Japan
サイト内の現在位置を表示しています。
NECが開発貢献するオープンソース
OSS貢献活動FIWAREに対するNECの取り組み
NEC は、FIWARE (ファイウェア) 開発者コミュニティにおいて、FIWARE の各種コンポーネントの開発に貢献し、加えて自社製コンポーネントをオープンソースとして公開しています。開発者コミュニティでの活動成果やノウハウを活用しながら、FIWARE をベースとしたデータ利活用基盤サービスを搭載した「NEC都市OS」を提供しております。ここでは、FIWARE に対する NEC の取り組みについて紹介します。
FIWARE とは
FIWARE はスマートソリューションを支えるオープンソースです。スマートソリューションの基盤となる複数のコンポーネントから構成されています。コンポーネントは、FIWARE GE (Generic Enabler) と呼ばれ、オープンアーキテクチャと汎用的で再利用可能なビルディングブロックに基づいています。サードパーティーのコンポーネントと組み合わせてスマートソリューション基盤を構築して、スマートソリューションの開発をより速く、より簡単に、より安価にサポートします。
FIWARE をベースとしたスマートソリューション基盤は、スマートシティ、スマートインダストリー、スマートアグリフード、スマートエネルギー等の領域だけでなく、IoT システム、サイバーフィジカルシステム、システムのシステム (System of systems)、デジタルツインなどのアプリケーション領域でも利用可能です。FIWARE GEs は、情報サイロを打破するためのオープン標準 API を採用しており、各種スマートソリューションの情報を横断的に活用できます。
FIWARE NGSI とは
スマートソリューションは、実世界の様々なソースから様々な情報を収集して、何が、いつ、どこで、なぜ起きているかを把握します。FIWARE では、実世界のモノ・コトの状態をコンテキスト情報として管理します。
このコンテキスト情報を管理するためのオープン標準が FIWARE NGSI (Next Generation Service Interfaces) です。Context Broker は、各コンポーネント間でのコンテキスト情報の受け渡しを仲介する NGSI サーバーで、FIWARE の中核機能です。
FIWARE NGSI の源流は、NEC が2009年3月にモバイル系業界規格団体 OMA (Open Mobile Alliance) に対して NGSI の構想提案を行い、OMA において仕様策定された OMA NGSI のコンテキスト管理仕様 (NGSI-9, NGSI-10) です。
FIWARE NGSIv2 は、欧州の研究開発プロジェクトが OMA NGSI-9, NGSI-10 の仕様を採用・改良し、NGSI を REST API (HTTP/HTTPS バインディングと JSON シリアライゼーション) として仕様化したものです。この NGSIv2 のサーバー実装のひとつが、FIWARE Orion Context Broker です。
さらに、ETSI NGSI-LD は、従来の NGSI にリンクトデータ技術を取り入れることでセマンティックなデータ表現(語彙、データ間の関係等の表現)が可能になり、クロスドメインでのコンテキスト情報の活用により効果を発揮します。仕様策定は、ETSI (欧州電気通信標準化機構) の ISG (Industry specification group) CIM (Cross cutting context information management) で進められています。これと並行して、FIWARE 開発者コミュニティでは、3種の Context Broker 実装 (Orion-LD, Scorpio, Stellio) の開発が進められています。
FIWARE Foundation とは
FIWARE の原型は、2011年に始まった第7次欧州研究開発フレームワーク計画 (FP7) のFI-PPP (Future Internet Public-Private Partnership: 次世代インターネット官民パートナーシップ) での、FI-WARE (Future Internet Core Platform) および FI-Core プロジェクトで開発されました。プロジェクトの終了後、その取り組みは、FIWARE Foundation に引き継がれています。
FIWARE Foundation は、2016年に Atos Information Technology GmbH, ENGINEERING Ingegneria Informatica S.p.A., Telefónica Digital España, S.L., ORANGE S.A. の4社によって設立されたドイツ・ベルリンの非営利団体です。2024年4月時点で148の企業・団体が参加しています。メンバーやパートナーと共に、ベンダーロックインのシナリオを回避しながら、ポータブルで相互運用可能なスマートソリューションの開発をより迅速、簡単、手頃な方法で可能にする主要なオープン標準の定義とオープンソース実装を推進しています。
