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NECプラットフォームズ

量子コンピューティング技術による生産計画最適化を実現、工場適用開始

業種:
  • 製造・プロセス
業務:
  • 生産管理
製品:
  • その他

事例の概要

課題背景

  • 生産計画立案業務が熟練作業者に集中し、属人化していた。そのため、スキルの継承が課題であった。
  • 今後、多品種少量生産や製品ライフサイクルの短縮が進み、さらなる生産計画が複雑化すれば、現在の熟練作業者でも最適な計画を立てることが困難になる危機感があった。

成果

生産計画の最適化を新システムで自動化

量子コンピューティング技術を活用したシステムを導入した結果、従来は熟練作業者しか担えなかった生産計画の立案を自動化した。各種生産変動に追従可能なシステムを構築できたことで、その他の業務への適用の可能性を見いだし、これまで不可能だと思われていたサプライチェーン領域全体の最適化への足掛かりを得た。

生産計画の立案時間短縮

生産計画の立案業務が従来の約1時間から平均で10分程度(データの準備や人による結果確認など付帯作業含む)に短縮できた。

スキルフリー化(熟練した技術を必要としない)

これまで熟練作業者が行っていた業務をスキルフリー化することで、安定した生産を維持できるようになった。特に、離職率が高い海外拠点で、人材不足の課題解決が見込める。

導入ソリューション

単一のラインで1日に約30品種もの製品を混流生産するため、生産する順番の組合せが膨大になり、最適な計画を立てることが難しかった。従来は、生産工程を熟知する熟練作業者が、複数の基準で整理された基本パターンや考えをベースに、生産計画を立案していた。今回導入したシミュレーテッド・アニーリングマシンは、熟練作業者と同等以上に段取りを最小化した計画をわずか数秒で算出した。これにより、データの準備や人による結果確認などをふまえても、トータルにかかる時間を10分程度まで短縮した。

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事例の詳細

導入前の背景や課題

複雑な生産計画の立案に量子コンピューティング技術を導入

創業以来100年にわたり、ハードウェア機器の開発・生産からシステムソリューションの提供、IoT・AIを活用した新たなソリューションの創出に至るまで、幅広いICTプラットフォームを提供してきたNECグループ。現在はNECプラットフォームズを中心として、NECグループが掲げる次世代ものづくりコンセプト「NEC DX Factory」のもと、先進のデジタル技術を活用した新しいものづくりに挑戦しています。

その背景は、ものづくりを取り巻く環境が劇的に変化しているからです。多品種少量生産や製品のライフサイクルの短縮化、生産量の変動はその代表例です。そのため、現在では、単一のラインにおいて、複数の品種を日々変わる要望量に応じて生産する必要があります。

生産性を上げるためには、品種が変わるごとに部品を交換したり設備設定を直したりする“段取り替え”の効率化が重要となります。段取り替えは、「『いつ』『どの順番で』その日に必要な品種を生産するのか」の組合せによって、かかる時間は大きく変わってきます。これ自体は、付加価値を生み出すわけではないため、その時間をいかに短くするかが競争力向上に向け重要なポイントとなります。

従来は、生産工程を熟知する熟練作業者が、複数の基準で整理された基本パターンをベースに、段取りを最小化するための生産計画を立案していました。しかし、多品種少量化や製品ライフサイクルの短縮化が加速することで作業はますます複雑化しており、熟練作業者でも計画立案が困難な状況になれば生産性低下を招く可能性があります。

そこで、さまざまな方法を検討し、最終的に同社が着目したのが量子コンピューティング技術です。量子コンピューティングは、従来のコンピュータとは全く違う新しい仕組みで動作し、既存の手法では膨大な時間を要する問題を超高速に解決する技術です。同社が導入したシステムは、量子コンピュータの手法の1つであるアニーリング方式の技術をスーパーコンピュータに適用した「シミュレーテッド・アニーリングマシン」(以下、SAマシン)です。

選択のポイント

NECプラットフォームズ株式会社
生産本部
生産技術統括部
スマートファクトリー推進部
マネージャー
重岡 雅代

教師データがなくても超高速に正解を導けることが導入の決め手に

同社ではSAマシンの導入以前に、AIの一種である「機械学習」の導入を検討しました。しかし、AIの学習プロセスに欠かせない「教師データ」がそろわないため、導入を断念せざるをえませんでした。

「もちろん、熟練作業者が立案した生産計画のデータはあるのですが、生産メニューのパターンが大きく変わってしまった場合は、精度が悪化し、再学習を行う必要が出てしまうと考えました」とNECプラットフォームズの重岡 雅代は語ります。

システム化を諦めかけていた2019年、NECの担当者から紹介されたSAマシンは、NECのスーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」の特徴であるベクトル技術と、量子アニーリング処理に適した独自開発のアルゴリズムを組み合わせて構成されており、大規模演算や飛躍的な高速化が可能と魅力的なものでした。

