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日本製鉄株式会社様


鉄鋼生産現場にAI(ディープラーニング)を導入
製品の品質向上を実現する
- 業種:
-
- 製造・プロセス
- 業務:
-
- 生産管理
事例の概要
課題背景
- 出荷するコイルを段積みする際、コイル間に挿入する緩衝材が脱落し、コイルに傷や凹みが生じる可能性があった。
- クレーンに装着したカメラによって緩衝材の有無を判別する仕組みを構想したが、単純な画像処理での対応は難しかった。
- 画像認識システムを導入するも、十分な教師データの確保が課題となった。
成果
画像加工により十分な教師データを確保
緩衝材の脱落状況の画像を大量に生成することで、AIの基盤となる十分な量の教師データを確保できた
画像を集約処理する仕組みを構築
6カ所のクレーンに2台ずつ、計12台のカメラで撮影した画像を1カ所のサーバーに無線で送り集約処理する仕組みを構築した
検出精度8割を実現
8割の精度で脱落を検出するとともに、過検出の割合も1%以下に抑えています
導入ソリューション


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事例の詳細
導入前の背景や課題
緩衝材のトラブルを検知し
製品の品質を保ちたい
2019年4月に新日鉄住金から社名を変更して再スタートを切った日本製鉄様。鋼のもととなる粗鋼の生産量は日本トップで、世界でも五指に入る規模を誇ります。名古屋製鉄所は、原料から鉄を作り、薄板や鋼管などの最終製品とするラインを有する同社の中核工場の一つです。
同製鉄所の代表的な製品の一つが薄板を巻いたコイルで、その直径は60センチから1メートルほど、重量はトン単位になります。生産ラインからクレーンで自動運搬されたコイルは、倉庫で段積みにされて出荷を待ちます。

設備部 制御技術室 主査
園田 貴之氏
「重ねる際、コイル同士の接触によって傷や凹みが生じるのを防ぐためにプラスチック製のベルト状の緩衝材をコイルの上に載せるのですが、クレーンで運ぶ過程でその緩衝材がずれたり脱落したりするケースがあります。製品に傷がつくのを回避するには、そのようなケースを検知し、緩衝材を入れ直さなければなりません」
そう話すのは、名古屋製鉄所設備部の園田貴之氏です。ほぼ自動化されている一連の工程の中に、緩衝材のトラブルを検知する仕組みをいかに組み込むか。それが名古屋製鉄所における大きな課題でした。
選択のポイント
デジタル加工によって生成した
大量の画像を教師データに
緩衝材のずれや脱落を検知する仕組みとして検討されたのは3つの方法でした。レーザーでスキャンする、緩衝材にIDタグを埋め込む、カメラで撮影する──。その中で最もトラブル検出の精度が高いと考えられたのがカメラを使う仕組みでした。
問題は、画像処理の自動化でした。倉庫は広大で、場所によって照明の明るさや色が異なります。コイルの大きさには複数の種類があり、緩衝材自体の色もまちまちでした。それらの変数を踏まえて緩衝材のトラブルをいかに正確に検知するか──。
「着目したのがAI(ディープラーニング)による画像認識の仕組みです。これを使えば、AIが緩衝材のトラブルの特徴を学習し、さまざまなケースに自動で対応してくれるからです。そこで、かねてよりおつき合いのあったNECに相談させていただきました」
AI画像認識ソフトウェア市場で国内トップクラスのシェアをもつ「RAPID機械学習」の採用がそうして決まりました。RAPID機械学習の機能を活用するには、緩衝材の脱落状況を示す多様な画像、いわゆる教師データをAIに学ばせる必要があります。しかし、ずれや脱落の状態は極めて多岐にわたり、そのすべてを撮影することは不可能でした。
「そこで、デジタル加工によって画像のバリエーションを大量につくり、それを教師データとすることにしました。最終的に1万種類以上の画像を生成しました」
結果、十分な量の教師データを確保することに成功し、AIによる画像認識の基盤が出来上がったのです。
導入後の成果
検出率80%を実現
過検出率は1%以下に抑える
コイルを運搬する6つのクレーンにそれぞれ2台ずつのカメラを設置し、撮影した画像を無線で1台のサーバーに送って集約処理をする──。それが完成したトラブル検知のシステムでした。「画像認識の仕組みの開発には1年弱ほどかかりましたが、実装自体は10カ月という短期間で実現できました」と園田氏は話します。
このシステムによる緩衝材トラブル検出率はおよそ8割で、一方の過検出率は1%未満に抑えることに成功しています。
「トラブルではないのにトラブルと判定してしまう過検出が増えると、ラインを止める回数が増えて、生産性が落ちてしまいます。過検出を最小限に抑えながら、検出率を上げる。そのバランスの実現が非常に重要であると考えています」
AI(ディープラーニング)のメリットは、データが増えれば増えるほど精度が向上する点にあります。日々蓄積していくデータによって検出率をさらに向上させていくことが現在の目標です。

設備部 制御技術室
主幹
古家 順弘氏
今回の一連の取り組みについて、名古屋製鉄所設備部主幹の古家順弘氏は次のように話しています。
「NECの皆さんには、私たちが壁にぶつかったときに適切な解決法を提示していただきました。二人三脚で目標に向かっていくことができたと思います。今後働き手が減っていく中で、生産現場における省人化、無人化が重要な課題になっていくはずです。テクノロジーによる課題解決の方法をこれからもどんどん提案していただきたいですね」
NEC担当スタッフの声

シニアエキスパート
神南 吉宏
AI実装を経験できる貴重な機会に
最初にご相談いただいたのは2015年6月でした。その時点でAIの技術を生産現場で活用するケースはほとんどなく、私たちにとっても非常に大きなチャレンジでした。ディスカッションを重ねながら、それまでなかった仕組みを実現できたことで貴重なナレッジが得られたと感謝しております。最新のテクノロジーは、チャレンジする機会を得て初めて実装につながります。今後も日本製鉄様との共創によって、生産現場を最新技術で支える仕組みづくりに取り組んでいきたいと思います。

主任 堀田 大希
AIへの深い理解によって成功した取り組み
AIは難問に答えを出してくれる「魔法の技術」と捉えられることが多いのですが、AIの力をフルに活用するには、使う側がAIの仕組みを理解し、システムの構築や運用をしっかり行う必要があります。その点、日本製鉄の皆さまはAIの特質をよく理解し、必要なものが何かを十分に把握されており、非常に先進的な取り組みだったと思います。リーディングカンパニーにふさわしい大胆なチャレンジをこれからもご支援していきたいと考えています。
お客様プロフィール
日本製鉄株式会社 名古屋製鉄所
所在地 | 愛知県東海市東海町5-3 |
---|---|
概要 | 日本製鉄(株)の中核拠点の一つ。 中部地区唯一の銑鋼一貫製鉄所として自動車をはじめ電機、産業機械などの「鉄の製造基地」としての役割を果たす。 1958年(昭和33年)に東海製鐵株式会社として設立し、1964年に銑鋼一貫体制を確立。 自動車の軽量化と衝突安全性の両立に貢献できる「ハイテン」と呼ばれる自動車用高強度鋼板の開発・製造に強みを持つ。 |
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(2020年3月9日)
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