FIWARE Foundation は、次の体制で運営されています。
・Board of Officers (BoO: 役員会)
・Board of Directors (BoD: 理事会)
・Technical Steering Committee (TSC: 技術委員会)
・General Assembly (GA: 総会)
BoO (役員会) は、FIWARE Foundation の運営に責任を負う組織です。BoD (理事会) は、プラチナメンバーおよびゴールドメンバーから選出されたメンバーによって構成され、FIWARE Foundation の運営を監督したり、運営方針を決定したりする組織です。TSC (技術委員会) は、プラチナメンバーおよびアクティブコントリビューターの中から選出されたメンバーによって構成され、FIWARE テクノロジーの検討や FIWARE GE の認定、FIWARE Catalogue(FIWARE GEs の一覧)の管理等を行う組織です。GA (総会) は、FIWARE Foundation のすべての企業・団体・個人メンバーの年次総会です。
FIWARE エコシステム
FIWARE Foundation は、FIWARE のビジネス適用を促進し、FIWARE エコシステムを拡大・成長させるために様々な取り組みを行っています。
Smart Data Models
Smart Data Models は、実世界のモノ・コトをデジタル表現したデータモデルです。技術的なデータタイプと構造を定義するモデルのスキーマまたは技術表現、データモデル仕様、NGSI のペイロードで構成されています。FIWARE Foundation は、関連組織と協力して、様々なスマートソリューションドメインの共通データモデルの定義を推進しています。
FIWARE iHubs
FIWARE iHub は、FIWARE 利用者のための地域コミュニティです。FIWARE を活用して地域のデジタルビジネスの競争力を高めることを支援します。2024年4月時点で、欧州、北米、南米、アフリカ、アジアの各地に39カ所の iHub が設置されています。各地の iHub は連携し、FIWARE iHubs ネットワークとして、グローバルな FIWARE コミュニティの基礎となる役割を果たします。
FIWARE Lab
FIWARE Lab は、FIWARE コミュニティのための非商用サンドボックス環境です。FIWARE テクノロジーを体験し、実験する機能を無料で提供しています。FIWARE Lab は、地理的に分散したネットワーク上にデプロイされた FIWARE Lab node(クラウドリージョン)のフェデレーションで構成されています。各 FIWARE Lab node は、FIWARE エコシステムに参加する組織によって運営されています。
NEC の取り組み
NEC は、NGSI、NGSI-LD の仕様策定に深く関わり、FIWARE 開発者コミュニティにおいては、各種 FIWARE GE の開発に貢献し、加えて自社製コンポーネントを FIWARE GE として提供しています。さらに、FIWARE Foundation にプラチナメンバーとして参加し、FIWARE エコシステムに対しては、FIWARE Lab、FIWARE iHub を運営して、FIWARE の地域コミュニティの拡大に貢献しています。
NGSI 仕様策定への貢献
NEC は、2009年3月にモバイル系業界規格団体 OMA (Open Mobile Alliance) に対して NGSI の構想提案を行い、仕様策定に参加した結果、OMA において NGSI 仕様が策定されました。
FI-WARE プロジェクトにも参加して、OMA NGSI のコンテキスト管理仕様 (NGSI-9, NGSI-10) を改良した、FIWARE NGSIv2 の仕様策定に貢献しました。
NGSI-LD について、NEC は、2017年に、他社と共同で ETSI にコンテキスト情報管理 (ISG CIM) に関するグループを立ち上げ、グループの議長および検討メンバーとして仕様策定を主導しています。
FIWARE GE 開発への貢献
NEC は、次の FIWARE GE プロジェクトの開発に貢献しています。
FIWARE GE | 説明 |
---|---|
Orion Context Broker | Orion Context Broker は、FIWARE NGSIv2 の実装で、クライアントは NGSI API により、コンテキスト情報を作成、クエリ、更新、削除できます。 |
Cygnus | コンテキスト情報の履歴を、サードパーティーのデータベース等に保存するためのコネクタです。 |
IoT Agent Node.js Library | IoT 関連の各種プロトコルと NGSI を橋渡しするカスタム IoT Agent の開発を容易にする Node.js ライブラリです。 |
IoT Agent for JSON | JSON ベース (AMQP, HTTP, MQTT) のプロトコルと NGSI を橋渡しする IoT Agent です。 |