そこで、このSAマシンを使用し、同社では、熟練作業者の計画立案プロセスを一般化・汎用化したモデルを構築しました。

まず、計画立案が複雑な電子部品の表面実装(※1)ラインで、2019年9月から2020年2月まで実証実験を実施しました。ここでは、熟練作業者が立案した生産計画とSAマシンが導き出した生産計画を、過去のデータを活用し比較しました。

  • ※1
    電子部品の表面実装…電子部品をプリント基板に実装すること

導入後の成果

実証実験で熟練作業者と同等以上の精度を数秒で導き出す

これまで熟練作業者が約1時間かけて立案していた生産計画に対し、実証実験の結果は期待を上回るものでした。

「熟練作業者が立案した計画は精度が高く、最適解に近いものだったので、それと同等以上の結果が出たことに驚きました」と重岡は評価します。

この成果を受け、同社では2020年3月より、福島工場の表面実装ラインに本格導入をしました。現在は、SAマシンの算出した結果をもとに、必要に応じて熟練作業者が微調整を加え、運用しています。データの準備や人による結果確認などの付帯作業を入れても生産計画の完成までに要する時間はわずか10分程度となり、大幅に短縮しています。

生産量の急激な変化にも素早く追従可能になっただけでなく、属人的だったスキルをシステム化することで、熟練した技術を必要としない「スキルフリー化」を実現しました。

福島工場の成功事例を受け、今後は他拠点の表面実装ライン(国内3拠点、海外1拠点)へ同システムを展開するとともに、異種の生産ラインへの適用も検討しています。

「今回取り組んだ表面実装ラインの生産計画は、生産計画のなかでもパラメータが多く複雑なので、ほかへの展開も比較的容易だと判断しています。また、生産拠点が異なってもプロセスそのものは同じなので、これまで課題としていた属人化から脱却できるはずです。特に海外拠点は人材確保が難しいという課題があったため、スキルフリー化が実現できることは大きなポイントです。これにより、生産品種の変化や、製品サイクルが短くなっても安定した生産を維持できると考えています」(重岡)

さらに今後は、リソースや在庫などを加味し工場全体の生産計画最適化を目指すほか、生産計画以外のサプライチェーン領域の最適化も視野に入れています。

「ものづくりの現場以外でも、サプライチェーン全体を見渡すと、解決できていない組合せ最適化問題(※2)が幅広く残っています。こうした領域でもSAマシンを活用することによって、さらなる生産性の向上を目指していきたいと考えています」と重岡は最後に語りました。

  • ※2
    組合せ最適化問題…膨大な選択肢からベストな選択肢を選び出す問題のこと

NEC担当スタッフの声

NEC
量子コンピューティング推進室
技術主幹
千嶋 博

製造業に限らず、金融や物流など広範な社会課題の解決に貢献したい

量子コンピューティング技術を活用すれば、これまでのコンピュータが苦手としている組合せ最適化問題を解決に導くことが期待できます。

例えば、NECプラットフォームズのプロジェクトではSAマシンが数秒で答えをはじき出していますが、量子コンピューティング技術を利用しない従来型のコンピュータで愚直に問題を解くと、計算に数万年という時間が必要になります。

NECのSAマシンで高速化のカギとなっているのが、独自に開発したアルゴリズムとSX-Aurora TSUBASAが搭載しているベクトル技術です。新たに開発したアルゴリズムは、規模が大きくなりがちな最適化問題を適切に分割したり、分割した最適化問題を効率よく解いたり、最終的に現場の状況に調整したりする部分で、従来の計算手法とアニーリング手法を適切に組み合わせています。そして、分割した問題をベクトルプロセッサで高速処理しています。そのため、従来のSAマシンに比べ、300倍以上の大規模な組合せ最適化問題の解を導き出すことができます(※3)。

  • ※3
    100都市巡回セールスマン問題においてXeonプロセッサで実行した場合と比較

現在、世界中で未解決となっている社会課題の多くが、組合せ最適化問題としてモデル化することが可能です。例えば、製造業であれば「工場全体の生産計画最適化」や「サプライチェーンの最適化」、物流であれば「短時間あるいは低コストでの全配送ルートの最適化」を図ることもできます。金融なら「低リスクかつ最大リターンとなるポートフォリオ(分散投資)」を検討することも可能でしょう。今後はこのように広範な業種のお客様の課題解決に貢献していきたいと考えています。

企業プロフィール

NECプラットフォームズ株式会社

所在地 〒101-8532 東京都千代田区神田司町 2-3(東京本社)
創業年 1918年(日本電話工業株式会社として大阪で設立)
事業内容 ICTシステム機器の開発、製造、販売、設置、保守およびシステムソリューション
資本金 103億3100万円
売上高 3502億円(単独2020年3月期)
従業員数 6917名(単独2020年4月)
URL https://www.necplatforms.co.jp/

NECプラットフォームズ株式会社

事例紹介動画

「量子コンピューティング適応領域の広がり」についてご紹介します。[02:49]


この事例の製品・ソリューション


本事例に関するお問い合わせはこちらから

(2020年10月21日)

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