする産業機械分野で応用が進められてきましたが、近年デジタルカメラや携帯電話などの小型電子機器への応用が急加速で進められています。
圧電素子型骨伝導スピーカを使い音情報を振動として聴覚器官に伝える携帯電話用アクセサリ「骨伝導レシーバマイク」を実用化しました。騒音中や、聴こえづらい人のフィールド試験で「よく聞こえる」との評価を得ています。この製品は、携帯電話が聴こえづらい人のみならず、走行中の新幹線のデッキ、プレス加工や機械組立ラインなどの工場現場など騒音中から通話される一般の方々にも有用な商品です。
本稿では、骨伝導レシーバマイクの実用化に焦点を当て、骨伝導スピーカの概要、骨伝導レシーバマイクの基本仕様、その構成と各要素部品に関する課題と設計上の留意点などについて紹介します。