IoT Agent for UL | Ultralight 2.0 ベース (AMQP, HTTP, MQTT) のプロトコルと NGSI を橋渡しする IoT Agent です。 |
STH-Comet | 時間の経過とともに変化する生および集約されたコンテキスト情報の管理を行います。 |
QuantumLeap | コンテキスト情報を時系列データベースで管理する API を提供します。 |
FIWARE CKAN Extensions | CKAN を FIWARE GE と統合し、改善されたアクセス制御、適時コンテキストデータ (right-time context data) の公開、および豊富な視覚化機能によって、CKAN を強化します。 |
また、NEC Laboratories Europe GmbH の研究者 (2名)、NEC Corporation India Pvt. Ltd. のソフトウェアエンジニア (2名) が、TSC (技術委員会) の委員に選出されており、Core Data Connectors、Context Processing & Visualization、Publication and Monetization / Data Publication and Trading の技術チャプター(技術領域)をリードしています (2024年4月時点)。NEC グループの主なコントリビューターについてはこちらをご覧ください。
自社製品のオープンソース化
NEC は、2011年に FI-WARE プロジェクトが開始した当初から FIWARE の開発に関わっており、これまでに Aeron IoT Broker および NEC ConfMan IoT Discovery(どちらも開発停止)を開発し、FIWARE GE として提供してきました。現在は、これらの成果を活用した、Scorpio Context Broker と FogFlow を FIWARE GE として提供しています。
Scorpio Context Broker
NEC Scorpio NGSI-LD Context Broker は、ETSI NGSI-LD のコンテキスト情報管理標準に準拠した Context Broker です。NEC Laboratories Europe GmbH が、NEC Corporation India Pvt. Ltd. と共同で開発しています。Core Context Management の技術チャプターに位置付けられた、FIWARE Full member GE です。
FogFlow
FogFlow は、コンテキスト情報管理をネットワークのエッジにもたらすフォグ コンピューティング フレームワークです。FIWARE コンテキスト情報管理の機能を拡張し、オンデマンドのコンテキスト情報処理を可能にします。FIWARE NGSIv2, ETSI NGSI-LD のコンテキスト情報管理標準に準拠しており、Context Processing & Visualization の技術チャプターに位置付けられた、FIWARE Full member GE です。
FIWARE エコシステムへの貢献
NEC は、FIWARE が持続可能なオープンソースとなるように、FIWARE エコシステムに向けて、様々な取り組みを行い、エコシステムの発展に貢献しています。
FIWARE Foundation プラチナメンバー
NEC は、スマートシティ等の IoT(Internet of Things)を活用した事業の加速に向け、2017年3月に FIWARE Foundation に最上位のプラチナメンバーとして参画しました。理事および技術委員の役割を担い、FIWARE の機能拡充・強化と、FIWARE の普及、FIWARE エコシステムの拡大を牽引しています。
FIWARE Lab node
FIWARE Lab は、地理的に分散したネットワーク上にデプロイされた FIWARE Lab node のフェデレーションで構成されています。アジアにおける FIWARE 開発を促進するため、2018年に NEC と NEC Corporation India Pvt. Ltd. は、インドにアジア初となる FIWARE Lab node を設置し、運用を開始しました。
FIWARE iHub
国内での FIWARE 利用者を広げ普及促進を図るために、NEC は2022年5月にアジア初の FIWARE iHub「iHub Base」を立ち上げました。東京を拠点にしながらも全国の産学官民からの様々な FIWARE 利用者が接続するコミュニティで FIWARE の知識を学びたい人、FIWARE を活用して何かアクションを起こしたいと考える人が集まる場所です。官民連携によるスマートシティ推進組織や地域コミュニティと連携し、全国的な活動を行っています。
今後の取り組み
NEC は FIWARE エコシステムの一員として、FIWARE の持続可能な発展に貢献するとともに、お客様には安心してご利用いただける FIWARE を活用したソリューションを提供して参ります。